日本のクラフト酒バー

Japanese Spirits&SAKE Bar 2102

日本各地のウイスキー、クラフトジンや和リキュールを、完全禁煙の寛ぎ空間で楽しめるバーです。
丁寧な説明とこだわり材料で、商品の背景にある歴史や造り手の物語までお届けします。

May I offer you a glass of wine?

一献、献じましょう
Japanese Spirits & SAKE Bar 2102 AZABU-TOKYO
お品書き|MENU

東京タワーと麻布台ヒルズの麓、東麻布の路地に佇む看板のない隠れ家バー。
日本各地のクラフトウイスキー・ジン・焼酎・日本酒・国産リキュール、約500種。

酒は、人と人を結び、土地と風土を語り、時には遠い記憶を呼び覚ますものです。
大量生産ではなく、手仕事を尊び、土地の恵みを映し出す一本を選び抜きました。
一杯の酒の向こうには、山があります。水があります。米があります。麦があります。
そして、それを育んだ人々の物語があります。
どうぞ、グラスを傾けながら、日本という国の風景を味わってください。

NEW・二年ぶりの復活

【究極の和牛】宮崎・尾崎牛 サーロインステーキ膳

前身「Mixology Bar Source 2102」時代に愛された看板料理が、東麻布のバーカウンターに帰ってきました。宮崎の名匠・尾崎宗春氏が育てる、生産者の個人名を冠することを許された世界で唯一のブランド牛――究極の和牛『尾崎牛』。13種類の自家配合飼料をすべて植物性で組み、動物性たんぱく質を一切与えずに育てられるため、脂は軽やかに澄み、後を引きません。赤身には和牛本来の芳醇な旨味が宿り、世界の一流シェフが指名買いする理由がここにあります。

金賞受賞「ななかいの里コシヒカリ」の炊き立てご飯とともに。天然塩、塩漬け生胡椒、白醤油、山葵、ステーキしょうゆ和風おろし、昆布出汁梅干を添えて。

味わいの十段活用

  1. 極上のご飯を味わう。昆布出汁梅干しも試す。
  2. 尾崎牛サーロインステーキを塩で味わう。
  3. 生醤油と山葵で味わう。
  4. タレをつけて味わう。
  5. 塩漬け生胡椒を加えて味わう。
  6. 極上のご飯と合わせる。
  7. OTR(オン・ザ・ライス)。
  8. ドリンクとマリアージュさせる。
  9. 名古屋コーチン卵を追加する。
  10. 日本の食文化の素晴らしさを堪能する。

*炊き立てご飯無しでもご用意可能です。ジャパニーズウイスキーや赤ワインとのペアリングもお任せください。

お食事・おつまみ

Food & Japanese Bar Snacks

新潟・亀田蒸溜所「新潟ウイスキーうなぎ」白焼き膳 ¥4,980(炊き立てご飯無しは −¥1,000)

ウイスキー造りの過程で生まれるモルト粕を飼料に育てられた、世界でも稀有な鰻。身はふっくらと柔らかく、脂は上品。白焼きでは素材本来の旨味を、蒲焼きタレでは香ばしさを。塩・山椒塩・わさび・生醤油・自家製鰻タレ・塩昆布・碾きたて山椒・昆布出汁梅干し付きで、一度に9通り以上の味変が楽しめます(名古屋コーチン卵の追加も可能)。新潟・亀田蒸溜所のウイスキーと合わせれば、蒸溜所と食卓がひとつに繋がります。

高温ブタンガス釜の炊き立て御飯「ななかいの里コシヒカリ」

お米日本一コンテスト等で数々の金賞を受賞する最高峰のブランド米を、都市ガスの約2.2倍の発熱量を持つ高火力ガス釜で炊き上げます。沸騰までの立ち上がりの速さと強力な対流が、米一粒一粒を踊らせる――バーで味わう、日本の主食の最高到達点。¥1,980(税込)。近日、店主の母の故郷・佐渡ヶ島産コシヒカリ「朱鷺の舞」(農薬・化学肥料5割以上削減)へ切り替え予定です。※ご注文から約45分ほどお時間をいただきます。

Japanese Bar Snacks

  • ミックスナッツ¥660
  • 茨城県 小林農園「干し芋」¥980
  • 干し納豆¥660
  • 昆布出汁風味梅干・海苔佃煮・海老の塩麹塩辛・明太子など¥198〜
  • 名古屋コーチン卵かけご飯用 生卵¥198〜
  • しじみの味噌汁¥418

60-MINUTES CRAFT FREE-FLOW

日本産クラフト酒 飲み比べ放題

〜 東麻布の夜を解き明かす60分 〜 ボトルを除く、店内全ての在庫(グラスドリンク)約500種が対象。プレミア焼酎も、終売のオールドボトルも。

¥5,980 / 60分(税・サ別) 延長20分毎 ¥1,980

  • JAPANESE WHISKY長濱・三郎丸・嘉之助・日の丸・遊佐 ほか各地のクラフトシングルモルト
  • HIGHBALL & FEATURED天然水×自作炭酸充填機の極上ハイボール/HAKKO GINGERモスコミュール
  • CRAFT GIN & ABSINTHE季の美・GOTOGIN等(北海道産トニック・徳島産ライム仕様)
  • SHOCHU & COCKTAILS村尾・国分酒造等の本格焼酎/昆布出汁の梅干しサワー・ゆずモヒート
  • SAKE・LIQUEUR・BEER 他厳選日本酒・和リキュール・クラフトビール・挽き茶・A2ミルク
  • OLD BOTTLES & WORLD SPIRITSサントリークレスト12年等・スコッチ・テキーラ・ラム

*マティーニ、マンハッタン、ホワイトレディ、カルアミルク等のスタンダードカクテルも、材料があればできる限りご要望にお応えします。最初のご注文より計測開始(グラス交換制)/最終入店23:00。

おすすめカクテル

Seasonal Cocktails with Japanese Spirits

国産スピリッツと、日本各地の「厳選国産副材料」で仕立てる和のカクテル。冷蔵庫・冷凍庫には日本産のものしか入っておりません。¥1,930(税込)〜。甘め・さっぱり等の御調整も承ります。マティーニ等のスタンダードカクテルは¥1,760〜。

  • 鹿児島県伊集院町産さえみどり萎凋釜炒り茶と黒蜜、日本ウイスキーのジャパニーズオールドファッションド
  • ゆずモヒート
  • 鰹節と国産ウォッカのUMAMIオールドファッション
  • 国産ジン&日本産ヴェルモットのネグローニ
  • 国産ジン&北海道産トニックウォーター、愛媛産ライムのジントニック
  • 昆布出汁の梅干しサワー(お好きなスピリッツで〜)
  • 国産ウイスキー&日本産カフェアマーロのブラックマンハッタン
  • 日本産ラムと国産クラフトコーラのラムコーク
  • 日本産コーヒーリキュールのエスプレッソマティーニ

ハイボールへのこだわり

〜 自家製炭酸充填機で 〜

2年かけて作った、“炭酸そのもの”。自社開発の炭酸充填機で実現した、雑味のない、まろやかでありながら弾ける強炭酸。クラフト酒の材料として一番重要な『水』を『仕込み水』に近い天然水にすることで、一般的な水道濾過水に炭酸添加のソーダ水と違い、抑えた酸味・まろやかな一体感のある一杯になります。天然水炭酸で仕上げたハイボールは、一度飲めば戻れません。

琥珀

日本のウイスキー

Japanese Craft Whisky by Region

今や世界中の愛好家が羨望の眼差しを向けるジャパニーズウイスキー。1923年の山崎蒸溜所誕生から、冬の時代を越え、クラフト蒸溜所百花繚乱の現在まで――北海道から沖縄まで、日本列島を旅するように地域別にご用意しています。

北海道・東北

北海道

  • 厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 厚岸 立夏(りっか)2025
    堅展実業・厚岸蒸溜所(北海道厚岸郡厚岸町)|55%

    牡蠣と海霧の町・北海道厚岸町で2016年に産声をあげた厚岸蒸溜所は、「アイラモルトに比肩するウイスキーを日本で」というただ一つの野心から生まれました。太平洋から立ちのぼる霧、ヨシやスゲが千年かけて堆積した湿原のピート、冷涼で湿潤な熟成環境——スコットランド・アイラ島と驚くほど似通った風土が、モルトに潮の気配と力強い燻香を刻みます。本作は日本の季節の移ろいを一本ずつ瓶に封じる「二十四節気シリーズ」の一篇。「立夏」の名の通り、夏の入口に射す若い光のような、瑞々しい果実香と柑橘の明るさが、厚岸らしいスモークとブリニーな余韻の奥から立ち上がります。カスクストレングスに近い55%の骨格は、加水するほどに表情をほどき、蜂蜜や麦芽の甘みが顔を出す。東麻布のカウンターで、北の湿原の初夏を一杯に。ハイボールにしても香りが崩れない、厚岸の底力を感じる一本です。

  • 厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 厚岸 小雪(しょうせつ)2025
    堅展実業・厚岸蒸溜所(北海道厚岸郡厚岸町)|55%

    二十四節気「小雪」——北国に初雪が舞い、大地が冬支度を始める頃。その静けさを写し取ったような、厚岸の冬の便りです。厚岸蒸溜所の真髄は、単なるピーテッドモルトの再現ではなく、「厚岸オールスター」構想——地元産の大麦、厚岸の湿原ピート、厚岸産ミズナラ樽、そして海霧の熟成庫と、原料から熟成までを厚岸の風土で満たすことにあります。小雪の名を冠した本作は、ピートスモークの奥に干し柿やドライフルーツを思わせる熟した甘み、微かなスパイスと塩気が層をなし、飲み進めるほどに暖炉の火のような温かさが胸に灯ります。度数55%の厚みがありながら、口当たりは意外なほどしなやか。ストレートで冬の情景を、少量の加水で甘みの膨らみを、ロックで引き締まった燻香を——一本の中に三つの表情を持つ、季節の記憶のウイスキーです。牡蠣の産地のモルトらしく、当店の海老の塩麹塩辛や海苔佃煮との相性も格別です。

  • 厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 厚岸 白露(はくろ)2025
    堅展実業・厚岸蒸溜所(北海道厚岸郡厚岸町)|55%

    草の葉に白い露が宿り、秋の気配が忍び寄る頃——二十四節気「白露」。二十四の季節を全て瓶に収めるという、世界のウイスキー史にも類を見ない壮大な連作の中で、「白露」は第12弾として登場した折り返しの一本です。北海道産大麦を一部使用し、ミズナラ樽を熟成の中心に据えた構成は、まさに「厚岸オールスター」への道程を示すマイルストーン。グラスに注げば、ピートの燻香にミズナラ特有の伽羅や白檀を想わせるオリエンタルな香気が絡み、洋梨や青リンゴの涼やかな果実味が朝露のように滴ります。55%の力強さの中に、夏の熱が引いていく一瞬の透明感が確かに存在する——季節を味わうとはこういうことか、と膝を打つ完成度です。数量限定ゆえ、市場では入手困難が続く銘柄。麻布十番からほど近い当店のカウンターで、グラス一杯からお試しいただけます。日本ウイスキーの現在地を知りたい方に、まず薦めたい一本です。

山形県

  • THE YUZA DISTILLERY Spring in Japan 2024
    遊佐蒸溜所(山形県飽海郡遊佐町)|55%

    霊峰・鳥海山の麓、山形県遊佐町。「日本一小さなクラフト蒸溜所」を志して2018年に蒸溜を開始した遊佐蒸溜所は、雑味のないクリーンで美しい酒質を信条とする、東北の静かな実力派です。鳥海山に降った雪と雨が長い歳月をかけて磨かれた伏流水を仕込みに使い、小さな蒸溜器で少量ずつ、丁寧に。その名も「Spring in Japan」——日本の春、そして湧き水(spring)の二重の意味を宿した本作は、桜の季節の空気のように華やかで柔らかなボトルです。バーボン樽由来のバニラと蜂蜜、白い花や洋梨のエレガントな香りが立ち、口に含めば絹のような舌触りと透明感のある麦芽の甘み。55%とは思えぬ滑らかさは、遊佐の水と造りの賜物でしょう。ピートに頼らず、酒質の美しさだけで勝負する日本のクラフトウイスキー——その最良の回答のひとつです。食前の一杯にも、和食との食中にも寄り添う、凛とした佇まいの山形モルト。

  • THE YUZA DISTILLERY YUZA 2023
    遊佐蒸溜所(山形県飽海郡遊佐町)|51%

    遊佐蒸溜所が年に一度だけ世に送り出すフラッグシップ・シリーズの2023年版。ファーストリリースから一貫して掲げる「クリーン&エステリー」——つまり雑味なく、果実のような芳香に満ちた酒質という哲学が、熟成年数を重ねるごとに深みを増していく様を定点観測できる、ウイスキーファン垂涎の連作です。バーボン樽熟成の原酒を軸に組み上げられた2023年版は、熟した黄桃やアプリコット、カスタードクリームの甘やかな香りに、微かな白胡椒のスパイスが輪郭を与えます。51%というボトリング度数は、香味の凝縮感と飲み心地の均衡点を狙った蒸溜所の見識。若い蒸溜所と侮るなかれ、その完成度は既にスコットランドの銘醸に伍するものです。鳥海山の伏流水が育てた東北のシングルモルトを、東京タワーの見える東麻布の夜に。ストレートでじっくりと、香りの変化を追いかけてください。

  • THE YUZA DISTILLERY Second edition 2022
    遊佐蒸溜所(山形県飽海郡遊佐町)|62%

    2022年にリリースされた、遊佐蒸溜所の記念すべき第二作。ファーストエディションが瞬く間に完売し、日本中のウイスキーファンにその名を知らしめた直後の一本であり、若き蒸溜所の緊張と矜持がそのまま瓶に詰まったような、記録的価値も併せ持つボトルです。62%というハイプルーフでのボトリングは、加水で整えるのではなく、樽出しに近い姿のまま原酒の生命力を届けたいという意志の表れ。グラスに注ぐと、力強いアルコールの向こうからバニラ、青リンゴ、レモンピール、そして焼きたてのビスケットのような麦芽香が幾重にも立ち上がります。口中では蜂蜜の甘みが一気に花開き、長い余韻へ。少量の加水で香りは一層ほどけ、遊佐の酒質の透明感が際立ちます。現在では入手の難しい初期リリースを、グラス一杯から体験できるのはバーならではの贅沢。日本クラフトウイスキーの歴史の1ページを、ぜひ味わってください。

  • GAKKOGAWA(月光川)Distillery NEWBORN 2026 Edition Bourbon Cask
    月光川蒸留所(山形県飽海郡遊佐町)|63%

    「十四代」と並び称される山形の名門酒蔵・楯の川酒造が、日本酒で培った醸造の知見を携えてウイスキーの世界に踏み出した——それが鳥海山の伏流水が流れる月光川のほとりに建つ、月光川蒸留所です。月の光を宿す川、という名の美しさそのままに、目指すのは透明感と気品を湛えたモルト。本作は熟成3年に満たない原酒を「NEWBORN(ニューボーン)」としてリリースした2026年版で、バーボン樽で眠りについたばかりの原酒の、産声のような生命力を味わうボトルです。63%の若い原酒と聞いて身構える必要はありません。麦芽の甘みは既に驚くほど豊かで、バニラとココナッツ、微かな青草の爽やかさが弾けます。数年後、この原酒がどんな大人の顔になるのか——その未来を想像しながら飲む楽しみは、クラフトウイスキー黎明期の今しか味わえない特権です。遊佐蒸溜所と同じ町、同じ水系から生まれる個性の違いを飲み比べるのも一興。

福島県

  • YAMAZAKURA SINGLE MALT ASAKA PEATED WOODEN TUB WASHBACK
    笹の川酒造・安積蒸溜所(福島県郡山市)|50%

    笹の川酒造は1765年(明和2年)創業、東北で最も古くからウイスキー製造免許を持つ造り手です。戦後まもない1946年に免許を取得し、大手が市場を席巻する時代も、地方の酒蔵として細々と、しかし絶えることなくウイスキーの火を守り続けました。あのイチローズモルトの肥土伊知郎氏が、閉鎖された羽生蒸溜所の原酒を預けた蔵としても知られる——日本のウイスキー史の恩人ともいえる存在です。2016年に敷地内に開設した安積蒸溜所の本作は、日本酒の蔵らしく「木桶発酵槽(WOODEN TUB WASHBACK)」で発酵させたピーテッドモルト。木桶に棲みつく微生物がもたらす複雑な酸と厚み、そこにスモークが重なり、燻した麦の香ばしさ、柑橘、ほのかな乳酸的なまろやかさが幾層にも広がります。酒蔵260年の発酵技術とスコットランドの伝統が福島で交差した、まさに和魂洋才の一本です。

  • YAMAZAKURA SINGLE MALT ASAKA 2023 EDITION
    笹の川酒造・安積蒸溜所(福島県郡山市)|50%

    安積(あさか)蒸溜所の標準を示すヴィンテージ・エディションの2023年版。桜の名所として名高い福島の地から「YAMAZAKURA(山桜)」の名を冠したこのシリーズは、派手な樽使いや限定商法に頼らず、蒸溜所の素の実力を毎年正直に見せていく——という、老舗らしい誠実さに貫かれています。小規模な蒸溜器から生まれる原酒は、しっかりとしたボディと麦芽の旨みが身上。バーボン樽を中心とした熟成により、蜂蜜と洋梨、微かなオークのタンニン、そして余韻にふわりと桜餅を思わせる和の甘香が漂うのが山桜らしいところです。50%のボトリングは香味の密度と飲みやすさの好バランス。東北最古のウイスキー免許を持つ蔵が、260年の歴史の先に見据える未来を、今年も一本の瓶で報告してくれている——そんな趣のあるモルトです。ハイボールにすれば麦の香ばしさが立ち、当店の炊き立てご飯や和の肴とも見事に調和します。

新潟県

  • 新潟亀田蒸溜所 NEW POT PEATED
    新潟亀田蒸溜所(新潟県新潟市江南区)|60%

    米どころ新潟の亀田——柿の種で知られる町の工業団地の一角に、2021年、小さなウイスキー蒸溜所が誕生しました。新潟亀田蒸溜所は「小さいからこそできる、手仕事のウイスキー」を掲げ、仕込みから樽詰めまで少人数のクラフトマンシップで貫く注目の造り手です。本作はそのピーテッド麦芽のニューポット、すなわち樽熟成を経る前の蒸溜したての原酒。ウイスキーの「赤ちゃん」であるニューポットは、蒸溜所の素顔と技術が包み隠さず現れる、いわば履歴書のような存在です。グラスからは煙たさの奥に麦の甘い香りと洋梨のようなフルーティさが立ち、60%の度数を感じさせない滑らかな飲み口に、この蒸溜所の丁寧な造りが見て取れます。数年後に熟成を経たシングルモルトと飲み比べれば、樽が果たす仕事の大きさに驚くはず。ウイスキーが生まれる瞬間に立ち会う——そんな体験のできる一杯です。当店のウイスキー鰻(亀田蒸溜所のモルト粕で育った鰻)との蔵元ペアリングもぜひ。

  • 新潟亀田蒸溜所 NEWBORN WINE CASK MICHIBIKI For WM 2023
    新潟亀田蒸溜所(新潟県新潟市江南区)|59%

    「MICHIBIKI(導き)」——熟成3年に満たない若き原酒が、ワイン樽の中でどこへ導かれていくのか。その途上の姿を切り取った、新潟亀田蒸溜所のニューボーンです。ワイン樽熟成は、赤い果実やタンニンの複雑なニュアンスを原酒に与える一方、樽に飲まれて個性を失う危険も孕む、造り手の感性が問われる手法。本作では、若くクリーンな亀田原酒の麦芽の甘みに、ベリーや葡萄の皮を思わせる艶やかな酸、ほのかな渋みが寄り添い、まるで赤い薄衣をまとったような色気が生まれています。59%の度数がもたらす凝縮感は、少量の加水でふわりとほどけ、イチゴのコンフィチュールのような甘酸っぱさへ。限定リリースゆえ市場ではほぼ見かけない一本を、グラスでお試しいただけます。完成形ではなく、生成の途中を味わう——クラフトウイスキーの時代だからこそ許される、未完の美学がここにあります。

  • 新潟亀田蒸溜所 OHTANI SINGLE MALT「Piscas」(The Zodiac Sign No.1)
    新潟亀田蒸溜所(新潟県新潟市江南区)|50%

    新潟亀田蒸溜所が満を持して放つシングルモルト「OHTANI」の、黄道十二星座を冠した連作「The Zodiac Sign」第1弾・魚座(Pisces)。夜空の星座を一つずつ巡るように、リリースごとに樽構成と個性を変えながら蒸溜所の成長を刻んでいく、物語性豊かなシリーズの幕開けです。記念すべき第一作は、亀田の原酒が持つ柔らかな麦芽の甘みとフルーティさを素直に引き出した構成。青リンゴや白桃の瑞々しい果実香に、バニラと蜂蜜の優しい甘み、余韻には微かな塩気とオークのスパイスが揺らめきます。50%のボトリングながら口当たりは穏やかで、シングルモルト初心者の方にも自信を持ってお薦めできる親しみやすさ。米どころ新潟の小さな蒸溜所が、世界へ向けて描き始めた星図の起点を、ぜひ時系列で「Capricorn」「Gemini」と飲み比べてください。連作ならではの、成長の物語が舌の上に広がります。

  • 新潟亀田蒸溜所 OHTANI SINGLE MALT「Capricorn」(The Zodiac Sign No.2)
    新潟亀田蒸溜所(新潟県新潟市江南区)|50%

    星座シリーズ第2弾・山羊座(Capricorn)。堅実に山を登る山羊の星座の名を得た本作は、第1弾からわずかの間に蒸溜所の原酒が見せた成長を、はっきりと感じさせるボトルです。ノンチルフィルタード——冷却濾過を行わないボトリングにより、香味成分やオイリーな質感を余すことなく瓶に閉じ込めており、グラスの中でとろりとした厚みのあるテクスチャーが楽しめます。香りは熟した梨と麦芽キャンディ、微かなナッツ。口に含むと蜂蜜の甘みがゆっくりと広がり、中盤からオークのスパイスと仄かなビター感が輪郭を描いて、長くドライな余韻へと続きます。加水すると乳白色に濁るのはノンチル製法の証であり、香味の豊かさの裏付けでもあります。同じ50%でもPiscasとは異なる骨格の力強さ——山羊座の名に恥じぬ、一歩ずつ高みへ向かう蒸溜所の足音が聞こえるような一本です。

  • 新潟亀田蒸溜所 OHTANI SINGLE MALT「Gemini」(The Zodiac Sign No.3)
    新潟亀田蒸溜所(新潟県新潟市江南区)|50%

    星座シリーズ第3弾・双子座(Gemini)。二つの星が寄り添う双子座の名の通り、本作はバーボン樽で育った原酒にミズナラ樽でのフィニッシュを施した、二つの樽の対話から生まれたシングルモルトです。バーボン樽がもたらすバニラとココナッツの甘い骨格に、日本固有の水楢(ミズナラ)が纏わせる伽羅・白檀のオリエンタルな香気——西洋と東洋、二つの個性が一つのグラスの中で手を取り合う様は、まさにジェミニの名にふさわしい構成美。香りは寺社の香のような神秘性を帯び、味わいは麦芽の甘みにウッディなスパイスと微かなココアが重なり、余韻にはミズナラ特有の湿った森の気配が長く残ります。世界中の愛好家が熱狂する「ミズナラ樽」の魔法を、新潟の若い蒸溜所がどう解釈したか——その答えを確かめに来てください。星座シリーズ三部作の飲み比べは、当店ならではの楽しみ方です。

  • 新潟亀田蒸溜所 OHTANI WHISKY NAGOYA EDITION
    新潟亀田蒸溜所(新潟県新潟市江南区)|55%

    酒販店やエリアに向けた限定ボトルは、クラフト蒸溜所が特定の土地への感謝と挑戦を込める「手紙」のような存在です。本作は名古屋に向けて仕立てられたエディションで、通常リリースより高めの55%でボトリング。凝縮感のある骨太な仕上がりが、味の濃い食文化を持つ名古屋への返歌のようで微笑ましくもあります。香りは焦がしカラメルと熟した果実、麦芽の香ばしさ。口に含むと55%の力強さとともに、蜂蜜とオークスパイス、微かなビターチョコレートが押し寄せ、どっしりとした余韻へと続きます。ロックにすれば角が取れてカラメルの甘みが際立ち、ハイボールでは香ばしさが泡とともに弾ける——飲み方で大きく表情を変える懐の深さも魅力です。限定流通ゆえ東京のバーで出会える機会は稀。新潟の蒸溜所が名古屋に宛てた手紙を、東麻布で横から読ませてもらう——そんな密かな愉しみのある一本です。

  • 吉田電材蒸留所 GRAIN WHISKY NEW POT
    吉田電材蒸留所(新潟県村上市)|60%

    電材メーカーがウイスキーを造る——一見突飛なこの挑戦こそ、日本クラフトウイスキー百花繚乱の時代を象徴する物語です。新潟県村上市の吉田電材工業が設立した吉田電材蒸留所は、多くの蒸溜所がモルトウイスキーに向かう中、あえて「グレーンウイスキー専門」という茨の道を選びました。デントコーン(トウモロコシ)主体のマッシュビルをダブラーで蒸溜する製法は、いわばアメリカン・バーボンの様式。日本のクラフト規模でこれを本格的に行う造り手は極めて稀で、その希少性は年々高まっています。本作は樽入れ前のニューポット。グラスからはポップコーンのような香ばしさ、トウモロコシ由来のふくよかな甘み、バナナを思わせるエステル香が立ち上り、60%とは思えぬ丸い口当たりに驚かされます。ブレンデッドの脇役と思われがちなグレーンの、主役級の個性をぜひ体感してください。数年後のバーボン樽熟成が今から待ち遠しい原酒です。

  • 魚沼 SINGLE GRAIN RICE WHISKY 2023 LIMITED HAKKAISAN
    八海醸造(新潟県南魚沼市)|46%

    「八海山」——日本酒好きなら知らぬ者のない魚沼の名門が、米の国の造り手として辿り着いた答えが、このライスウイスキーです。原料は米、そして麹。日本酒と焼酎の伝統技術を土台に、蒸溜した原酒を樽でじっくりと熟成させることで、大麦麦芽のウイスキーとは似て非なる、日本にしか生み得ない琥珀の酒が誕生しました。2021年に「ジャパニーズウイスキー」の表示基準が定められた今、その枠の外側で「日本の風土をいかに一杯に映すか」を問い直す試みとして、ライスウイスキーは世界から熱い視線を集めています。グラスからは吟醸香を思わせる華やかな果実香、蒸した米の柔らかな甘み、樽由来のバニラが三位一体となって立ち上り、口当たりは絹のように滑らか。46%ながら驚くほど優しく、余韻には微かな麹の旨みが漂います。豪雪の魚沼が育てた米の蒸溜酒——日本酒ファンにもウイスキーファンにも、新しい扉を開く一本です。

  • SHINOBU蒸留所 SHINOBU MIZUNARA JAPANESE OAK FINISH 10y
    新潟県柏崎市|43%

    「忍」の一字を冠したSHINOBUウイスキーは、新潟県柏崎の地で、忍耐と静謐を美学とする造りを続けるブランドです。本作は10年の歳月を経たモルトに、日本固有の水楢(ミズナラ)樽でのフィニッシュを施した一本。ミズナラは液漏れしやすく加工が難しいため、かつては「扱いにくい厄介者」とされた樽材ですが、長い年月を経ると伽羅や白檀、寺社の香を想わせる神秘的な香りを放つことが判明し、今や世界中の愛好家が「ミズナラ」の名に熱狂する日本の宝となりました。10年熟成の落ち着いた原酒に、そのオリエンタルな香気が上品に重なる本作は、まさに「忍」の名にふさわしい奥ゆかしい味わい。蜂蜜とドライフルーツの甘み、ほのかなココナッツ、そして余韻に漂うお香のニュアンスが、静かに、しかし長く続きます。43%の穏やかな度数はウイスキー初心者にも優しく、ミズナラ入門としても最適。食後の一杯に、心を鎮める時間をどうぞ。

北陸・関東

富山県

  • 三郎丸V THE HIEROPHANT
    若鶴酒造・三郎丸蒸留所(富山県砺波市)|48%

    北陸で唯一、戦後まもなくからウイスキーの火を守り続けてきた三郎丸蒸留所。文久二年(1862年)創業の若鶴酒造が営むこの蒸溜所は、五代目・稲垣貴彦氏の手により2017年、クラウドファンディングで全国のファンの支援を集めて甦りました。象徴は、高岡銅器四百年の鋳造技術で生まれた世界初の鋳造製ポットスチル「ZEMON」。梵鐘を造る技でウイスキーを蒸溜するという発想は、まさに富山の風土そのものです。本作はタロットの大アルカナを一枚ずつ辿る年次シリーズの第六作「V=教皇(THE HIEROPHANT)」。伝統と教義を司る教皇の名を戴くにふさわしく、三郎丸の代名詞であるヘビーピートの重厚な燻香に、熟成を重ねた原酒の落ち着きが加わり、正露丸的とも評される薬品香の奥から蜂蜜と柑橘の甘みが厳かに立ち上ります。国内屈指のスモーキーモルトを、シリーズの物語とともに。アイラ好きにこそ試していただきたい富山の煙です。

  • 三郎丸V MITSUKOSHI ISETAN EXCLUSIVE BOTTLE
    若鶴酒造・三郎丸蒸留所(富山県砺波市)|60%

    三越伊勢丹のためだけに仕立てられた、三郎丸Vの限定エクスクルーシブボトル。百貨店限定ボトルは、蒸溜所が最も自信のある樽を選び抜いて世に問う「晴れ着」のような存在ですが、本作は60%という樽出しに迫る度数でのボトリングがその本気を物語ります。加水で化粧をせず、原酒の素顔のまま——グラスに注げば、三郎丸のアイデンティティであるピートスモークが濃密に立ちのぼり、その煙の幕の向こうから、オレンジピール、黒糖、潮の気配、微かな薬草のニュアンスが次々と現れます。口中では60%の熱量とともに香味が爆ぜ、長いスモーキーフィニッシュへ。一滴ずつの加水で表情が刻々と変わるさまは、まさにカスクストレングスの醍醐味です。流通が限られ、バーで出会うこと自体が稀な一本。通常のTHE HIEROPHANTと並べて、樽と度数の違いがもたらす世界の差を体感していただくのが、当店流の贅沢な飲み方です。

  • 三郎丸蒸留所 THE SUN FINAL
    若鶴酒造・三郎丸蒸留所(富山県砺波市)|48%

    「FINAL」——最終という言葉には、造り手の万感が籠もります。本作は三郎丸蒸留所が手がけたシリーズの掉尾を飾る一本であり、改修前後の原酒が織りなす時代の記憶を締めくくる、記念碑的なボトルです。三郎丸の歩みは、日本のクラフトウイスキー史の縮図そのものでした。戦後の食糧難の時代に日本酒の代わりとしてウイスキー製造を始め、大手の影で細々と蒸溜を続け、老朽化した設備が限界を迎えたとき、全国のファンの支援がこの蒸溜所を救った——その物語の全てが、この琥珀色に溶け込んでいます。味わいは、円熟のピートスモークに麦芽の香ばしさ、ドライフルーツの甘み、そして余韻にほろ苦いカカオ。48%の均整のとれた骨格が、シリーズの終幕にふさわしい風格を湛えています。一つの時代の終わりは、次の時代の始まりでもある。三郎丸の過去と未来が交差する一杯を、どうぞゆっくりと。

  • 北陸のウイスキー SUN SHINE PREMIUM
    若鶴酒造・三郎丸蒸留所(富山県砺波市)|40%

    「サンシャインウイスキー」の誕生は1953年。戦後の焼け跡から立ち上がる日本に「太陽の光のような明るさを届けたい」と、公募によって名付けられた、北陸のウイスキーの原点ともいえるブランドです。以来七十年、富山の人々の晩酌とともにあり続けたこの銘柄は、地元では「サンシャイン」の愛称で親しまれる、いわば富山の生活文化の一部。本作PREMIUMは、その歴史あるブレンドを現代の三郎丸蒸留所の技術で磨き上げた上級版です。40%の穏やかな度数に、ほのかなピートスモーク、カラメルと麦芽の素朴な甘み、余韻には懐かしさすら覚える香ばしさが漂います。派手さはありません。しかし、限定品が数万円で取引される昨今のウイスキーブームの喧騒から離れて、七十年間変わらず食卓に寄り添ってきた酒の誠実さに触れるとき、ウイスキーとは本来こういうものだったと思い出させてくれます。ハイボールで気取らずに、一杯目からどうぞ。

茨城県

  • 日の丸ウイスキー 2025 Edition
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|48%

    文政六年(1823年)創業、二百年の歴史を持つ茨城の木内酒造は、日本酒「菊盛」に始まり、クラフトビール「常陸野ネストビール」で世界を席巻し、そして2020年、筑波山を望む石岡市八郷の地にウイスキー蒸溜所を開きました。日本酒・ビール・焼酎・ジン——あらゆる醸造と蒸溜を知り尽くした蔵が最後に選んだ挑戦がウイスキーだったという事実に、この蔵の飽くなき探究心が表れています。「日の丸ウイスキー」の名は、かつて茨城で造られていたウイスキーの名跡を現代に甦らせたもの。本作2025 Editionは、八郷蒸溜所の現在地を示す年次エディションで、バーボン樽を軸にした熟成から、洋梨と蜂蜜、麦芽ビスケットの香ばしさ、微かな潮気が立ち上ります。48%のしっかりした骨格ながら口当たりは滑らかで、若い蒸溜所とは思えぬ完成度。二百年の発酵技術がウイスキーに注がれるとどうなるか——その答えの最新版です。

  • 日の丸ウイスキー KOME
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|48%

    その名も「KOME」——米。二百年にわたり米と向き合ってきた日本酒蔵・木内酒造だからこそ造り得た、国産米原料のライスウイスキーです。大麦麦芽ではなく米を原料とする蒸溜酒を樽熟成させるこの様式は、スコッチの伝統からは生まれない、日本の風土と技術の必然から生まれた新しい琥珀。麹と発酵を熟知した蔵の手にかかると、米はこれほど豊かな蒸溜酒になるのかと驚かされます。グラスからは吟醸酒を思わせる白い花とバナナの華やかな香り、蒸米の柔らかな甘み、樽由来のバニラが調和して立ち上り、口中では絹のような滑らかさとともに、米ならではのふくよかな旨みが広がります。余韻は上品で、微かに麹の気配。ウイスキーの新しい地平として海外のコンペティションでも米原料の日本産ウイスキーへの注目は年々高まっており、インバウンドのお客様に日本らしさをお伝えする一杯としても最適です。和食との相性は言わずもがな。当店の炊き立てご飯と合わせる「米づくし」もどうぞ。

  • 日の丸ウイスキー CRAFT CASK ISLAY CASK FINISH
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|48%

    スコットランド・アイラ島——ピーテッドモルトの聖地で使われた樽を茨城へ運び、八郷の原酒に眠りの続きを与えたカスクフィニッシュです。アイラ樽フィニッシュの妙は、原酒自体を燻さずとも、樽が記憶するスモークとヨードの気配が原酒にうっすらと移り香として宿ること。強烈なピートが苦手な方でも心地よく楽しめる、いわば「煙の残り香」のウイスキーになります。本作では、木内酒造らしいクリーンで果実味豊かな原酒に、潮風と焚き火の遠い記憶のようなスモークがヴェールとなってまとわり、蜂蜜と青リンゴの甘酸っぱさ、微かな薬品香、塩気のあるフィニッシュへと続きます。茨城の里山とアイラ島の海辺、二つの風景が一つのグラスの中で溶け合う面白さは、カスクフィニッシュという技法の醍醐味そのもの。アイラモルト愛好家には入口の違う煙として、ピート初心者には優しい導入として、双方に薦められる巧みな一本です。

  • 日の丸ウイスキー CRAFT CASK Matured in 3 different casks ELEGANT SHERRY
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|48%

    三種の異なる樽で熟成させた原酒を掛け合わせ、「エレガント・シェリー」の名の通り、シェリー樽の艶やかさを主旋律に仕立てた意欲作です。シェリー樽はドライフルーツやカカオの濃厚な甘みをもたらす反面、単独では重くなりがちな樽。そこに他の樽の原酒を重ねることで、香味に奥行きと軽やかさを同時に与える——ブレンドの妙技が光る構成です。グラスに注ぐと、レーズンと黒糖、熟したプラムの豊潤な香りが広がり、口に含めばシェリー由来の甘美なコクの中に、バニラの柔らかさとオークの締まったスパイスが折り重なります。余韻はビターチョコレートとナッツ。48%の度数が甘さに輪郭を与え、名前の通りどこまでもエレガントに着地します。ビール造りで鍛えた酵母と発酵の知見が、ウイスキーの複雑な樽構成にも活きている——木内酒造の総合力を感じる一本。食後のチョコレートや、当店の干し芋と合わせる茨城ペアリングもおすすめです。

  • 日の丸ウイスキー 2026 Edition
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|48%

    年次エディションとは、蒸溜所の成長を刻む年輪です。2025年版と並べて味わえば、わずか一年の間に原酒の熟成が深まり、ブレンドの引き出しが増えていく様子が、言葉ではなく舌で理解できます。本作2026 Editionは、八郷蒸溜所の樽庫が充実期に入ったことを感じさせる仕上がりで、複数樽の原酒が織りなす香味のレイヤーが一段と厚くなりました。熟した洋梨とアプリコット、蜂蜜、麦芽の香ばしさに、樽由来のほのかなスパイスとウッディネスが加わり、余韻には柑橘のビターな爽やかさが残ります。突出した個性で驚かせるのではなく、全体の調和で飲ませる——それは長い歴史を持つ蔵ならではの、成熟した美意識でしょう。日本のクラフトウイスキーの「現在進行形」を毎年定点観測できるのは、この時代に立ち会う私たちの特権です。まずはストレートで、次にハイボールで。二百年の蔵の一年分の歩みを、二杯で味わってください。

  • 日の丸ウイスキー HITACHINO BEER CASK For MITSUKOSHI ISETAN
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|60%

    世界五十カ国以上で愛される「常陸野ネストビール」——あのフクロウのラベルのビールを熟成させた樽で、自社のウイスキーをさらに眠らせる。ビールとウイスキーの両方を世界水準で造る木内酒造にしか成し得ない、まさに自家薬籠中のカスクフィニッシュです。ビール樽熟成は近年世界のウイスキーシーンで注目される手法ですが、多くは他社の樽を調達するもの。原酒も樽の中身も自社で完結する本作は、いわば純血の「木内酒造サーキュラーウイスキー」であり、三越伊勢丹限定という特別な装いで世に出ました。60%の力強い酒躯から、ホップ由来の柑橘とハーブの爽やかな高音、モルトの香ばしい中音、カラメルとバニラの甘い低音が三重奏となって響き、余韻には微かなビールのビター感が心地よく残ります。ビール好きにもウイスキー好きにも新鮮な驚きを与える一本。常陸野ネストを一杯挟んでから飲む「親子飲み」も、当店ならではの楽しみ方です。

  • 日の丸ウイスキー Signature 1823 SMALL BATCH LIMITED EDITION
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|48%

    「1823」は木内酒造の創業年。二百年の歴史をそのまま冠したこのシグネチャーボトルは、世界最大級の酒類コンペティション「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション2025」で最高賞ダブルゴールドに輝いた栄誉を記念する、スモールバッチの限定エディションです。バーボン樽、ラム樽、シェリー樽——三系統の樽で熟成した原酒を少量ずつ厳選して掛け合わせる構成は、それぞれの樽の美点だけを掬い取る繊細な仕事。バーボン樽のバニラ、ラム樽の黒糖とトロピカルフルーツ、シェリー樽のレーズンとカカオが、喧嘩することなく一つの旋律にまとまる様は見事というほかありません。口当たりは艶やかで、甘み・スパイス・ビターの移ろいが長い余韻まで途切れず続きます。世界が認めた茨城の味を、記念ボトルで。江戸時代から続く蔵の名が、令和の世界コンペで刻まれた瞬間の味わいを、ぜひグラスで確かめてください。

  • 日の丸ウイスキー チェリーブランデー CASK 8106
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|48%

    原料は国産米——つまりライスウイスキーの原酒を、バーボン樽で四年育てたのち、チェリーブランデー樽で仕上げたシングルカスク(樽番号C-8106)です。2020年5月蒸溜、冷却濾過を行わないノンチルフィルタードでのボトリング。米の蒸溜酒とさくらんぼの蒸溜酒の樽という、日本とヨーロッパの果実酒文化が茨城で邂逅した、遊び心と実験精神に満ちた一本です。グラスからはチェリーの赤い果実香とアーモンドのような種子の香ばしさが真っ先に立ち、その奥から米原酒特有の柔らかな甘みと吟醸香めいた華やぎが追いかけてきます。口中では甘酸っぱいチェリーコンポートの風味が広がり、余韻はマラスキーノを想わせる上品なビターへ。一樽限りのシングルカスクゆえ、この味わいは瓶が空けば二度と再現されません。ウイスキーの多様性が爆発する今この時代の、一期一会を象徴するボトルです。食後酒として、チョコレートや明太子との意外な組み合わせもお試しを。

  • 日の丸ウイスキー ワインカスクフィニッシュ No.4181
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|48%

    2020年9月に蒸溜された原酒が、バーボン樽、さくら樽、そしてワイン樽——三つの樽を渡り歩いて四年。樽番号4181のシングルカスクとして、ノンチルフィルタードで瓶詰めされた旅の記録です。バーボン樽で骨格を作り、日本固有のさくら樽で和の香りをまとわせ、最後にワイン樽で艶と酸を仕上げる三段熟成は、樽ごとの移り香を精密に計算した職人仕事。グラスに注げば、赤ワインを思わせるベリーと葡萄皮の香りに、桜餅のような和の甘香が重なる、他では嗅いだことのない香りの風景が広がります。味わいはラズベリーの甘酸っぱさ、麦芽の甘み、タンニンの心地よい渋みが順に現れ、余韻には桜の気配が静かに揺れる——飲むたびに日本の春が脳裏をよぎる一本です。一樽限り、売り切れ御免のシングルカスク。ワイン好きの方の「最初のウイスキー」としても、これ以上ない入口になるはずです。当店の赤ワインと飲み比べるのも一興。

  • 日の丸ウイスキー 常陸野 シェリーカスク 2026 Edition
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|48%

    「常陸野」の名を冠し、茨城県産大麦を50%以上使用した、土地の恵みへの回帰を掲げるシリーズの2026年版(BATCH 02・1,200本限定)。ウイスキーのグローバル化が進むほど、原料の産地という原点が問われる——その問いに木内酒造は、地元・常陸野の大麦で答えました。米作りから酒造りまで、二百年にわたり茨城の農と共に歩んできた蔵だからこそ、この選択には確かな必然があります。熟成はシェリー樽。常陸野の大麦が持つ香ばしくふくよかな麦芽風味に、シェリー樽由来のレーズン、いちじく、カカオの甘美な衣が重なり、48%の骨格がそれを凛と支えます。余韻はドライフルーツの甘みとオークのスパイスが長く続き、テロワールという言葉の重みを静かに伝えてくれます。1,200本という限定数は、地元産大麦の収量が決める正直な数字。茨城の畑の一年分が、この琥珀に詰まっています。土地の酒を、土地の物語とともに。

  • TAKAZO PURE MALT WHISKY REBORN MIZUNARA CASK FINISH
    明利酒類(茨城県水戸市)|46%

    水戸の明利酒類は、梅酒の最高峰と名高い「百年梅酒」で知られる茨城の名門です。日本酒用酵母「明利小川酵母」を生んだ研究開発力を持つこの蔵が、ウイスキーの世界に掲げるブランドが「TAKAZO(高藏)」。「REBORN」の名は、蔵に眠っていたモルト原酒に新たな樽で再び生命を吹き込む、再生の思想を表しています。本作はピュアモルトを日本固有の水楢(ミズナラ)樽でフィニッシュした一本。ミズナラが長い歳月の果てに放つ、伽羅や白檀、寺社の香を想わせるオリエンタルな香気が、麦芽の甘みの上に上品な和の気配として漂います。蜂蜜とドライフルーツ、微かなココナッツ、そして余韻に残るお香のニュアンス——46%の穏やかな度数も相まって、食後にゆったりと傾けたくなる瞑想的な味わいです。梅酒の名手が手がけるウイスキーという意外性も、酒販の歴史が長い茨城の蔵らしい懐の深さ。水戸の新しい名物として、注目のブランドです。

  • TAKAZO PURE MALT WHISKY REBORN PLUM WINE CASK FINISH
    明利酒類(茨城県水戸市)|46%

    梅酒「百年梅酒」を熟成させた樽で、ピュアモルトウイスキーを仕上げる——梅酒日本一に輝いた蔵にしか許されない、究極の自家製カスクフィニッシュです。ウイスキーの梅酒樽フィニッシュは世界的にも極めて珍しく、しかも樽の前身が全国梅酒大会日本一の銘品とくれば、その香味の説得力は格別。ミズナラ版と対をなす「REBORN」シリーズの、和の果実酒文化を象徴する一本です。グラスに近づけただけで、熟した梅と杏の甘酸っぱい香りがふわりと立ち、麦芽の甘みと溶け合ってどこか懐かしい記憶を呼び覚まします。口に含めば、蜂蜜梅のようなまろやかな酸味、黒糖の甘み、モルトの香ばしさが三層に重なり、余韻は梅の名残りとオークのビターが心地よく引き締めます。ウイスキーが苦手な方やハイボールから先へ進みたい方への「架け橋」としても優秀で、ロックで和食に合わせれば食中酒にもなる万能選手。日本の梅文化とスコッチの伝統の、幸福な結婚です。

栃木県

  • 哲 / TETSUOYAMA Edition 2025 THE FIRST
    西堀酒造・小山蒸溜所(栃木県小山市)|52%

    明治五年(1872年)創業、「門外不出」の銘で知られる栃木県小山市の西堀酒造が、日光街道の宿場町の蔵で始めたウイスキー造り——その記念すべきファーストリリースが、この「哲 / TETSUOYAMA」です。銘の「哲」には、流行に流されず自らの哲学で酒を造るという、百五十年の蔵の矜持が込められています。最大の特徴は、清酒酵母100%で醸されたモルト原酒であること。日本酒由来の繊細さが、白桃や和梨を思わせる柔らかな果実感となって現れ、そこへバーボン、シェリーを含む五種の樽熟成が重なって、奥行きのある複雑な香味へと昇華されています。52%の骨格を持ちながら静かに深く、グラスの中で時間とともに輪郭が変化していく様は、一冊の文学作品を読むよう。「THE FIRST」の名の通り、これは長い物語の第一章。数十年後、「あの最初の一本を飲んだ」と語れる日が来るかもしれません。歴史の目撃者になる一杯を、栃木の新しい蒸溜所から。

埼玉県

  • イチローズモルト ダブルディスティラリーズ
    ベンチャーウイスキー・秩父蒸溜所(埼玉県秩父市)|50.5%

    日本のクラフトウイスキーの歴史は、肥土伊知郎という一人の男を抜きには語れません。祖父の代から続いた羽生蒸溜所が2000年に操業を停止し、貯蔵原酒が廃棄の危機に瀕したとき、彼は四百樽を救い出し、2008年、秩父の地に自らの蒸溜所を興しました。世界的オークションで一億円を超える「カードシリーズ」の伝説も、すべてはこの救出劇から始まっています。本作「ダブルディスティラリーズ」は、その物語を一本に封じたボトル——失われた羽生蒸溜所の原酒と、新生・秩父蒸溜所の原酒をヴァッティングした、過去と現在の対話です。羽生の熟成香が醸すドライフルーツと蜜の深み、秩父の若い原酒が放つ華やかな果実味とミズナラの気配が溶け合い、50.5%の骨格の中で見事に調和します。閉じた蒸溜所の魂が、新しい蒸溜所の中で生き続ける——ウイスキーという酒の時間の芸術性を、これほど雄弁に語る一本はありません。

  • イチローズモルト MWR ミズナラウッドリザーブ
    ベンチャーウイスキー・秩父蒸溜所(埼玉県秩父市)|46%

    「MWR」=ミズナラ・ウッド・リザーブ。厳選したモルト原酒をヴァッティングし、日本固有の水楢(ミズナラ)樽で後熟させた、イチローズモルトの看板シリーズのひとつです。ミズナラは液漏れしやすく歩留まりも悪い、樽職人泣かせの木材。しかし長い熟成の果てに、伽羅や白檀を想わせる神秘的な香気を原酒に授けることが知られ、今や「MIZUNARA」は世界のウイスキー用語となりました。肥土伊知郎氏は秩父に自前の製樽工場まで構え、このミズナラと真正面から向き合い続けています。グラスからは蜂蜜と熟した柿、そして寺社の香のようなオリエンタルな気配。口中では柔らかな麦芽の甘みにココナッツと微かなスパイスが重なり、余韻には森の湿った空気のような静けさが長く漂います。46%の穏やかさも含め、日本人の味覚の琴線に触れるよう設計され尽くした一本。世界が熱狂する「ジャパニーズ・ミズナラ」の教科書として、まず味わうべき銘柄です。

  • イチローズモルト WWR ワインウッドリザーブ
    ベンチャーウイスキー・秩父蒸溜所(埼玉県秩父市)|46%

    「WWR」=ワイン・ウッド・リザーブ。赤ワインを熟成させた樽でモルト原酒を後熟させた、MWRと双璧をなすイチローズモルトの定番ヴァッテッドモルトです。ワイン樽後熟の要諦は、葡萄由来の果実味とタンニンを、モルトの甘みを壊さぬ絶妙な深さで纏わせること。浅ければ物足りず、深ければ樽に飲まれる——その匙加減にこそ、羽生の時代から樽と対話し続けてきたブレンダー肥土伊知郎氏の真骨頂があります。グラスに注ぐと、ラズベリーやいちごを想わせる赤い果実の香りが華やかに立ち、麦芽の蜂蜜的な甘みと美しく重なります。口当たりは艶やかで、ベリーの甘酸っぱさの後から、ワイン樽由来の上品な渋みが輪郭を描き、ロゼワインのような余韻へと続きます。ワイン愛好家がウイスキーの扉を開く一本として、これ以上の適任はいません。当店のボルドーやピノ・ノワールと並べて、「葡萄と麦の対話」を楽しむのも一興です。

  • イチローズモルト&グレーン ワールドブレンデッドウイスキー(ホワイトラベル)
    ベンチャーウイスキー・秩父蒸溜所(埼玉県秩父市)|46%

    世界五大産地——スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、そして日本。それぞれの地で生まれたモルトとグレーンの原酒を、秩父の地で一つに束ねた「ワールドブレンデッド」です。国境で酒を区切るのではなく、世界中の良い原酒を秩父のブレンド技術で最良の一杯に仕立てる——このホワイトラベルには、ウイスキーの未来に対する肥土伊知郎氏の開かれた思想が表れています。そして特筆すべきはその実力に対する価格の良心。世界的プレミアがつくイチローズモルトの名を冠しながら、日常のハイボールにも惜しみなく使える設計で、多くのバーテンダーが「最も信頼するハウスウイスキー」に挙げる銘柄です。香りは蜂蜜と洋梨、オレンジ。口中は柔らかな甘みと軽快なスパイスが心地よく、46%とは思えぬ飲みやすさで余韻まで綺麗に流れます。ストレートよし、ロックよし、ハイボールは天下一品。イチローズ入門の最初の一杯に、迷わずこれを。

  • イチローズモルト&グレーン クラシカルエディション
    ベンチャーウイスキー・秩父蒸溜所(埼玉県秩父市)|48%

    ホワイトラベルの世界観をさらに深化させた、ワールドブレンデッドの上位エディション。「クラシカル」の名が示すのは、かつての良き時代のブレンデッドウイスキー——長期熟成原酒を惜しみなく使い、シェリー樽の甘美と麦芽の厚みが響き合っていた、あの古典的な味わいへのオマージュです。構成原酒には熟成を重ねたモルトが厚めに配され、48%のボトリングと相まって、ホワイトラベルより一段深く、重心の低い飲み口に仕上がっています。グラスからはレーズンとカラメル、熟した林檎、樽の香ばしさが幾重にも立ち、口中ではシェリー樽由来の甘みとオークのスパイス、ビターカカオが古典的な均衡で溶け合います。余韻は長く、どこか昭和のバーの空気を思わせる懐かしさ——当店の昭和オールドボトルと飲み比べれば、「クラシック」という言葉の意味が立体的に見えてくるはずです。ゆっくりと夜が更けていく時間帯に、ロックで傾けたい一本です。

千葉県

  • 房総ウイスキー
    須藤本家(千葉県君津市)|40%

    東京湾を挟んで都心からわずか一時間、房総半島の君津市で、酒蔵・須藤本家が造るウイスキーです。温暖な房総の気候は、冷涼なスコットランドとは対照的に熟成の進みが早く、樽と原酒の対話が濃密に進む——いわば「時間が速く流れる熟成庫」。この気候特性を活かし、比較的短い熟成年数でも豊かな樽香をまとった、まろやかな味わいを実現しています。グラスからはバニラとカラメル、洋梨の柔らかな香り。口当たりは40%らしく軽やかで、麦芽の甘みと微かなオークのスパイスが素直に広がり、すっと消えていく綺麗な余韻が印象的です。肩肘張らずに楽しめる親しみやすさは、地元の食堂や居酒屋で愛される「房総の地ウイスキー」としての立ち位置ゆえ。派手な限定ボトルの喧騒とは無縁の、のどかな半島の空気がそのまま瓶に詰まっています。ハイボールにして、当店の干し芋や海苔佃煮と——房総の海と畑を思い浮かべながらどうぞ。同蔵はラム(BOSO RHUM)も手がける、千葉の面白い造り手です。

中部・近畿・中国・四国

静岡県

  • 井川蒸溜所 NEW BORN 2024 Sherry Butt
    十山株式会社・井川蒸溜所(静岡県静岡市井川)|60%

    南アルプスの懐深く、標高およそ1,200メートル——日本で最も高い場所にあるウイスキー蒸溜所、それが井川蒸溜所です。運営するのは特種東海製紙グループの十山株式会社。広大な社有林の奥、一般車両では容易に辿り着けない山中で、南アルプスの雪解け水を仕込みに使い、森と共にウイスキーを育てるという、他のどの蒸溜所とも違う立地の物語を持っています。本作は熟成途上の原酒をシェリーバット(大樽)から汲み出したニューボーン。60%の若々しい生命力の中に、シェリー樽由来のレーズンと黒糖の甘みが早くも艶を帯び、標高がもたらす冷涼な熟成環境の静けさが、原酒の輪郭を美しく保っています。山の上で眠る樽は、麓より遅く、しかし深く育つ——その途中経過を味わえるのは今だけです。日本一高い場所で生まれた一杯を、東京タワーの麓・東麻布で。

  • 井川蒸溜所 Flora 2024 BOURBON BARREL
    十山株式会社・井川蒸溜所(静岡県静岡市井川)|53%

    「Flora(フローラ)」——ラテン語で植物、花の女神。井川蒸溜所が蒸溜所を取り囲む南アルプスの動植物に捧げる連作のうち、森の植物たちに名を借りた一本です。井川の森は、ブナやミズナラが茂り、高山植物が季節ごとに表情を変える生態系の宝庫。その森の空気の中で呼吸するように熟成された原酒は、どこか青々とした瑞々しさを宿します。バーボンバレル熟成の本作は、バニラと蜂蜜の甘い骨格に、白い花、若葉、青リンゴを思わせる爽やかな香気が重なり、53%とは思えない透明感のある飲み口が印象的。余韻には森の朝の冷気のような、すっと引いていく清涼感が残ります。動物たちに捧げた対作「Fauna」と飲み比べれば、同じ森の二つの顔——植物の静と動物の動——が、樽の違いとともに立ち上がってくるはずです。標高1,200メートルの森を、グラスの中に。

  • 井川蒸溜所 Fauna 2026 BOURBON BARREL, SHERRY CASK
    十山株式会社・井川蒸溜所(静岡県静岡市井川)|50%

    「Fauna(ファウナ)」は動物相——井川の森を駆けるシカやカモシカ、鳥たちに捧げられた、「Flora」と対をなす一本です。植物の名を持つFloraがバーボン樽の透明感で魅せたのに対し、こちらはバーボンバレルとシェリーカスク、二種の樽をブレンドした構成。動物たちの体温を思わせる、ひとまわり豊かで肉感的な味わいに仕上がっています。グラスからは熟した林檎とレーズン、蜂蜜、微かなナッツの香ばしさ。口に含むとバーボン樽のバニラとシェリー樽のドライフルーツが折り重なり、50%の均整の取れた骨格の上で、甘みとスパイスが軽やかに跳ねます。南アルプスの厳しい冬と短い夏を生き抜く生命たちの躍動が、そのまま香味の起伏になったかのよう。森の蒸溜所の連作を、ぜひ二本並べて。日本のウイスキーの多様性は、いまや標高までも味わいの要素にしています。

  • Whiskey&Co. Little K CASK STRENGTH
    Whiskey&Co.(静岡県)|58%

    静岡の小さな造り手が、樽出しそのままの力強さで世に問う「Little K」カスクストレングス。大手の潤沢な設備も、長い歴史もない。あるのは、良いウイスキーを造りたいという一念と、少量ゆえに一樽一樽へ注げる濃密な手仕事だけ——日本のクラフトウイスキー黎明期を支えるのは、こうした無名の情熱たちです。58%のハイプルーフでボトリングされた本作は、加水で整える前の原酒の素顔をそのまま届ける設計。グラスからは麦芽の香ばしさとバニラ、熟した果実の甘い香りが力強く立ち、口中では凝縮された甘みとスパイスが弾けます。一滴ずつの加水で香味がほどけていく様子は、カスクストレングスならではの対話の愉しみ。名の知られる前の造り手をカウンターで見つける——それはバー文化の醍醐味であり、数年後に「あの頃から飲んでいた」と語れる、密かな先行投資でもあります。

  • ガイアフロー シングルモルト日本ウイスキー 静岡 ポットスティルW 純日本大麦初版
    ガイアフロー静岡蒸溜所(静岡県静岡市玉川)|55.5%

    世界でここにしかない蒸溜器があります。ガイアフロー静岡蒸溜所の「ポットスティルW」——Wは薪(Wood)。地元・静岡の薪を燃やす直火でモロミを蒸溜する、世界唯一の薪直火加熱ポットスチルです。ガスや蒸気ではなく、揺らぐ炎で焚かれた原酒には、直火ならではの香ばしさと力強い厚みが宿ります。しかも本作は「純日本大麦初版」——原料の大麦まで100%日本産という、原料・燃料・水のすべてを日本の風土で満たした記念碑的リリースです。安倍川上流・玉川の清冽な水で仕込まれた原酒は、焼きたてのパンのような香ばしい麦の香り、蜂蜜の甘み、微かな焦がしカラメルが幾重にも立ち、55.5%の骨格が薪火の力強さを支えます。閉鎖された軽井沢蒸溜所の蒸溜器を受け継ぐ「K」と並ぶ、静岡蒸溜所の魂の一本。日本の森の火で焚かれたウイスキーを、ぜひ体験してください。

滋賀県

  • 長濱蒸溜所 シングルモルト長濱 THE SEVENTH BATCH
    長濱浪漫ビール・長濱蒸溜所(滋賀県長浜市)|50%

    琵琶湖の北岸、豊臣秀吉が城下町を築いた長浜の地に、2016年、日本最小クラスのポットスチルを備えた蒸溜所が生まれました。クラフトビールの草分け「長濱浪漫ビール」の醸造所内に併設された長濱蒸溜所は、極小の蒸溜器ゆえに一度の仕込みが少なく、その分だけ香りの個性が濃く出る——まさに手仕事のウイスキーです。バッチごとにブレンドを変える本シリーズの第7弾は、レッドワインカスクとソーテルヌカスクという性質の異なる二種のワイン樽原酒を主軸に、骨格を与えるバーボン樽原酒、そしてアイラクォーター樽のヘビリーピーテッド原酒をアクセントに配した意欲的な構成。ダークチェリーの濃厚な甘み、蜂蜜とアプリコットの華やぎ、穏やかなスモークと白胡椒の刺激が層をなし、琵琶湖の湖畔で熟成された小さな蒸溜所の大きな野心を物語ります。バッチ違いは一期一会。出会えた番号を、どうぞお楽しみに。

兵庫県

  • 江井ヶ嶋蒸留所 あかし 5年 SHERRY CASK CASK STRENGTH
    江井ヶ嶋酒造(兵庫県明石市)|61%

    兵庫・明石の江井ヶ嶋酒造は、1919年(大正8年)にウイスキー製造免許を取得した、日本最古級のウイスキー造りの歴史を持つ蔵です。山崎蒸溜所の建設が1923年ですから、免許の上ではそれより古い——日本酒「神鷹」の蔵として瀬戸内の海辺で百年、日本酒とウイスキーの両輪を静かに回し続けてきた、知る人ぞ知る古豪です。本作はシングルモルト「あかし」の5年熟成シェリーカスクを、61%のカスクストレングスで樽出しした一本。シェリー樽由来のレーズンといちじく、黒糖の濃厚な甘みが、瀬戸内の温暖な気候で凝縮され、口中で蜜のように広がります。加水すればカカオとナッツの香ばしさがほどけ、長い余韻へ。派手な宣伝をせず、限定ボトルが静かに玄人の間で取り合いになる——それが江井ヶ嶋の流儀です。日本ウイスキー史の最古参の現在地を、度数そのままでどうぞ。

  • 江井ヶ嶋蒸留所 あかし [2020] 5年 水もとSake Cask for SHINANOYA
    江井ヶ嶋酒造(兵庫県明石市)|62%

    「水もと(みずもと)」——室町時代以前から伝わるといわれる、日本酒の最も古典的な酒母製法。乳酸由来の複雑な酸と独特の旨み、柔らかな発酵感を生むこの古式製法で醸した日本酒の樽で、シングルモルト「あかし」を追熟させた、酒販店SHINANOYAとのプライベートボトルです。日本酒文化とウイスキー文化が、ひとつの樽の中で交差する——1919年からウイスキー免許を持つ日本酒蔵・江井ヶ嶋にしか成し得ない、妖しくも美しい異端の一本。グラスから立ち上がるのは、熟した杏、黒糖、焼きリンゴ、和三盆、そして麹を思わせる甘い発酵香。わずかな乳酸のニュアンスは古酒や紹興酒にも通じ、飲み進めるほどに和の発酵文化の奥行きが滲み出ます。62%の度数がその複雑さを一本の芯で貫き、余韻は艶やかに長く。「ジャパニーズウイスキー」の一言では括れない、けれど確かに日本にしか生まれ得ない味です。

岡山県

  • 宮下酒造 岡山 TRIPLE CASK
    宮下酒造・岡山蒸溜所(岡山県岡山市)|43%

    日本酒「極聖」、そして地ビール黎明期の名作「独歩ビール」——岡山の宮下酒造は、醸造酒から蒸溜酒まで、あらゆる酒を手がける総合酒造メーカーです。1994年、全国に先駆けてクラフトビールに挑んだ進取の気性はウイスキーにも受け継がれ、自社のビール醸造技術で仕込んだモロミを蒸溜する「シングルモルト岡山」を生み出しました。本作トリプルカスクは、その名の通り三種の樽で熟成した原酒を掛け合わせた構成。樽ごとの個性——バニラの甘み、ドライフルーツのコク、オークのスパイス——が43%の飲みやすい度数の中で調和し、晴れの国・岡山らしい、屈託のない明るさを湛えた味わいに仕上がっています。フルーティで柔らかく、シングルモルト入門にも最適。ビールで時代を切り拓いた蔵が、次はウイスキーで何を見せるのか。中国地方のクラフトシーンを牽引する一本です。

愛媛県

  • 梅美人酒造 愛媛モルトウイスキー 多喜 Taki
    梅美人酒造(愛媛県八幡浜市)|43%

    みかんの積出港として栄えた愛媛・八幡浜。大正時代から続く老舗酒蔵・梅美人酒造が、四国の地から送り出すモルトウイスキーが「多喜(Taki)」です。四国はウイスキー不毛の地といわれてきましたが、日本酒で百年培った発酵の技と、瀬戸内の温暖な気候による熟成の速さを味方に、小さな蔵が新しい歴史を刻み始めました。「多喜」——多くの喜びを、という祝いの名を持つ本作は、43%の穏やかな度数で、麦芽の素直な甘みとバニラ、柑橘の産地らしいほのかなオレンジピールの明るさが感じられる、人懐こい味わい。肩の力の抜けた美味しさは、地元の祝いの席で愛される酒であることの証でしょう。東京のバーで四国のウイスキーに出会える機会はまだ多くありません。日本列島をウイスキーで巡る旅の、愛媛の一杯としてぜひ。当店の愛媛産ライムのジントニックと並べれば、瀬戸内づくしの夜になります。

広島県

  • 桜尾蒸留所 SAKURAO SINGLE MALT JAPANESE WHISKY
    サクラオブルワリーアンドディスティラリー(広島県廿日市市)|43%

    宮島の対岸、広島・廿日市の海辺に立つサクラオブルワリーアンドディスティラリー(旧・中国醸造)。1918年創業の総合酒造が2018年に開いた桜尾蒸溜所は、世界的な賞を重ねるクラフトジン「桜尾GIN」で一躍名を馳せましたが、その本丸はウイスキーにあります。本作は蒸溜所の名を冠したシングルモルトのフラッグシップ。瀬戸内海を望む海辺の熟成庫で潮風を浴びて育った原酒は、穏やかな塩気をまとい、バニラと蜂蜜、熟した洋梨の甘みに、微かなブリニーなニュアンスが寄り添います。43%の均整の取れたボトリングは食中にも寄り添う設計で、牡蠣をはじめ瀬戸内の海の幸との相性は折り紙付き。ジンで世界を獲った蒸溜技術がウイスキーでどう花開いたか——その答えは、想像以上に端正で美しい。厳島神社の海を思い浮かべながら、当店の海の肴とともにどうぞ。

九州・沖縄

大分県

  • 久住蒸溜所 KUJU DISTILLERY THE FIRST CASK STRENGTH
    久住蒸溜所(大分県竹田市)|58%

    くじゅう連山の裾野に広がる久住高原——標高およそ850メートル、九州とは思えぬ冷涼な空気と、阿蘇火山帯が磨いた清冽な水に恵まれた地に、2021年、久住蒸溜所は誕生しました。九州のウイスキーというと温暖な熟成を想像しますが、久住は違います。冬は氷点下に沈み、夏も朝晩は涼しい高原の寒暖差が、原酒に南国と北国の両方の時間を与えるのです。記念すべきファーストリリースを58%のカスクストレングスで放った本作は、完熟に向かう果実と厚みのあるモルトの甘みが核。バニラ、枇杷、そして余韻に柚子を思わせる和の柑橘が揺らめき、クリーンで芯のあるボディが全体を貫きます。少しの加水でさらにほどける懐の深さも魅力。草原の風の中で生まれた九州の新星の産声を、麻布十番からほど近い静かなカウンターで。

福岡県

  • 新道蒸留所 SHINDO Single Malt SHINDO EXPERIMENTAL 01
    株式会社篠崎・新道蒸溜所(福岡県朝倉市)|50%

    麦焼酎「朝倉」、甘酒「国菊」——江戸・寛政年間から続く福岡朝倉の老舗、篠崎が2021年に開いたのが新道蒸溜所です。二百年を超える麹と発酵の知恵を携えてウイスキーに挑む、九州焼酎文化の正統な後継者。そのファーストリリース『EXPERIMENTAL 01』でまず驚かされるのは、若さを隠そうとしない潔さです。樽香で覆い隠すのではなく、蒸溜したての原酒が持つ輪郭と熱量を真っ直ぐに見せる——「実験」という名を冠しながら、既に確かな思想を感じさせる一本。トップは華やかでトロピカル。バニラ、クリーム、熟した果実。やがて柔らかな麦の甘みが広がり、ラストはミルキーで長い余韻へ。ノンピートでありながら決して穏やかすぎない、芯のある酒質です。座標を刻んだラベル、無機質な黒箱——そのすべてから「これからのジャパニーズウイスキー」を再定義しようとする静かな意思が伝わってきます。歴史の最初の一歩を、グラスの中から。

  • 新道蒸留所 NEW MAKE
    株式会社篠崎・新道蒸溜所(福岡県朝倉市)|60%

    ニューメイク——樽に入る前の、蒸溜したての無色透明な原酒。ウイスキーの「設計図」であり、蒸溜所の技術と思想が最も裸のまま現れる液体です。新道蒸溜所のニューメイクは、二百年の焼酎蔵が持つ発酵管理の精度をそのまま映して、驚くほどクリーンでフルーティ。グラスからは洋梨や白桃を思わせるエステル香、蒸したての麦の甘い湯気、微かなクリームのニュアンスが立ち、60%の度数を感じさせない滑らかな口当たりに、この蔵の実力が透けて見えます。熟成後のEXPERIMENTALシリーズと並べて飲めば、樽が原酒に何を与え、何を引き算するのかが手に取るように分かる——いわばウイスキーの解剖学。完成品しか飲めなかった時代には許されなかった贅沢な学びが、クラフトの時代には一杯の楽しみとして開かれています。未来の名酒の産声を、記憶に刻んでください。

  • 新道蒸留所 SHINDO EXPERIMENTAL FOR CORES.02
    株式会社篠崎・新道蒸溜所(福岡県朝倉市)|53%

    終わりなき実験の第二章。『FOR CORES.02』は、新道蒸溜所が挑戦の「核心(CORES)」を真正面から掲げた限定リリースです。第一章EXPERIMENTAL 01が蒸溜所の素顔を見せる自己紹介だったとすれば、本作は一歩踏み込んだ問いかけ——酵母の選択、発酵の設計、樽の組み合わせといった変数を動かしながら、「新道の味とは何か」を自ら探し続ける過程そのものを瓶詰めしています。53%のボトリングから立ち上がるのは、トロピカルフルーツとバニラの華やかさに、01より一段深まった麦の厚みとオークの陰影。口中では甘みとスパイスが螺旋を描き、ミルキーな質感の余韻が長く続きます。完成形を約束しない誠実さこそ、この蒸溜所の最大の魅力かもしれません。実験の目撃者になる楽しみを、ナンバリングとともに。01との飲み比べで、蒸溜所の思考の軌跡をぜひ辿ってみてください。

  • 新道蒸留所 SHINDO Blended Japanese Whisky Non Peated The Blended 2026
    株式会社篠崎・新道蒸溜所(福岡県朝倉市)|43%

    シングルモルトが蒸溜所の「独奏」なら、ブレンデッドは「合奏」です。本作は新道蒸溜所がノンピート原酒を軸に組み上げたブレンデッドジャパニーズウイスキーの2026年版。実験的なシングルモルトで攻める同蔵が、ブレンデッドでは一転、誰の食卓にも寄り添う調和を目指しました。43%の柔らかな度数に、蜂蜜と洋梨の優しい甘み、クリームのまろやかさ、微かな穀物の香ばしさが丸くまとまり、すっと消える綺麗な余韻が残ります。焼酎蔵として九州の晩酌文化を二百年支えてきた篠崎らしい、「毎晩飲める旨さ」への職人的な回答です。ハイボールにすれば当店自慢の天然水強炭酸と響き合い、食中酒として鰻や和の肴とも自然に調和します。尖った限定ボトルの合間に、こういう一杯があるとバーの夜は長く楽しめる——そんな立ち位置の、頼れるブレンデッドです。

宮崎県

  • 尾鈴山蒸留所 OSUZU MALT American Oak Barrel Our Local Barley
    黒木本店・尾鈴山蒸留所(宮崎県木城町)|46%

    幻の焼酎「百年の孤独」で知られる宮崎の黒木本店が、1998年、尾鈴山の山中に開いた尾鈴山蒸留所。電気も通わぬ山道の先、渓流のほとりに立つこの蒸溜所は、焼酎の理想郷として造られましたが、2019年からウイスキーの蒸溜を開始し、九州クラフトウイスキーの旗手となりました。特筆すべきは「Our Local Barley」——自社の農業法人が宮崎の畑で育てた大麦を使う、農業からの一貫造りです。土を耕すところからウイスキーが始まる造り手は、世界でも一握り。アメリカンオーク樽で熟成した本作は、バニラと蜂蜜の王道的な甘みに、自社大麦のふくよかな香ばしさ、尾鈴山の渓流を思わせる透明感が重なり、46%の端正な骨格でまとまります。焼酎で「土地の酒」を極めた蔵が、ウイスキーでも同じ道を歩む——テロワールという言葉の本気を、宮崎の山から。

  • 尾鈴山蒸留所 OSUZU MALT Chesnut Barrel Our Local Barley
    黒木本店・尾鈴山蒸留所(宮崎県木城町)|46%

    栗の樽——ウイスキーの世界でチェスナットバレルは極めて珍しい存在です。オーク以外の木材は世界的にも使用例が少なく、栗樽は液漏れや強すぎるタンニンなど扱いの難しさで知られますが、尾鈴山蒸留所はあえてこの樽に自社大麦の原酒を託しました。焼酎の熟成で木桶や甕と向き合ってきた黒木本店だからこその、木材への深い理解と冒険心です。グラスに注ぐと、オーク樽とは明らかに違う個性が現れます。焼き栗やマロングラッセを思わせる香ばしい甘み、ほのかな渋皮のタンニン、森の湿った土の気配——山の蒸溜所の風景そのものが香りになったかのよう。口中では自社大麦の柔らかな甘みと栗のニュアンスが溶け合い、余韻は秋の焚き火のように温かく続きます。アメリカンオーク版と並べて飲めば、樽材がウイスキーの人格をどれほど変えるかに驚くはず。世界でも稀な栗樽モルトを、ぜひこの機会に。

熊本県

  • 常楽酒造 天乃白雨 KUMAMOTO Rice Whisky
    常楽酒造(熊本県錦町)|43%

    五百年の歴史を持つ米焼酎の聖地・球磨(くま)。日本でただ28地域しか認められていない地理的表示(GI)のひとつ「球磨焼酎」の産地で、常楽酒造は昭和初期から蔵を構えてきました。その球磨の米蒸溜技術を樽熟成へと接続したのが、ライスウイスキー「天乃白雨(あまのはくう)」です。天から降る白い雨——球磨川の流域を潤す雨の恵みをそのまま名にした本作は、米と麹で醸したモロミを蒸溜し、樽でじっくりと熟成。グラスからは吟醸香を思わせる華やかな立ち香、蒸米の柔らかな甘み、樽由来のバニラが調和し、口当たりは米の酒らしく絹のように滑らかです。43%ながら驚くほど優しく、余韻には微かな麹の旨みが漂います。五百年の米蒸溜文化が、ウイスキーという新しい器で世界に語りかける——焼酎王国・熊本の静かな挑戦を、和の肴とともにどうぞ。

鹿児島県

  • 嘉之助蒸留所 KANOSUKE HIOKI POT STILL 2024 LIMITED EDITION
    小正醸造・嘉之助蒸溜所(鹿児島県日置市)|51%

    嘉之助蒸溜所の原点は、焼酎にあります。1883年創業の小正醸造・二代目の小正嘉之助は、戦後、米焼酎を樽で熟成させた「メローコヅル」を生み出し、日本の蒸溜酒を世界へという夢を追いました。その名を冠した嘉之助蒸溜所が、祖業の焼酎蔵「日置蒸溜蔵」のポットスチルで米と麹から蒸溜した原酒を樽熟成させたのが、この「HIOKI POT STILL」です。大麦麦芽のシングルモルトとは別の系譜——焼酎の技術体系から生まれた、いわば嘉之助のもう一つの魂。2024年限定版の本作は、51%の骨格の中に、米由来の柔らかな甘みと華やかな吟醸香、樽のバニラとほのかなスパイスが美しく重なります。三代・七十年をかけた「樽熟成の夢」の現在地を、限定ボトルで。吹上浜の夕陽を思いながら傾けたい一杯です。

  • 嘉之助蒸溜所 シングルモルト嘉之助 PEATED
    小正醸造・嘉之助蒸溜所(鹿児島県日置市)|48%

    東シナ海に沈む夕陽を望む吹上浜——日本三大砂丘のひとつを目の前にした嘉之助蒸溜所は、おそらく日本で最も海に近い蒸溜所のひとつです。形状の異なる3基のポットスチルを使い分ける贅沢な設備は、軽やかさから厚みまで多彩な原酒を生み、ブレンドの幅を大きく広げています。本作はそのピーテッド版。南国・鹿児島のスモーキーモルトという意外性がまず面白いのですが、その煙は北国のそれとは違い、どこか乾いた砂浜の焚き火のように明るい。潮風のブリニーなニュアンス、蜂蜜と柑橘の甘酸っぱさ、そして穏やかに燻る麦の香ばしさが、48%の端正な骨格の上で調和します。ノンチルフィルタードゆえの厚いテクスチャーも魅力。アイラとも厚岸とも違う「薩摩の煙」を、ぜひ飲み比べの一角に。海辺の蒸溜所の記憶が、グラスの中で潮騒のように広がります。

  • 嘉之助蒸溜所 シングルモルト嘉之助 2026 LIMITED EDITION
    小正醸造・嘉之助蒸溜所(鹿児島県日置市)|59%

    年に一度、その年の嘉之助の到達点を示す限定エディション。2026年版は59%というカスクストレングスに迫る度数で、蒸溜所の充実期を力強く宣言する仕上がりです。嘉之助の代名詞は、祖業の焼酎「メローコヅル」を熟成させた樽——リチャーカスクの使用。焼酎が眠った樽でウイスキーを育てるという、焼酎蔵をルーツに持つこの蒸溜所にしかできない樽戯が、香味に独特の柔らかな甘みと和の気配を添えます。グラスからは熟した柑橘と蜂蜜、バニラ、微かな塩気。口に含めば59%の熱量とともに、南国の陽光を思わせる明るい甘みが弾け、ノンチルフィルタード由来のオイリーな質感が長い余韻を支えます。加水するほどに表情がほどける、対話型の一本。年次限定ゆえ、この味は今年だけ。世界的評価が年々高まる嘉之助の「現在」を、記録として味わってください。

  • 嘉之助蒸溜所 嘉之助 HIOKI POT STILL
    小正醸造・嘉之助蒸溜所(鹿児島県日置市)|51%

    「ウイスキーは大麦から」という常識の外側に、日本にしか描けない地図があります。米と麹——焼酎の文法で仕込んだモロミを、祖業の日置蒸溜蔵のポットスチルで蒸溜し、樽で熟成させた「HIOKI POT STILL」のスタンダード版。限定版と異なり通年で楽しめるこの一本は、嘉之助という蒸溜所の二つの顔——スコッチの伝統に連なるシングルモルトと、薩摩焼酎の血脈を継ぐ米の樽熟成酒——のうち、後者の入口として最適です。グラスからは白い花と蒸米の柔らかな香り、バニラ、ほのかな黒糖。口当たりは米の酒らしくまろやかで、51%の度数を感じさせない優しさの奥に、樽のスパイスがきりりと輪郭を描きます。ハイボールにすると吟醸香がふわりと立ち、和食との相性は抜群。一杯目のシングルモルトの後に、二杯目でこちらへ——嘉之助の奥行きを知る、当店おすすめの順路です。

  • 嘉之助蒸溜所 シングルモルト嘉之助
    小正醸造・嘉之助蒸溜所(鹿児島県日置市)|48%

    嘉之助蒸溜所の顔となるフラッグシップ・シングルモルト。2017年の蒸溜開始からわずか数年で世界のコンペティションを賑わせ、日本の新世代蒸溜所の筆頭格に躍り出た嘉之助の、すべての基準となる一本です。3基のポットスチルが生む多彩な原酒を、メローコヅルのリチャーカスクを含む複数の樽で熟成し、ノンチルフィルタードでボトリング。冷却濾過をしないため香味成分とオイリーな質感がそのまま残り、削ぎ落とさない「素のままの美しさ」が楽しめます。香りはバニラと蜂蜜の甘やかさに、熟した柑橘の気配。口中では柔らかな麦芽の甘みが広がり、やがてほのかな塩味とともに、静かに余韻がほどけていきます。48%の均整は、ストレートでも加水でも崩れません。鹿児島の海風を纏ったモダンジャパニーズの代表格として、まず最初に試していただきたい定番です。

  • 御岳蒸留所 CASK Number III シングルカスク日本ウイスキー
    西酒造・御岳蒸留所(鹿児島県)|51%

    芋焼酎「宝山」で焼酎界の頂点を極めた西酒造が、2019年、霧深い山あいに開いたのが御岳蒸留所です。焼酎で培った「原料と発酵への異常なまでのこだわり」をウイスキーへ持ち込み、自社培養の酵母、選び抜いた二条大麦、鹿児島の清冽な天然水で仕込む——後発ながら、その完成度の高さで一気に注目を集めた蒸溜所です。本作はその名の通り、たった一つの樽・Cask Number IIIから瓶詰めされたシングルカスク。ブレンドで整える道を捨て、一樽の個性をそのまま世に問う、蒸溜所の自信の表明です。51%の骨格から立ち上がるのは、熟した果実とバニラ、樽由来の芳醇なコク。滑らかな口当たりの奥に、鹿児島の山の冷気のような静けさが宿ります。同じ味は二度と生まれない一期一会のボトル。番号を確かめながら、山の蒸溜所の一樽の物語をどうぞ。

  • 御岳蒸留所 シングルモルト日本ウイスキー 御岳 2025
    西酒造・御岳蒸留所(鹿児島県)|43%

    御岳蒸留所の年次フラッグシップ、2025年版。自社で培養した酵母、選び抜かれた最高品質の二条大麦、そして鹿児島の豊かな自然が育む清らかな天然水——原料のすべてに焼酎の名門・西酒造の哲学を貫き、厳選したシェリー古樽で丁寧に熟成させた一本です。シェリー樽由来の芳醇な香りと奥深いコク、そして滑らかな口当たり。レーズンやいちじくの甘みに、麦芽の香ばしさとほのかなカカオが重なり、長く続く甘やかな余韻が夜の時間をゆっくりと満たします。43%の穏やかな度数設計は、焼酎の蔵らしい「食と共にある酒」への配慮でしょう。派手さで驚かせるのではなく、細部の精度で唸らせる——宝山で見せたあの完璧主義が、ウイスキーでも息づいています。時の流れと職人の情熱が注ぎ込まれた薩摩の逸品を、贅沢なひとときのお供に。

  • 御岳蒸留所 Imadeya Cask No.001 a view of Sakurajima
    西酒造・御岳蒸留所(鹿児島県)|56.7%

    「a view of Sakurajima」——桜島の眺め。錦江湾に浮かぶ薩摩のシンボルを名に戴いた、酒販店いまでや(Imadeya)とのプライベートシングルカスク第1号(Cask No.001)です。目利きで知られる酒販店が蒸溜所の樽庫から一樽を選び抜く——その選択眼と蒸溜所の実力が交差する場所に、プライベートボトルの醍醐味があります。56.7%のカスクストレングスで樽出しされた本作は、御岳の端正な酒質に樽の個性が濃密に乗り、熟した果実と黒糖、オークのスパイスが力強く立ち上がります。口中では凝縮された甘みが火山の熱のように広がり、加水すれば桜島の噴煙がほどけるように、柔らかな果実香が姿を現します。No.001という番号の持つ記念性も含め、御岳の歴史の最初のページに刻まれる一樽。カウンター越しに桜島の風景を想像しながら、ゆっくりとどうぞ。

  • 西酒造 Hioki THE ONTAKE DISTILLERY PURE BARLEY SINGLE BLENDED JAPANESE WHISKY
    西酒造・御岳蒸留所(鹿児島県)|51%

    「シングルブレンデッド」——聞き慣れない言葉ですが、これはモルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方を単一の蒸溜所で造り、ブレンドしたことを示す称号です。通常ブレンデッドは複数の蒸溜所の原酒を掛け合わせますが、本作はすべてが御岳の一箇所で完結。しかも「PURE BARLEY」の名の通り、グレーンの原料まで大麦で貫いた、純度の高い設計です。一つの蒸溜所がモルトとグレーンの両方を仕込むのは設備的にも技術的にも贅沢な話で、焼酎で財を成した西酒造の本気度が窺えます。51%のボトリングから立ち上がるのは、大麦づくしならではの厚い麦芽の甘みと香ばしさ、バニラ、ほのかなスパイス。モルトの個性とグレーンの滑らかさが、同じ蔵の水と空気の中で調和した、一体感のある味わいです。ブレンデッドの概念を塗り替える薩摩の実験を、ぜひ言葉と一緒に味わってください。

  • 本坊酒造 MARS The Y.A. #03
    本坊酒造・マルス津貫蒸溜所/屋久島エージングセラー(鹿児島県)|49%

    「Y.A.」=Yakushima Aging——世界自然遺産・屋久島での熟成です。1872年創業、鹿児島の本坊酒造は「マルスウイスキー」の名で戦後日本のウイスキー史を歩んできた老舗ですが、その最も詩的な試みが、津貫で蒸溜した原酒を屋久島の熟成庫で育てるこのシリーズです。年間の多くを雨が降る島、樹齢千年の杉が呼吸する森、黒潮の湿った風——屋久島の高温多湿は熟成を劇的に加速させ、天使の分け前と引き換えに、原酒へ濃密な時間を注ぎ込みます。第3弾となる本作は、49%の骨格に、トロピカルフルーツと蜂蜜の熟した甘み、樽の深いコク、そして雨の森を思わせるしっとりとした余韻。同じ原酒でも熟成地が変われば別の酒になる——「場所が味を造る」ことを、これほど雄弁に語るウイスキーは稀です。屋久杉の森の湿度を、グラスの中に感じてください。

  • 本坊酒造 シングルモルト津貫 2023 Edition
    本坊酒造・マルス津貫蒸溜所(鹿児島県南さつま市)|50%

    薩摩半島の南端近く、周囲を山に囲まれた盆地・津貫。本坊酒造発祥のこの地に2016年に開かれたマルス津貫蒸溜所は、日本最南端のウイスキー蒸溜所のひとつです。夏は暑く冬は冷え込む盆地特有の激しい寒暖差が熟成を力強く進め、長野のマルス信州蒸溜所(駒ヶ岳)とは対照的な、南国の凝縮感あるモルトを生み出します。年次エディションの2023年版は、50%のボトリングに、熟した果実とカラメルの厚い甘み、麦芽の香ばしさ、樽由来のスパイスがぎゅっと詰まった構成。口当たりは力強く、しかし雑味なく、余韻には南薩摩の陽光のような温かさが長く残ります。信州と津貫——本坊酒造が持つ二つの蒸溜所は、日本の南北の気候がウイスキーに刻む違いを体感できる格好の教材でもあります。当店で駒ヶ岳と並べて、緯度の飲み比べをぜひ。

  • 本坊酒造 シングルモルト駒ヶ岳 IPA CASK FINISH Bottled in 2022
    本坊酒造・マルス信州蒸溜所(長野県上伊那郡宮田村)|52%

    中央アルプス駒ヶ岳の麓、標高798メートルの冷涼な地に立つマルス信州蒸溜所。1985年に建てられたこの蒸溜所は、ウイスキー冬の時代に一度蒸溜を止め、2011年に再開したという、日本ウイスキー史の浮沈をそのまま生きてきた場所です。本作はシングルモルト駒ヶ岳を、クラフトビールの華・IPA(インディア・ペールエール)を熟成させた樽でフィニッシュした2022年ボトリング。IPA樽由来のホップの快活な香り——柑橘、松脂、トロピカルフルーツ——が、駒ヶ岳の清らかなモルトの上で弾け、52%の度数がその鮮烈さを支えます。口中では麦芽の甘みとホップのビターが交互に現れ、ビール好きなら思わず微笑む立体感。信州の冷涼な空気で育った原酒だからこそ、ホップの繊細な香りが濁らずに際立ちます。ウイスキーとビールの幸福な邂逅を、アルプスの麓から。

沖縄県

  • 久米仙酒造 OKINAWA BLUE RICE WHISKY AKASHOUBIN
    久米仙酒造(沖縄県那覇市)|50%

    琉球泡盛——十五世紀から続く、日本最古の蒸溜酒文化。その担い手のひとつ、那覇の久米仙酒造が、泡盛で磨いた米蒸溜の技術を樽熟成へと昇華させたのが「OKINAWA BLUE」シリーズのライスウイスキーです。本作の名「AKASHOUBIN(アカショウビン)」は、沖縄の森に棲む火の色の渡り鳥・リュウキュウアカショウビンから。琉球の森の精霊のようなこの鳥の名にふさわしく、50%の力強い酒躯に、亜熱帯の熟成が生む濃密な甘みが宿ります。米由来の柔らかな甘み、樽のバニラとカラメル、そして南国の果実を思わせる華やかな香りが、沖縄の高温多湿の中で急速に溶け合い、本州では何年もかかる熟成感を短期間で纏うのです。泡盛五百年の技と、ウイスキーの樽文化の邂逅。日本最南端の琥珀を、旅の記憶のように一杯どうぞ。

  • 昌広酒造 CRAFT WONDER Rice Whisky WONDER MIZUNARA Aged 12 years
    昌広酒造(沖縄県)|43%

    12年——沖縄の亜熱帯で、これほどの長期熟成に耐えた樽が残っていること自体が奇跡に近い話です。高温多湿の沖縄では天使の分け前(蒸発)が本州の何倍も早く、長期熟成は樽の中身が消えてなくなる戦いでもあります。その歳月を生き延びた米ウイスキーの原酒を、日本固有の水楢(ミズナラ)樽で仕上げた本作は、まさに時間の結晶。グラスからは、伽羅や白檀を想わせるミズナラ特有のオリエンタルな香気に、長期熟成米原酒の熟れた甘み——黒糖、ドライフルーツ、微かなココナッツ——が幾層にも重なります。口当たりはとろりと滑らかで、43%の度数が長い余韻を静かに支えます。琉球の時間とミズナラの神秘が出会った、南の島の瞑想的な一杯。数に限りのある熟成古酒ゆえ、出会えたときが飲みどきです。

  • 昌広酒造 CRAFT WONDER Rice Whisky WONDER BOURBON BARREL Aged 7 years
    昌広酒造(沖縄県)|43%

    同じ蔵の米ウイスキーを、こちらはバーボンバレルで7年。ミズナラ12年が「和の神秘」なら、本作は「南国の陽気」を担う一本です。バーボン樽が与えるバニラとココナッツ、キャラメルの甘い衣は、亜熱帯の急速な熟成の中で米原酒の柔らかな甘みと濃密に絡み合い、7年という数字以上の熟成感を纏います。グラスからは焼き菓子のような香ばしい甘い香り、熟したバナナ、微かなオークのスパイス。口中ではまろやかな米の旨みとバーボン樽の王道的な甘みが素直に重なり、43%の飲みやすさも手伝って、するすると盃が進みます。ロックにすれば南国の夜風のように軽やかに、ストレートなら熟成の厚みをしっかりと。ミズナラ12年との飲み比べは、樽材と歳月がウイスキーに何を刻むかを教えてくれる、沖縄発の小さな授業です。泡盛文化の島の、新しい琥珀の物語をぜひ。

サントリーウイスキー

  • 山崎蒸溜所 The Yamazaki Single Malt Japanese Whisky
    サントリー・山崎蒸溜所(大阪府島本町)|43%

    1923年、鳥井信治郎が名水の地・山崎に建てた日本初の本格ウイスキー蒸溜所——すべての物語はここから始まりました。千利休が茶室を構えた水の里で、百年にわたり磨かれてきたシングルモルトの現行ノンヴィンテージです。ミズナラ樽、シェリー樽、バーボン樽など多彩な原酒を掛け合わせ、苺やラズベリーを思わせる赤い果実の華やかさ、蜂蜜の甘み、そして余韻に漂うミズナラ由来の伽羅の気配——「日本のシングルモルトとは何か」への、本家本元の回答がここにあります。世界的な品薄が続き、定価で買うことすら困難になった今、バーのグラス一杯で味わえることの価値は増すばかり。ジャパニーズウイスキー百年の原点を、まずはストレートで。当店のクラフト蒸溜所の面々と飲み比べれば、この一本が拓いた道の長さが見えてきます。

  • 山崎蒸溜所 The Yamazaki Single Malt 12 Years
    サントリー・山崎蒸溜所(大阪府島本町)|43%

    1984年、「日本にシングルモルトは根付かない」という常識に抗って世に出た山崎12年は、ジャパニーズウイスキーの国際的評価を切り拓いた金字塔です。2003年にISCで日本のウイスキーとして初の金賞を受賞して以来、世界のコンペティションを席巻し、山崎の名を世界共通語へと押し上げました。12年の歳月が磨いた香味は、熟した柿や桃のふくよかな甘み、バニラ、そしてミズナラ樽が添える白檀の和の香り。43%の端正な骨格の中で、甘み・酸・ウッディネスが完璧な均衡を保ち、長い余韻が静かに続きます。原酒不足で品薄が常態化し、海外では驚くべき価格で取引される現在、この12年をグラスで気軽に味わえるのはバーならではの贅沢。日本のウイスキーが世界の頂点に立った瞬間の味を、ぜひ一度は経験してください。

  • 山崎蒸溜所 The Yamazaki Single Malt Smoky Batch
    サントリー・山崎蒸溜所(大阪府島本町)|43%

    「山崎」と「スモーキー」——意外な組み合わせに思えますが、実は山崎蒸溜所は多彩な原酒の造り分けで知られ、ピーテッド麦芽の仕込みも密かに続けてきました。本作スモーキーバッチは、その燻香をまとった原酒を軸に構成された限定バッチ。華やかさの代名詞である山崎が、煙のヴェールを纏うとどうなるのか——答えは、想像以上にエレガントです。スモークは前面で吠えるのではなく、熟した果実と蜂蜜の甘みの背後で焚き火の残り香のように揺らめき、ミズナラの気配と溶け合って、奥行きのある陰影を生み出します。アイラモルトの直球の煙とは別種の、あくまで品位を保った和のスモーキー。ハイボールにすると燻香がふわりと立ち上がり、また違う表情を見せます。山崎の引き出しの深さを知る、通好みの一本です。

  • 知多蒸溜所 The Chita Single Grain Japanese Whisky
    サントリー・知多蒸溜所(愛知県知多市)|43%

    ブレンデッドウイスキーの「縁の下の力持ち」とされてきたグレーンウイスキーを、単独で主役に据えた「知多」。愛知・知多半島の蒸溜所で連続式蒸溜機を駆使し、クリーン・ミディアム・ヘビーと造り分けた多彩なグレーン原酒に、ワイン樽やスパニッシュオーク樽での熟成を重ねて生まれる、サントリーの「風香るウイスキー」です。グラスからは白い花と洋梨、ほのかなバニラの軽やかな香り。口当たりはどこまでも滑らかで、澄んだ甘みがすっと広がり、綺麗に消えていきます。この軽やかさこそグレーンの美点であり、ハイボールにしたときの伸びやかさは格別。食中酒として和食に寄り添う設計は、まさに日本のウイスキー文化の到達点のひとつです。モルトの個性に疲れた夜の「余白の一杯」として、そっとお薦めしたい銘柄です。

  • 角 現行 Suntory Whisky(角瓶)
    サントリー|40%

    1937年誕生。薩摩切子に着想を得た亀甲模様のボトルから「角瓶」と呼ばれ、以来九十年近く、日本の食卓と酒場を照らし続けてきた国民的ウイスキーです。鳥井信治郎が「日本人の繊細な舌に合うウイスキー」を目指して完成させた味は、山崎と白州のバーボン樽原酒を軸にした、厚みのあるコクと甘やかな香り。2008年、この角瓶を主役にサントリーが仕掛けた「角ハイボール」の復権が、瀕死だった日本のウイスキー市場を甦らせ、現在のジャパニーズウイスキーブームの狼煙となったことは、もはや現代史の一頁です。当店では自家開発の炭酸充填機による天然水強炭酸で、この歴史的な一杯を最高の状態に仕立てます。「たかが角、されど角」——バーの炭酸と氷で飲む角ハイは、缶とはまったくの別物です。

  • 角 復刻 Suntory Liqueur Whisky
    サントリー|43%

    「リキュールウイスキー」——現代の感覚では奇妙に響くこの表記は、戦前の酒税法上の名残をそのまま再現した、復刻版ならではの意匠です。本作は1937年の発売当時の角瓶を、ラベルデザインから味わい設計まで現代に甦らせた記念ボトル。43%という当時の度数でボトリングされ、現行の角瓶より一段濃厚で、昭和十年代の日本人が初めて出会った「国産本格ウイスキー」の衝撃を追体験できます。カラメルとドライフルーツの深い甘み、厚い麦芽のコク、どっしりとした飲み応え——現行品と並べて飲めば、九十年の間に日本人の味覚と角瓶がどう歩み寄ってきたかが、グラスの中で対話を始めます。当店の昭和オールドボトル群とともに、「時間を飲む」楽しみの入口としてどうぞ。ウイスキーは、時代を映す鏡でもあるのです。

  • Suntory Whisky White(サントリーホワイト)
    サントリー|40%

    1929年4月1日——日本初の本格国産ウイスキー「サントリー白札」が世に出た日。現在の「ホワイト」はその直系の子孫であり、日本のウイスキーの「長男」ともいえる存在です。発売当時は本場スコッチを忠実に再現した煙たい味が「焦げ臭い」と酷評され、鳥井信治郎に日本人の味覚と向き合う試練を与えた、いわば失敗から始まった一本。しかしその挫折こそが、後の角瓶、オールド、そして山崎へと続く「日本のウイスキー」の原点になりました。現行のホワイトは、ほのかなスモーキーさと軽快な飲み口を持つ、気取らない食中ウイスキー。歴史を知って飲めば、この素朴な一杯が百年の物語の第一章であることに、しみじみとした感慨が湧きます。日本ウイスキー史の教科書の1ページ目を、ハイボールでどうぞ。

  • Suntory Royal Blended Whisky(サントリーローヤル)
    サントリー|43%

    1960年、創業者・鳥井信治郎が81歳で完成させた最晩年の傑作、それがローヤルです。酒造りに捧げた生涯の集大成として「これ以上のものはつくれん」と言わしめた渾身のブレンドは、当時のサントリーの最高峰。漢字の「酉(とり)」を象った独特のボトルと鳥居を模したキャップは、鳥井の名と日本の美意識への二重のオマージュです。山崎モルトを贅沢に配した味わいは、華やかな熟成香とふくよかなコク、絹のような滑らかさが身上。高度経済成長期の日本で「いつかはローヤル」と憧れられた、豊かさの象徴でもありました。現代のプレミアムブームの喧騒から一歩引いて、昭和の巨人が最後に磨き上げた円熟の味を、ロックでゆっくりと。信治郎翁の遺言のような一杯です。

  • Suntory Special Reserve(スペシャルリザーブ・現行)
    サントリー|40%

    1969年、サントリー創業70周年を記念して誕生したスペシャルリザーブは、翌70年の大阪万博とともに「世界に胸を張れる日本のウイスキー」として時代の寵児となりました。白州モルトを核に据えたブレンドは、森の若葉のような爽やかさとバニラの甘み、軽快でクリーミーな口当たりが特徴で、重厚なオールドやローヤルとは対照的な、モダンで明るい性格です。当店では昭和・平成・令和——三つの時代のリザーブを揃えており、同じ銘柄が半世紀でどう変化したかを一晩で飲み比べられる、ちょっとした「味の考古学」をお楽しみいただけます。時代ごとの原酒事情、日本人の嗜好の変遷、ボトルデザインの移ろい——一つの銘柄を定点観測することでしか見えない歴史があります。まずは現行から、時間旅行の起点として。

ニッカウイスキー

  • Single Malt Yoichi(シングルモルト余市)
    ニッカウヰスキー・余市蒸溜所(北海道余市町)|45%

    スコットランドで本場のウイスキー造りを学んだ竹鶴政孝が、「日本で最もスコットランドに似た土地」として選んだのが北海道・余市でした。1934年、大手を離れ、リンゴジュースを売って糊口をしのぎながら建てた蒸溜所——NHK朝ドラ「マッサン」で日本中が涙したあの物語の舞台です。余市の代名詞は、今や世界でもほぼ絶滅した「石炭直火蒸溜」。職人がスコップで石炭をくべ、荒々しい直火で焚かれた原酒は、力強く、香ばしく、微かな潮とピートの気配を纏います。グラスからは麦芽の厚い甘みと燻香、余韻には日本海の海風のような塩気。45%の骨太な酒躯は、まさに「男のウイスキー」と呼ばれた竹鶴イズムの結晶です。クラフト蒸溜所の原点にして頂点のひとつを、ストレートかトゥワイスアップで。

  • Single Malt Miyagikyo(シングルモルト宮城峡)
    ニッカウヰスキー・宮城峡蒸溜所(宮城県仙台市)|45%

    「余市とは正反対の酒質を」——1969年、竹鶴政孝が第二の蒸溜所の地に選んだのは、二つの清流が合流する仙台郊外の峡谷でした。伝えられるところでは、竹鶴はこの地の川の水で持参のウイスキーを割って飲み、即座に建設を決めたといいます。余市の石炭直火に対し、宮城峡は蒸気による間接加熱。バルジ型の大きなポットスチルでゆっくり蒸溜された原酒は、華やかで、フルーティで、絹のようにたおやか。りんごや洋梨のエステル香、白い花、シェリー樽由来の甘やかなドライフルーツが幾重にも重なり、45%とは思えぬ優美な飲み口です。剛の余市、柔の宮城峡——二つの蒸溜所を並べて飲めば、竹鶴が設計した「ブレンドのための対極」の思想が見えてきます。エレガント派のあなたには、まずこちらを。

  • Taketsuru Pure Malt(竹鶴ピュアモルト)
    ニッカウヰスキー|43%

    日本のウイスキーの父・竹鶴政孝。その名を冠したピュアモルトは、余市と宮城峡——竹鶴が生涯をかけて築いた二つの蒸溜所のモルトだけをヴァッティングした、いわばニッカの魂の結晶です。余市の力強さと燻香、宮城峡の華やかさと柔らかさ。性格の異なる二つの原酒が、名ブレンダーたちの手で一つの調和へと編み上げられ、りんごや杏の果実味、麦芽の香ばしさ、穏やかなピート、シェリー樽の甘みが美しい層をなします。竹鶴17年・21年が世界最高賞を重ねて伝説となり終売した今、その血脈を受け継ぐ現行の竹鶴は、ニッカの現在地を映す鏡でもあります。43%の均整の取れた飲み口は、ストレートでもハイボールでも崩れません。「マッサン」の生涯を一杯に凝縮した、物語とともに味わうべきモルトです。

  • Nikka Whisky From The Barrel(フロム・ザ・バレル)
    ニッカウヰスキー|51.4%

    1985年誕生。モルトとグレーンをブレンドした後、再び樽に戻して数ヶ月「再貯蔵(マリッジ)」し、樽出しに近い51.4%でボトリングする——その名の通り「樽から直接」の思想を体現した、ニッカの世界的傑作です。四角いミニマルなボトルはデザイン賞の常連であり、中身は英国の品評会で幾度も最高賞に輝いた実力派。凝縮された蜂蜜とカラメルの甘み、熟した果実、スパイス、そしてビターな樽香が、高濃度のまま口中で爆ぜるように広がります。この品質でこの価格という驚異のコストパフォーマンスは、世界中のバーテンダーが「最強の一本」に挙げる理由そのもの。ロックで徐々にほどける甘みを追うもよし、濃いめのハイボールで香味の奔流を浴びるもよし。ニッカの技術力の凄みを、最も雄弁に語るボトルです。

  • Nikka Coffey Malt Whisky(カフェモルト)
    ニッカウヰスキー|45%

    「カフェ」とはコーヒーではなく、19世紀に発明された旧式の連続式蒸溜機「カフェスチル」のこと。効率の悪さゆえ世界中で姿を消したこの古典的な蒸溜機を、竹鶴政孝は1963年、あえて英国から輸入しました。理由はただ一つ——新式より香味成分が豊かに残るから。本作はそのカフェスチルで、通常はグレーンに使う装置に麦芽100%を通すという型破りな発想から生まれたウイスキーです。ポットスチルのモルトとも、通常のグレーンとも違う、唯一無二の味わい——バニラとバナナ、焼き菓子のような甘く香ばしい香りがふくよかに広がり、口当たりはとろりと滑らか。ウイスキーの分類の隙間に咲いた徒花のような一本ですが、その美味しさは折り紙付き。竹鶴の「効率より品質」の哲学が、六十年の時を超えて香り立ちます。

  • Nikka Coffey Grain Whisky(カフェグレーン)
    ニッカウヰスキー|45%

    カフェモルトの兄弟分にして、世界に「ジャパニーズグレーン」の名を知らしめた立役者。トウモロコシ主体の原料を旧式カフェスチルでゆっくり蒸溜した本作は、新式の連続式蒸溜機では削ぎ落とされてしまう原料由来の甘い香味成分を、たっぷりと抱いたまま樽に入ります。グラスからはバニラ、メープルシロップ、熟したバナナの甘く艶やかな香り。口に含めばシルクのような滑らかさとともに、バーボンを思わせる甘美な風味が広がり、余韻まで優しく続きます。ブレンデッドの脇役と侮られてきたグレーンが、これほど官能的な主役になれるという発見は、世界のウイスキーファンに衝撃を与えました。デザート代わりの食後の一杯に、あるいはウイスキーが苦手な方の最初の一杯に。甘い香りの魔法をどうぞ。

  • The Nikka Tailored(ザ・ニッカ テーラード)
    ニッカウヰスキー|43%

    「テーラード」——仕立ての良い一着のように、細部まで計算し尽くされたプレミアムブレンデッド。余市・宮城峡のモルトに、カフェスチルのグレーンを合わせ、ニッカのブレンダー陣が持てる技術のすべてを注いで織り上げた、現行ラインの最上位格です。長期熟成原酒を惜しみなく配した液体は、ドライフルーツと蜂蜜の熟した甘み、カフェグレーン由来のバニラの艶、微かなピートの陰影が完璧な均衡で溶け合い、絹のドレープのような滑らかさで喉を滑り落ちます。派手な限定商法とは無縁の、静かな最高級——それは「宣伝より品質」を貫いた竹鶴政孝の美学の、現代における継承でもあります。大切な方との一杯に、あるいは一日の終わりの自分への一着として。仕立ての良さは、袖を通せば——いえ、口に含めば分かります。

  • Nikka Frontier(ニッカ フロンティア)
    ニッカウヰスキー|48%

    2023年登場、ニッカの新世代を担うフロンティア。その名の通り「開拓地」を意味するこのボトルは、モルト比率を高め、48%・ノンチルフィルタードという骨太な仕様で、若い世代とウイスキー愛好家の両方に切り込む意欲作です。余市のピーテッドモルトを効かせた構成は、フロム・ザ・バレルとはまた違う方向の力強さ。焚き火の燻香と麦芽の厚い甘み、オレンジピールのビター、そしてオイリーな質感が、加水に負けない濃度で押し寄せます。設計思想は明快で、「ハイボールにしても味が痩せないウイスキー」。当店の天然水強炭酸で作るフロンティアハイボールは、燻香が泡とともに弾ける会心の一杯になります。竹鶴政孝が愛した開拓者精神(フロンティアスピリット)の名を継ぐ、ニッカの現在進行形です。

  • Super Nikka(スーパーニッカ)
    ニッカウヰスキー|43%

    1962年、最愛の妻リタを前年に亡くした竹鶴政孝が、悲しみの中で息子・威と共に造り上げた鎮魂のウイスキー——それがスーパーニッカです。初代ボトルは職人が一本ずつ手吹きで仕上げたクリスタルガラスで、当時の大卒初任給に迫る価格ながら、その品質への執念が evidence となって伝説化しました。スコットランドから単身日本へ嫁ぎ、生涯マッサンを支え続けたリタ。彼女に捧げられた液体は、余市モルトの力強さを宮城峡登場後は華やかさで包み、深いコクと気品ある甘みが調和する、ニッカの良心そのものの味わいです。現行品もその精神を受け継ぎ、43%の端正な骨格に燻香と果実味が静かに同居します。夫婦の物語を知ってから飲むと、この一杯の柔らかさが少し違って感じられるはずです。

  • Pure Malt Black(ピュアモルト ブラック)
    ニッカウヰスキー|43%

    1984年、無駄を削ぎ落とした円筒形のボトルデザインで一世を風靡したピュアモルトシリーズ。その「黒」は、余市モルトを主体に据えた、スモーキー&ソルティ路線の代表格です。ラベルも装飾も最小限——語るべきは中身だけ、という潔い思想は、発売から四十年を経てなおモダンに映ります。グラスからは石炭直火由来の香ばしい燻香、麦芽の厚い甘み、微かな潮の気配。口中ではピートのビターと蜂蜜の甘みが交互に現れ、余市らしい骨太な余韻へと続きます。43%ながら飲み応えは十分で、シングルモルト余市への入口としても最適な立ち位置。対をなす「赤」と並べて飲めば、ニッカの二大蒸溜所の個性が白黒——いえ紅黒はっきりと分かります。デザイン史に残る名ボトルを、ぜひ手に取ってその佇まいからご堪能ください。

  • Pure Malt Red(ピュアモルト レッド)
    ニッカウヰスキー|43%

    ブラックの対をなす「赤」は、宮城峡モルトを主役に据えた華やか路線。同じ蒸溜年数、同じ度数、同じミニマルなボトルでありながら、中身の性格はまるで違う——この対比構造こそ、ピュアモルトシリーズの発明でした。グラスからは、りんごのコンポートや洋梨、白い花を思わせる宮城峡らしいエステル香が明るく立ち上り、シェリー樽由来の甘酸っぱいベリーのニュアンスが華を添えます。口当たりは軽やかで艶があり、ピートはほんの隠し味程度。余韻はフルーティに、優しくほどけていきます。ウイスキー初心者の方や、華やかな香りがお好きな方の「最初のモルト」として自信を持ってお薦めできる一本。ブラックとレッド、二杯で巡るニッカの南北ツアーは、当店の密かな人気コースです。まずは香りの違いを、グラスを並べて。

  • Hi Nikka(ハイニッカ)
    ニッカウヰスキー|39%

    1964年、東京オリンピックの年。「うまくて安いウイスキーを庶民に」という竹鶴政孝の信念から生まれたのがハイニッカです。当時の二級ウイスキーとしては異例なほどモルトを効かせた設計で、価格を抑えながら品質には一切妥協しない——儲けより誇りを取った竹鶴らしい一本として、高度成長期の労働者たちの晩酌を支え続けました。39%という控えめな度数、軽快な飲み口、麦芽の素朴な甘みとほのかな燻香。派手さは皆無ですが、毎晩の食卓に寄り添って半世紀以上愛され続けた事実こそが、何よりの品質証明です。プレミアボトルが高騰する時代だからこそ、こういう「正直な酒」の価値が沁みます。昭和の父たちが愛した味を、濃いめの水割りかハイボールで。時代を超える普段着の名品です。

  • Black Nikka Special(ブラックニッカ スペシャル)
    ニッカウヰスキー|42%

    ラベルの「ヒゲのおじさん」——正式名はキング・オブ・ブレンダーズ。19世紀英国の伝説的ブレンダーがモデルのこの紳士は、右手に大麦、左手にグラスを掲げ、半世紀以上ニッカの顔を務めてきました。ブラックニッカスペシャルは1967年生まれのロングセラーで、シリーズの原点の味を今に伝える生き証人です。42%というこの価格帯では珍しい度数設定に、カフェグレーンの甘みと余市由来のほのかなピートを効かせた構成は、値段を知って飲むと必ず驚かれる完成度。カラメルの香ばしい甘み、麦芽のコク、微かな燻香が、気取らない佇まいの中でしっかりと調和しています。バーで注文するには渋すぎる?——いえ、こういう一本を美味しく出せるかどうかが、バーの腕の見せどころです。ヒゲの紳士と乾杯を。

  • Black Nikka Deep Blend(ブラックニッカ ディープブレンド)
    ニッカウヰスキー|45%

    2015年登場、ブラックニッカ第三の柱。「深夜、ゆっくりと向き合う一杯」をコンセプトに、新樽熟成モルトの甘く香ばしいバニラと、45%の厚い飲み応えを両立させた現代の傑作です。ウイスキー市場が回復期に入った時代、「安いが薄い」の常識を覆すべく設計されたこの一本は、価格帯の常識を超えた濃密さで瞬く間に定番の座を掴みました。グラスからはビターチョコレートとバニラ、焦がしカラメルの深い香り。口中では新樽由来の甘香ばしさがどっしりと広がり、ほのかなピートが底を支えます。ロックで氷が溶けるほどに甘みがほどける設計は、まさに夜更けの独酌向き。当店では終電を逃した夜の「もう一杯」として、そっとお出しすることの多い銘柄です。深いブレンドの名は、伊達ではありません。

キリンウイスキー・他

  • 富士御殿場蒸溜所 Fuji Single Malt Japanese Whisky
    キリンディスティラリー・富士御殿場蒸溜所(静岡県御殿場市)|46%

    霊峰富士の裾野、標高620メートル。年間を通じて霧が立ちこめる冷涼な御殿場の地に、1973年、キリンと海外の名門(シーグラム、シーバスブラザーズ)の提携で建てられたのが富士御殿場蒸溜所です。富士山に降った雪と雨が五十年の歳月をかけて濾過された伏流水を仕込みに使い、世界的に評価されるマスターブレンダーの手で磨かれるモルトは、「クリーン&エステリー」の一言に尽きます。本作は蒸溜所の名を冠したシングルモルト。熟した洋梨や青りんご、白桃を思わせる透明感ある果実香が立ち、46%の骨格の中で、雑味のない麦芽の甘みが真っ直ぐに伸びていきます。富士の名水がそのまま琥珀になったかのような、清冽で端正な味わい。世界のコンペで金賞を重ねる実力を、霊峰の風景とともに。

  • 富士御殿場蒸溜所 Fuji Single Grain Japanese Whisky
    キリンディスティラリー・富士御殿場蒸溜所(静岡県御殿場市)|46%

    富士御殿場蒸溜所の真の凄みは、実はグレーンにあります。この蒸溜所は世界でも稀な「三種類のグレーン原酒」を一箇所で造り分ける設備を持ち、バーボンタイプの重厚な原酒、カナディアンタイプの軽やかな原酒、スコッチタイプの中間的な原酒を、それぞれ専用の蒸溜器で仕込んでいるのです。本作はその三位一体のグレーンを結集したシングルグレーンで、国際コンペティションで世界最高賞に輝いた経歴を持つ、日本グレーンの最高峰のひとつ。グラスからは熟した果実とバニラ、メープル、微かなオークの香りが幾層にも立ち、口当たりは驚くほど複雑で艶やか。「グレーンは単調」という先入観を、一口で粉砕してくれます。知多、カフェグレーンと並べる「日本三大グレーン飲み比べ」も、当店ならではの遊びです。

  • Kirin-Seagram Emblem Premium Whisky
    キリン・シーグラム|43%・平成

    「キリン・シーグラム」——この社名自体が、今や歴史の証人です。キリンと世界最大級の酒類企業シーグラムの合弁として歩んだ時代(1972〜2002年)に生まれたエンブレムは、平成初期のプレミアムブレンデッド。国産ウイスキーが特級の金看板とともに歩んだ最後の時代の空気を、そのまま瓶に閉じ込めています。御殿場のグレーンと輸入モルトを含む国際的なブレンド設計は、シーグラム時代ならではの洗練で、熟した果実とカラメルの甘み、滑らかな口当たり、上品にまとまる余韻が特徴。現在は社名も存在せず、もちろん再生産もありません。バブルの残照の中で真面目に造られた一本を開けるたび、残量とともに一つの時代が静かに減っていく——オールドボトルとは、そういう飲み物です。平成を知る方も知らない方も、ぜひ。

日本のオールドウイスキー

昭和・平成のボトルを、当時の姿のまま。ウイスキーは瓶の中でも僅かに呼吸を続け、同じ銘柄でも時代ごとの原酒事情と日本人の味覚を映して味を変えます。もう二度と生産されない「時間そのもの」を、グラス一杯からどうぞ。オールドボトルはすべて飲み放題(60-MINUTES CRAFT FREE-FLOW)の対象でもあります。

  • Suntory Whisky Crest 12 Years(サントリー クレスト12年)
    サントリー|43%・昭和〜平成

    1989年、サントリー創業90周年を記念して、響17年と同時期に世に出たプレミアムブレンデッド。酒庫に眠る160余万樽から酒齢12年以上の円熟モルトを吟味し、同じく12年以上のグレーンと合わせた、バブル絶頂期の日本が生んだ贅沢の結晶です(2006年頃終売)。そして忘れてならないのが1992年のCM——ジェームズ・ボンドその人、ショーン・コネリーの起用です。スコットランド訛りを生涯矯正しなかったスコットランドの誇りの塊のような男が、日本のウイスキーの広告に出た。本国の新聞が騒然とする中、彼は毅然と言い放ちました。「私が美味しいと思ったから出たんだ。何かおかしいかね?」——痺れる話です。蜂蜜とドライフルーツ、ナッツの円熟した香味は、まさに「昔のサントリーの美学」。現在の山崎NVより手の届く価格で、二度と作られない味を体験できます。コネリーが認めた一杯を、ぜひ。

  • Suntory Old Whisky(サントリーオールド・ダルマ)
    サントリー|43%・昭和

    丸く黒い瓶の姿から「ダルマ」「タヌキ」と愛された、日本ウイスキー史上最大のベストセラー。1950年に発売されたオールドは高度経済成長とともに国民の憧れとなり、1980年(昭和55年)には年間1,240万ケース——本数にして1億4,880万本、毎日約40万本のオールドが日本のどこかで開けられていた計算になります。当時の成人人口は約8,000万人。つまり日本の大人1人あたり年間1.8本のダルマを飲んでいた——単一ブランドとして世界の酒類史に類を見ない、空前の大記録です。トリスバーの暖簾から始まった庶民とウイスキーの物語が、この黒い瓶で頂点を迎えました。シェリー樽の甘い熟成香、まろやかなコク、どこか懐かしい余韻。昭和の宴席の記憶そのものを、当時のボトルからどうぞ。日本人が最も愛したウイスキーの味を知らずして、ジャパニーズウイスキーは語れません。

  • Suntory Old Whisky (Mild and Smooth)
    サントリー|40%・平成

    同じダルマでも、こちらは平成のダルマです。1980年の絶頂から一転、焼酎ブームと嗜好の多様化、平成元年の酒税法大改正——「特級」の金看板の廃止とともに、国産ウイスキーは坂を転げ落ちるように売上を減らしました。頂点からの四半世紀で消費量は実に五分の一へ。その冬の時代に、オールドは「Mild and Smooth」を掲げ、度数を40%に落とし、軽やかで飲みやすい方向へと舵を切ります。昭和のダルマと並べて飲めば、その違いは歴然。重厚な熟成香の昭和に対し、平成はすっきりと柔らかく、時代が求めた「軽さ」がそのまま味になっています。ウイスキーの味は、造り手だけでなく時代が決める——一つの銘柄の二つの時代を飲み比べることは、日本の現代史を舌で読むことに他なりません。当店ならではの「ダルマの新旧対決」、ぜひ体験してください。

  • Suntory Whisky Royal SR
    サントリー|43%・昭和

    創業者・鳥井信治郎が最晩年に完成させた最高峰「ローヤル」の、昭和期のボトルです。ラベルに輝く「SR」はSuntory Royalの頭文字。漢字の「酉」を象った独特の瓶と鳥居型のキャップは当時のまま、中身は昭和の潤沢な長期熟成原酒で組まれた、いわば「本物の昭和のローヤル」です。オールドボトルの面白さは、単なる懐古趣味ではありません。瓶の中でも酒は微かに熟成を続け(オールドボトル効果)、数十年の歳月が角を丸め、香味を溶け合わせて、新品時とも現行品とも違う独特のまろみを生むのです。グラスからは熟した果実と蜂蜜、古い洋箪笥のような落ち着いたウッディネス。口当たりはとろりと柔らかく、余韻は静かに長く続きます。高度成長期の日本人が「いつかは」と夢見た一本を、その時代の空気ごと味わう——バーでしかできない時間旅行です。

  • Suntory Special Reserve
    サントリー|43%・昭和

    1969年、創業70周年と大阪万博前夜の高揚の中で生まれたスペシャルリザーブの、昭和当時のボトルです。現行のリザーブが白州モルトの爽やかさを身上とするのに対し、昭和のリザーブは43%の骨格に厚い熟成モルトをまとった、より重心の低い味わい。半世紀の瓶内熟成がそこに丸みを加え、蜂蜜とドライフルーツ、微かな古酒めいた艶が幾重にも重なります。当店では、この昭和リザーブに加えて平成・令和の各時代のリザーブを揃えており、三世代を一晩で飲み比べる「リザーブの半世紀」をお楽しみいただけます。同じ名前の酒が、時代の原酒事情と日本人の味覚に合わせてどう姿を変えてきたか——それは一つのブランドに刻まれた戦後日本の年輪です。万博の年に生まれた一本を、二度目の大阪万博も過ぎた今の東京で。感慨もまた、酒の肴です。

  • Suntory Special Reserve 10 Years Married in Sherry Cask
    サントリー|40%・平成

    平成期に存在した、リザーブの上級バリエーション。10年以上熟成の原酒をブレンドした後、シェリー樽で「マリッジ(後熟)」させるという、当時としては贅沢な二段仕込みのボトルです。マリッジとは、ブレンド後の原酒たちを樽の中で寄り添わせ、味をひとつに溶け合わせる工程のこと。シェリー樽でのマリッジは、レーズンやいちじくの甘美な衣を全体にまとわせ、リザーブ本来の爽やかさに艶やかな深みを与えました。現在では終売となり、市場で見かけることも稀な一本。グラスからは熟した果実とシェリーの甘い香り、口中では40%とは思えぬ厚みのあるコクが広がり、ビターカカオの余韻が長く続きます。年数表記のあるリザーブ自体が今や貴重で、原酒が潤沢だった時代の余裕を感じさせる仕様です。失われた平成の贅沢を、グラスの中で。

  • 角 Suntory Whisky 白(Clear & Smooth)/ 黒(Special Quality)
    サントリー|40%・平成

    角瓶に「白」と「黒」の兄弟がいたことを、覚えている方はどれだけいるでしょうか。平成の一時期、定番の角瓶(黄)を挟んで展開されたバリエーションで、白角は「Clear & Smooth」——すっきり軽やかな食中酒路線、黒角は「Special Quality」——樽香を効かせた濃厚路線と、明確に性格を分けた設計でした。白角は2019年に休売となり、SNSで惜しむ声が溢れたのも記憶に新しいところ。いずれも現在は入手困難で、居酒屋の棚から静かに消えていった「平成の風景」の一部です。白のクリアな飲み口はハイボールで真価を発揮し、黒はロックで樽の甘香ばしさがゆっくりとほどけます。黄・白・黒——角瓶三兄弟を並べて飲み比べれば、一つのブランドの中でサントリーが試みた味の実験が見えてきます。懐かしさと発見を、一杯ずつ。

  • Kingsland Nikka Whisky Premier(キングスランド)
    ニッカウヰスキー|43%・昭和

    ニッカの歴史の中でも、ひときわ謎めいた輝きを放つ高級ブランド「キングスランド」。昭和の贈答文化が最も華やかだった時代、特別な相手への進物として、また接待の席の格式を示す一本として流通した、知る人ぞ知るプレミアムブレンデッドです。重厚なボトルと王冠を思わせる意匠は、その名の通り「王の土地」の風格。中身は余市の長期熟成モルトを惜しみなく配した当時のニッカの粋で、半世紀近い瓶内熟成を経た今、開栓すれば古き良きニッカの香りが立ちのぼります。熟したプラムと黒糖、微かなピート、古い書斎のようなウッディネス——現行品では決して出会えない、時間だけが作れる味わいです。ニッカファンでも実物を見たことのない方が多い希少ボトル。竹鶴政孝がまだ存命だった時代の空気を、ぜひ一杯に。

  • Black Nikka Deluxe(ブラックニッカ デラックス)
    ニッカウヰスキー|42%・昭和

    ヒゲの紳士「キング・オブ・ブレンダーズ」がラベルに鎮座する、昭和のブラックニッカ。高度経済成長期、仕事帰りの父たちのグラスを満たし続けた国民的ブランドの、当時の姿そのままのボトルです。42%という現代の同価格帯より高い度数設定は、「安くても本物を」という竹鶴政孝の意地の表れ。モルトの厚み、カラメルの甘み、ほのかなピートが、飾らない骨格の中でしっかりと組み上がっています。数十年の瓶内熟成は、この庶民の酒にも等しく魔法をかけました。角が取れ、香味が溶け合い、開栓の瞬間に立ちのぼるのは、昭和の酒場の空気そのもの。プレミアムボトルのオールドが高騰する中、こうした大衆銘柄のオールドこそ、当時の日本人が実際に飲んでいた「本当の味の記録」です。歴史は、庶民のグラスの中にこそ宿ります。

  • Nikka All Malt(ニッカ オールモルト)
    ニッカウヰスキー|43%・平成

    1990年発売。「モルトだけでつくりました」——グレーンを一切使わず、ポットスチルのモルトとカフェスチルで蒸溜したモルト(カフェモルト)だけをブレンドするという、世界的にも異例の設計思想で生まれた平成初期の意欲作です。通常ならグレーンが担う「つなぎ」の役割を、旧式カフェスチル由来の柔らかなモルトに任せる発想は、カフェスチルを持つニッカにしか実現できない離れ業でした。麦芽100%ゆえの厚い甘みと香ばしさに、カフェモルト特有のバニラとバナナの優しい風味が重なり、43%の飲み口は見た目の武骨さに反してどこまでも滑らか。ウイスキー冬の時代に品質で勝負を挑んだ、ニッカの気骨を感じる一本です。後のカフェモルト単独商品の原型ともいえる存在で、ニッカの技術史を辿る上でも外せないボトル。平成の実験精神を、グラスの中に。

日本のジン

Japanese Craft Gin

柚子、山椒、檜、桜、緑茶――日本の風土をボタニカルに写し取った国産クラフトジン。北海道産トニックウォーターと徳島県産・愛媛県産ライムで、ジントニックの完成度まで国産にこだわります。

  • 紅櫻蒸留所 9148 #0101 STANDARD
    北海道自由ウヰスキー・紅櫻蒸留所(北海道札幌市)|45%

    札幌の日本庭園・紅櫻公園の一角に2018年に誕生した、北海道初のクラフトジン専門蒸溜所。ブランド名「9148」は、ジョージ・オーウェルの管理社会小説『1984』へのオマージュ——「自由な酒造り」への意志表明です。その看板作#0101の最大の個性は、ボタニカルに日高昆布、干し椎茸、切干大根という「和の出汁素材」を据えたこと。ジュニパーの針葉樹香の奥から、まさかの旨味がじんわりと立ちのぼる、世界でも類を見ない「UMAMIジン」です。ジントニックにすれば出汁の気配が涼やかに溶け、和食との相性は他のどのジンにも真似できません。当店の鰹節カクテルや昆布出汁の梅干しサワーと同じ思想——「旨味は日本の香水である」を、北の大地から証明した一本。ジンの常識を心地よく裏切られてください。

  • 紅櫻蒸溜所 9148 #0103 YUKI Craft Gin 白樺
    北海道自由ウヰスキー・紅櫻蒸留所(北海道札幌市)|40%

    「YUKI」——雪。北海道の冬をそのまま瓶に封じたような、白樺のジンです。主役のボタニカルは北の森の象徴・白樺(シラカバ)。樹液を春先にだけ採れる白樺は、古来より北方民族が「森の恵み」として大切にしてきた木であり、その澄んだ甘みと森林の清冽な香りが、このジンの静かな核になっています。グラスに注ぐと、雪解けの森を歩くような透明感ある香りがふわりと立ち、ジュニパーの輪郭にほのかな樹液の甘みが寄り添います。40%の穏やかな度数も相まって、口当たりは新雪のように柔らか。トニックで割れば白樺の甘みが際立ち、ソーダなら森の空気そのもののような一杯に。派手なボタニカルの競演ではなく、一つの木と静かに向き合う——雪国の美意識が香る、瞑想的なジンです。

  • 紅櫻蒸留所 9148 #0104 HAMANASU Craft Gin
    北海道自由ウヰスキー・紅櫻蒸留所(北海道札幌市)|45%

    ハマナス——北海道の初夏、海岸の砂地に濃桃色の花を咲かせる野生のバラ。「知床旅情」にも歌われた北の浜辺の象徴を主役に据えた、紅櫻蒸留所の花のジンです。ハマナスの花びらが持つ、ローズよりも野性的で、どこか潮風を含んだような香りは、栽培種のバラでは決して出せない北海道の海辺のテロワールそのもの。グラスからは華やかなフローラルの香りが立ち、その奥にジュニパーの芯と微かな塩の気配が揺れます。口当たりは艶やかで、花の蜜のような甘い余韻がやさしく続きます。トニックで割ればロゼのような色気ある一杯に、ソーダなら浜辺の風のように軽やかに。女性のお客様への最初の一杯としても人気の高い、絵になるジンです。北の浜に咲く一輪を、東麻布のグラスの中に。

  • 紅櫻蒸留所 9148 #0303 Triple-Sec Craft Gin
    北海道自由ウヰスキー・紅櫻蒸留所(北海道札幌市)|57%

    ジンでありながら「トリプルセック」を名乗る、紅櫻らしい越境的な実験作。トリプルセックとはオレンジの果皮を主役にしたリキュールの伝統様式ですが、本作はその柑橘の哲学をジンの文法で再解釈——オレンジピールの華やかな香味を、砂糖の甘さではなく57%のハイプルーフな蒸溜酒として表現しました。グラスからは弾けるようなオレンジの精油香、ジュニパーの針葉樹の芯、微かなビターな皮の陰影。糖分に頼らない分、柑橘の香りは驚くほど立体的で、度数の熱がそれを力強く押し上げます。ホワイトレディやマルガリータのトリプルセックをこれに置き換えれば、カクテルの骨格が一変する——バーテンダー心をくすぐる設計です。もちろんソーダ割りで「大人のオレンジスカッシュ」としても。自由な発想の蒸溜所の、自由の極みのような一本です。

  • サントリー 六 ROKU GIN
    サントリー(大阪府)|47%

    桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒、柚子——日本の四季を彩る六つの和素材を、それぞれ最適な旬に収穫し、素材ごとに蒸溜方法を変えて仕込む。サントリーが世界市場に問うたジャパニーズクラフトジンの旗艦「六(ROKU)」です。六角形のボトルの各面には六つのボタニカルが彫り込まれ、手にした瞬間から日本の美意識が伝わる設計。春の桜、夏の茶、秋の山椒、冬の柚子と、一本の中を季節が巡ります。グラスからは桜の柔らかな花香と玉露の深い旨み、口中では山椒の痺れるようなスパイスが輪郭を描き、柚子の余韻が爽やかに締めます。世界のバーの棚に日本のジンの定席を作った功績は計り知れず、いまや「日本のジンとは何か」を語る際の基準点。クラフト勢と飲み比べる「ものさしの一杯」として、まずはジントニックでどうぞ。

  • ニセコ蒸溜所 ohoro GIN
    ニセコ蒸溜所(北海道ニセコ町)|47%

    世界中のスキーヤーが憧れるパウダースノーの聖地・ニセコ。羊蹄山を望むこの地に2021年、日本酒「八海山」の八海醸造が開いたのがニセコ蒸溜所です。豪雪の名水で酒を醸してきた蔵が、雪解け水の潤沢なニセコを選んだのは必然でした。ジン「ohoro(オホロ)」は、アイヌの言葉に由来する「続く」の願いを込めた名。ニセコの森の恵みであるアカエゾマツの葉をキーボタニカルに、羊蹄山の伏流水で仕込まれた味わいは、針葉樹の森の空気を胸いっぱいに吸い込むような、凛とした透明感が身上です。ジュニパーと松の清冽な香りに、柑橘の明るさ、微かな山の湿度。47%の度数がその輪郭を最後まで保ちます。スキーの後の一杯を思わせる、雪国の澄んだジントニックを。八海山の日本酒と飲み比べれば、同じ蔵の水の哲学が見えてきます。

  • スティルダム蒸留所 STILLDAM GIN しそ梅
    スティルダム・サガ(佐賀県)|45%

    「しそ梅」——おにぎりの具ではありません、ジンです。佐賀のスティルダム蒸留所が、日本人のDNAに刻まれた赤紫蘇と梅の組み合わせを、ジンのボタニカルとして真正面から蒸溜した意欲作。梅干しの記憶を呼び覚ますこの香りの取り合わせは、考えてみればハーブ(紫蘇)と果実(梅)の組み合わせであり、ジンの文法に完璧に翻訳可能だったのです。グラスからは赤紫蘇の爽やかで少し野性的な和ハーブ香、青梅の甘酸っぱい気配、そしてジュニパーの芯。口に含めば、懐かしいのに新しいという不思議な感覚に包まれます。ソーダで割れば「飲む夏の食卓」、トニックなら洒落た紫蘇スカッシュに。当店の昆布出汁の梅干しサワーと同じ、「和の酸味と香りは世界に通じる」という確信を共有する一本です。ご飯が欲しくなったら、炊き立てご飯もございます。

  • 武蔵野蒸留所 棘玉
    武蔵野蒸留所(埼玉県)|47%

    「棘玉(とげだま)」——ジュニパーベリーの和訳ともいえるこの無骨な名前に、造り手の思想が凝縮されています。ジンの魂は、あくまでジュニパー(西洋杜松の実)。柚子や茶葉といった和素材の競演が主流の日本のクラフトジン界にあって、武蔵野蒸留所は針葉樹の実そのものの魅力を深く掘り下げる、いわば直球勝負の道を選びました。グラスからは、松林を思わせる清冽で力強いジュニパーの香りが真っ直ぐに立ち、47%の骨格がそれを支えます。口中では針葉樹の爽やかなビターに、柑橘とスパイスが控えめな彩りを添え、キレの良いドライな余韻へ。マティーニを組めば、その真価は一目瞭然です。流行の甘やかなジンに飲み疲れた夜、この棘のある一本が沁みる——ジン好きの帰る場所のような、硬派な武蔵野の銘品です。

  • 養命酒製造 香の森
    養命酒製造(長野県駒ヶ根市)|47%

    四百年、薬草と向き合い続けた会社があります——養命酒製造。1602年創業、日本人なら誰もが知る薬用酒の造り手が、そのハーブの知見を惜しみなく注いで生んだクラフトジンが「香の森」です。主役は、中央アルプス山麓の森に自生するクロモジ。高級楊枝の材として知られるこの香木は、古来「森の香水」と呼ばれ、枝を折るだけで甘くウッディな芳香を放ちます。養命酒はこのクロモジを枝ごと蒸溜するという贅沢な製法で、森林浴そのもののような香りを一本に封じました。グラスからは、ローズウッドにも似た甘い木の香り、ハーブの清涼感、ジュニパーの芯。口当たりは驚くほど滑らかで、余韻には森の静けさが長く漂います。四世紀の薬草の知恵が辿り着いたジン——ソーダ割りで、森の空気ごとお楽しみください。

  • 木内酒造 日の丸ジン 蔵風土
    木内酒造・八郷蒸溜所(茨城県石岡市)|47%

    日の丸ウイスキーの木内酒造が放つクラフトジン「蔵風土(KURA FUDO)」。その名の通り、二百年の蔵の風土を香りに写した一本で、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2025銅賞、IWSC2025銅賞と、世界の舞台でも評価を得ています。ボタニカルは国産レモンとライム、赤紫蘇、そして茨城の伝統茶「古内茶」——地元の畑と茶園の恵みを、ジュニパーの骨格の上に丁寧に重ねました。柑橘の透明感、赤紫蘇の和ハーブの陰影、山椒のような奥行き、そして静かに広がる茶の余韻。ソーダでもトニックでも崩れない芯の強さは、日本酒・ビール・ウイスキーと、あらゆる酒を造ってきた蔵の総合力の証です。八郷蒸溜所のウイスキーとの「蔵飲み比べ」もおすすめ。麻布十番・東麻布で、茨城の風土を澄んだ一杯に。

  • 日新酒類 AWA GIN
    日新酒類(徳島県)|45%

    阿波・徳島——当店のジントニックに欠かせない国産ライムの故郷であり、柑橘王国として名高い土地の地酒メーカー・日新酒類が造るのが「AWA GIN」です。ボタニカルの主役は、徳島が世界に誇る香酸柑橘・すだち。焼き魚に絞るあの緑の宝石の、鋭く清々しい香りが、ジンの姿で立ち上がります。木頭柚子や山椒など阿波の山の恵みも脇を固め、ベースには酒どころの蒸溜技術。グラスからは、すだちの弾けるような酸の香りとジュニパーの針葉樹香が涼やかに重なり、口中では柑橘の皮のほろ苦さが心地よい輪郭を描きます。徳島産ライムを添えた当店のジントニックにこのAWA GINを使えば、グラスの中は完全に阿波づくし——柑橘の産地が同じ酒と薬味は、血縁のように調和します。四国の香りの底力を、ぜひ。

  • サクラオB&D 桜尾 GIN ORIGINAL
    サクラオブルワリーアンドディスティラリー(広島県廿日市市)|47%

    広島産のレモン、ネーブル、夏みかん、柚子、青紫蘇、生姜——瀬戸内の陽光を浴びた素材を中心に、14種のボタニカルで組み上げた桜尾ジンのフラッグシップです。2018年の登場から瞬く間に世界のコンペティションを制し、「SAKURAO」の名を国際的なジンの地図に刻んだ、日本クラフトジン第一世代の傑作。広島はレモン生産量日本一の県であり、このジンの柑橘の説得力は、産地の必然に裏打ちされています。グラスからは瀬戸内レモンの明るく瑞々しい香りが弾け、緑茶と紫蘇の和の陰影、ジュニパーの芯が美しい層をなします。口当たりは軽やかで、柑橘のビターな余韻が爽やかに続く——ジントニックの王道を行く設計です。当店の北海道産トニックと国産ライムで仕立てれば、教科書のような、しかし忘れ難い一杯になります。

  • サクラオB&D 桜尾 GIN LIMITED
    サクラオブルワリーアンドディスティラリー(広島県廿日市市)|47%

    ORIGINALの上位に君臨する「LIMITED」の掟はただ一つ——ボタニカルはすべて広島県産であること。緑茶、檜、赤紫蘇、山椒、そして驚くべきことに宮島近海の牡蠣の殻まで、17種の素材を広島の山・畑・海から集め尽くした、徹底的なテロワールジンです。牡蠣殻はミネラルの気配を液体に授け、檜は宮島の社殿を思わせる神聖な木の香りを添える——グラスの中に、厳島神社の海と弥山の森が同居します。香りは複雑にして端正。柑橘、茶、木、微かな潮とスパイスが幾層にも重なり、ストレートでこそ真価が見える構築美です。世界最高賞の受賞歴も納得の完成度。ORIGINALと並べて飲めば、「良いジン」と「土地を語るジン」の違いが分かります。広島という土地を、一杯で旅してください。

  • サクラオB&D 桜尾 GIN HAMAGOU
    サクラオブルワリーアンドディスティラリー(広島県廿日市市)|47%

    ハマゴウ——漢字で「浜栲」。瀬戸内の砂浜に自生し、夏に薄紫の花を咲かせる海浜植物で、その葉と実はユーカリとローズマリーの間のような、清涼で神秘的な香りを放ちます。古くはお香や枕の詰め物に使われた「香りの薬草」を、桜尾蒸溜所は宮島周辺の浜辺から採取し、一本のジンの主役に据えました。グラスに近づけると、まず潮風とハーブが混ざったような、他のどのジンにもない独特の香気。ユーカリ様の清涼感、微かな樟脳の気配、その奥にジュニパーと柑橘が控えます。口中では涼やかなハーブの波が引いた後、ほんのりとした甘みが浜辺の余韻のように残ります。ソーダ割りにすれば、真夏の瀬戸内の海辺に立っているかのよう。植物図鑑の片隅の草が、これほどの主役になる——クラフトジンの醍醐味です。

  • サクラオB&D 桜尾 GIN WHITEHERBS
    サクラオブルワリーアンドディスティラリー(広島県廿日市市)|47%

    「白いハーブたち」の名の通り、カモミールやエルダーフラワーなど、白い花を咲かせるハーブを主題に編まれた桜尾のフローラル篇。柑橘のORIGINAL、土地のLIMITED、海辺のHAMAGOUと続く桜尾の連作において、本作は「花の章」を担います。グラスからは、洋梨のコンポートにも似たエルダーフラワーの甘く上品な香り、カモミールの蜜のような柔らかさ、その芯を支えるジュニパー。口当たりはシルクのように滑らかで、白い花束に顔を埋めるような優しい余韻が続きます。トニックで割ればエレガントの極みのような一杯になり、食前酒としても、甘いものの代わりの食後の一杯としても美しく機能します。ジンの入口を探している方、強い酒の印象に身構えている方にこそ。白い花は、いつだって最高の招待状です。

  • 大石酒造 JIN7 00
    大石酒造(鹿児島県阿久根市)|47%

    明治32年創業、鹿児島・阿久根の芋焼酎蔵・大石酒造が造るジン「JIN7(ジンセブン)」。最大の個性はベーススピリッツにあります——本格芋焼酎。ニュートラルなスピリッツから造る大半のジンと異なり、さつまいもの蒸溜酒が土台にあるため、液体の奥からほのかに芋の甘い気配が立ちのぼる、薩摩にしか造れないジンなのです。ボタニカルには鹿児島の香酸柑橘・辺塚だいだいをはじめとする地元素材を配し、ジュニパーの針葉樹香と柑橘の明るさの底に、焼酎由来のふくよかな旨みが静かに流れます。ソーダで割れば芋の甘みがふわりと顔を出し、和食との相性は抜群。「焼酎の蔵がジンを造る」のではなく「焼酎でジンを造る」——九州の蒸溜文化の地層の厚みを感じる一本です。焼酎党の方の、ジンへの架け橋としても。

  • ナンバーエイト蒸留所 NUMBER EIGHT GIN Yokohama Dry Gin
    NUMBER EIGHT DISTILLERY(神奈川県横浜市)|46%

    開港の街・横浜。日本に西洋の酒文化が最初に上陸したこの港町の一角に構えるナンバーエイト蒸留所は、醸造所併設の都市型マイクロディスティラリーとして、街の空気ごと蒸溜するようなジン造りを続けています。「Yokohama Dry Gin」はその看板作。ロンドンドライの端正な骨格に、柑橘の明るさとハーブの彩りを重ねた、港町らしく開かれた味わいです。グラスからはジュニパーと柑橘の王道的な香りが真っ直ぐに立ち、口中ではキレの良いドライな輪郭に、微かなスパイスの遊び心。カクテルベースとしての汎用性は抜群で、ジントニックからマティーニまで、どの器に注いでも横浜の粋が香ります。異国文化を呑み込んで自分の味にしてきた街のDNAが、そのまま一本のジンに——ハマっ子の心意気を、東麻布で。

  • ナンバーエイト蒸留所 NUMBER EIGHT GIN DOUBLE BOTANICAL
    NUMBER EIGHT DISTILLERY(神奈川県横浜市)|46%

    「DOUBLE BOTANICAL」——その名の通り、ボタニカルを贅沢に倍量投じた、ナンバーエイトの濃縮版です。同じレシピの素材を倍にすると、香りは単純に二倍になるのではなく、成分同士が絡み合って別の複雑さが生まれる——この化学の妙を、横浜の小さな蒸溜所は真正面から実験しました。グラスに注げば、通常版の端正な香りが一気に厚みを増し、ジュニパーの針葉樹香、柑橘の精油、ハーブとスパイスが渦を巻くように立ちのぼります。口中の密度も格別で、トニックで割ってもボタニカルの輪郭が最後まで痩せません。むしろ炭酸に負けないこの濃度こそ、本作の設計意図でしょう。通常版と並べて飲む「倍量の実験」は、ボタニカルという言葉の意味を体で理解できる格好の教材。ジン好きの探究心に応える、確信犯的な一本です。

  • TOKYO LOCAL SPIRITS ラベンダー
    TOKYO LOCAL SPIRITS(東京都)|45%

    東京で蒸溜されるボタニカル・スピリッツのシリーズ「TOKYO LOCAL SPIRITS」。その紫の一本は、ラベンダーを主役に据えた、眠りの香りの蒸溜酒です。ハーブティーやアロマの世界で「鎮静の女王」と呼ばれるラベンダーの、甘く、少し粉っぽく、どこまでも安らかな香りを、雑味なくクリアに抽出。グラスに鼻を近づけた瞬間、プロヴァンスの紫の畑と、清潔なリネンの記憶が同時に立ちのぼります。口当たりは柔らかく、フローラルの甘い気配が舌の上をすべり、静かな余韻へ。ソーダで割れば「飲むアロマテラピー」のような一杯になり、一日の緊張がグラスの中でほどけていきます。閉店前の最後の一杯に、あるいは眠る前の儀式として。東京の夜に、紫の静寂を。カモミールと並ぶ、当店の「安眠系」の看板です。

  • TOKYO LOCAL SPIRITS 薄荷
    TOKYO LOCAL SPIRITS(東京都)|45%

    薄荷(はっか)——ミントを日本語で呼ぶと、途端に縁側と蚊取り線香の夏が香ります。本作は和種薄荷の清涼感を主役にした一本で、洋のペパーミントより涼しく、スペアミントより凛とした、日本の薄荷特有の澄んだ冷気を蒸溜で閉じ込めました。かつて北見の薄荷が世界市場を席巻した時代があったように、薄荷は日本が誇るべき香りの遺産。グラスからは、鼻の奥まですっと通る清冽なメントールの風、その奥に微かな草の甘み。口に含めば体感温度が二度下がるような爽快感が広がり、余韻は驚くほど綺麗に消えます。ソーダ割りは真夏の救済そのもの。ゆずモヒートのミントをこれに重ねる裏技も、当店ならではの遊びです。暑い夜、汗を引かせる最初の一杯として——日本の夏の記憶を、蒸溜酒で。

  • TOKYO LOCAL SPIRITS 東京のキンモクセイ
    TOKYO LOCAL SPIRITS(東京都)|47%

    十月のある朝、通勤路で不意に甘い香りに包まれて足を止める——東京人なら誰もが知る、あの金木犀の瞬間を一年中グラスに呼び出せる魔法の一本です。「東京のキンモクセイ」という名が示す通り、これは花の蒸溜酒であると同時に、都市の秋の記憶の蒸溜酒。開花からわずか数日で散ってしまう儚い花の、蜜のように甘く華やかな香りを、過度な甘さに寄らない透明感のまま封じ込めました。グラスからは杏にも似た金木犀特有のフルーティな花香がふわりと立ち、口当たりは軽やかで上品。余韻はやさしく、長く続きます。ソーダで割れば秋の夕暮れの散歩道が、トニックなら少し洒落た金木犀スカッシュが完成します。季節を先取りするもよし、過ぎた秋を惜しむもよし。日本人の情緒の琴線に、これほど直接触れる酒も稀です。

  • TOKYO LOCAL SPIRITS カモミール
    TOKYO LOCAL SPIRITS(東京都)|45%

    りんごに似た甘い香りから、ギリシャ語で「大地のりんご」と名付けられたカモミール。ハーブティーの定番中の定番を、お茶ではなく蒸溜酒として味わうという発想の一本です。ジュニパーに寄りすぎず、カモミールの甘やかで穏やかな香りを主役に据えた設計は、シリーズ中もっとも優しい性格。グラスからは、蜂蜜を垂らしたカモミールティーを思わせる、まろやかで安らかな香りが立ちのぼります。口当たりは丸く、フローラルでありながら軽やかで、飲み疲れしないバランスが見事。ソーダで割れば、湯気の立たない冷たいハーブティーのような、新しい寛ぎの一杯になります。カフェインを気にせず飲める夜のカモミールとして、また強い酒の合間の「休符」として。リラックスという言葉を、そのまま液体にしたような東京のスピリッツです。

  • 虎ノ門蒸留所 COMMON GIN
    虎ノ門蒸留所(東京都港区)|45%

    当店から歩いて行ける距離に、蒸溜所があります——虎ノ門蒸留所。再開発で生まれ変わる虎ノ門の街角に構えた都市型マイクロディスティラリーで、ガラス越しに蒸溜器が覗ける「街に開かれた酒造り」を実践する、東京の新しい風景です。「COMMON GIN」の名には、特別な日ではなく日常(コモン)に寄り添うジンでありたいという思想が込められています。気負いのない端正なドライジンとして設計された味わいは、ジュニパーの芯に柑橘とハーブが穏やかに寄り添い、ソーダでもトニックでも素直に伸びる汎用性が身上。港区で蒸溜された酒を、港区のバーで飲む——これ以上ないローカル・サーキュラーな一杯です。散歩の途中に蒸溜所を覗いてから当店へ、という「虎ノ門〜東麻布ジン散歩」もおすすめの週末コースです。

  • 三和酒類 TUMUGI WAPIRITS
    三和酒類(大分県宇佐市)|40%

    「いいちこ」の三和酒類が世に問うた新ジャンル「WAPIRITS(ワピリッツ)」——和+スピリッツの造語です。TUMUGI(紬)と名付けられた本作の核は、日本の酒造りの魂である「麹」。大麦麹で醸したもろみを蒸溜した原酒をベースに、柑橘などのボタニカルを重ねた液体は、ジンでも焼酎でもない、日本独自の蒸溜酒の新しい織物です。グラスからは麹由来の甘く華やかな吟醸香、柑橘の明るさ、微かな穀物の温かみが立ちのぼり、40%とは思えない柔らかな口当たりが続きます。ソーダ割り、お茶割り、カクテルベースと懐は深く、特に緑茶と合わせた「TUMUGI茶割り」は麹と茶の旨みが響き合う和の傑作。麦焼酎で国民酒を作った蔵が、次の百年を見据えて紡ぎ始めた糸——その最初の一反を、ぜひ。

  • 三和酒類 TUMUGI BUNTAN
    三和酒類(大分県宇佐市)|43%

    TUMUGIの麹スピリッツに、高知の太陽の恵み・文旦(ぶんたん)を重ねた柑橘篇。文旦は日本の柑橘の中でも最大級の果実で、その分厚い皮には、グレープフルーツより上品で、柚子より甘やかな、独特の気品ある香りが宿ります。剥くそばから部屋中に広がるあの香りを、麹の柔らかな甘みの上に丁寧に乗せた本作は、和柑橘の底力を教えてくれる一本です。グラスからは文旦の皮の爽やかでほろ苦い精油香が瑞々しく立ち、麹由来のふくよかな甘みがそれを下から支えます。口中では柑橘の酸と苦みと甘みが美しい三重奏を奏で、余韻は春の陽だまりのように温か。ソーダで割れば、皮ごとかじる文旦のような贅沢な一杯に。冬から春への季節の変わり目に、特に恋しくなる味です。麹と柑橘——日本の香りの二大遺産の、幸福な婚姻です。

  • 日本ビール株式会社 KOKORO GIN
    日本ビール株式会社|42%

    主役は、兵庫県養父市の秘蔵の香辛料「朝倉山椒」。とげのない枝に大粒の実をつけるこの山椒は、江戸時代には将軍家への献上品とされた由緒ある品種で、柑橘のように華やかで痺れの上品な、山椒の最高峰です。KOKORO GINは、この朝倉山椒の魅力に惚れ込んだ造り手が、その香りを一本の芯として設計したジン——名前の通り「心」を素材に捧げた酒です。グラスからは、レモンとライムを重ねたような山椒の鮮烈な柑橘香が弾け、ジュニパーの針葉樹香と溶け合って、和と洋の境界が消えていきます。口中では微かな痺れが心地よいアクセントとなり、キレの良い余韻へ。ジントニックにすれば山椒の香りが泡とともに立ち上がり、鰻や和食との相性は言わずもがな。当店のウイスキー鰻の白焼きに、山椒のジントニック——この組み合わせ、ぜひお試しを。

  • 舞輪源蒸留所 Mairingen Fresh Craft Gin (ORIGINAL)
    舞輪源蒸留所|47%

    「Fresh Craft Gin」——舞輪源(マイリンゲン)蒸留所が掲げるこの言葉は、乾燥ボタニカルに頼らず、生の素材の瑞々しさを香りの核に据えるという宣言です。ボタニカルの多くは乾燥させることで保存性と香りの凝縮を得ますが、その代償として失われるのが、摘みたての素材だけが持つ「青い生命感」。本作はその儚い鮮度を、収穫から蒸溜までの時間との勝負で瓶に封じ込めました。グラスからは、搾りたての柑橘や摘みたてのハーブを思わせる、露を含んだような瑞々しい香りが立ちのぼり、ジュニパーの輪郭がそれを凛と支えます。口当たりはクリアで、フレッシュな酸の気配が心地よく駆け抜け、余韻は朝の空気のように澄んでいます。ソーダ割りで、その鮮度を薄めずに。「生」の贅沢を知る、フレッシュ主義のジンです。

  • 株式会社積丹スピリット 火の帆 BOUQUET
    積丹スピリット(北海道積丹町)|45%

    シャコタンブルーの海で知られる北海道・積丹半島。ウニと奇岩の岬の町が、過疎化に抗う一手として選んだのが「香りの産業」でした。積丹スピリットは町ぐるみでボタニカル畑を拓き、アカエゾマツをはじめとする北の香木・草花を自ら栽培して蒸溜する、日本でも稀有な「農業一体型」のジン蒸溜所です。「火の帆(HONOHO)」は積丹の漁火に由来する名。中でもBOUQUETはその名の通り、積丹の畑で育った花々やハーブを花束のように束ねた一本で、グラスからは北の短い夏を凝縮したようなフローラルな香りが立ち、アカエゾマツの森の気配、微かな潮風がそれに続きます。飲むことが、そのまま半島の風景と産業を支えることになる——テロワールという言葉の最も美しい実践を、積丹ブルーを思い浮かべながら。

  • サラダコスモ 中津川蒸留所 NAKATSU GIN(柚子胡椒 3rd Batch)〜青柚子&あじめこしょう
    株式会社サラダコスモ・中津川蒸留所(岐阜県中津川市)|50%

    「飲むと、なぜか柚子胡椒なんです」——造り手自身がそう語る、怪作にして傑作。もやしとチコリの生産で知られるサラダコスモの中津川蒸留所が、地元の二つの宝を掛け合わせて九州の伝統調味料・柚子胡椒をジンで再現した、第3バッチです。柚子は隣町・恵那市笠置町産の青柚子。黄色く色付く寸前、十月初旬の数日だけ収穫できる、香りの頂点の実を使います。唐辛子は中津川福岡地区だけで細々と受け継がれる伝統希少野菜「あじめこしょう」——清流・付知川のアジメドジョウに似た細長い姿の、強烈に辛く香り高い在来種です。蒸溜酒ゆえカプサイシンの辛みはほぼ残らず、鼻腔を突くツンとした刺激と青柚子の爽快感だけが立ち上がる——まさに柚子胡椒の香りの蒸溜。ソーダ割りで焼き鳥や鍋に合わせれば、料理に寄り添うジンという新境地が開けます。万人受けはしない、だから面白い一本です。

  • 京都蒸溜所 季の美 京都ドライジン
    京都蒸溜所(京都府京都市)|45%

    2016年、日本初のジン専門蒸溜所として京都に誕生し、世界のクラフトジン地図に「KYOTO」の名を刻んだ金字塔。ベースは米から造るライススピリッツ、仕込水は伏見の柔らかな伏流水、ボタニカルには宇治の玉露、柚子、赤松、山椒と、京都の風土がそのまま処方されています。真骨頂はその製法「雅」——11種のボタニカルを「礎・柑・茶・辛・芳・凛」の六つの群に分類し、それぞれ別々に蒸溜してからブレンドするという、香りの茶会のような繊細な設計です。素材ごとに最適な蒸溜条件を与えることで、混ぜて焚いては決して出ない透明感と立体感が生まれます。グラスからは柚子と玉露の気品ある香り、ジュニパーの芯、山椒の微かな痺れ。ジントニックの完成度は世界水準、マティーニなら京都の静寂が一杯に。日本のクラフトジンを語るなら、まずこの一本からです。

  • 京都蒸溜所 季のTEA
    京都蒸溜所(京都府京都市)|45%

    季の美の茶の要素だけを主役に昇格させた、ティーエディション。宇治の老舗茶園の玉露と碾茶を贅沢に使い、日本茶の旨みと甘みをジンの文法で最大限に引き出した一本です。玉露とは、収穫前に覆いをかけて日光を遮り、旨み成分テアニンを極限まで蓄えさせた日本茶の最高峰。その「覆い香」と呼ばれる海苔にも似た深い香気が、ジュニパーの針葉樹香と出会うと、驚くほど官能的な調和が生まれます。グラスからは淹れたての玉露の甘い湯気のような香り、口中では茶の旨みがとろりと広がり、渋みは上品な輪郭だけを残して消えていきます。トニックで割れば「世界で一番贅沢な緑茶ハイ」、ミルクと合わせれば大人の抹茶ラテ風カクテルにも。当店の挽き茶ドリンクと飲み比べる「茶づくしの夜」も一興です。日本茶文化の奥行きを、蒸溜酒で。

  • 京都蒸溜所 季の美 エディションK
    京都蒸溜所(京都府京都市)|46%

    季の美の限定エディション「K」。定番の完成された調和をあえて崩し、特定のボタニカルや原酒の個性を際立たせて再構築した、いわば季の美の「別誂え」です。着物の世界に、同じ反物から仕立てても帯や小物で表情を一変させる愉しみがあるように、ジンもまたブレンド比率のわずかな采配で別人のような顔を見せます。46%と定番よりわずかに高い度数設定は、香味の輪郭をより鮮明に立たせるための選択。グラスからは季の美らしい柚子と玉露の気品を保ちながら、より深く、より陰影のある香りの層が現れます。定番と並べて飲む「利きジン」は、京都蒸溜所のブレンド哲学を体感できる贅沢な遊び。限定ゆえ、出会えた時が飲み時です。同じ蔵の同じ素材が、配合ひとつでどう変わるか——ジンという酒の奥深さを教えてくれる一本です。

  • 京都蒸溜所 季の糖 京都オールドトムジン
    京都蒸溜所(京都府京都市)|47%

    オールドトムジン——18〜19世紀の英国で愛された、ほのかに甘い古典様式のジンです。ドライジンが主流になる以前、粗い蒸溜酒の角を糖で丸めたこの様式は、トムコリンズやマルティネスなど古典カクテルの本来の姿を支える鍵でもあります。京都蒸溜所はこの歴史様式を「季の糖」として京都流に翻訳——和の甘味の繊細さでオールドトムを再解釈しました。グラスからは季の美系譜の柚子と玉露の気品に、蜜のようなまろやかな甘い香りが寄り添い、口当たりはドライジンにはない柔らかな丸みを帯びます。甘いといっても砂糖菓子の甘さではなく、和三盆を思わせる上品な引き際。マルティネスやトムコリンズを本来のレシピで組めば、19世紀のロンドンと現代の京都が一つのグラスで握手します。カクテル史を飲む一本として、バーでこそ真価を発揮します。

  • 京都蒸溜所 季の美 勢 KI NO BI SEI
    京都蒸溜所(京都府京都市)|54%

    「勢(セイ)」——その一字が示す通り、季の美を54%のハイプルーフで解き放った力の一本です。英国海軍が愛した高濃度ジン「ネイビーストレングス」の伝統に連なる度数設定ですが、中身はあくまで京都の雅。度数を上げると香りは単に強くなるのではなく、精油成分がより多く溶け込み、香味の解像度そのものが上がります。定番では余韻に控えていた山椒の痺れ、赤松の樹脂香、生姜の温かみが、勢では堂々と前列に立ち、柚子と玉露の主旋律を厚く支えます。真価はカクテルで——トニックや柑橘に負けない骨格は、ジントニック一杯の輪郭を別次元に引き上げ、マティーニなら冷たい炎のような緊張感が生まれます。静の季の美、動の勢。同じ蔵の陰陽を並べて飲めば、度数という設計思想の意味が舌で分かります。強さの中の気品を、ぜひ。

  • Motoki蒸研 ヤマレスト industrial GIN our ordinary
    Motoki蒸研株式会社(京都府京都市上京区)|45%

    「季の美を開発した男」の独立第一作——それだけで飲む理由になる一本です。Motoki蒸研の元木ヨイチ氏は、バブル期の銀座の名店で伝説のバーテンダー澤井慶明に師事し、30歳でスコットランドへ渡ってアラン蒸溜所のスチルマンを務め、スプリングバンクやスコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ本部にも在籍。帰国後は京都蒸溜所の設立に参画して「季の美」を開発した、日本のクラフト蒸溜史の生き証人です。屋号yumarrest(ヤマレスト)は「yum+arrest=旨すぎて逮捕」の言葉遊び。ファーストリリースの本作は、京ひのき、桜の葉、八女緑茶、尾道レモンなど10種のボタニカルの8割を和素材で構成し、World Gin Awards 2025金賞に輝きました。“industrial”の名の通り装飾を削ぎ、ジュニパーの芯とドライな輪郭で勝負する設計。ordinaryと名乗る非凡——職人の照れと自信が同居した、当店の定番です。

  • Motoki蒸研 ヤマレスト industrial GIN DANGER
    Motoki蒸研株式会社(京都府京都市上京区)|80%

    80%。誤植ではありません、アルコール度数八十度のジンです。その名も「DANGER」——危険。スピリッツの世界でも滅多にお目にかかれないこの度数は、しかし単なる度胸試しではなく、蒸溜家・元木ヨイチ氏の技術的な問いかけです。すなわち「香りはどこまで濃くできるか」。アルコールは香気成分の溶媒であり、度数が上がるほど精油は濃密に溶け込みます。80%のDANGERは、いわばジンの香りのエスプレッソ——ストレートで舐めれば、ジュニパーとボタニカルの香りが火の玉のように弾け、少量の加水で花が開くように香りの層がほどけていきます。数滴をカクテルに落とす「ビターズ的な使い方」も面白く、一杯の香りの照度を一段上げる調味料にもなります。もちろん、ゆっくり少量ずつ。危険という名の、極めて理知的な実験作です。度数の向こう側を、覗いてみませんか。

  • Motoki蒸研 ヤマレスト flavored spirits GEISHA COFFEE
    Motoki蒸研株式会社(京都府京都市上京区)|37%

    コーヒーの酒というと、甘いリキュールか、豆を漬け込んだ褐色の酒が大半です。しかし本作は無色透明——コーヒー豆を漬け込んだ後に蒸溜するという手法で、甘さもえぐみも色も削ぎ落とし、豆の香りの核だけを取り出した「コーヒーの蒸溜酒」です。豆は数種を蒸溜検証した末に選ばれた、エチオピア産の希少種ゲイシャ。スペシャルティコーヒーの頂点に君臨するこの品種を浅煎りにし、焙煎は京都大徳寺北の京町家「粉屋珈琲」が担当。ジュニパーを使わないフレーバードスピリッツ第一弾として、ゲイシャ特有のベリーや紅茶を思わせる複雑なフルーティビターが、透明な液体から立ちのぼります。おすすめはトニック割り(1:3)——泡の中でコーヒーの花が咲きます。エスプレッソマティーニのウォッカをこれに替えれば、当店流の「ダブルコーヒーマティーニ」の完成です。

  • Motoki蒸研 yumarrest flavored spirits 宇治 玉露
    Motoki蒸研株式会社(京都府京都市上京区)|42%

    季の美で世界に「茶のジン」を示した元木氏が、独立後、ジュニパーの枠すら外して玉露そのものと向き合った一本。フレーバードスピリッツというジャンルは、一つのボタニカルに焦点を絞り、その香りの純度を極限まで高める引き算の思想です。素材は日本茶の王・宇治の玉露。覆下栽培で旨みを蓄えた茶葉の「覆い香」と甘露のような旨みを、ライススピリッツの丸い酒質の上に、蒸溜で写し取りました。グラスからは、一煎目の玉露の湯気そのもののような、深く甘い茶の香り。口に含めばテアニンの旨みの気配がとろりと広がり、渋みは残らず、余韻は茶室の静けさのように澄んでいます。ソーダで割れば究極の「玉露ハイ」、A2ミルクと合わせれば茶の甘みが際立つ和のミルクパンチに。挽き茶の薄茶と飲み比べる「茶の飲み比べ」は、当店ならではの一服です。

  • Motoki蒸研 yumarrest industrial GIN ordinary king
    Motoki蒸研株式会社(京都府京都市上京区)|45%

    「ordinary(普通)」の「king(王)」——矛盾したような名前に、ヤマレストの美学が凝縮されています。ファーストリリースour ordinaryで示した「日常に溶け込む精密なジン」という思想を、さらに研ぎ澄ませた発展形。派手な限定ボタニカルで驚かせるのではなく、ジュニパーの芯、和素材の陰影、ドライな輪郭という基本の三要素の精度を極限まで上げることで、「普通の王様」を目指しました。グラスからは、our ordinaryより一段と明確なジュニパーの存在感と、京素材の香りの解像度。口当たりはクリアでキレが良く、余韻は潔くドライに消えます。毎日のジントニックのために設計された、しかし一口で只者でないと分かる完成度——アラン蒸溜所とスプリングバンクを経た職人が考える「普通」の水準の高さに、静かに唸る一本です。日常の一杯にこそ、王を。

  • Motoki蒸研 ヤマレスト ラムネ industrial Ramune GIN
    Motoki蒸研株式会社(京都府京都市上京区)|45%

    ビー玉の音、縁日の夕暮れ、瓶の底に残る最後の一口——「ラムネ」という言葉が呼び覚ます日本の夏の記憶を、ジンで再現した遊び心の一本です。種明かしをすれば、ラムネの清涼感の正体は柑橘と微かな甘い香りの組み合わせ。本作はour ordinaryよりジュニパーベリーの比率をあえて高め、その針葉樹の清冽さにレモンの明るさを重ねることで、香料を使わずに「ラムネの記憶」を蒸溜だけで組み立てました。グラスに鼻を近づけると、確かにあの駄菓子屋の瓶の香りがして、思わず頬が緩みます。しかし口に含めば、土台は紛れもなく精密なドライジン——ノスタルジーと技術が同居する、ヤマレストらしい二重構造です。ソーダで割れば「大人のラムネ」が完成し、夏の一杯目として無敵。当店の定番として常備している、乾杯の名手です。

  • 尾鈴山蒸留所 OSUZU GIN Original
    黒木本店・尾鈴山蒸留所(宮崎県木城町)|45%

    「百年の孤独」の黒木本店が、尾鈴山の山中で造るジン。最大の個性はベーススピリッツにあります——自社の本格芋焼酎。畑から育てた原料で焼酎を仕込み、その焼酎を土台に、金柑や日向夏など宮崎の香酸柑橘と山の恵みを蒸溜で重ねる、農業から一気通貫のジンです。ニュートラルスピリッツから造るジンとの違いは、一口で分かります。液体の奥に流れる、芋焼酎由来のふくよかで甘い旨みの伏流——これが柑橘の明るさとジュニパーの清冽さに、他のどのジンにもない「土着の体温」を与えているのです。グラスからは日向の陽光のような柑橘香と森の気配、口中では焼酎の丸い甘みが柑橘を抱きとめます。ソーダ割りで宮崎の山の夕暮れを、ジントニックで和柑橘の輝きを。OSUZU MALTのウイスキーと並べれば、一つの山の蒸溜所の全貌が見えてきます。

  • 野沢温泉蒸留所 OBUSE GIN
    野沢温泉蒸留所(長野県野沢温泉村)|45%

    栗の町・小布施。葛飾北斎が晩年を過ごし、栗菓子の名店が軒を連ねる信州の小さな町の恵みを、スキーと温泉の村・野沢温泉の蒸溜所がジンに仕立てました。ボタニカルの主役は、小布施産の栗の鬼皮——栗菓子造りで生まれる硬い外皮を香りの資源として甦らせた、もったいない精神の結晶です。さらに韃靼そば、ターメリックといった滋味深い素材が続き、華やかさではなく「香ばしさと旨み」で魅せる、日本ならではの滋味系クラフトジンが完成しました。グラスからは焼き栗やそば茶を思わせるナッツと穀物の温かい香り、やわらかなスパイス、その芯にジュニパー。飲み進めるほどに旨みが広がり、食中にも自然に寄り添います。ソーダ割り、ストレート、そして意外や、お湯割りが絶品——寒い夜、栗の香りの湯気に顔を埋める一杯は、信州の冬の温泉宿そのものです。

  • 平野蒸留所 十勝クラフトジン 明時 AKATOKI TANZANITE
    平野蒸留所(北海道・十勝)|47%

    「明時(あかとき)」——夜が明けようとする、あの群青の時刻の古語です。十勝平野の蒸溜所が手がけるこのシリーズの限定版TANZANITEは、その名の宝石の通り、バタフライピー由来の深く美しい青色をまとった、視覚のジンです。グラスに注げば夜明け前の空の色。そこへトニックやソーダを注ぐと、酸に反応して色がゆっくりと紫へ移ろい、グラスの中で本当に「夜が明けて」いきます。香りはベルガモットを思わせる気品あるシトラスとハーブ。ジュニパーの輪郭に爽やかな柑橘が重なり、軽やかでありながら印象的な味わいを描きます。色の演出だけの色物ではなく、味も端正に組まれているのが十勝の実直さ。デートの一杯目に、記念日の乾杯に、これほど絵になるジントニックはありません。北海道の広い空の、一番美しい時刻をどうぞ。

  • mitosaya薬草園蒸留所 MINT TRICOLOR
    mitosaya薬草園蒸留所(千葉県大多喜町)|42%

    元ブックディレクターが人生を賭けて蒸溜家に転身し、千葉・大多喜の旧県立薬草園をまるごと蒸溜所に変えた——mitosayaは、日本のクラフト蒸溜シーンで最も詩的な場所のひとつです。約1.8ヘクタールの園内に数百種の植物が息づき、果実や薬草を摘んではオー・ド・ヴィー(果実蒸溜酒)に写し取る、「園庭と蒸溜器が地続き」の造り。本作MINT TRICOLORは、その薬草園で育つ三種のミントを重ねた一本です。ペパーミントの鋭い冷気、スペアミントの甘い青さ、そして和薄荷の凛とした涼——同じミントでも品種で香りはこれほど違うのかと、三色の清涼が層をなして立ちのぼります。42%の柔らかな酒躯に、摘みたての葉の生命感がそのまま宿り、ソーダで割れば「香る草原」のような一杯に。植物図鑑を読むように飲む、薬草園からの手紙です。

  • 大和蒸留所 KIKKA GIN
    大和蒸留所(奈良県)|59%

    日本書紀に「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」——時を選ばず香る果実として登場する、日本最古の柑橘・大和橘。垂仁天皇が不老不死の霊薬として求めさせたと伝わるこの小さな野生の橘は、絶滅の危機に瀕しながら、奈良の地で保護栽培が続けられています。大和蒸留所のKIKKA GINは、この神話の柑橘と、大和の伝統薬草・大和当帰をボタニカルの柱に据えた、二千年の香りのジンです。59%のハイプルーフでボトリングされた液体からは、蜜柑の原種らしい野性的で凛とした柑橘香、当帰のセリ科特有の薬香、ジュニパーの芯が力強く立ちのぼります。トニックに負けない骨格は、香りの神話を最後の一口まで語り続けます。古都の畑で守られてきた「時じくの香」を、東麻布の夜に——日本の香りの起源を飲む、荘厳な一杯です。

  • 八王子蒸留所 翠靄 sui-ai wet Gin
    八王子蒸留所(東京都八王子市)|40%

    「翠靄(すいあい)」——緑の靄。高尾山を擁する東京・八王子の蒸溜所が掲げるのは、「wet(ウェット)ジン」という独自の様式です。シャープでドライな輪郭を競う現代ジンの潮流に対し、翠靄は蒸溜工程でボタニカルのニュアンスをあえて柔らかく引き出し、しっとりとした質感と奥行きのある香りを追求しました。名前の通り、朝靄に包まれた緑の山を思わせる、湿度をまとった香りの表現です。ジュニパーを軸に和のハーブとスパイスが重なり、特筆すべきは、ほのかに漂うスモーキーなニュアンス——これが全体に静かな深みを与え、単なる爽やかさに留まらない長い余韻へと昇華させています。ストレートでその質感の美しさを、ソーダやトニックでゆっくり開く香りの層を。ドライ全盛の時代への、東京の山からの美しい異議申し立てです。

  • 株式会社Alembic 8
    Alembic(石川県金沢市)|47%

    加賀百万石の美意識が息づく金沢。工芸と食文化の都に構える蒸溜所Alembic(アランビック=単式蒸溜器の意)の代表作が、この「8」です。名の由来は、数多の試作の末に完成した「8番目のレシピ」——7回の否を経てようやく首を縦に振った、職人の基準の高さがそのまま名前になりました。ジュニパーを軸に繊細に設計されたボタニカルが静かに重なり、シャープさの中にやわらかな広がりを持たせた、極めてバランスの良い仕上がり。華やかすぎず、重すぎず、それでいて飲み進めるほどに輪郭が浮かび上がる奥行き——金沢の工芸品のような「引き算の完成度」です。ジントニックでは透明感のある香りが際立ち、ストレートでは設計の美しさと余韻の長さが際立ちます。日本のクラフトジンの「完成形のひとつ」と呼びたくなる、静かな傑作です。

  • リカシツ株式会社 GIN FUEKI
    リカシツ(東京都)|47%

    「リカシツ」——理科室。フラスコやビーカーといった理化学ガラスを暮らしの道具として提案してきた東京の専門店が、その蒸溜への知見を注いで手がけたジンが「FUEKI(不易)」です。不易流行——変わらぬ本質と、移りゆく新しさ。松尾芭蕉の言葉を冠したこのジンは、蒸溜という営みの原点、すなわち「加熱と冷却で香りを取り出す」という理科の実験そのものの美しさに立ち返ります。ガラス器の中で気化し、冷やされ、一滴ずつ滴る——その透明なプロセスへの敬意が、雑味のないクリアな酒質に表れています。ジュニパーの端正な香りに、選び抜かれたボタニカルが実験ノートのように整然と重なり、キレの良いドライな余韻へ。理科室の窓から差す午後の光のような、澄んだ一杯です。ビーカーで供したくなる衝動を、当店は江戸切子で抑えています。

  • アルケミエ辰巳蒸留所 TATSUMI GIN symbol of innaki
    辰巳蒸留所(岐阜県郡上市八幡町)|47%

    郡上八幡——長良川の支流・吉田川が貫く水の城下町に、辰巳祥平氏がたった一人で開いた日本最小級の蒸溜所、それがアルケミエ(ラテン語で「錬金術師たち」)辰巳蒸留所です。蒸溜器は、焼酎の古式・カブト釜。ベースには粕取焼酎やちこり焼酎という和の蒸溜酒を用い、季節ごとに農家から届く花や果実を仕込む、まさに錬金術のような造りです。本作の名「innaki」は、蒸溜所の裏を流れる犬啼川(いんなきがわ)から。年間を通じて14℃、江戸時代には天然氷を殿様に献上したというこの名水を仕込水に、吟醸香の中にジュニパー由来の針葉樹林の香りが立つ、品の良い大人のジンが生まれました。辰巳氏がこの地を選んだ理由は「フランスのアブサンの聖地ポンタルリエに風景が似ていたから」。入手困難が続く人気銘柄を、グラス一杯からどうぞ。

  • MAOI株式会社 MYAOI GIN can you celebrate?
    馬追蒸溜所(北海道長沼町)|46%

    1バッチ、約50本——北海道・馬追(まおい)丘陵の小さな蒸溜所が生むMYAOI GINは、もはや「製品」というより「作品」と呼ぶべき極少量生産のジンです。バッチごとにテーマを定め、ボタニカルの構成から香りの物語まで一回性の設計で仕込む、蒸溜における一点物の思想。本作のテーマは“can you celebrate?”——祝福。ジュニパーの骨格に華やかなフローラルと果実のニュアンスが重なり、軽やかでありながら記憶に残る香り立ちが、乾杯の瞬間のために設計されています。甘さに寄りすぎない均衡の中に、やわらかな広がりと繊細な奥行き。ストレートでは設計の美しさと余韻を、トニックやソーダでは華やかなアロマの立ち上がりを。50本の中の一本が、東麻布のこのカウンターにある——その巡り合わせ自体が、すでに祝福かもしれません。特別な夜の一杯に。

  • MAOI株式会社 MYAOI GIN hanabi
    馬追蒸溜所(北海道長沼町)|43%

    夜空に咲いて、消える。その一瞬の華やぎと、消えた後も網膜に残る残像——「hanabi」は、花火という日本の夏の美学をジンで表現した、馬追蒸溜所の作品です。ジュニパーの骨格の上に、フローラルとほのかな果実のニュアンスが打ち上がるように広がり、口中できらめくアロマが弾けた後、静かな余韻が長く尾を引く——まさに大輪の花火の時間構造を、香りの起承転結で再現しています。43%の軽やかな口当たりは、飲み進めるほどに印象が変化し、グラスが空く頃には「記憶に残る一杯」へと昇華している——バッチ約50本の一回性も、一夜限りの花火大会と響き合います。ストレートで設計の美しさを、トニックで華やかな打ち上がりを。celebrateと並べて飲む「馬追の二夜」は、北の小さな蒸溜所の感性の豊かさを教えてくれます。夏の終わりに、特に沁みる一本です。

  • 株式会社マツザキ LIO CRAFT GIN
    株式会社マツザキ(埼玉県川越市)|47%

    小江戸・川越。蔵造りの街並みで明治から続く老舗酒販店マツザキが、「売る側」から「造る側」へ越境して生んだクラフトジンがLIOです。酒販店がジンを造る強みは明快で、全国の酒を目利きし続けてきた舌が、そのまま味の設計図になること。何千という銘柄を扱い、客の「美味しい」を最前線で聞き続けた経験値が、ボタニカルの選択とバランスに落とし込まれています。グラスからはジュニパーの端正な芯に、柑橘とハーブの明るい彩り。口当たりはクリアで飲み飽きせず、ジントニックからカクテルベースまで幅広く応える、実戦的な完成度です。川越の観光土産に留まらず、バーの現場で選ばれる品質——「酒屋の意地」が瓶に詰まっています。蔵の街の新しい名物を、蔵造りならぬ江戸切子のグラスでどうぞ。

  • 五島つばき蒸溜所 GOTOGIN the cacao
    五島つばき蒸溜所(長崎県五島市)|47%

    チョコレートの美味しさを、砂糖を一切使わずジンで表現する——五島列島の椿の蒸溜所が挑んだ、甘くない甘美の実験です。カカオは、ペルー産の希少原種クリオロ種。世界のカカオのわずか数%しか存在しない「カカオの貴族」を、焙煎前のローカカオニブのまま用いることで、クリオロ特有のフルーティで香ばしい香味を鮮烈に引き出しました。ボタニカルには五島のアイデンティティである椿の実、そしてレーズン、和紅茶、ヤマモモが脇を固めます。グラスからは豊かなチョコレートの香り、口当たりは不思議なほど甘く、しかし糖分はゼロ——その後に続くカカオのほろ苦い余韻が、大人の輪郭を描きます。おすすめはロックか濃いめの水割り。食後の一杯として、チョコレートの代わりにこのジンを——五島の海と椿と、南米の貴族カカオの、洒落た三角関係です。

  • 越後薬草蒸留所 THE HERBALIST YASO GIN YUZU
    越後薬草(新潟県上越市)|45%

    ベーススピリッツの原料は、80種以上の野草——越後薬草は、半世紀にわたり野草酵素を造り続けてきた新潟の健康食品メーカーです。よもぎ、どくだみ、熊笹、田畑の縁で逞しく生きる草たちを発酵させ、蒸溜したスピリッツを土台にジンを組む——「雑草という草はない」を地で行く、世界でも類を見ない造りです。YUZUはそこに柚子の明るい柑橘香を重ねた看板作。ジュニパーの輪郭に柚子のフレッシュな香りが弾け、その奥から野草由来のほのかな苦味とコク、大地の滋味が幾層にも立ちのぼります。爽やかなのに、深い。軽やかなのに、厚い。この二律背反こそ80種の野草の仕事です。ジントニックでは柚子が際立ち、ストレートでは野草の奥行きが主役に。飲むたびに違う草の顔が見える、噛みしめるほど味の出るジンです。雪国の野の力を、一杯に。

  • memento mori 越後薬草蒸留所 ダンデライオン・チョコレート Cacao Gin Limited Edition 2024
    越後薬草(新潟県上越市)|48%

    「memento mori(死を想え)」——ラテン語の警句を冠した、越後薬草とBean to Barチョコレートの雄・ダンデライオン・チョコレートによる2024年限定コラボレーションです。80種の野草スピリッツに、クラフトチョコレート専門店が選び抜いたカカオを重ねる——日本のボタニカル蒸溜と世界のクラフトチョコ文化が出会った一本。五島のGOTOGIN CACAOがクリオロ種の気品で魅せるのに対し、こちらは野草の滋味という土台の上にカカオの香ばしさが乗る、より大地に近いカカオジン。同じ「カカオ×ジン」でも、ベーススピリッツの思想が違えば、これほど別の酒になるという好対照です。グラスからはローストカカオの香ばしく甘い香り、その奥に野草のほろ苦いハーバルな地層、ジュニパーの芯。口に含めばビターチョコレートの記憶が広がりますが、糖分の甘さはなく、48%の骨格が輪郭を最後まで支えます。ロックでゆっくり、あるいはA2ミルクと合わせて「野草のチョコレートミルク」という背徳的な一杯も。当店でGOTOGINと並べて飲む「カカオジン対決」は、ジンの多様性を一晩で理解できる名企画です。

  • 小城蒸留所 想 OGIGIN
    小城蒸留所(佐賀県小城市)|45%

    羊羹の町として知られる佐賀・小城。天山山系の清らかな伏流水が育んだ菓子と酒の文化を持つこの小さな町から、「想(おもい)」の一字を冠したジンが生まれました。OGIGINは、地元の素材と水にこだわり、小城の風土への想いをそのまま蒸溜した、九州クラフトジンの静かな良心です。派手なコンセプトで耳目を集めるのではなく、丁寧な蒸溜と誠実なバランスで勝負する造りは、羊羹一筋の菓子舗が並ぶ町の気質そのもの。グラスからはジュニパーの清冽な香りに、柑橘とハーブの穏やかな彩りが重なり、天山の水を思わせる澄んだ口当たりが続きます。余韻はやわらかく、どこか甘い菓子の町の空気をまとって消えていきます。ジントニックで素直に、ストレートで水の美しさを。九州の地図の小さな町名を、香りで覚えて帰ってください。

本格焼酎

Craft Shochu

数百年の蒸溜技術を受け継ぐ焼酎蔵の底力。プレミア焼酎「村尾」「森伊蔵」から、国分酒造の香り系まで。グラス¥1,320(税込)〜。

  • 国分酒造 純芋
    国分酒造(鹿児島県霧島市)|34%

    芋焼酎の仕込みには米麹が使われる——その千年の常識を破壊したのが、国分酒造です。1997年、杜氏・安田宣久氏はさつまいもで麹を起こす「いも麹」を実用化し、米を一粒も使わない全量芋焼酎を世界で初めて完成させました。「純芋」はその思想の純度をそのまま名にした一本。原料も麹も、すべてが芋。34%という原酒に近い度数で瓶詰めされた液体からは、蒸したての黄金千貫のような濃密な芋の甘い香りが立ち、口中では土の温もりを宿した旨みがどっしりと広がります。米麹の甘い補助線が一切ない分、芋という作物の実力だけが裸で問われる——そしてその実力は、圧倒的です。ロックで芋の輪郭を、お湯割りで湯気とともに立つ甘い香りを。焼酎界のイノベーター国分酒造の、原点にして到達点です。

  • 国分酒造 蔓無源氏
    国分酒造(鹿児島県霧島市)|34% / 26%

    「蔓無源氏(つるなしげんぢ)」——明治期に生まれ、昭和の初めにほぼ姿を消した幻のさつまいも品種です。国分酒造は地元農家とともに、わずかに残された苗からこの百年前の芋を復活させ、大正時代の焼酎の味を現代に甦らせるという、農業考古学のような醸造に挑みました。現代の多収品種にはない、蔓無源氏特有の濃く滋味深い味わい——グラスからは焼き芋の蜜のような甘い香りと、黒糖、微かな柑橘の気配が立ち、口中では古い品種ならではの複雑で野性的な旨みが幾重にも広がります。34%の原酒版はその凝縮を、26%版は日常の晩酌の顔を。品種が変われば焼酎は別の酒になる——ワインでいう「品種を飲む」愉しみを、芋焼酎で最初に教えてくれた記念碑的な一本です。百年前の鹿児島の食卓の味を、お湯割りでしみじみと。

  • 国分酒造 安田 蔓無源氏
    国分酒造(鹿児島県霧島市)|26%

    杜氏の名前が、そのまま銘柄になった焼酎があります——「安田」。いも麹の発明者にして焼酎界の革命児・安田宣久杜氏の名を冠したこのシリーズは、国分酒造が杜氏個人の作家性を正面から打ち出した、いわば「署名入りの焼酎」です。本作は復活品種・蔓無源氏を、米麹を使わず、いも麹で仕込んだ純血版。品種の個性と製法の思想が二重に重なった、安田焼酎の真骨頂といえる構成です。驚くべきはその香り——芋焼酎の常識を裏切る、熟した果実やライチを思わせる華やかなアロマが、蔓無源氏の滋味深い甘みの上に舞います。焼酎というより、素朴なテーブルワインのような佇まい。ワイングラスで供したくなる香りの立体感は、まさに作家の仕事です。ソーダで割れば香りが弾け、ロックなら品種の深みが主役に。名前で選んで間違いのない、杜氏の署名をどうぞ。

  • 国分酒造 安田 南九州産ハマコマチ
    国分酒造(鹿児島県霧島市)|26%

    ハマコマチ——鮮やかなオレンジ色の果肉を持つ、カロテン豊富なさつまいもです。この珍しい橙色の芋をいも麹仕込みで醸すと、信じがたいことが起こります。グラスから立ちのぼるのは、紅茶、アプリコット、そしてトロピカルフルーツを思わせる、あでやかな香り——「これが芋焼酎か」と、誰もが二度見する香気です。安田杜氏がこの品種に見出したのは、芋の中に眠る果実性。蒸留酒でありながら、原料品種の個性がここまで香りに翻訳される事実は、焼酎という酒の未開の可能性そのものです。口当たりは柔らかく、オレンジ芋由来の優しい甘みがふんわりと広がり、余韻は南国の夕暮れのように温かい。ソーダ割りにすれば香りの華が満開になり、焼酎が苦手という方の常識を一杯で塗り替えます。蔓無源氏と並べて「品種の飲み比べ」を——芋のテロワール入門です。

  • 国分酒造 Flamingo Orange
    国分酒造(鹿児島県霧島市)|26%

    グラスに注いだ瞬間、オレンジやネーブルの香りが弾ける——芋焼酎の歴史を書き換えた「香り革命」の旗手、フラミンゴオレンジです。原料はいも麹と芋、いずれも南九州産サツママサリ。そこに鹿児島香り酵母1号と減圧蒸溜を組み合わせ、発酵設計によって柑橘系のエステル香を極限まで引き出しました。米を使わない全量芋でありながら、香りは完全に柑橘——この逆説こそ、国分酒造の技術の証明です。SNS時代の焼酎ブームを牽引した一本としても知られ、若い世代やワイン愛好家を焼酎の世界に引き込んだ功績は計り知れません。ソーダで割れば「飲むオレンジの花束」、ロックなら香りの奥の芋の甘みがそっと顔を出します。当店のフリーフロー対象の中でも指名率トップクラス。まだの方は、まずこの一杯から焼酎観の更新を。

  • 国分酒造 サニークリーム
    国分酒造(鹿児島県霧島市)|27%

    フラミンゴが柑橘なら、こちらは南国の完熟——パパイヤ、マンゴー、熟したオレンジ、そしてほんのりミルキー。「トロピカル×クリーミー」を掲げた、国分酒造の香り三部作の甘やかな末妹です。サツママサリに白麹の米麹(霧島産)、鹿児島香り酵母1号、減圧蒸溜という構成で、フラミンゴとの最大の違いは米麹の存在。これが液体に丸みとクリームのような柔らかな質感を与え、名前の通りの「デザート系焼酎」を完成させました。口当たりは角がなく、まろやかな甘みがゆっくりとほどけ、余韻には南国フルーツの名残りが優しく漂います。ロックで食後にゆったりと、ソーダ割りでトロピカルドリンクのように——飲み方の自由度も魅力です。フラミンゴ(華やか)→クールミント(爽快)→サニークリーム(満足)と続く三部作の締めとして、コース仕立てでどうぞ。

  • 国分酒造 クールミントグリーン
    国分酒造(鹿児島県霧島市)|27%

    ミントとバナナが香る芋焼酎——もはや説明が矛盾している気がしますが、事実です。香り三部作の「爽快」を担う本作は、サツママサリに霧島産米の白麹、鹿児島香り酵母1号、減圧蒸溜という布陣に加え、麹・芋・酵母を同時投入する古式「どんぶり仕込み」をあえて採用。通常工程を崩すこの選択が、酢酸イソアミル系のフルーティな香気——バナナとミントの清涼感——を劇的に引き出しました。グラスからは、ミントの葉を揉んだような涼しい香りと、追熟バナナの甘い気配が同時に立ちのぼる不思議。口に含めば軽快でフルーティ、余韻はすっと引いて、真夏の夕立の後のような爽快感が残ります。ソーダ割りは当店の夏の定番で、モヒートの隣に置きたくなる涼やかさ。「焼酎の常識外」を、涼しい顔で楽しんでください。

  • 濱田酒造 DAIYAME(だいやめ)
    濱田酒造(鹿児島県いちき串木野市)|25%

    「だいやめ」とは鹿児島の言葉で、晩酌で一日の疲れを癒すこと——「だれやめ」の風習を名に戴いた、明治元年創業・濱田酒造の看板作です。最大の武器は、独自技術で芋を熟成させた「香熟芋」。この一手間が、芋焼酎から誰も嗅いだことのなかった香り——ライチの華やかな香気を解き放ちました。グラスに注げば、まるでライチの実を剥いた瞬間のような、みずみずしく艶やかな香りが広がります。世界的な酒類コンペティションでも高く評価され、いまや海外のバーテンダーがカクテルベースに指名する国際派。おすすめは炭酸割り「DAIYAMEハイボール」——ライチの香りが泡とともに立ちのぼり、25%の軽やかさも相まって、何杯でも続けられる危険な美味しさです。鹿児島の晩酌文化の言葉が、世界の乾杯の言葉になる日も近いかもしれません。

  • 濱田酒造 CHILL GREEN SPICY & CITRUS FLAVOR
    濱田酒造(鹿児島県いちき串木野市)|25%

    焼酎を「チルする」——若い世代の夜の過ごし方に寄り添うべく、濱田酒造が立ち上げたモダンライン「CHILL GREEN」。伝統蔵の技術を土台に、香りの設計をボタニカルドリンクの感覚で組み直した、新時代の焼酎です。SPICY & CITRUSの名の通り、本作は山椒やジンジャーを思わせるスパイシーな刺激と、柑橘の弾ける爽やかさが主題。グラスからは青いライムのような香りとピリッとした薬味の気配が立ち、口中では軽快な辛口の輪郭がきりりと締まります。ジンのボタニカル文化と焼酎の蒸溜技術が握手したような設計で、ソーダ割りにトニック割り、ライムを添えれば「焼酎トニック」という新ジャンルが完成。ジン好きの方が焼酎の扉を開く入口として最適です。明治の蔵の、令和の答え。チルな夜のお供にどうぞ。

  • 濱田酒造 CHILL GREEN BITTER & TROPICAL FLAVOR
    濱田酒造(鹿児島県いちき串木野市)|25%

    CHILL GREENのもう一つの顔は、「苦味と南国」。トロピカルフルーツの甘やかな香りに、あえてビターな苦味の輪郭を効かせた、大人のバランス設計です。パッションフルーツやパイナップルを思わせる華やかな香りが立ちながら、口中ではグレープフルーツの皮のようなほろ苦さが甘さを引き締め、だらしなくならない——この「甘いのに辛口」という構造は、クラフトビールのIPAや現代のカクテルと同じ、苦味を旨みとして楽しむ感性に根ざしています。ソーダで割れば南国のビタースカッシュ、トニックならさらに苦味の層が深まり、食中酒としても優秀。SPICY & CITRUS版と並べて飲めば、同じ蔵の同じ思想が、香りの設計ひとつでどう枝分かれするかが分かります。焼酎の未来は、こんなにも自由です。

  • 多田蒸留所 Craftsman 多田
    天盃・多田蒸留所(福岡県朝倉郡筑前町)|44%

    明治31年創業、福岡・筑前町の麦焼酎蔵「天盃」。四代にわたり麦一筋を貫くこの蔵が、五代目・多田格氏の名を冠して立ち上げたのが「Craftsman TADA」です。天盃の代名詞は、自家製もろみを常圧で二度蒸溜する独自の「二段仕込蒸溜」。手間を惜しまぬこの製法が、麦の香ばしさと厚みを損なわずに雑味だけを磨き落とし、ブランデーにも比される気品ある麦焼酎を生み出します。本作は44%というスピリッツ級の度数でボトリングされた、その哲学の結晶。グラスからは焼きたてのパンや麦チョコを思わせる香ばしい甘い香りが豊かに立ち、口中では蒸溜酒としての骨格と麦の旨みが堂々と組み合います。ワイングラスでストレート、あるいは加水で香りをほどいて——「麦焼酎はウイスキーの隣に立てる」という五代目の確信を、ぜひ確かめてください。

  • 多田蒸留所 Flare / 2024
    天盃・多田蒸留所(福岡県朝倉郡筑前町)|40%

    「Flare(フレア)」——炎の揺らめき。常圧蒸溜の直火的な力強さを身上とする多田蒸留所が、2024年ヴィンテージとして仕込んだ一本です。焼酎にヴィンテージ(蒸溜年)を刻むという発想自体が、この蔵の立ち位置を物語ります。ワインやウイスキーと同じく、その年の大麦の出来、発酵の表情、蒸溜の判断を「年の記録」として残す——焼酎を農産物の加工品ではなく、年ごとに語れる嗜好品へと引き上げる試みです。40%のボトリングから立ちのぼるのは、麦の香ばしさに蜂蜜とバニラの甘い気配が重なる、炎の名にふさわしい温かな香り。口中では常圧二段蒸溜ならではの厚い旨みが燃えるように広がり、長い余韻へと続きます。年違いを飲み比べる楽しみは、これからこのブランドが積み重ねていく歴史そのもの。2024年の筑前の麦を、記憶に刻んでください。

  • 多田蒸留所 SPIRITS of TENPAI -with SCARLET-
    天盃・多田蒸留所(福岡県朝倉郡筑前町)|44%

    蔵の名を背負った「SPIRITS of TENPAI」に、「SCARLET=緋色」の副題を添えた特別仕込み。天盃の常圧二段蒸溜の骨格に、緋の名が示す通り、樽やモルトのニュアンスを思わせる艶やかな一癖を纏わせた、シリーズの中でも情熱的な一本です。44%の度数から立ちのぼるのは、麦の香ばしさに赤い果実やカラメルの気配が差す、緋色の名にふさわしい温度のある香り。口中では厚い麦の旨みの上を、甘くビターな陰影がゆらめき、蒸溜酒としての飲み応えが最後まで続きます。ウイスキーグラスに注いで、麦の蒸溜酒の日仏英比較——スコッチ、ジャパニーズ、そして筑前の麦焼酎を並べる夜も一興。境界線上の酒だからこそ見える、日本の蒸溜文化の懐の深さがあります。麦焼酎の最前線、その緋色の一頁を。

  • 落酒造場 地栗十割 黒麹仕込 焼酎 PREMIUM おくりおくら
    落酒造場(岡山県真庭市)|25%

    栗焼酎、それも地元産の栗を十割——岡山・真庭の山あいの小さな蔵、落酒造場が地域の栗農家とともに醸す、贅沢極まる一本です。栗焼酎は原料コストが高く、多くは栗の使用比率を抑えますが、本作は名の通り地栗100%。黒麹で仕込むことで、栗の上品な甘みにコクと厚みの土台を与えました。グラスからは、焼き栗の皮を割った瞬間のような、ほくほくと甘く香ばしい香り。口に含めばマロングラッセを思わせる密度ある甘みが広がり、黒麹由来のキレが後口を引き締めます。「おくりおくら」という柔らかな名の響きも、山里の贈り物のよう。ロックで栗の輪郭を、お湯割りで湯気に立つ甘い香りを——秋の夜長には後者が格別です。当店の干し芋との「ほくほく対決」も密かな楽しみ。里山の秋を、一年中グラスの中に。

  • 落酒造場 GLOW EP05 Ride the waves
    落酒造場(岡山県真庭市)|25%

    「EP05」——エピソード5。落酒造場の実験シリーズ「GLOW」は、アルバムを重ねるバンドのように、仕込みごとにテーマと番号を刻んでリリースされる連作焼酎です。第5話の副題は“Ride the waves”——波に乗れ。伝統的な焼酎の文法を土台にしながら、酵母や麹、蒸溜の采配を毎回変えて、焼酎の新しい波形を探るこの試みは、小さな蔵だからこそ許される軽やかなフットワークの賜物です。グラスからは、フルーティで明るい香りが軽快に立ち、口中では若々しい甘みとクリーンなキレがリズミカルに続きます。25%の飲みやすさも、波乗りのような疾走感に一役。シリーズの他エピソードと出会えたら、ぜひ聴き比べ——いえ、飲み比べを。焼酎が「作品」として進化していく現在進行形を、岡山の山あいから体感できる一本です。

  • 小正醸造 MELLOWED KOZURU EXCELLENCE
    小正醸造(鹿児島県日置市)|41%

    1957年——ウイスキーの樽熟成を焼酎に持ち込むという発想を、日本で最初に形にしたのが小正醸造の「メローコヅル」です。米焼酎を樫樽で長期熟成させ、琥珀色の焼酎という新世界を切り拓いたこの銘柄こそ、後の嘉之助蒸溜所(同社創業)の原点であり、日本の樽熟成文化の隠れた源流。EXCELLENCEはその最上級で、選び抜かれた原酒を長い歳月をかけて熟成させ、41%でボトリングした、六十余年のブランドの粋です。グラスからはバニラとカラメル、熟した果実の甘い樽香が立ち、米焼酎由来の柔らかな旨みがそれを下から支えます。口当たりはブランデーのように滑らかで、余韻は静かに長く——「メロー」の名の由来が、一口で腑に落ちます。嘉之助のウイスキーと並べて、親子二代の樽の物語を辿る夜は、当店ならではの贅沢です。

  • 萬膳酒造 萬膳
    萬膳酒造(鹿児島県霧島市)|25%

    霧島山中、標高500メートルの森の奥に、その蔵はあります。萬膳酒造——一度は途絶えた蔵を四代目が再興し、あえて山の中に建て直した、隠れ里のような焼酎蔵です。仕込みはかめ壺、蒸溜は今や希少な木樽蒸溜器。ステンレスが主流の時代に、杉の木肌を通した蒸気で焼酎を蒸溜するこの古式は、液体にほのかな木の香と柔らかさを授けます。看板銘柄「萬膳」は、黄金千貫と米麹の王道構成ながら、山の湧水とかめ壺と木樽が織りなす、丸く滋味深い味わいが身上。グラスからは芋の優しい甘みと微かな杉の気配、口中では角のない旨みがじんわりと広がり、余韻には霧島の森の静けさが漂います。お湯割りにすれば、山の蔵の湯気がそのまま立ちのぼるよう。プレミア銘柄に劣らぬ実力を持つ、通が黙って頼む一本です。

  • 四ツ谷酒造 兼八
    四ツ谷酒造(大分県宇佐市)|25%

    「麦チョコの香り」——兼八を語るとき、誰もが口にするこの形容は、一度飲めば必ず頷く的確さです。大正8年創業、大分・宇佐の四ツ谷酒造が、地元のはだか麦を常圧蒸溜で仕込む本作は、減圧蒸溜の軽やかな麦焼酎が主流となった時代に、あえて重厚な香ばしさの道を守り抜いた孤高の存在。常圧ならではの、麦を焙煎したような濃厚な香ばしさとカラメルの甘い香りが、まさに麦チョコそのもののアロマとなってグラスから立ちのぼります。口中では香ばしさの奔流の中に、はだか麦の厚い旨みがどっしりと構え、長い余韻へ。この個性が焼酎ファンの熱狂を呼び、今や入手困難のプレミア銘柄となりました。お湯割りで香ばしさの湯気を浴びるもよし、ロックで輪郭を楽しむもよし。麦焼酎の「常圧の逆襲」を象徴する、大分の誇りです。

  • 村尾酒造 村尾
    村尾酒造合資会社(鹿児島県薩摩川内市)|25%

    森伊蔵、魔王、そして村尾——プレミア焼酎「3M」の一角にして、最も骨太な本格派です。当主・村尾寿彦氏が原料の芋の管理から仕込み、蒸溜、そして配達までを一人で担うという徹底した職人体制は、焼酎界の伝説。生産量は増やさず、宣伝はせず、ただ味だけで半世紀——入手困難の理由は、希少性の演出ではなく、一人の人間の両手の限界そのものです。伝統のかめ壺仕込みが生む味わいは、黄金千貫の自然な甘さに土の気配(テロワール)をまとった、深く、丸く、重量感のあるコク。口中では甘みと旨みが完璧な均衡を保ち、長い余韻が芋の存在感を静かに主張し続けます。「分かる人が必ず頼む一本」——当店ではプレミア価格に頼らず、グラスで正直にお出しします。もちろんフリーフロー対象。本物の芋焼酎の基準点を、ぜひ舌に刻んでください。

  • 森伊蔵酒造 極上 森伊蔵(極上の一滴)
    森伊蔵酒造(鹿児島県垂水市)|25%

    電話抽選に当たらなければ定価では買えない——3Mの頂点に君臨する森伊蔵の、さらに上位に位置する長期貯蔵酒が「極上 森伊蔵」です。錦江湾を望む垂水の蔵で、明治18年から続くかめ壺仕込み。土中に埋められた和がめの中で、もろみは外気の影響を受けながらゆっくりと呼吸し、ステンレスタンクでは決して生まれない複雑で丸い味わいを育みます。「極上」はその原酒をさらに歳月をかけて熟成させた、まさに極上の一滴。グラスからは、芋焼酎の概念を超えた気品ある甘い香り——蒸し芋の蜜、白い花、微かな熟成のまろみが、静かに、しかし確かに立ちのぼります。口当たりは絹のごとく、雑味は皆無、余韻はどこまでもエレガント。3Mの中で「エレガント」を担う森伊蔵の、その最高到達点です。人生の節目の一杯に、この静かな極上を。

  • 農口尚彦研究所 SHOCHU
    農口尚彦研究所(石川県小松市)|38%

    「酒造りの神様」——現代の名工にして卓越技能者、杜氏・農口尚彦。山廃仕込みを極め、能登杜氏四天王と称された伝説の職人が、その技術を後世に遺すために設立した蔵が農口尚彦研究所です。本作は、その研究所が醸す吟醸酒の酒粕を蒸溜した粕取り焼酎。つまりこの一本の中には、神様の日本酒の香りの記憶が、蒸溜という形で封じ込められています。38%の度数から立ちのぼるのは、吟醸粕ならではの華やかな果実香——メロンや白桃を思わせる上品なアロマが、焼酎とは思えぬ気品で香り立ちます。口中では米の旨みの芯がすっと通り、キレの良い余韻へ。日本酒ファンにはたまらない「飲む吟醸香」であり、蒸溜酒ファンには和の白いオー・ド・ヴィーとして響くはず。神様の仕事の、もう一つの顔をどうぞ。

  • 宮崎本店 キンミヤ焼酎(亀甲宮焼酎)
    宮崎本店(三重県四日市市楠町)|25%

    下町の酒場の魂——キンミヤ。ホッピー、バイスサワー、電気ブラン割り。東京の大衆酒場文化を語るとき、この三重県楠町生まれの甲類焼酎を抜きには何も始まりません。明治期から続く宮崎本店が鈴鹿山系の超軟水で仕込むキンミヤは、甲類焼酎でありながら、ほのかな甘みと驚くほどまろやかな口当たりを持ち、「割り材の味を最も美しく立てる焼酎」として、下町の名店たちから一世紀にわたる信頼を勝ち得てきました。主張しないことが最高の主張——この美学は、当店が炭酸やトニックの品質にこだわる思想と、実は同じ地平にあります。昆布出汁の梅干しサワーのベースに、あるいはシンプルな炭酸割りに。プレミア焼酎の対極にある「名脇役の頂点」も、日本の焼酎文化の立派な遺産です。大衆酒場への敬意を込めて、一杯。

  • 五島列島酒造 五島芋
    五島列島酒造(長崎県五島市)|40%

    遣唐使の船が最後に日本を離れた島、五島列島。教会群と椿の島として知られるこの西の果てで、島の農家が育てたさつまいもだけを仕込むのが五島列島酒造の「五島芋」です。特筆すべきは40%という度数——一般的な芋焼酎(25%)をはるかに超える原酒級の設計で、島の芋の香味を薄めずに瓶へ封じ込めました。グラスからは、蒸し芋の濃密な甘い香りに、潮風のミネラルを思わせる島の気配が重なります。口中では40度の熱とともに芋の旨みが力強く広がり、ロックでゆっくり溶かせば甘みが花開き、お湯割りなら少量で湯呑みが満ちる濃度です。海を隔てた島の農業は、酒になってはじめて本土へ渡れる——離島の焼酎とは、島の畑の輸出品なのです。同じ五島のGOTOGIN(五島つばき蒸溜所)との「五島列島二蔵飲み」で、西の果ての底力をぜひ。

  • 高麗人参酒
    韓国|27%

    和の蒸溜酒が並ぶ棚の片隅に、一本だけ海を越えてきた薬酒があります——高麗人参酒。朝鮮半島で二千年、「不老長寿の霊薬」として王侯貴族に珍重されてきた高麗人参を、じっくりと漬け込んだ伝統酒です。瓶の中に鎮座する人参の姿は、それ自体が東洋医学の思想の造形。グラスからは、大地の根の力強い香り——朝鮮人参特有の土と甘草を思わせる薬香が立ち、口中ではほろ苦さと自然な甘みが交錯し、体の芯がじんわりと温まっていきます。27%の度数は薬酒として絶妙で、ストレートを少量、あるいはお湯割りで香りをほどくのが本場流。飲み疲れた夜の「養生の一杯」として、また韓国料理の後の食後酒として。日本の薬草酒文化(養命酒のジン然り)と地続きの、東アジアの薬食同源をグラスで巡る一本です。

SAKE|日本酒

Curated Japanese Sake

店主の母の故郷は、新潟・佐渡ヶ島。トキの舞う島の蔵元まで自ら足を運び、蔵元限定酒を買い付けてくるのが当店の日本酒の流儀です。グラス¥1,320(税込)〜。

  • 尾畑酒造 真野鶴 大吟醸 無濾過生
    尾畑酒造(新潟県佐渡市)|佐渡産五百万石100%・精米歩合50%・18.5度

    世界農業遺産・佐渡。トキと共生する田んぼで育った五百万石を50%まで磨き、無濾過・非加熱のまま瓶詰めした、尾畑酒造の大吟醸の素顔です。尾畑酒造は「米・水・人・佐渡」の四つの宝で醸す「四宝和醸」を掲げる島の名門。その蔵まで店主が直接出向いて買い付けてきた一升瓶が、これです。無濾過生ならではの、搾りたての果実のような瑞々しい吟醸香、18.5度の原酒の厚い旨み、そして生酒特有のフレッシュな緊張感——流通に乗る前の、蔵の中の味そのものです。冷やでキリリと、少し温度が上がると米の甘みがふくらむ二段の表情も魅力。ウイスキー鰻の白焼きと合わせれば、佐渡と新潟の水系が皿とグラスで再会します。島の蔵の生の鼓動を、東麻布で。

  • 尾畑酒造 真野鶴 蔵元限定 純米吟醸
    尾畑酒造(新潟県佐渡市)|新潟県産米100%・精米歩合55%・12度

    「蔵元限定」——その四文字は、佐渡へ渡らなければ手に入らないことを意味します。島の蔵の売店だけで分けられるこの純米吟醸は、観光の土産ではなく、蔵人が island の食卓のために仕込んだ、いわば「島内向けの本音の酒」。新潟県産米を55%まで磨き、12度という軽やかな度数に仕上げた設計は、佐渡の海の幸——寒ブリ、南蛮エビ、岩牡蠣——と何杯でも寄り添うための必然です。グラスからは穏やかな吟醸香と米の優しい甘み、口当たりは柔らかく、余韻は潮風のようにすっと引きます。低アルコール設計ゆえ、ウイスキーやジンの合間の「和らぎの一杯」としても優秀。両津港からの道のりごと味わっていただきたい、島の日常の名酒です。

  • 尾畑酒造 真野鶴 薫る生酒 蔵元限定
    尾畑酒造(新潟県佐渡市)|佐渡産米100%・16.5度・要冷蔵

    「薫る」の名に偽りなし——栓を開けた瞬間、メロンや青りんごを思わせる生酒の華やかな香りが立ちのぼる、蔵元限定のフレッシュ番長です。加熱処理をしない生酒は、酵母がもたらした香気成分が最も瑞々しい状態のまま瓶に閉じ込められており、その儚さゆえに要冷蔵・限定流通。島の外へはほとんど出ないこの一本も、店主が佐渡の蔵まで足を運んだからこそ、東麻布のカウンターにあります。16.5度の生原酒らしい厚みのあるボディに、フレッシュな酸と甘みが弾け、余韻は薫り高く長い。よく冷やしてワイングラスで供すれば、吟醸香が花束のように開きます。日本酒の「鮮度」という価値を、これほど分かりやすく教えてくれる酒も稀。佐渡の蔵の、今週の香りをどうぞ。

  • 尾畑酒造 真野鶴 実来(みく)純米大吟醸
    尾畑酒造(新潟県佐渡市)|朱鷺認証米・佐渡産越淡麗100%・精米歩合35%・GI NIIGATA|180ml bottle ¥1,880

    田んぼの上を、トキが舞う——「実来」の原料米は、農薬・化学肥料を減らしトキの餌場となる生きものを育む「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」、佐渡産の酒米・越淡麗です。それを35%まで磨き上げた純米大吟醸は、環境と美酒が両立できることの、島からの美しい証明。GI NIIGATA(地理的表示)の認定も受けた、佐渡テロワールの最高峰です。グラスからは白桃や梨を思わせる気品ある吟醸香が静かに立ち、口に含めば越淡麗特有の透明感ある甘みと絹の舌触り、余韻は驚くほど端正に消えていきます。180mlの小瓶での提供は、この宝石を一人でも気軽に開けていただくため。トキの島の未来ごと味わう一本を、乾杯の特別な一献に。名前の「実来」——実りが来る——の通りの、祝福の酒です。

  • 逸見酒造 真稜(しんりょう)純米大吟醸
    逸見酒造(新潟県佐渡市長石)|精米歩合40%・16度

    佐渡でもっとも小さな酒蔵——逸見(へんみ)酒造。明治初期から島の集落・長石で、家族の手の届く量だけを丁寧に醸し続ける小さな蔵の大吟醸が「真稜」です。かつて幻の酒「至」で全国の日本酒ファンを驚かせたこの蔵の真骨頂は、小仕込みゆえの目の行き届いた繊細な酒質。米を40%まで磨いた本作は、華美に走らず、凛とした佇まいの中に深い旨みを湛える、まさに「稜線」の名にふさわしい端正な設計です。穏やかな吟醸香、なめらかな口当たり、米の旨みの芯、そして潔い後口——派手な一撃ではなく、二杯目三杯目で真価がわかる酒。店主が蔵まで出向き、一升瓶と四合瓶の両方を担いで帰った惚れ込みようです。尾畑酒造と並ぶ佐渡のもう一つの良心を、飲み比べでぜひ。

  • 逸見酒造 至(いたる)純米生 にごり酒
    逸見酒造(新潟県佐渡市長石)|活性にごり生酒・精米歩合60%・15度・要冷蔵

    開栓、要注意——瓶の中で酵母がまだ生きて発酵を続ける「活性にごり」です。佐渡の小さな逸見酒造が醸す人気銘柄「至」の、最も野性的な姿。栓を緩めるとシュワシュワと炭酸が立ちのぼり、白く濁ったもろみの中から、搾りたての甘酒のような米の甘み、ヨーグルトめいた優しい酸、そして生きた酵母の微発泡が一斉に踊り出します。まるで日本酒のシャンパーニュ、いえ、それより野趣あふれる「蔵の中の祭り」をそのまま瓶詰めしたような一本。よく冷やしてグラスに注げば、雪のようなおりが舞い、口中では甘・酸・泡が三拍子で弾けます。デザート酒として、あるいは辛い肴との対比で。要冷蔵・限定流通ゆえ島外ではまず出会えません。佐渡の冬の蔵の空気を、泡ごとどうぞ。

  • 土田酒造 Tsuchida 麹99%-K LIMITED
    土田酒造(群馬県川場村)|原料の99%が麹・無添加生酛・精米歩合70%・13度・R7BY

    原料の99%が、麹——常識では麹は2割前後のところを、ほぼ全量麹で仕込むという狂気じみた設計の一本です。群馬・川場村の土田酒造は、添加物を用いない生酛造りに全量転換した、日本酒界きっての原理主義者にして実験派。本作はUNITED ARROWSとのコラボ第4弾として生まれた限定酒で、焼酎用の黄麹・白麹まで動員し、精米歩合70%、13度という異形のスペックで醸されました。グラスに注げば、白ワインの貴腐を思わせる複雑な甘露の香り。口中では麹由来の圧倒的な旨みと美しい酸が渦を巻き、甘いのに引き締まる不思議な均衡が続きます。日本酒の定義を揺さぶる問題作にして、チーズや発酵食品との相性は無敵。「日本酒とは何か」を考えさせる、ファッションブランドも惚れた前衛です。

  • 黒龍酒造 黒龍 五百万石 純米大吟醸
    黒龍酒造(福井県永平寺町)|福井県産五百万石100%・精米歩合50%・16度

    永平寺の門前、九頭竜川の伏流水が湧く福井の地で、1804年から「良い酒を造る」の一心を貫く黒龍酒造。日本酒に吟醸文化を根付かせた立役者のひとつであり、「黒龍」の名は上質な日本酒の代名詞として全国に轟いています。本作は、酒米・五百万石の聖地である福井の県産米だけを50%まで磨いた純米大吟醸。五百万石という米の持ち味——淡麗できれいな酒質、すっと伸びる透明感——を、地元の水と二百年の技で最大限に引き出しました。グラスからは穏やかで気品ある吟醸香、口に含めば絹のような舌触りと米の上品な甘み、そして九頭竜の清流のように澄んだ余韻。和食全般、特に白身魚や出汁の料理と合わせれば、互いの繊細さが引き立て合います。禅の里の静謐を、一献に。

  • 山梨銘醸 七賢 SPARKLING SAKE 山ノ霞
    山梨銘醸(山梨県北杜市白州町)|瓶内二次発酵うすにごり・12度|720ml bottle ¥5,980

    白州——ウイスキーファンには蒸溜所の聖地として知られる南アルプスの名水の里は、1750年から続く日本酒蔵・七賢の本拠地でもあります。その七賢が日本のスパークリング酒の頂点を目指して磨き上げたのが「山ノ霞」。シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵によって生まれる泡は、きめ細かくクリーミーで、うすにごりの霞の中を真珠のように立ちのぼります。名水の里の酒らしい透明感ある酒質に、ほのかな甘みと清らかな酸、米の優しい旨みが重なり、12度の軽やかさが乾杯の一杯に完璧に応えます。白い霞が山を包むように、やわらかく広がる味わい——記念日のシャンパーニュの代わりに、日本の山の泡を。尾崎牛膳の始まりの一杯としても、これ以上ない祝祭感です。

  • 甍酒蔵 いらか 銀・紅 ひとごこち 無濾過原酒 生酒 2025
    甍酒蔵(長野県松川村)|無濾過原酒・生酒・15度・1500ml

    北アルプスの麓、長野・松川村に生まれた新星「甍(いらか)」。瓦屋根を意味する蔵名には、日本の風景に根ざした酒でありたいという願いが宿ります。本作は長野の酒米・ひとごこちを無濾過原酒・生酒のまま瓶に封じた「銀・紅」の2025年版で、1.5リットルのマグナム級ボトルという祝祭的な姿も印象的。無濾過原酒ならではの厚い米の旨みと、生酒の弾けるフレッシュな酸が、アルプスの雪解け水の透明感の上で共存します。グラスからは白葡萄や梨を思わせる瑞々しい香り、口中では旨みの波が押し寄せては、15度の設計が軽やかに受け流す——飲み飽きしない原酒という離れ業です。新しい蔵の産声は、それだけで肴になります。信州の若い才能を、応援の一献とともに。

  • 清水清三郎商店 作 純米大吟醸 槐山 一滴水
    清水清三郎商店(三重県鈴鹿市)|兵庫県産山田錦・精米歩合40%

    「一滴水(いってきすい)」——この世のすべては一滴の水にも宿る、という禅語です。伊勢志摩サミットの乾杯酒として世界に名を馳せた三重・鈴鹿の「作(ざく)」が、その頂の一つとして醸す純米大吟醸。兵庫県産の山田錦を40%まで磨き、低温でゆっくりと発酵させた酒は、名の通り一滴の中に宇宙を宿します。冠された「槐山(かいざん)」は、古来「尊貴の木」とされる槐(えんじゅ)に由来。グラスからは白桃や洋梨を思わせる繊細な吟醸香が静かに立ち、口当たりはなめらかに、優しい甘みと美しい酸が重なって、余韻は驚くほど端正に結ばれます。派手さではなく「静かな完成度」で魅せる——日本酒の美しさと精神性を一杯で語る、作の代表作です。大切な夜の、締めの一献に。

  • 車多酒造 天狗舞 零 -REI- 2024BY 生酒
    車多酒造(石川県白山市)|山廃仕込・特A地区山田錦・16度前後・完全非加熱

    山廃仕込みという言葉を全国区にした蔵——石川・白山の車多酒造「天狗舞」。その頂点に位置づけられるのが、伝説的杜氏・中三郎の哲学を次世代へ繋ぐために生まれた特別な酒「零(REI)」です。零とは、原点であり、始まり。完成ではなく、未来へ続く「今」を味わうという思想が、この一字に込められています。特A地区の山田錦を、乳酸菌の自然の営みに委ねる山廃酛で仕込み、完全非加熱の生酒のまま瓶詰め——山廃ならではの奥行きある旨みと、しなやかで立体的な酸、生酒の瑞々しさが、静かでありながら力強い存在感を放ちます。グラスの中で温度とともに表情を変える様は、まさに生きた酒。山廃の教科書にして最前線を、当店のTabelogでも看板に据える自慢の一本です。

日本のリキュール

Japanese Liqueur & Umeshu

和リキュール・梅酒・果実酒 ¥1,320(税込)〜。

  • 小林酒造 鳳凰美田 ゆず
    小林酒造(栃木県小山市)|13%

    日本酒ファンなら誰もが知る栃木の銘酒「鳳凰美田」。その小林酒造が、自慢の日本酒をベースに柚子をたっぷりと注ぎ込んだのが、この柚子酒です。リキュールの土台に吟醸蔵の酒を使うという贅沢——搾りたての柚子果汁の鮮烈な酸と香りが、鳳凰美田らしい上品な米の甘みに抱かれて、まるで柚子そのものを飲んでいるかのような濃密さに仕上がっています。グラスに注いだ瞬間、柚子の皮を剥いたときのあの弾ける香りが立ち、口中では果汁の瑞々しい酸味と蔵の酒の柔らかな甘みが美しく調和。13度の設計はロックでもソーダ割りでも崩れず、食後の一杯にも、日本酒の合間の「香りの箸休め」にも最適です。和柑橘リキュールの最高峰と評される定番中の定番——迷ったら、まずこれを。

  • 楯の川酒造 子宝 ヨーグルト
    楯の川酒造(山形県酒田市)|8%

    「子宝」は、山形・酒田の名門「楯野川」の楯の川酒造が、庄内の果物や乳製品で仕立てる「食べる」フルーツリキュールシリーズ——遊佐の月光川蒸溜所(当店のウイスキー棚のNEWBORN)と同じ蔵元の、甘い顔です。看板のヨーグルトは、地元産ヨーグルトをたっぷりと使い、とろりと濃厚な乳の質感と、爽やかな乳酸の酸味、優しい甘みが三位一体となった、デザートそのもののような一本です。8度という低めの度数は、お酒に強くない方でも安心して楽しめる設計。グラスに注げば、まるで上質なラッシーのような白い液体が現れ、口に含めば搾りたてのヨーグルトの風味がまろやかに広がります。ロックでデザート代わりに、ソーダで割れば乳酸飲料の懐かしさが弾ける「大人のスコール」に。意外なおすすめはウイスキーとの二層仕立てや、挽き茶を振りかけた和のアフォガード風——バーならではの遊びが利く素材でもあります。強い酒の夜の、優しい句読点としてどうぞ。

  • 梅乃宿酒造 あらごし もも
    梅乃宿酒造(奈良県葛城市)|8%

    グラスの中に、桃がいる——「あらごし」の名の通り、白桃の果肉を粗く裏ごしして日本酒ベースに惜しみなく混ぜ込んだ、奈良・梅乃宿酒造の看板リキュールです。注ぐととろりと濁った桃色の液体が現れ、スプーンが欲しくなるほどの果肉感。口に含めば、完熟白桃をそのまま頬張ったような濃密な甘みと香りが広がり、日本酒ベースならではの柔らかな余韻が後を引きます。「和のリキュール」というジャンルを全国区に押し上げた梅乃宿の功績は大きく、本作はその代表作として海外でも熱烈なファンを持ちます。よく冷やしてロックで、あるいはソーダで割って「飲める桃パフェ」に。ウイスキーの合間の甘い休符として、また甘党の方の一杯目として、老若男女に愛される桃源郷です。

  • 八木酒造 とろとろ梅酒
    八木酒造(奈良県奈良市)|10%

    名前に偽りなし——「とろとろ」。奈良の梅の名産地・月ヶ瀬の完熟梅をペースト状にして贅沢に溶かし込んだ、飲む梅そのもののような梅酒です。一般的な梅酒が梅の「エキス」を酒に移すのに対し、本作は梅の「果肉」ごと液体にしてしまうという発想の転換。グラスを傾けると、ねっとりとした濃橙色の液体がゆっくりと流れ、口中では完熟梅の濃厚な甘酸っぱさが、文字通りとろとろと絡みつきます。梅干しでも梅シロップでもない、「完熟梅のピュレを飲む」という体験は唯一無二。ロックで濃密さをそのまま、ソーダ割りで甘酸っぱいネクター風に。当店の昆布出汁の梅干しサワーが「塩の梅」なら、こちらは「蜜の梅」——梅という果実の二つの顔を、飲み比べでぜひ。奈良の月ヶ瀬の里の、蜜の便りです。

  • 木内酒造 木内梅酒
    木内酒造(茨城県那珂市)|14.5%

    ベースは、世界を獲ったビールを蒸溜したスピリッツ——常陸野ネストビールの木内酒造が、自社のホワイトエールを蒸溜した「木内蒸溜酒」に国産梅を漬け込んだ、他のどこにも真似できない梅酒です。ビール由来のスピリッツにはコリアンダーやオレンジピールの気配がほのかに宿り、それが梅の甘酸っぱさと出会うと、通常の梅酒にはない複雑でスパイシーな奥行きが生まれます。天満天神梅酒大会で日本一に輝いた実績は伊達ではなく、甘さは控えめ、酸は鮮烈、余韻にはビアスピリッツのハーバルな陰影——「大人の梅酒」の完成形です。ロックで複雑さをじっくり、ソーダ割りでスパイシーな梅スカッシュに。日の丸ウイスキー、蔵風土ジンと並べる「木内酒造フルコース」の締めの一杯としても。二百年の蔵の遊び心と技術が、一粒の梅に凝縮されています。

  • 株式会社KSP ONInoAmaro Classic
    株式会社K.S.P・金ケ崎薬草酒造(岩手県胆沢郡金ケ崎町)|25%

    アマーロ——イタリア語で「苦い」を意味する、薬草系ビターリキュールの伝統様式です。食後の消化を助ける「食後酒(ディジェスティーヴォ)」としてイタリアの食卓に欠かせないこの文化を、日本の素材と感性で翻訳したのが「鬼のアマーロ」。造り手は岩手・金ケ崎町の株式会社K.S.P(金ケ崎薬草酒造)——旧永岡幼稚園の園舎を蒸溜場に甦らせ、薬草の里の恵みでリキュールを仕込む東北の小さな工房です。鬼という日本の異形の象徴を冠した名前がまず秀逸で、和のハーブやスパイスが幾重にも重なる複雑な苦味の設計は、まさに鬼の棲む山の薬箱のよう。グラスからは薬草とオレンジピール、シナモン系スパイスの奥深い香りが立ち、口中では甘みと苦味が波のように交互に押し寄せ、長いビターな余韻へと続きます。ロックで食後にゆっくり、ソーダで割れば和製アマーロハイボールに。エスプレッソに数滴垂らす伊流の愉しみも。尾崎牛膳やウイスキー鰻の後の一杯に、日本の鬼の苦味をどうぞ。

  • 株式会社KSP AKA-ONI ROSSO
    株式会社K.S.P・金ケ崎薬草酒造(岩手県胆沢郡金ケ崎町)|18%

    赤鬼——ROSSO(イタリア語で赤)の名を持つ、鬼シリーズの緋色の一本です。イタリアのビター文化でいえばカンパリやアペロールが担う「赤いアペリティーボ(食前酒)」の領域を、和の素材で再構築した設計で、鮮やかな赤い液体には柑橘の明るさとハーブのほろ苦さが同居します。グラスからはオレンジやベリーを思わせる華やかな香りと、薬草の複雑な陰影。口中では甘やかな入口から、じわりとビターな輪郭が立ち上がり、食欲を静かに目覚めさせます。18%という度数はソーダ割りやスプリッツ仕立てに最適で、和製ネグローニ——国産ジン&日本産ヴェルモットに、カンパリの代わりにこの赤鬼を——という当店の遊びも絶品です。夕暮れの一杯目、赤い鬼と乾杯を。イタリアの食前酒文化と日本の鬼伝説が、グラスの中で盃を交わします。

  • 伊勢屋酒造 SCARLET CAFFÈ AMARO
    伊勢屋酒造|26%

    コーヒーとアマーロ——現代のバーシーンで最も熱い二つの潮流を、一本に束ねたカフェアマーロです。エスプレッソの深い焙煎香と、薬草リキュールの複雑な苦味。この「苦味×苦味」の掛け算は、単なる足し算を超えて、ビターチョコレートのような官能的な奥行きを生み出します。グラスからは淹れたてのエスプレッソの香ばしさ、カカオ、そして薬草のスパイシーな気配が立ちのぼり、口中では甘み・苦味・焙煎香が三重奏を奏でます。26%の骨格はロックでゆっくり溶かすのに最適で、食後の「コーヒーと食後酒を一杯で」という現代的な合理にも応えます。真価はカクテルで——当店のブラックマンハッタン(国産ウイスキー×カフェアマーロ)の主役として、またエスプレッソマティーニの深みの底として活躍する、バーの新しい必需品です。緋色の夜の、苦く甘い句読点を。

  • 日和株式会社 hiyori vermouth Kihada
    日和株式会社|18%

    ベルモット——白ワインに香草を漬け込んだフレーバードワインは、マティーニやネグローニに不可欠の名脇役です。その伝統様式を日本の生薬で再解釈したのが「hiyori vermouth」。鍵となる素材は、キハダ(黄檗)。ミカン科の落葉樹の内皮で、古来「陀羅尼助」など和漢薬の主成分として胃腸を守ってきた、日本の山の苦味の代表格です。ヨーロッパのベルモットがニガヨモギで苦味を組むところを、日本の薬木キハダで組む——この置き換えひとつで、香りの風景は欧州の丘から日本の山寺へと一変します。グラスからはワインの果実味に和柑橘と生薬の澄んだ苦香が重なり、口中では上品な甘みとキハダのビターが端正に調和。当店の「国産ジン&日本産ヴェルモットのネグローニ」の屋台骨であり、単体をロックや軽いソーダ割りで飲めば、和の食前酒として完璧に機能します。

  • 株式会社KSP STRAWBERRY WONDER
    株式会社K.S.P・金ケ崎薬草酒造(岩手県胆沢郡金ケ崎町)|18%

    いちごの「驚き」を名に掲げた、真紅のベリーリキュール。日本のいちごは世界的に見ても品種改良の極致にあり、その香りの豊かさと甘みの繊細さは、リキュールの素材として一級品です。本作は完熟いちごの魅力を、人工的な甘ったるさに逃げず、果実そのものの瑞々しさとして瓶に封じた一本。グラスに注げば、摘みたてのいちごのヘタを取った瞬間のような、甘酸っぱくフレッシュな香りが弾けます。口中では果実の自然な甘みと明るい酸が踊り、余韻は春の陽だまりのように軽やか。ロックでデザート酒として、ソーダ割りで大人のいちごスカッシュに、そしてスパークリングワインに垂らせば即席のロッシーニ風カクテルが完成します。ミルクとの相性も抜群で、A2ミルクと合わせる「大人のいちごミルク」は当店の隠れた人気作。赤い驚きを、一杯に。

  • 伊豆下田蒸留所 Blue Curaçao
    伊豆下田蒸留所(静岡県下田市)|40%

    黒船来航の港町・下田の蒸溜所が造る、国産ブルーキュラソー。カクテルの青の正体であるこのオレンジリキュールは、大量生産の輸入品が市場を占める中、国産クラフトで挑む造り手はごく僅かです。下田の海の青をそのまま映したような鮮やかな液色に、オレンジピールの精油香が瑞々しく立ち、40%の骨格が香りを支える本格設計。人工的な甘さに頼らず、柑橘の苦味と華やかさで組み立てられた味わいは、ブルーハワイやチャイナブルーといった定番カクテルの完成度を一段引き上げます。ソーダで割るだけでも、グラスの中に下田の夏の海が広がる——ペリーが見た紺碧を、バーカウンターで。国産クラフトリキュールの層の厚みを象徴する、美しい脇役にして密かな主役です。

  • 伊豆下田蒸留所 FORTISSIMO ff op.1
    伊豆下田蒸留所(静岡県下田市)|40%

    フォルティッシモ——楽譜で「きわめて強く」を指示する音楽記号ffを冠し、作品番号op.1を刻んだ、伊豆下田蒸留所の記念すべき第一楽章です。リキュールを楽曲として設計するという美意識のもと、香りの強奏——柑橘やボタニカルの香気を最強音で鳴らすことを目指した一本。グラスに注げば、その名の通り香りが一斉にフォルティッシモで立ち上がり、40%の度数が音圧のように厚い骨格を支えます。口中では華やかな香味の主旋律が力強く展開し、余韻は長いフェルマータのように続く——飲むというより「聴く」感覚に近い体験です。ソーダで割れば音量はメゾフォルテに和らぎ、食中にも寄り添う表情に。op.2、op.3と続くであろう作品群の序曲として、下田の若い蒸溜所の才能を最初の一音から見届けてください。

  • 八王子蒸留所 mulberry & hops
    八王子蒸留所(東京都八王子市)|28%

    桑の実(マルベリー)とホップ——一見奇妙なこの組み合わせには、八王子の歴史が織り込まれています。かつて「桑都(そうと)」と呼ばれ、絹織物で栄えた八王子は、街中に桑畑が広がる養蚕の都でした。その土地の記憶である桑の実の、ベリーらしい甘酸っぱさに、クラフトビール時代の華・ホップの快活な柑橘香を重ねる——過去と現在の八王子が、一本のリキュールの中で対話しているのです。グラスからはブラックベリーにも似た桑の実の深い果実香と、ホップの爽やかな青い香りが立ち、口中では甘酸っぱさとほろ苦さが美しく絡みます。28%としっかりした度数はソーダ割りで真価を発揮し、ベリーのIPAのような新感覚の一杯に。翠靄ジンと同じ蔵の、土地の物語をどうぞ。桑の都の名は、グラスの中に生きています。

  • 株式会社KSP KUBO クレーム・ド・カシス
    株式会社K.S.P・金ケ崎薬草酒造(岩手県胆沢郡金ケ崎町)|20%

    カシスオレンジ、キール、カシスソーダ——バーの定番を支えるクレーム・ド・カシスは、フランス・ブルゴーニュの伝統リキュールですが、本作は国産の黒すぐり(カシス)文化に根ざしたクラフト版です。「KUBO」の名を冠したこの一本は、カシス農家の丹精込めた果実を、糖度と酸のバランスを見極めて仕込んだ、果実主義のクレーム・ド・カシス。グラスからは黒すぐり特有の、ベリーと森の土が混ざったような深い香りが立ち、口中では濃密な甘みの奥に、カシスらしい野性的な酸とタンニンの気配が輪郭を描きます。大量生産品との違いは、この「果実の陰影」の有無。キールやカシスソーダに使えば定番カクテルが一段深くなり、ロックでそのまま食後酒にも。白ワインと合わせる自家製キールは、当店の白ワインリストとの共演でぜひ。

  • 株式会社KSP PASSION FRUITS
    株式会社K.S.P・金ケ崎薬草酒造(岩手県胆沢郡金ケ崎町)|18%

    果物の中で最も「香りが主役」の存在、パッションフルーツ。切った瞬間に部屋中を満たすあの南国の芳香——甘く、酸っぱく、花のようでもある複雑な香気を、そのままリキュールに写し取った一本です。パッションフルーツの魅力は、甘さより酸。トロピカルフルーツでありながら、キリリとした酸が全体を引き締めるため、リキュールにしても甘ったるさに沈まず、鮮烈な香りの輪郭が立ち続けます。グラスからは百の花の情熱(パッション)ならぬ、南国の果肉の濃密な香りが弾け、口中では甘酸のコントラストが鮮やかに踊ります。ソーダ割りで即席のトロピカルスカッシュ、ゆずモヒートへの一垂らしで南国の風を、そして挽茶GIN&TONICに数滴——茶とパッションの意外な和音もお試しを。18%の使い勝手の良さで、カクテルの彩りを一手に担う名脇役です。

  • 株式会社KSP POMEGRANATE LIQUEUR
    株式会社K.S.P・金ケ崎薬草酒造(岩手県胆沢郡金ケ崎町)|18%

    ザクロ——ギリシャ神話で冥界の女王ペルセポネを縛った「宿命の果実」は、ルビー色の粒に甘酸っぱい神秘を宿します。本作は国産クラフトによるザクロリキュール。カクテルの世界でザクロといえば人工的なグレナデンシロップが長く代役を務めてきましたが、本物のザクロ果汁の、あの渋みを含んだ複雑な甘酸っぱさは、シロップでは決して再現できません。グラスからは赤い果実の艶やかな香りと、微かにタンニックな陰影。口中では甘み・酸味・渋みが三つ巴で絡み、余韻には果実の種を噛んだような野性的な記憶が残ります。ソーダ割りで宝石色のスカッシュに、テキーラサンライズのグレナデンをこれに替えれば夕焼けの色が本物になる——定番カクテルの「格上げ素材」として、バーテンダー的にも頼れる一本です。冥界の女王の果実を、東麻布の夜に。

  • ドーバー洋酒貿易 ホワイトキュラソー
    ドーバー洋酒貿易(東京都)|40%

    日本の洋菓子職人が全幅の信頼を置く洋酒の名門、ドーバー。ケーキやショコラの香り付けに使われる製菓用洋酒で国内随一の地位を築いたこの会社の技術は、そのままカクテルの世界でも一級品です。ホワイトキュラソーはオレンジの果皮から香りを抽出した無色のリキュールで、ホワイトレディ、サイドカー、マルガリータ——カクテルの古典の背骨を担う存在。ドーバー版の美点は、日本の職人文化らしい「雑味のない澄んだオレンジ香」と、40%の骨格がもたらすカクテルの中での存在感です。柑橘の皮の華やかさだけを、苦味とともに端正に立たせる仕事ぶりは、まさに菓子職人の香りの美学。当店のスタンダードカクテル(¥1,760〜)の多くを、この一本が陰で支えています。名脇役の実力を、ホワイトレディでぜひ。

  • いまでや×鍋店 木由子 ゆず酒
    鍋店株式会社(千葉県香取郡神崎町)|千葉県産柚子果汁100%・8%

    「木由子」と書いて「きゆず」——目利きで知られる酒販店いまでやと、千葉・神崎の三百年蔵「仁勇」の鍋店(なべだな)が組んだ、千葉県産柚子果汁100%のゆず酒です。発酵の里・神崎は利根川べりの小さな町ながら、酒と味噌の蔵が息づく千葉の食文化の聖地。その蔵の清酒をベースに、地元千葉の柚子だけを搾って仕込んだ本作は、柚子の産地としては無名に近い千葉の実力を静かに証明する一本です。グラスからは搾りたて柚子の爽やかな精油香、口中では果汁100%ならではの鮮烈な酸と、清酒ベースの丸い甘みが調和します。8度の軽やかさはロックでもソーダでも自在で、房総ウイスキーやビワマレットと並べる「千葉づくし」の一角としても。地元の柚子と地元の蔵——小さな必然の、美しい結晶です。

  • ブラッドオレンジ アポロン
    国産クラフトリキュール|度数表記なし

    太陽神アポロンの名を戴く、血のように赤いオレンジのリキュール。ブラッドオレンジは地中海の強い日差しが果肉に赤い色素(アントシアニン)を宿らせた特別な柑橘で、通常のオレンジにはないベリーのような甘酸っぱさと、ほのかな野性味が身上です。近年は国産——愛媛や宇和海沿岸などでも栽培が広がり、日本のブラッドオレンジは香りの繊細さで本場に伍する評価を得つつあります。グラスに注げば、夕陽を溶かしたような深い緋色。香りはオレンジとラズベリーの間のような艶やかさで、口中では柑橘の酸とベリー様の甘みが幾重にも重なります。ソーダ割りで「飲む地中海の夕焼け」、スパークリングと合わせてイタリア風アペリティーボに。太陽神の名にふさわしい、光をそのまま飲むような一杯です。

  • 房総ラム キビトソ エリクシール・デ・ボウソウ ビワマレット
    千葉県|枇杷リキュール

    「ビワマレット」——枇杷(ビワ)とアマレットを掛けた名前が、すでに種明かしです。アマレットは杏の核(杏仁)から造るイタリアの甘いリキュールですが、実は枇杷はバラ科の親戚で、その種にも杏仁とそっくりの甘い香り——あの杏仁豆腐の香りが宿ります。千葉が誇る特産・房州びわの果実と種、両方の魅力を「房総の霊薬(エリクシール・デ・ボウソウ)」として仕立てた本作は、房総ラムの造り手による土地の遊び心の結晶。グラスからは杏仁の甘く懐かしい香りと、枇杷果実の柔らかな蜜の気配が立ちのぼり、口中ではアマレットに似た甘美と、和の果実の優しさが溶け合います。ロックで和製アマレットとして、ミルク割りで「飲む杏仁豆腐」に、ウイスキーと合わせればゴッドファーザーの房総版が完成。イタリアと千葉の、種を挟んだ親戚づきあいをどうぞ。

日本産・栃木リキュール

宇都宮の女性バーテンダー・原百合子氏が2019年に設立した、国産果実リキュールの造り手。旬のもぎたて農産物を季節ごとに商品化し、ラインナップは30種。無農薬栽培種や市場に出回らない完熟果実へのこだわりで、英国の国際酒類品評会ISC2019では4種が世界の老舗メーカーを押さえて銀賞・銅賞を受賞——「サントリー響」や「ニッカ竹鶴」が金賞で脚光を浴びたあの舞台で、栃木の小さなブランドが名を刻みました。バーテンダーが造るリキュールゆえ、すべて「カクテルの現場で使える」設計です。

  • 栃木リキュール M8 Pistachio
    栃木リキュール(栃木県宇都宮市)|13%

    世界的なピスタチオブームのはるか前から、この緑の宝石をリキュールにしていた先見の一本。ピスタチオの魅力は、ナッツでありながらどこか青くフルーティな、他に代えの利かない香ばしさです。本作はその繊細な風味を、人工香料に頼らず、乳のまろやかさとともに丁寧に写し取りました。グラスからはローストピスタチオの香ばしく甘い香り、口中ではジェラートのピスタチオ味を思わせる濃厚なコクが広がり、13度の優しさで余韻はなめらかに続きます。ロックでデザート酒として完結する完成度ですが、真価はカクテルで——ミルクと振ればピスタチオミルクパンチ、エスプレッソマティーニに重ねればシチリアの菓子のような一杯に。バーテンダーが「使う側」の目線で設計した、現場の知恵の結晶です。

  • 栃木リキュール ginger
    栃木リキュール(栃木県宇都宮市)|20%

    生姜——薬味の王様は、リキュールになると俄然カクテルの主役級に化けます。本作は国産生姜の、あの搾りたての鮮烈な辛味と土の香りを、砂糖の甘さで塗りつぶさずに封じた辛口設計のジンジャーリキュール。グラスからは擦りおろしたての生姜の瑞々しくスパイシーな香りが立ち、口中では甘みの後からじんわりと本物の辛味が追いかけてきて、体の芯を温めます。ソーダで割れば「本気のジンジャーエール」が即座に完成し、モスコミュールに加えれば生姜の輪郭が三割増しに。当店のHAKKO GINGERモスコミュールとの相乗も面白く、お湯割りに蜂蜜を一匙垂らせば、冬の夜の特効薬のような一杯になります。20度の骨格はカクテルの中で埋もれない強さ。飲む生姜湿布、常備の価値ありです。

  • 栃木リキュール The raindrops on your lips 雨のしずく ラベンダー
    栃木リキュール(栃木県宇都宮市)|20%

    「あなたの唇に落ちる雨のしずく」——リキュールの名前としては、あまりに詩的です。ラベンダーの穏やかで甘い鎮静の香りを、雨上がりの花畑のしずくのように一滴ずつ集めたイメージで仕立てた、栃木リキュールの中でも最もロマンチックな一本。ラベンダーは香りが強すぎると石鹸のようになってしまう難しい素材ですが、本作は「香水ではなく、しずく」という絶妙な淡さで、飲み物としての品位を保っています。グラスからは薄紫の花畑を渡る風のような優しい香り、口中では蜂蜜めいた甘みとフローラルな余韻が静かに広がります。ソーダ割りで眠る前の一杯に、ジントニックに数滴垂らせば紫の香りのヴェールが掛かる——TOKYO LOCAL SPIRITSのラベンダーとの「紫飲み比べ」も一興です。雨の夜に頼みたくなる、名前ごと味わう一杯。

  • 栃木リキュール M7 RASPBERRY ルビーの短冊
    栃木リキュール(栃木県宇都宮市)|15%

    「ルビーの短冊」——七夕の願いを宝石に見立てたような副題を持つ、ラズベリーの赤いリキュールです。ラズベリーは香りの立ち方が儚く、摘んだ端から風味が逃げていく繊細な果実。だからこそ市販品の多くは香料で補いますが、栃木リキュールは完熟果実の瞬間の香りを封じることにこだわりました。グラスに注げば、宝石のような深紅の液体から、摘みたてラズベリーの甘酸っぱく華やかな香りが立ちのぼります。口中では果実の鮮烈な酸と上品な甘みが踊り、15度の軽やかさで余韻は瑞々しく消えていきます。ソーダ割りで赤い宝石のスカッシュに、スパークリングに沈めればキール・アンペリアル風の祝杯に、チョコレートと合わせれば鉄板のマリアージュ。短冊に書いた願いのように、まっすぐな果実の一杯です。

  • 栃木リキュール M5 GREEN TEA エメラルドの手紙
    栃木リキュール(栃木県宇都宮市)|20%

    「エメラルドの手紙」——緑茶の翠を宝石に、その味わいを便りに見立てた一本です。緑茶リキュールというと甘い抹茶ミルク系を想像しがちですが、本作は茶葉の旨みと渋みの輪郭を残した、いわば「淹れ手の顔が見える」設計。上質な煎茶を丁寧に淹れたときの、あの甘み・旨み・渋みの三層構造が、リキュールの文法で美しく再現されています。グラスからは新緑の茶畑を思わせる清々しい香り、口中では茶の旨みがとろりと広がり、心地よい渋みが甘さを引き締めて、余韻は一服の後のように澄んでいます。ロックで食後の「飲む一服」に、ミルク割りで大人の抹茶ラテ風に、そして当店の挽き茶ドリンクとの飲み比べで「茶の表現の多様性」を巡る夜も一興。日本茶文化への、緑色の恋文です。

  • 栃木リキュール M9 BLUE ROSE サファイヤのシープ
    栃木リキュール(栃木県宇都宮市)|18%

    青い薔薇——自然界に存在せず、花言葉は「不可能」から、開発の実現とともに「夢かなう」へと書き換えられた奇跡の花です。その青薔薇を冠した本作は、栃木リキュールの中でも最も幻想的な一本。「サファイヤのシープ」という謎めいた副題も含めて、グラスの中に小さな物語を注ぐようなリキュールです。液色は深いサファイアブルー。香りは薔薇の花弁の艶やかさに、ベリーや柑橘の明るい気配が重なり、口中では花の蜜のような上品な甘みが広がります。ソーダで割れば青い薔薇のスカッシュ、トニックなら光にかざしたくなる宝石色のロングカクテルに。記念日の乾杯や、バーカウンターでの「映える一杯」としての力は絶大です。夢かなう、の花言葉とともに——願いごとのある夜に、青い一杯を。

  • 栃木リキュール M4 MENTHOL
    栃木リキュール(栃木県宇都宮市)|20%

    メンソール——ミントの清涼成分そのものを名乗る、潔い一本です。ペパーミントリキュールの伝統(クレーム・ド・マント)は古くからありますが、多くは強い甘さと人工的な香りで、現代のバーでは出番を減らしていました。本作はその反省の上に立ち、国産ハーブの瑞々しい清涼感を、キレのある甘さで支える現代的な再設計。グラスからは摘みたてミントを揉んだような鮮烈な冷気が立ち、口に含めば口中の温度が下がる錯覚とともに、すっと消える綺麗な甘みが走ります。ソーダ割りは真夏の救済、ゆずモヒートへの一垂らしで清涼感を倍加、チョコレートリキュールと重ねればアフターエイトの液体版に。TOKYO LOCAL SPIRITSの薄荷と並べる「ミント東西戦」も当店の遊びです。バーテンダーが現場のために作った、涼のツールボックス。

日本のラム・ウォッカ・ブランデー

Japanese Rum, Vodka & Brandy

日本のラム

  • グレイスラム CORCOR OKINAWAN RUM
    グレイスラム(沖縄県・南大東島)|40%

    東京から南へ約1,300km、絶海の孤島・南大東島。開拓以来サトウキビとともに生きてきたこの島で、2004年、一人の女性起業家・金城祐子氏が立ち上げたのが、国産クラフトラムの草分け「CORCOR(コルコル)」です。原料は島のサトウキビのみ、添加物も着色も一切なし。世界のラムの多くが糖蜜(モラセス)から造られる中、コルコルは島の製糖と一体になった純度の高い造りで、サトウキビの島のテロワールをそのまま瓶に封じました。グラスからは搾りたてのキビ汁を思わせる青く甘い香り、微かな潮の気配。口中ではドライな骨格の中にキビ本来の滋味が広がり、余韻は南洋の風のように抜けていきます。日本にラム文化を根付かせた記念碑的な一本——モヒートやラムコークの土台としても、素性の良さが際立ちます。孤島の開拓魂を、一杯に。

  • 天神村醸造所 碧原 ホワイトラム
    天神村醸造所(愛媛県喜多郡内子町)|42%

    「碧原(あおはら)」——サトウキビ畑が風にそよぐ、碧い海原のような風景を名にしたホワイトラム。造るのは、白壁と和蝋燭の町並みで知られる愛媛・内子町の天神村醸造所です。天神村醸造所は、国産サトウキビの風味を最大限に活かす小仕込みのクラフトラム造りで、ホワイト・ボタニカル・スパイスドの三部作を展開する注目の造り手。その基準となる本作は、樽熟成を経ないホワイトラムだからこそ、素材と蒸溜の実力が裸で問われます。グラスからは、キビの搾り汁の青い甘さと、白い花を思わせる清らかな香り。口当たりは42%とは思えず柔らかで、サトウキビ由来の自然な甘みがすっと伸び、キレの良いドライな余韻へと続きます。ソーダ割りで素材の透明感を、モヒートでミントとキビの青い共鳴を。三部作の「無地の一枚目」として、まずここから碧い原っぱへ。

  • 天神村醸造所 BOTANICAL RHUM
    天神村醸造所(愛媛県喜多郡内子町)|42%

    ラムとジンの国境線上に咲いた、ボタニカルラム。碧原のホワイトラムを土台に、ハーブや柑橘のボタニカルを重ねた本作は、「サトウキビの蒸溜酒に植物の香りを纏わせたら」という、ジン全盛時代ならではの越境的な問いへの回答です。ジンがジュニパーを義務とするのに対し、ボタニカルラムは自由。キビ由来の甘い骨格の上で、柑橘の明るさとハーブの清涼感がのびのびと踊り、ジンとも通常のラムとも違う第三の香りの風景が広がります。グラスからは青いキビの甘さと精油の爽やかさが同時に立ち、トニックで割れば「ラムトニック」という新定番が完成——ジントニックに飽きた夜の、最良の浮気先です。ライムを搾ればダイキリの原風景も見えてきます。国産クラフトの実験精神が生んだ、境界線の美酒をどうぞ。

  • 天神村醸造所 SPICED RHUM
    天神村醸造所(愛媛県喜多郡内子町)|42%

    スパイスドラム——バニラやシナモンなどの香辛料をラムに纏わせるこの様式は、大航海時代、船乗りたちが粗いラムを香辛料で飲みやすくした知恵に始まります。キャプテンモルガンに代表される甘い大量生産品のイメージが強いジャンルですが、本作は国産クラフトの手仕事で、その歴史様式を丁寧に再構築した一本。碧原の清らかなキビスピリッツに、バニラやシナモン、柑橘の皮を思わせるスパイスが幾層にも重なり、砂糖の重さではなく「香りの甘さ」で魅せる大人の設計です。グラスからは焼き菓子のような温かい香り、口中ではキビの甘みとスパイスの陰影が溶け合い、余韻はほのかにビター。コーラで割れば史上最も上品なラムコーク、ホットで牛乳と合わせれば冬の夜の聖杯に。船乗りの知恵の、令和の日本版です。

  • 伊江島蒸留所 Santa Maria Voyage
    伊江島蒸留所(沖縄県伊江村)|43%

    沖縄本島の北西に浮かぶ、城山(タッチュー)の島・伊江島。島の基幹作物であるサトウキビの価値を高めるため、島ぐるみで立ち上げたのが「イエラム サンタマリア」です。島で育ち、島で搾られたキビだけを island の蒸溜所で酒にする——農業の島の未来を懸けた、6次産業化の美しい実践。本作「Voyage(航海)」は、その原酒を樽で熟成させた琥珀の一本です。樽由来のバニラとカラメルの甘い香りに、キビのふくよかな旨み、微かな潮の気配が重なり、43%の骨格が航海の名にふさわしい飲み応えを支えます。ロックで樽とキビの対話をゆっくり、あるいはハイボールで島風のように軽やかに。伊江島のケーンシロップ(当店のリキュール棚のSanta Maria Cane Syrup)と合わせた「島内完結ダイキリ」は、当店だけの航路です。

  • 伊江島蒸留所 Santa Maria
    伊江島蒸留所(沖縄県伊江村)|62%

    62%——イエラムの魂を、ほぼ原酒のままの高度数で世に問うたハイプルーフ版です。度数を上げる意味は、単なる強さではありません。サトウキビの香気成分は高濃度のアルコールにこそ豊かに溶け込み、62%のサンタマリアは、伊江島のキビ畑の香りを最高解像度で記録した「原液のテロワール」なのです。グラスに注げば、搾りたてのキビ汁の濃密な甘い香りが火柱のように立ち、口中では熱とともにキビの旨みが爆ぜます。そして一滴、二滴と加水するたび、香りの花が次々とほどけていく——ハイプルーフスピリッツならではの、対話の愉しみです。モヒートに使えばミントに負けない骨格の一杯に、ダイキリなら島の輪郭が際立ちます。タッチューの島の原風景を、割らずにまず一口。それから、ゆっくり旅を始めてください。

  • 房総ウイスキー(須藤本家)BOSO RHUM TRADITIONNEL FLEUR
    須藤本家(千葉県君津市)|40%

    房総半島は、隠れたサトウキビの地でもあります。温暖な気候を活かし、ウイスキーやビワマレットも手がける君津の須藤本家が、房総の風土でラムの伝統様式(トラディショナル)に挑んだのが本作。「FLEUR(フルール)」——花の名を戴く通り、発酵と蒸溜の設計で花のような華やかな香気を引き出した、エレガント路線の国産ラムです。グラスからは、白い花と熟したバナナを思わせる甘やかな香り、キビの優しい甘みの気配。口当たりは40%らしく軽やかで、フローラルな余韻が房総の海風のように穏やかに抜けていきます。ソーダ割りで花の香りを立たせるもよし、当店のビワマレットと重ねて「千葉づくしのカクテル」を組むもよし。ウイスキー、ラム、枇杷のリキュール——一つの蔵が描く房総の酒の風景を、ぜひ連作でどうぞ。

  • ACOU SPIRITS ACOU RUM Silver
    ACOU SPIRITS株式会社(鹿児島県・徳之島)|40%

    奄美群島・徳之島。闘牛と長寿の島の南部、阿権(あごん)集落には、樹齢三百年を超えるアコウの巨木が悠然と枝を広げています。ガジュマルに似たこの聖樹の名を戴いたのが「ACOU RUM」——島のサトウキビから生まれる、徳之島初のクラフトラムです。奄美群島は黒糖焼酎の特区として知られますが、同じキビから「ラム」を造る挑戦は、島の砂糖文化のもう一つの未来を拓く試み。Silverは樽熟成を経ないピュアな姿で、蒸溜所の素顔とキビの鮮度がそのまま問われる一本です。グラスからは搾りたてのキビ汁の青く甘い香りと、南島の花や潮を思わせる気配。口当たりはクリアで、キビ由来の自然な甘みがすっと伸び、余韻は島風のように爽やかに抜けます。CORCOR(南大東島)、イエラム(伊江島)と並べる「島ラム縦断」は当店の新しい航路——アコウの木陰の一杯を、モヒートでもストレートでも。

日本のウォッカ

  • ニッカウヰスキー NIKKA COFFEY VODKA
    ニッカウヰスキー|40%

    ウォッカとは「無味無臭の純粋なスピリッツ」——その定義に、ニッカは静かに異を唱えました。カフェモルト・カフェグレーンで知られる旧式連続式蒸溜機「カフェスチル」でトウモロコシと大麦を蒸溜し、原料由来の風味をあえて残したウォッカ、それがカフェウォッカです。徹底的に磨いて個性を消す現代ウォッカの主流に対し、「素材の声が聞こえるウォッカ」という逆張りの美学。グラスからは、ほのかに甘いトウモロコシと麦の気配、バニラを思わせる柔らかな丸み。口当たりは絹のように滑らかで、無個性ではなく「淡い個性」が余韻に残ります。この僅かな風味が、カクテルの土台として絶妙な仕事をします——当店の鰹節UMAMIオールドファッションのベースはまさにこれ。ソーダ割りやマティーニで、「何もない」と「何かある」の間の豊かさを。

  • 奥飛騨酒造 奥飛騨 VODKA
    奥飛騨酒造(岐阜県下呂市金山町)|55%

    飛騨の山あい、江戸中期・享保年間から続く老舗酒蔵が仕込む、55度の骨太な国産ウォッカです。ウォッカの品質を決める最大の要素は、実は水。世界の名だたるウォッカが氷河や湧水を誇るように、本作の核心は北アルプス水系の清冽な伏流水にあります。日本酒三百年の蔵が磨いてきたその仕込み水で割り水し、丁寧に濾過を重ねた液体は、55度という高度数にもかかわらず、驚くほど澄んだ飲み口。グラスからは微かに甘い穀物の気配、口中では度数の熱の奥に、飛騨の雪解け水のような透明感が通ります。冷凍庫でとろりと冷やしてストレート——ウォッカ本来の飲み方で、山の水の実力が最も際立ちます。モスコミュールに使えば、HAKKO GINGERの発酵ジンジャーに負けない芯の通った一杯に。飛騨山脈の雪を、55度で。

日本のブランデー

  • Suntory Brandy X.O. Deluxe
    サントリー|40%・昭和

    ウイスキーのオールドやローヤルが食卓の憧れだった昭和、その隣にはもう一つの琥珀——ブランデーがありました。「X.O.」の称号を冠したサントリーブランデーの上級品は、贈答の定番として、応接間のサイドボードに鎮座した時代の象徴です。コニャックへの憧れを国産の技術で形にした味わいは、葡萄由来の華やかな果実香と、樽熟成の甘いバニラ、カラメルのコクが溶け合う、まさに「日本人が夢見た西洋」の香り。そして本作は昭和当時のボトルですから、瓶の中でさらに数十年の歳月が角を丸め、当時の新品では味わえなかった円熟が加わっています。ブランデーグラスを掌で温めれば、昭和の応接間の空気ごと香りが立ちのぼる——「ブランデー、水で割ったらアメリカン」の時代の日本を、一杯でどうぞ。

  • Nikka Brandy
    ニッカウヰスキー|40%・昭和

    ニッカの正式な創業時の社名をご存知でしょうか——「大日本果汁株式会社」。ウイスキーが熟成するまでの歳月を、余市のリンゴで作ったジュースやアップルワインで食いつないだ、あの「マッサン」の物語です。社名の「日」と「果」を取って「ニッカ」——つまりこの会社のDNAには、創業の瞬間から果実の蒸溜が刻まれています。昭和期のニッカブランデーは、その果実酒造りの系譜に連なる一本。ウイスキーの陰に隠れがちですが、竹鶴政孝の会社が果実と歩んだ歴史の、もう一つの証人です。数十年の瓶内熟成を経た液体からは、熟した果実とカラメル、古い果樹園の納屋のような懐かしい香りが立ち、口当たりは時間だけが作れる丸さ。余市のシングルモルトの前に、この一杯で「ウイスキー以前のニッカ」から物語を始める——当店おすすめの飲み順です。

  • カタシモワインフード 葡萄華
    カタシモワインフード(大阪府柏原市)|35%

    大阪にワイナリーがある——それも、1914年創業、西日本最古の。大阪・柏原市のカタシモワインフードは、かつて葡萄の栽培面積で日本一を誇った河内の葡萄文化を、百年以上守り続ける都市近郊ワイナリーの雄です。「葡萄華(ぶどうか)」は、そのワイン造りで生まれる葡萄の搾りかすを蒸溜した、いわば日本のグラッパ。イタリアでは食後の定番であるこの粕取りブランデーを、大阪の葡萄で仕立てた一本です。グラスからは、葡萄の皮と種が宿す野性的で華やかな香り——白い花、マスカット、微かな枯れ草の気配が立ちのぼり、35%の口当たりは意外なほど柔らか。搾りかすを捨てずに酒へと昇華させる思想は、もったいない精神の極みでもあります。世界のグラッパ棚(Sibona等)と並べて「粕取りの東西比較」を——大阪の底力、ここにあり。

日本のアブサン

Japanese Absinthe

日本のアブサン製造史は戦前に始まり、欧州が禁制の時代にも作り続けられていました。約20年の空白を経て、2017年・岐阜郡上八幡の辰巳蒸留所から国産アブサンは本格復活。カブト釜蒸留器で造られる「アルケミエ」は今や入手困難の人気銘柄です。

  • アルケミエ辰巳蒸留所 absinthe 犬啼
    辰巳蒸留所(岐阜県郡上市八幡町)|58%

    日本のアブサン復興の狼煙を上げた男、辰巳祥平。2017年、岐阜・郡上八幡に日本初の小規模アブサン蒸溜所を開いた彼の代表作が、蒸溜所の裏を流れる名水の川の名を冠した「犬啼(いんなき)」です。年間を通じて14℃、江戸時代には天然氷を殿様に献上したという犬啼川の中硬水を仕込みに、古式のカブト釜蒸溜器で、焼酎をベースにニガヨモギはじめ8種のボタニカルを蒸溜する——和の道具立てで挑む、正統のアブサンです。グラスからはアニスとフェンネルの甘い薬草香、ニガヨモギの神秘的な苦味の気配、そして郡上の水の透明感。加水すれば白く濁る「ルーシュ」の儀式とともに、香りの層が幾重にも開きます。今や入手困難の人気銘柄を、氷水を静かに垂らす伝統の作法で。19世紀パリの緑の妖精が、郡上の清流に棲みついた——そんな一杯です。

  • アルケミエ辰巳蒸留所 Absinthe(度数非公開)
    辰巳蒸留所(岐阜県郡上市八幡町)|度数非公開

    度数、非公開——スペックが常識のこの時代に、あえて数字を伏せる。この一本は、辰巳祥平氏からの「先入観を捨てて、舌だけで向き合ってほしい」という挑戦状です。アルケミエの造りは一期一会。季節ごとに届く花や薬草を、その時々の判断でカブト釜に仕込むため、同じレシピは二度と繰り返されません。度数の非公開は、その一回性の哲学の延長線上にあります。グラスに注ぎ、香りを聞き、一口含んで、自分の感覚だけで度数と正体を推理する——バーカウンターが小さな実験室に変わる時間です。アニスの甘い入口か、ニガヨモギの苦い深淵か、それとも季節の花の意外な横顔か。答え合わせは、グラスが空いてから。情報を食べるのではなく酒を飲む、という原点に立ち返らせてくれる、蒸溜家の粋な謎かけです。

  • アルケミエ辰巳蒸留所 Absinthe
    辰巳蒸留所(岐阜県郡上市八幡町)|58%

    アルケミエの看板を背負う、スタンダードのアブサン58%。「スタンダード」といっても大量生産の定番という意味ではありません——たった一人の蒸溜家がカブト釜で仕込む少量生産ゆえ、これ自体が常に入手困難の的です。ベースは焼酎。フランスの伝統がワインや中性スピリッツを土台とするところを、日本の蒸溜文化の血脈である焼酎から立ち上げるこの設計こそ、「和魂のアブサン」の核心です。ニガヨモギ、アニス、フェンネルの聖三位一体に和の感性が重なり、グラスからは薬草の森の湿った香りと甘いスパイスが立ちのぼります。冷水を一滴ずつ落とせば、液体は乳白色に霞み——ルーシュ——香りが花開く。ゴッホやロートレックが愛した緑の時間を、郡上八幡の水と焼酎で。日本のアブサン史の「現在」を代表する一本です。

  • 東京ローカルスピリッツ あおいやアプサン
    TOKYO LOCAL SPIRITS(東京都)|58%

    「アブサン」ではなく「アプサン」——この一字の違いに、歴史が宿ります。戦前の日本では、この緑の洋酒は「アプサン」と表記され、サントリー(寿屋)のヘルメスシリーズをはじめ、洋酒販売店やバーで案外身近な存在でした。欧州がアブサン禁制の時代に、日本では作り続けられていたという逆転現象——本作「あおいやアプサン」は、その失われた日本のアプサン文化への敬意を名前に刻んだ、東京ローカルスピリッツの復古的一本です。味わいは古風一辺倒ではなく、現代のクラフト感覚で再構築されたもの。アニスの甘い香りにニガヨモギの端正な苦味、和のハーブの気配が重なり、58%の骨格が伝統の儀式(加水のルーシュ)にしっかり応えます。昭和のバーテンダーが振ったであろう「アプサン」の記憶を、令和の東京で。歴史ごと味わう一杯です。

  • 深川蒸留所 深川あぶさん
    深川蒸留所(東京都江東区)|61%

    松尾芭蕉が庵を結び、木場の職人が闊歩した下町・深川。清澄白河のコーヒー文化で再び脚光を浴びるこの町に構える深川蒸留所は、理化学ガラスの専門店リカシツの系譜に連なる、実験精神あふれる都市型蒸溜所です(当店のGIN FUEKIと同じ血筋)。その代表作「深川あぶさん」は、ひらがなの名が示す通り、緑の妖精を下町の長屋に住まわせたような、粋で人懐こいアブサン。61%の堂々たる度数に、アニスとニガヨモギの正統の骨格、そして和のハーブの親しみやすい表情が重なります。加水すれば白く濁るルーシュとともに、薬草の香りが湯屋の湯気のように立ちのぼる——パリのカフェではなく、深川の縁台が似合うアブサンです。GIN FUEKIとの「理科室兄弟飲み」も一興。東京の東側の底力を、緑の一杯で。

  • 佐多宗二商店 赤屋根 アブサン KUSUSHIKI
    佐多宗二商店(鹿児島県南九州市頴娃町)|55%

    「不二才(ぶにせ)」「晴耕雨読」——本格焼酎ファンに愛される鹿児島・頴娃の名門、佐多宗二商店。この蔵が焼酎の先の未来を見据えて立ち上げたクラフトスピリッツ工房が「AKAYANE(赤屋根)」です。銅製の小さな蒸溜器を並べ、ジンやアブサンを実験的に仕込むその姿勢は、薩摩の蒸溜文化の最前線。本作KUSUSHIKIは、ニガヨモギの伝統にクスノキ由来の和の樟脳香を思わせる清涼感など、九州の植生を織り込んだ薬草酒——「薬式」の名の通り、和漢の薬箱を開けたような複雑なアロマが特徴です。55%の骨格からアニスの甘み、ヨモギ系の苦味、森の涼気が幾層にも立ち、加水とともに白く花開きます。芋焼酎の蔵が造るアブサンという事実だけで一杯の酒肴になる、薩摩の緑の異端児です。

  • 横浜ベイブルーイング Absinthe HONKY TONK ROUGE
    横浜ベイブルーイング(神奈川県横浜市)|63%

    アブサンといえば緑——その常識を覆す、緋色のアブサン「ルージュ」です。クラフトビールの雄・横浜ベイブルーイングが醸造の枠を飛び越えて仕込んだ本作は、ハイビスカスなど赤系のボタニカルで染め上げた希少なレッドアブサン。19世紀にも「アブサン・ルージュ」という様式は存在しましたが、現代でも造り手は世界的に僅かです。「HONKY TONK」——安酒場のピアノが鳴る猥雑な酒場文化への愛を名に掲げ、63%の豪快な度数で港町の夜を彩ります。グラスの中の深紅は、加水すれば夕焼けのような朱鷺色に霞み、アニスの甘い香りにベリーやハイビスカスの酸の気配、ニガヨモギの苦味が重なります。緑の妖精ならぬ「赤い妖精」との一夜を——ビール職人の遊び心が振り切れた、横浜の問題作にして快作です。

  • 本坊酒造 MARS absinthe Mont Cerf
    本坊酒造(鹿児島県)|63%

    「Mont Cerf(モン・セルフ)」——フランス語で「鹿の山」。そう、鹿児島です。マルスウイスキーの本坊酒造が、自社の蒸溜技術でアブサンの本場に挑んだ一本は、名前からして薩摩の洒落っ気に満ちています。ウイスキー、焼酎、ワインまで手がける総合酒造の底力は、アブサンのような複雑な薬草蒸溜でこそ発揮されます。ニガヨモギ、アニス、フェンネルの古典的な骨格を、63%というアブサンらしい豪胆な度数で組み上げ、香草の layer は正統派、それでいてどこか南国的な明るさが漂う仕上がり。角砂糖に冷水を垂らす伝統の儀式で、乳白色のルーシュとともに薬草の花束が開きます。津貫のウイスキー、宝山系の焼酎、そしてこのアブサン——本坊・西酒造ら薩摩の蒸溜文化の多面体を巡る夜の、緑の頂点としてどうぞ。鹿の山の妖精と、乾杯を。

挽き茶・ノンアルコール・ビール

Hikicha, Non-Alcoholic & Craft Beer

『挽き茶』ドリンク

挽茶堂HIKICHADO――単一品種・単一農園のシングルオリジン一番茶を贅沢に丸ごと粉砕した「挽き茶」の専門店。抹茶(碾茶の粉末)だけではない、煎茶・釜炒り茶・萎凋茶といった日本茶の多様性を、スペシャルティコーヒーのように産地テロワールごとに楽しめます。

  • 鹿児島県伊集院町産さえみどり茎調釜炒り茶と黒蜜、日本ウイスキーのジャパニーズオールドファッションド
    挽茶堂の挽き茶×ジャパニーズウイスキー

    当店の挽き茶カクテルの頂点。オールドファッションドとは、ウイスキーに砂糖とビターズを合わせる19世紀からの古典ですが、その「砂糖」を黒蜜に、「ビターズ」を挽き茶に置き換えたのが、この和の再構築です。茶葉は鹿児島・伊集院町の銘品種さえみどりの茎を、釜炒り製法で仕上げた希少なもの——釜炒り茶特有の香ばしい「釜香」と、茎茶の澄んだ甘みが、丸ごと粉砕された挽き茶として、ウイスキーの中に溶け込みます。グラスの中では、黒蜜のコク、茶の旨みと香ばしさ、ウイスキーの樽香が三層で重なり、混ぜるたびに表情が変わる——飲むほどに茶が「開く」構造です。抹茶カクテルの甘いイメージを裏切る、苦味と旨みの大人の設計。日本のウイスキーと日本の茶の、これ以上ない婚礼を、じっくりと。

  • 挽茶GIN & TONIC
    挽茶堂の挽き茶×国産クラフトジン×北海道産トニック

    ジントニックの上に、翠の雪を降らせる——シングルオリジンの挽き茶を纏わせた、当店流の茶のジントニックです。土台はいつもの当店仕様:国産クラフトジン、北海道産トニックウォーター、国産ライム。そこへ挽茶堂の挽き茶を丁寧に点て入れると、ジュニパーの針葉樹香と茶のグリーンな香りが同じ森の住人のように溶け合い、トニックの苦味と茶の渋みが互いを深め合います。泡とともに立ちのぼる茶の香り、飲み進めるほど底から立ち上る旨み——一杯の中に「香りの序盤、旨みの終盤」という時間軸が生まれるのが、粉のお茶ならではの面白さです。季のTEAや玉露スピリッツと飲み比べれば、「茶を酒にする」三つの異なるアプローチが見えてきます。緑の一杯目として、ぜひ。

  • 【0% ALCOHOL FREE】鹿児島県薩摩郡産さえみどり挽茶のラテ
    挽茶堂×A2ミルク|ノンアルコール

    抹茶ラテ、ではありません——挽き茶のラテです。挽茶堂は、日本茶の伝統を継承しつつ現代の愉しみを提案する「挽き茶」の専門店。碾茶を挽いた抹茶だけでなく、煎茶・釜炒り茶・萎凋茶といった多彩な製法の茶を、単一品種・単一農園の一番茶だけ、それも「このお茶を粉に挽くのか」と茶匠が呆れるほど希少な茶葉を贅沢に丸ごと粉砕しています。本作は鹿児島・薩摩郡のさえみどりを、当店こだわりのA2ミルクで点て上げたラテ。さえみどり特有の上品な甘みと鮮やかな翠が、お腹に優しいA2ミルクのまろやかさに包まれて、砂糖に頼らない自然な甘さの一杯になります。スペシャルティコーヒーのように産地と品種で茶を選ぶ時代の、その最前線を、ノンアルコールで。お酒を飲まない方の「主役の一杯」です。

  • 【0% ALCOHOL FREE】鹿児島県薩摩郡産さえみどり挽茶の薄茶
    挽茶堂|ノンアルコール

    バーカウンターで、一服。茶筅で点てる薄茶を、酒場の文脈でお出しする——それが当店の「薄茶」です。使うのは抹茶(碾茶の粉末)ではなく、鹿児島・薩摩郡産さえみどりの挽き茶。覆い香の甘みが際立つさえみどりを丸ごと挽いた粉を、その場で点てれば、鮮烈な翠の泡の下から、品種の個性がダイレクトに立ちのぼります。抹茶ばかりが売れ、煎茶や釜炒り茶の農家が年々減っていく——日本のお茶文化の多様性が痩せていく現実に対し、「日本中の個性溢れるお茶を、抹茶のように自由に楽しむ」という挽き茶の思想は、小さくも確かな抵抗です。ウイスキーの合間の口直しに、締めの一杯に、あるいは休肝日の夜に。もう一度、日本茶が「多様で、豊かで、誇れる文化」として息づく未来を、この一碗から。

A2ミルク

当店の牛乳はA2型ミルクのみを使用。ベータカゼインがA2型100%の牛から搾られた牛乳は、人間の母乳や山羊乳に構造が近く、消化過程で「BCM-7」がほとんど生成されないため、お腹への負担が少ないのが特徴です。「今までの牛乳は苦手だったけれど、A2ミルクなら飲める」という方に。

  • A2ミルク
  • A2ミルクの抹茶ラテ
  • A2ミルクのカフェオレ
  • A2ミルクのカフェラテ
  • 煎茶/薄茶

ノンアルコール

  • GINNIE ノンアルコールGIN
    GINNIE(国産)|0.00%

    「飲まない夜も、ジントニックの顔をしていたい」——そんな願いに応える、国産ノンアルコールジンです。ジュニパーベリーやボタニカルを蒸溜・抽出しながらアルコールを含まないこの新ジャンルは、世界的なソバーキュリアス(あえて飲まない選択)の潮流とともに急成長中。GINNIEは和素材の感性でそれを仕立てた日本の代表格です。北海道産トニックと国産ライムで組む「ノンアルジントニック」は、香りの立ち方も苦味の輪郭も、目隠しなら本物と迷うほど。妊娠中の方、車の方、お酒を控えている方が、雰囲気ごと乾杯に参加できる一杯です。当店の棚にはGINNIEのコーディアル(すだち檜・そば茶バニラ・しそカルダモン)も揃っており、ノンアルでも「選ぶ楽しみ」があるのがバーの矜持。飲まない夜こそ、良い店で。

  • 梅乃宿酒造 あらごし ゆず ノンアルコール
    梅乃宿酒造(奈良県葛城市)|0%

    「あらごしもも」で和リキュールの頂点に立つ奈良・梅乃宿が、その果実仕事をそのままノンアルコールに翻訳した一本。柚子の果汁と果肉を贅沢に使い、酒を抜いてもなお「蔵の仕事」の輪郭がくっきり残る、濃密な柚子ドリンクです。グラスに注げば、搾りたて柚子の弾ける香りと、とろりとした果肉の質感。甘さは上品に抑えられ、柚子の酸と皮のほろ苦さがきちんと主役を張ります。ソーダで割れば大人の柚子スカッシュ、お湯で割れば冬の夜の柚子湯のような一杯に。アルコールのあらごしシリーズと並べて「同じ蔵の飲む・飲まない」を比べるのも一興です。ノンアルコールが「我慢の飲み物」だった時代は終わりました——蔵元が本気で造る0%を、堂々と一杯目に。

  • 伊良コーラ
    伊良コーラ(東京都新宿区下落合)|0%

    世界初の、クラフトコーラ専門メーカー——伊良(いよし)コーラ。東京・下落合、神田川のほとりの小さな「魔法の工場」で、創業者コーラ小林氏が生み出したこの琥珀色の liquid は、いまや世界のクラフトコーラムーブメントの原点として語られる存在です。特筆すべきはその血脈——小林氏の祖父は和漢方の職人。その工房と技術を受け継ぎ、コーラの実、カルダモン、ナツメグなど十数種のスパイスと柑橘を、漢方の煮出しの知恵で調合しています。つまり伊良コーラとは、和漢方文化が生んだコーラなのです。グラスからはスパイスと柑橘の複雑で生命力ある香り、口中では大量生産コーラでは決して出会えない、奥行きのある甘みと痺れ。単体で完璧ですが、日本産ラムと合わせた「クラフト・ラムコーク」は当店の隠れた名作です。コーラの再発明を、東京の川辺から。

  • OPEN BOOK レモネードシロップ
    OPEN BOOK(東京都新宿区・新宿ゴールデン街)|0%

    新宿ゴールデン街の路地の奥に、レモンサワーの概念を変えた小さな店があります——OPEN BOOK。店主は作家・田中小実昌を祖父に持つ田中開氏。文学の血を引く店主が本と酒の店で磨き上げた自家製レモネードシロップは、「レモンサワーブーム」の震源地のひとつとして、東京の飲み手たちに知られる存在です。国産レモンを皮ごと仕込むシロップは、果汁の酸だけでなく、皮の香りとほろ苦さ、ピールの油分の艶までを含んだ、いわば「レモンの全集」。ソーダで割ればゴールデン街の名作レモネードがそのまま再現され、焼酎やジンを加えれば、あの伝説のレモンサワーの当店版が完成します。ノンアルの棚に置いていますが、実態は「アルコールの名脇役」でもある二刀流。文学とレモンの街の味を、東麻布で。

  • 株式会社プラスト KUMI トニックウォーター プレイン
    プラスト(国産)|0%

    ジントニックの3/4は、トニックウォーターでできている——当店が副材料に執着する理由を、そのまま体現する国産クラフトトニックです。KUMIは、香料の輪郭がきつい大量生産品と一線を画し、柑橘とビターの均衡を丁寧に「組み」上げた設計。プレインの名の通り、主張しすぎず、しかし確かな品位で、合わせるジンの個性を一段引き立てます。グラスに注げば、きめ細かな泡とともに、穏やかな柑橘の香りと上品な苦味。単体でストレートに飲んでも、大人の食前ドリンクとして成立する完成度です。当店では北海道産トニックと並ぶ選択肢として、ジンの性格に合わせて使い分けています。「今日のジンに、どのトニックを合わせるか」——そんな会話ができるのも、クラフトトニックの時代ならでは。脇役の実力を、ぜひ主役として一度。

  • デリシャスフロム北海道 HAKKO GINGER オリジナル ジンジャー
    デリシャスフロム北海道(北海道)|0%

    HAKKO——発酵。その名の通り、生姜を「発酵」させて仕込む北海道生まれのクラフトジンジャーエールです。一般のジンジャーエールが生姜風味の甘い炭酸であるのに対し、HAKKO GINGERは生姜と素材を発酵させることで、酵母が生む自然な微炭酸と複雑な酸、生きた辛味を宿します。いわば「生姜のシードル」のような製法思想——甘さの奥に発酵由来の奥行きがあり、辛味は本物の生姜がじんわりと喉を焼きます。単体で飲めば体の芯から温まる養生の一杯。そして当店のフリーフローでも人気の「HAKKO GINGERモスコミュール」は、奥飛騨ウォッカやカフェウォッカと合わせることで、既製のジンジャーエールでは決して届かない、発酵の深みを持つ一杯になります。北海道の醸造文化の新しい枝を、辛口でどうぞ。

  • Fever-Tree トニックウォーター 3種(プレミアム インディアン/メディタレーニアン/エルダーフラワー)
    Fever-Tree(英国)|0%

    「あなたの飲み物の3/4はミキサーでできている。ならば、最高のもので」——2005年、この宣言とともに英国で生まれたフィーバーツリーは、世界のバーの割り材の常識を塗り替えたプレミアムトニックの王です。キニーネは、マラリアの特効薬として熱病の木(フィーバーツリー)と呼ばれたキナの木から。コンゴ産の天然キニーネと手摘みのボタニカルを使う品質主義は、当店の「副材料哲学」の世界的な同志でもあります。定番のプレミアムインディアンは天然キニーネの正統な苦味、メディタレーニアンは地中海のハーブ(タイム・ローズマリー)が香る柔らかな苦味で繊細なジン向き、エルダーフラワーは白い花の甘い香りでフローラルなジンの相棒に。国産トニックとの飲み比べで、ジントニックという一杯の奥行きを体感してください。

日本の季節のビール|横浜ビール ラガー

  • 横浜ビール 横浜ラガー
    横浜ビール(神奈川県横浜市)|IPL(インディアンペールラガー)・IBU45・5.0%

    日本のビール文化発祥の地・横浜で、1999年から地ビールの誇りを守り続ける横浜ビール。その看板「横浜ラガー」は、ラベルに開港の錦絵「横浜波止場ヨリ海岸通異人館之真図」を掲げた、港町の歴史を一本に背負うクラフトビールです。様式はIPL——インディアンペールラガー。IPAの華やかなホップ使いを、ラガーのクリーンな発酵で仕立てる現代様式で、NZ産ホップを4回に分けて投入することで、マスカットやパッションフルーツを思わせる香りと柑橘系の苦味が幾層にも重なります。軽いけど軽すぎず、ラガーなのにエールっぽい——モルトの選択と糖化温度で磨いた、苦味とボディの絶妙な均衡。国際ビール大賞・アジアビアカップでの受賞は十指に余ります。ウイスキーの前の喉ならし、鰻や尾崎牛の脂を切る食中の一杯として、冷えたグラスでどうぞ。

葡萄

ワイン

Sparkling / White / Red

SPARKLING WINE|泡

嘉 -YOSHI- Chardonnay Brut
🇯🇵 高畠ワイナリー(山形県高畠町)シャルドネ|辛口 200ml ¥2,398

「日本のシャルドネの聖地」と呼ばれる山形・高畠町。昼夜の寒暖差が大きい盆地の畑で育ったシャルドネを、高畠ワイナリーが辛口の泡に仕立てた「嘉(よし)」です。柑橘や白い花の華やかな香りに、繊細な泡と旨味を伴う酸が広がる、爽やかなスパークリング。200mlの小瓶は「一人でも気軽に泡で始められる」ためのサイズで、尾崎牛膳やウイスキー鰻の乾杯にちょうど一杯半——お一人様の贅沢のための設計です。喜びを意味する「嘉」の字とともに、東北の畑の祝杯を。

KIZAN SPARKLING TRADITIONAL BRUT
🇯🇵 機山洋酒工業(山梨県甲州市)甲州100%・11.5% 750ml ¥9,889

勝沼の小さな家族経営ワイナリー・機山(きざん)洋酒工業が、日本固有品種・甲州だけで挑む瓶内二次発酵——シャンパーニュと同じ伝統製法(トラディショナル)のスパークリングです。甲州種の爽やかな果実の香りに、瓶内で酵母と過ごした歳月が授けるトースト香が重なり、和柑橘の可憐さと焼きたてパンの香ばしさが同居します。重厚な味わいながら、すっきりとした飲み心地。甲州という品種の到達点のひとつを、家族の手仕事の泡で。和食との相性は、国産泡の中でも別格です。

Anna de Codorníu Blanc de Blancs Brut Reserva
🇪🇸 コドルニウ(スペイン)Cava / Brut Reserva 750ml ¥6,980

1551年から続くスペイン最古級のワイナリー、コドルニウ。「Anna」は一族の歴史的な当主の名を戴いた看板キュヴェで、カバにシャルドネを取り入れた先駆けとしても知られます。白ブドウのみで造る「Blanc de Blancs」の辛口は、きめ細かな泡、清潔感のある果実味、すっきりとした酸が心地よく、乾杯から食中まで万能。四百五十年の泡の名門の仕事を、気負いなく。金曜の夜の一本目に、これほど頼れるカバはありません。

都農ワイン キャンベル・アーリー ロゼ スパークリング
🇯🇵 都農ワイン(宮崎県都農町) 250ml ¥2,480

台風の通り道、多雨の宮崎でワインなど不可能——その常識を覆し、世界のワインガイドに名を刻んだのが都農(つの)ワインです。地元で愛されてきた生食用品種キャンベル・アーリーを、いちごやラズベリーを思わせる甘やかな香りのロゼ泡に仕立てた本作は、まさに「不可能を可能にした」蔵の象徴。やさしく弾ける泡と可憐な果実味は、乾杯にもデザート前の一杯にも美しく映えます。九州のワインの底力を、桃色の泡で。

WHITE WINE|白ワイン

にごり甲州
🇯🇵 山梨県 甲州|やや甘口 750ml ¥3,980

千年以上、山梨の地で人と生きてきた日本固有品種・甲州。その葡萄を、濾過で磨き上げる前の「にごり」のまま瓶に詰めた、いわば甲州の産着姿です。うっすらと霞んだ液体には、澱とともに旨みの成分がそのまま残り、清澄されたワインでは削がれてしまう葡萄の果肉感が生きています。爽やかな酸とやさしい甘み、まろやかな口当たり——日本酒のにごり酒に通じる親しみやすさは、ワイン初心者の方の一杯目にも最適です。和食との相性は言わずもがな、当店の海老の塩麹塩辛や明太子のような発酵の肴と合わせると、にごりの旨みが倍音のように響きます。ワインは澄んでいるもの、という思い込みを心地よくほどく、山梨の白い霞をどうぞ。

井筒ワイン 白
🇯🇵 井筒ワイン(長野県塩尻市・桔梗ヶ原)|やや辛口 750ml ¥3,980

日本ワインの聖地のひとつ、長野・塩尻の桔梗ヶ原。昭和8年(1933年)創業の井筒ワインは、この高原の地で九十年、地元の葡萄と実直に向き合い続けてきた信州ワインの良心です。標高700メートルの冷涼な気候と昼夜の寒暖差が育む葡萄は、酸が美しく、香りが澄む——本作はその桔梗ヶ原の個性を、気取らない食卓の白として仕立てた一本。穏やかな果実の香りと爽やかな酸味、すっきりとした飲み口は、料理を選ばず、特に出汁や醤油の和食に寄り添う設計です。高級ワインの様式美ではなく、「毎晩の食卓で空いていくワイン」の幸福。信州の蔵九十年の蓄積は、この普段着の一本にこそ表れています。鰻の白焼きとの相性、ぜひお試しを。

Château du Cléray Muscadet Sèvre et Maine Sur Lie 1991
🇫🇷 ロワール ムロン・ド・ブルゴーニュ|辛口 375ml ¥3,980

1991年——三十五年前のミュスカデです。ロワール河口の海のワインとして、牡蠣の相棒として「若飲み」が常識のミュスカデを、これほどの長期熟成で味わえる機会は、産地フランスでも稀有といえます。シュール・リー製法——発酵を終えた澱の上でワインを寝かせ、旨みを液体に移す伝統技法が、熟成の歳月と重なって、蜂蜜や焼きりんご、ナッツの複雑な香りへと昇華。若いミュスカデの潮の爽やかさは、深く静かなミネラルの余韻に姿を変えています。ハーフボトルという可憐なサイズも、この熟成の奇跡を二人で分かつのにちょうど良い量。海のワインが辿り着いた三十五年目の岸辺を、しみじみと。オールドウイスキーと同じく、「時間を飲む」一本です。

Combe Grasse Viognier-Grenache
🇫🇷 南フランス ヴィオニエ・グルナッシュブラン|辛口 750ml ¥5,980

ヴィオニエ——白ワイン品種の中で最も香水的と評される、南仏の魅惑の葡萄です。白桃、アプリコット、白い花。グラスに注いだ瞬間に立ちのぼるその華やかさは、一度知れば忘れられません。本作はそのヴィオニエに、南仏の太陽をたっぷり浴びたグルナッシュ系を重ね、香りの艶とふくよかな果実味を両立させた一本。口当たりはまろやかで、桃のコンポートのような甘い香りに反して味わいは辛口——この「香りは甘く、味は辛い」という洒落た二枚舌が、ヴィオニエ系の醍醐味です。よく冷やして一杯目に良し、少し温度が上がると花開く香りを追うも良し。挽き茶のラテの後の白、という意外な流れも面白い、南仏の陽だまりのような一本です。

L’Autantique Chardonnay
🇫🇷 ラングドック シャルドネ|辛口 750ml ¥5,980

世界で最も愛される白葡萄・シャルドネ。この品種の面白さは、土地と造り手によって「無色透明の水彩紙」のように表情を変えることです。本作は南仏ラングドックの陽光が描いたシャルドネ——熟したリンゴや洋梨のふくよかな果実味に、樽由来のほのかなバニラが重なる、王道のリッチスタイルです。冷涼産地のシャープなシャルドネとは対照的な、南の豊満な抱擁力。口当たりはなめらかで、余韻には焼き菓子のような温かい甘香が漂います。バターやクリームを使う料理はもちろん、意外なところで当店の名古屋コーチン卵かけご飯との相性が絶妙——卵黄のコクとシャルドネの樽香は、国境を越えた好相性です。白ワインの「ふくよか」の教科書として、まずこの一本を。

Le Belle Vigne Vino Bianco
🇮🇹 イタリア 白|辛口 750ml ¥5,980

「美しい葡萄畑」の名を持つ、イタリアの食卓の白。イタリアワインの神髄は、格付けや点数ではなく「料理と一緒にあること」——昼から家族の食卓に置かれ、会話とともに空いていく、あの気取らない存在感にあります。本作はまさにその思想の体現で、フレッシュな果実味とすっきりした飲み口、料理を選ばない柔軟さが身上。柑橘と青りんごの明るい香り、軽やかな酸、綺麗に消える余韻——主張しすぎないことが、最大の美徳です。前菜からしじみの味噌汁まで(本当に合います)、和洋を問わず寄り添う懐の深さは、バーの食中白としても理想的。難しいことを考えず、二杯目三杯目と進んでしまう「気づけば空いている」タイプの、幸福な白ワインです。

Lespoli Macabeo
🇪🇸 スペイン マカベオ|辛口 750ml ¥5,980

マカベオ——スペインの白を支える土着品種で、カバの主要品種としても知られる働き者の葡萄です。単一品種で瓶詰めされることは比較的珍しく、本作はそのマカベオの素顔を知る良い機会。リンゴや洋梨、柑橘を思わせる爽やかな香りに、スペインの太陽を感じるほのかな厚み、軽やかな酸味と清涼感が続きます。派手さはありませんが、この「乾いた土地の白」特有の飲み飽きしなさは、タパス文化が育てた実戦的な美点。塩気のある肴——当店なら海苔佃煮や明太子——と合わせると、マカベオの隠れた旨みが顔を出します。スペインの泡(Anna de Codorníu)と並べて「同じ品種の泡と静(スティル)」を比べるのも、ワインの解像度が上がる遊びです。イベリアの日常を、一杯。

Sol Mar White Wine
🇨🇱 チリ 白|辛口 750ml ¥3,980

「太陽と海」——ソル・マール。その名の通り、アンデスの陽光と太平洋の冷たい海流が育てる、チリワインの恵まれた風土をそのまま瓶にした白です。チリは病害の少ない乾燥した気候ゆえ農薬への依存が低く、価格に対する品質の高さで世界の食卓を支えてきた「コスパの王国」。本作もその王道で、柑橘を思わせる爽やかな香り、軽快な酸味、すっきりした後味と、白ワインに求める基本性能を過不足なく備えています。よく冷やして乾杯の一杯に、ハイボールの合間の口直しに、気軽に頼める頼もしさ。ワインを難しく考えたくない夜の、正しい選択肢です。太平洋の向こうの太陽を、東麻布の夜に一杯。

Minka Reserva Sauvignon Blanc 2024
🇨🇱 チリ ソーヴィニヨン・ブラン|辛口 750ml ¥5,980

ソーヴィニヨン・ブランの魅力を一言でいえば「香りの瞬発力」。グラスに注いだ瞬間、ライムやグレープフルーツ、刈りたての草を思わせる鮮烈な香りが弾ける、白ワイン界のスプリンターです。本作はチリの冷涼な海沿いの畑から生まれたレゼルバクラスで、2024年という若いヴィンテージの瑞々しさが最大の武器。太平洋のフンボルト海流が冷やす畑は、暑い国チリにあって驚くほどシャープな酸を葡萄に授けます。柑橘の香りの奔流、キレのある酸、ミネラルの綺麗な余韻——揚げ物や酢の物、柑橘を絞る料理と合わせれば、口中がリセットされる爽快感。ニュージーランドのMANAと並べて「太平洋を挟んだソーヴィニヨン対決」をぜひ。同じ品種の、海流違いの答え合わせです。

MANA Sauvignon Blanc 2023
🇳🇿 ニュージーランド ソーヴィニヨン・ブラン|辛口 750ml ¥6,980

「MANA(マナ)」——マオリの言葉で、威厳、そして聖なる力。ニュージーランドワインの聖地マールボロ地方に連なる冷涼な風土から、その名を戴いたソーヴィニヨン・ブランです。NZのソーヴィニヨンは1980年代に世界を驚愕させて以来、この品種の世界標準を塗り替えた存在——パッションフルーツとグレープフルーツ、ハーブの鮮烈な香りの爆発は、「白ワインはおとなしい」という先入観を粉砕します。本作もその系譜の正統で、トロピカルフルーツの華やかさと、南島の冷たい空気を思わせる鋭い酸、爽快感あふれる長い余韻が三位一体。よく冷やして、まず香りだけで一分楽しんでください。牡蠣や柑橘の料理、山葵を効かせた肴との相性は劇的です。南半球の聖なる力を、グラスに。

RED WINE|赤ワイン

CHATEAU BATAILLEY 1986
🇫🇷 ポイヤック メドック格付第5級 750ml ¥49,800

1986年——カベルネ・ソーヴィニヨンが完璧な熟度と鉄のような単寧を得た、メドックの偉大な当たり年である。四十年の歳月はその鎧を静かに解き、饒舌ではない。沈黙の重みで語るポイヤック。畑はレ・フォール・ド・ラトゥールの隣に位置し、450年以上の歴史を持つこのメドック5級シャトーは、ナポレオン3世とも縁を持ちます。シャトー名の由来は、百年戦争の「戦い(バタイユ)」の地であったこと——その名の通り、若き日は堅牢な戦士のようなワインが、四十年を経て老将の風格に変わりました。杉と葉巻、なめし革、黒い果実のコンフィ。グラスの中で一時間かけてほどけていく香りは、まさに歴史の朗読です。人生の節目の夜に、四十年前のフランスの秋を。デキャンタージュを含め、最良の状態でお注ぎします。

Château Branaire-Ducru 1997
🇫🇷 サン・ジュリアン メドック格付第4級|フルボディ 750ml ¥29,800

ポイヤックの力とマルゴーの優美のあいだ——サン・ジュリアンは、ボルドー通が「最も均整の取れた村」と呼ぶアペラシオンです。その第4級格付シャトー・ブラネール・デュクリュの1997年は、飲み頃の坂を静かに下り始めた、いまが美酒の熟成ボルドー。四半世紀を超える歳月が、若き日のタンニンを絹に変え、熟成した黒系果実に杉や葉巻、スーボワ(森の下草)の複雑な香りを重ねました。端正で奥行きのある骨格はサン・ジュリアンの教科書そのもの。尾崎牛のサーロインと合わせれば、和牛の澄んだ脂と熟成ボルドーの旨みが、皿の上とグラスの中で美しい握手を交わします。格付ボルドーの熟成をこの価格で開けられるのは、バーの棚の醍醐味。1997年に何をしていたか、思い出しながらどうぞ。

Château Certan Pomerol 2010
🇫🇷 ポムロール メルロー主体|フルボディ 375ml ¥69,880 *パーカーポイント100点

パーカーポイント100点——世界で最も影響力を持ったワイン評論家ロバート・パーカーが「完璧」と認めた、その頂の一本です。舞台はポムロール。ペトリュスやル・パンを擁する、ボルドー右岸の小さな聖地です。メドックの広大な格付シャトーとは対照的に、猫の額ほどの粘土質の畑でメルローを極限まで磨くこの村の美学は、「小さくて濃密」。2010年はボルドー世紀のヴィンテージのひとつで、熟した黒系果実やカカオを思わせる香り、ビロードのような濃密な果実味、滑らかなタンニンが完璧な調和を描きます。ハーフボトルでの提供は、この頂をグラス数杯分の現実的な冒険にするため。100点とは何か——その問いの答えを、ご自身の舌で採点してください。ワイン人生の記念碑になる一本です。

Château Galochet Bordeaux 2023
🇫🇷 ボルドー|ミディアムボディ 750ml ¥3,980

五大シャトーだけがボルドーではありません——広大なボルドーの大地の実力は、こうした無名のプティ・シャトーの日常ワインにこそ表れます。ガロシェ2023は、赤い果実の香りと程よいタンニン、果実味と酸味の均衡が良い、若々しく親しみやすいボルドーブレンド。メルローの丸みがカベルネの骨格を包む、この村の伝統の設計です。高価な格付ワインが「ハレの日」なら、これは「ケの日」のボルドー——気負わずグラスで頼めて、肉料理から味噌や醤油の和食まで幅広く寄り添います。バタイエ1986やブラネール1997と同じ土地の、樹齢も歳月も違う若い一杯を並べれば、「ボルドーの時間軸」が一晩で見渡せる——当店のワイン棚の、良き入口です。

Moncaro Sangiovese Marche
🇮🇹 マルケ州 サンジョヴェーゼ|ミディアムボディ 750ml ¥4,980

イタリアで最も植えられている黒葡萄・サンジョヴェーゼ。キャンティの主役として知られるこの品種を、トスカーナの隣・アドリア海側のマルケ州で育てたのが本作です。マルケは海と山が近く、魚介も肉も食べる土地柄——そのためワインも「何にでも合う中庸の美」が磨かれてきました。チェリーや赤い果実の香り、穏やかなタンニン、イタリアワインらしい生き生きとした酸。この酸こそサンジョヴェーゼの魂で、料理の脂を切り、次の一口を呼び込みます。トマト料理はもちろん、醤油ベースの和食、当店なら鰻の蒲焼きタレとの相性が思いのほか見事。難しい顔をせず、食卓の会話の隣で静かに働く——イタリアの食文化が二千年かけて磨いた「日常の赤」の完成形です。

Passione Natura Axioma Montepulciano 2021
🇮🇹 アブルッツォ州 モンテプルチアーノ|ミディアムボディ 750ml ¥8,980

「パッシオーネ・ナトゥーラ」——自然への情熱。その名を掲げる造り手が、アブルッツォの伝統品種モンテプルチアーノを、自然な造りで仕立てた一本です。アドリア海と大山塊グラン・サッソに挟まれたアブルッツォは、昼の陽光と山からの冷気が交差する赤ワインの好適地。本作はラズベリーやプラムの豊かな果実味を核に、なめらかなタンニンと美しい酸が調和した、ナチュラルな味わいが身上です。自然派ワインにありがちな不安定さはなく、あくまで「クリーンな自然体」——果実そのものを噛むような純度の高い旨みが、するすると染み込みます。少し冷やし気味の温度から始めると、温度の上昇とともに香りが開いていく変化も楽しい一本。イタリアの山と海の間の、素直な情熱をどうぞ。

Conte di Campiano Appassimento
🇮🇹 イタリア アパッシメント製法|フルボディ 750ml ¥5,980

アパッシメント——収穫した葡萄を陰干しし、水分を飛ばして糖と旨みを凝縮させてから醸す、イタリアの伝統技法です。高級ワイン・アマローネを生むこの手間のかかる製法を、南イタリアの完熟葡萄で気軽に楽しめるのが本作。干し葡萄化した果実から生まれるワインは、熟した黒系果実やドライフルーツ、チョコレートを思わせる濃密な香りと、ベルベットのような凝縮感、まろやかなコクを湛えます。アルコールの甘やかな厚みがありながら、後味は意外にドライ——「甘濃厚なのに、くどくない」絶妙の設計です。ビターチョコレートや熟成チーズ、当店なら尾崎牛のタレ焼き部分との相性が白眉。寒い夜、ゆっくり時間をかけて飲みたい「毛布のような赤」。アマローネ入門としても最良の一本です。

Georis Pinot Noir 2017
🇺🇸 カリフォルニア・カーメルヴァレー ピノ・ノワール|フルボディ 750ml ¥24,980

クリント・イーストウッドが市長を務めた芸術家の街・カーメル。その内陸、太平洋の霧が朝な夕なに忍び込むカーメルヴァレーで、小さなワイナリー・ジョリスが丹精するピノ・ノワールです。ピノ・ノワールは「気難しい貴婦人」と呼ばれる繊細品種——暑すぎれば大味に、寒すぎれば痩せる。海霧が天然のクーラーとなるこの谷は、その貴婦人が機嫌よく育つ数少ない土地です。2017年の本作は、熟したチェリーとラズベリーの香りに、紅茶や森の土の複雑なニュアンスが重なり、きめ細かなタンニンと長い余韻が続く、熟成の入口の美しい姿。生産量の少なさゆえ日本ではほぼ見かけない希少な蔵です。鴨や鰻——ピノと鰻は世界的な好相性——との一皿に、霧の谷の貴婦人を。

Bread & Butter Merlot 2020
🇺🇸 カリフォルニア メルロー|フルボディ 750ml ¥7,980

「Bread & Butter」——英語で「生活の糧」「なくてはならないもの」を意味する慣用句を名に掲げた、カリフォルニアの人気蔵です。その哲学は明快で、「難しい講釈より、毎日飲みたい美味しさを」。本作のメルローはその看板通り、ブラックチェリーやプラムの豊かな果実味に、バニラとモカの甘い樽香をまとわせた、なめらかでコクのある「アメリカの豊かさ」そのものの味わいです。タンニンは丸く、酸は穏やか、口当たりはどこまでもスムース——赤ワインの渋みが苦手という方にこそ試していただきたい、抱擁力のある設計です。ハンバーグやすき焼きのような甘辛の料理、チョコレートとの相性も抜群。肩の力を抜いて、パンとバターのように日常へ。名前に偽りなしの、頼れる一本です。

El Castro de Valtuille Mencía Joven 2021
🇪🇸 ビエルソ メンシア 750ml ¥5,980

スペイン北西部、緑深き秘境ビエルソ。近年世界のソムリエが熱視線を送るこの産地の主役が、土着品種メンシアです。本作は、ビエルソを世界に知らしめた名手の一族が、バルトゥイージェ村の古樹から仕立てる若飲みスタイル(ホベン)。濃厚さで押すタイプではなく、香りと余韻で静かに魅せる一本です。すみれや赤い果実、微かなハーブと鉱物の気配——冷涼産地らしい張りのある酸と、しなやかなタンニンが、エレガントという言葉の正しい用法を教えてくれます。ピノ・ノワールやガメイがお好きな方にも自信を持っておすすめできる、スペインの新しい顔。少し冷やして、鰻の白焼きや出汁の料理と——和食×メンシアは、知る人ぞ知る好相性です。大西洋気候のスペインを、ぜひ。

Domaine de Moulines Cabernet Sauvignon Non Filtré 2019
🇫🇷 南フランス カベルネ・ソーヴィニヨン100%/無濾過 750ml ¥7,500

「Non Filtré」——無濾過。ワインを美しく澄ませる濾過という工程は、同時に香味の一部を漉し取ってしまう諸刃の剣でもあります。南仏の陽光を浴び、完熟を待って収穫したカベルネ・ソーヴィニヨンを、あえて無濾過のまま瓶詰めした本作は、「濁りごと、旨みごと」を選んだ造り手の意志の一本です。熟したカシスやブルーベリーの濃密な果実に、シナモンやクローヴを思わせるスパイスの香り。無濾過ゆえの、とろりとした厚いテクスチャーと、噛めるような果実の実在感。ほどよくドライな果実味となめらかなタンニン、心地よい酸が調和し、ボトルの底には旨みの証である澱が静かに眠ります。当店のノンチルフィルタードのウイスキーと同じ思想——「削がない美学」を、赤ワインで。

Château de Lussac 2006
🇫🇷 リュサック・サンテミリオン メルロー80%/カベルネ・フラン20% 750ml ¥14,000

876年創業——シャトーの歴史が、千年を超えています。ボルドー右岸サンテミリオン衛星地区の歴史的シャトー、リュサック。醸造を率いるのは、世界中の銘醸を手がけるコンサルタントの巨匠ミシェル・ロラン率いるチームで、メルロー80%が持つ豊かなコクと滑らかさを極限まで引き出しています。そして2006年という二十年熟成のヴィンテージ——熟したドライフルーツ、シガー、革、シナモンのような複雑で気品あるアロマが、長い歳月によって角を削ぎ落とされたシルキーなタンニンとともに、深く静かな余韻を描きます。つまりこの一本は「今まさに最高の飲み頃」を迎えた状態でグラスに注がれる、時間の贈り物。熟成ボルドーの官能を、一杯から体験できる幸福を、どうぞ。

世界

世界の酒

World Spirits Collection

日本産だけがすべてではありません。世界と比べてこそ、日本の個性が見えてくる――スコッチ、ワールドウイスキー、ジン、アブサン、テキーラ、ラムまで。

world GIN

  • The Cambridge Distillery Truffle Gin
    ケンブリッジ蒸溜所(英国)|42%

    世界で最も贅沢なジンのひとつ——生のトリュフを蒸溜したジンです。造るのは英国ケンブリッジ蒸溜所。大学都市の科学的知性をそのまま蒸溜所にしたようなこの造り手は、素材ごとに最適温度で個別蒸溜する減圧低温蒸溜の先駆者で、熱に弱い繊細な香気を壊さず抽出する技術で世界のジン界を一段引き上げました。その技術の頂点が本作——加熱すれば飛んでしまうトリュフの官能的な香りを、低温の魔法で液体に写し取っています。グラスに鼻を近づければ、森の土の中の宝石そのものの、あの妖しく甘い菌香。ジュニパーの輪郭がそれを気品で包みます。おすすめは冷やしたストレートか、ドライマティーニ——トリュフマティーニは、オリーブの代わりに森の香りを添える大人の遊戯です。尾崎牛との相性は、言うまでもありません。

  • Hendrick’s Midsummer Solstice Gin
    ヘンドリックス(スコットランド)|43.4%

    キュウリと薔薇——世界で最も風変わりで、最も愛されるジン、ヘンドリックス。スコットランドの片隅で「世にも奇妙なジン」を掲げるこの蒸溜所が、一年で最も昼が長い日・夏至(ミッドサマー・ソルスティス)に捧げた限定作が本作です。定番の胡瓜と薔薇の妙なる二重奏に、夏至の野原で摘んだような花々の香りを幾重にも重ね、「真夏の夜の夢」をそのまま瓶詰めしたようなフローラルの祝祭に仕上げました。グラスからは薔薇園を渡る風のような甘く華やかな香り、口中では花蜜の艶と胡瓜の涼が交差し、余韻は白夜のように長く優しい。トニックで割り、薄切りキュウリを一枚——ヘンドリックス流の作法で、夏の魔法をどうぞ。花のジンの頂点のひとつです。

  • Ferdinand’s Saar Dry Gin
    フェルディナンズ(ドイツ・ザール)|44%

    ジンに、リースリングを注ぐ——ドイツ・ザール川流域の名門葡萄畑のリースリングワインを、蒸溜後のジンにブレンドするという前代未聞の設計で世界を驚かせたのが、フェルディナンズです。ザールといえば、世界で最も繊細で気高いリースリングの聖地。その貴腐すら生む銘醸畑の白ワインが、30種を超えるボタニカル——ラベンダー、タイム、バラ、スロー——の香りの上に、葡萄の艶やかな酸と蜜の気配を纏わせます。グラスからは白ワインとジンの間の子のような、他のどこにもない香り。口当たりはシルクのごとく、リースリング由来の微かな甘酸が余韻を彩ります。トニックで割ればドイツの葡萄畑の風が吹き、ソーダなら「飲む白ワインの香水」。ワイン愛好家をジンの世界へ連れ出す、最高の橋渡し役です。

  • Cotswolds Dry Gin
    コッツウォルズ蒸溜所(英国)|46%

    英国で最も美しい田園と称されるコッツウォルズ丘陵。蜂蜜色の石造りの村々が連なるこの絵本のような土地の蒸溜所が、地元のラベンダーと乾燥グレープフルーツの皮を主役に仕立てた、風景をそのまま飲むようなドライジンです。特筆すべきは、氷やトニックを注ぐと液体がうっすら白く濁ること——冷却濾過をせず、ボタニカルの精油をたっぷり残した証拠で、蒸溜所はこれを誇りを持って「曇るほどの香り」と呼びます。グラスからはラベンダーの穏やかな花香とグレープフルーツの明るい柑橘、ジュニパーの芯が英国庭園のように整然と香り、口中では精油の厚いテクスチャーが贅沢に広がります。ジントニックにすれば、濁りとともに香りが解き放たれる——見た目ごと味わう、田園の一杯です。

  • Cotswolds Wildflower Gin No.1
    コッツウォルズ蒸溜所(英国)|41.7%

    コッツウォルズの野の花——ワイルドフラワー。石垣の隙間や牧草地の縁に咲く名もなき花々への讃歌として生まれた、同蒸溜所のフローラル篇です。「No.1」はシリーズの第一番。コーンフラワー(矢車菊)やラベンダーなど英国の野花のニュアンスを、柑橘の明るさとともに軽やかに編み上げ、ドライジンの端正さを保ったまま、春の野原の空気を纏わせました。グラスからは、摘みたての小さな花束のような可憐な香りが立ち、41.7%の柔らかな度数が口当たりを絹のように整えます。余韻は花の蜜の記憶をほんのり残して、綺麗に消えていく——重くならないフローラルの、お手本のような設計です。トニック割りにエディブルフラワーを一輪浮かべれば、グラスの中に英国の五月が咲きます。定番ドライとの飲み比べで、同じ蒸溜所の「庭と野原」を。

  • The Botanist Islay Dry Gin
    ブルックラディ蒸溜所(スコットランド・アイラ島)|46%

    スモーキーモルトの聖地・アイラ島に、煙のない宝物があります——ザ・ボタニスト。革新派蒸溜所ブルックラディが、島の植物学者とともに アイラの丘や海辺を歩き、手摘みした22種の島の野生ボタニカルで仕立てるジンです。ウイスキーの島の風土——潮風に耐えるハーブ、湿原の花、海辺の草——が、ピートの代わりに香りとなって一本に宿ります。蒸溜は超低速で、廃棄予定だった旧式蒸溜器「醜いベティ」がゆっくりと香りを引き出す仕組み。グラスからは、野の花とハーブが幾重にも重なる複雑で瑞々しい香りに、微かな潮の気配。口中では22種の植物が次々と顔を出し、余韻はアイラの夏の丘のように長く続きます。当店のアイラモルトの前後に挟めば、「同じ島の、煙と花」という美しい対句が完成します。

  • Pigskin London Dry Gin
    シルヴィオ・カルタ(イタリア・サルデーニャ島)|40%

    「ピッグスキン」——豚革、すなわちラグビーボールの俗称です。楕円球への愛を名に掲げたこのジンは、地中海の楽園サルデーニャ島の老舗シルヴィオ・カルタが仕込む、遊び心と実力を兼ね備えた一本。サルデーニャは野生のジュニパーの島でもあり、地中海の陽光と潮風を浴びた地物のジュニパーベリーが、このジンの芯に island の野性味を与えています。様式はロンドンドライの端正な骨格ながら、香りにはどこか乾いた地中海のハーブ(マッキア)の気配が漂い、口当たりは40%らしく軽快。ラグビーの聖地・英国様式を、地中海の島が茶目っ気たっぷりに仕立て直した——そんな一本です。ジントニックでノーサイドの一杯を。試合観戦の夜にも、もちろん。

  • BrewDog LoneWolf Cloudy Lemon Gin
    ブリュードッグ・ローンウルフ蒸溜所(スコットランド)|40%

    クラフトビール界の反逆児ブリュードッグが、蒸溜の世界に放った一匹狼——ローンウルフ。その柑橘篇が、この「クラウディレモン」です。名前の通り、レモン果汁と皮をたっぷり抱いた液体はうっすらと濁り、人工香料のクリアなレモンとは別次元の、果実の実在感を誇示します。ビールで「妥協なき原材料主義」を貫いてきたブリュードッグらしく、ここでも本物のレモンを惜しげなく投入——グラスからは皮ごと搾ったレモンの鮮烈な香りが弾け、口中では果汁の酸とジンの骨格が痛快に絡みます。ソーダで割れば「大人のクラウディレモネード」が即完成し、トニックなら苦味とのコントラストが際立ちます。パンクの精神は、濁りを恐れない。夏のジン棚の主戦力です。

  • BrewDog LoneWolf Cactus & Lime Gin
    ブリュードッグ・ローンウルフ蒸溜所(スコットランド)|40%

    サボテンとライム——メキシコの砂漠をスコットランドのジンに翻訳した、ローンウルフの異色作です。サボテン(カクタス)は近年注目のボタニカルで、青くみずみずしい、アロエにも似た独特の植物感を液体に授けます。そこへライムの鋭い酸の香りを重ねれば、グラスの中はもうテキーラの故郷の夕暮れ——しかし骨格はあくまでスコットランドのドライジンという、国境を二重にまたいだ設計です。グラスからは青いサボテンの涼やかな香りとライムの弾ける酸、口中ではドライな輪郭の中を砂漠の風が吹き抜けます。トニック割りも良いですが、真価は「ジン・マルガリータ」——テキーラの代わりにこれで組む変化球は、当店の隠しメニュー的な一杯です。パンクスピリットの国境なき冒険を。

  • BrewDog LoneWolf Gunpowder Proof Gin
    ブリュードッグ・ローンウルフ蒸溜所(スコットランド)|57%

    ガンパワー・プルーフ——火薬度数。18世紀の英国海軍では、ラムやジンが水増しされていないか、火薬に酒を垂らして点火する検査が行われました。燃えれば合格、その最低度数がおよそ57%——「ネイビーストレングス」の起源です。ローンウルフはその海軍の伝統度数を、パンクな流儀で現代に召喚しました。57%の液体は、香りの密度がまるで違います。ジュニパーの針葉樹香、柑橘の精油、スパイスの熱が、火薬の名にふさわしい爆発力で立ちのぼり、トニックで割っても最後の一口まで輪郭が痩せません。ジントニックを「濃い顔」で組みたい夜、マティーニに鋼の背骨を通したい夜に。火気厳禁、ただし心には着火します。海軍の掟を、反逆者の手で。

  • Melifera French Gin
    メリフェラ(フランス・オレロン島)|43%

    Melifera——蜜蜂の学名(Apis mellifera)に由来する名を持つ、フランス・大西洋岸オレロン島のジンです。主役のボタニカルは、島に咲く不凋花イモルテル(エバーラスティング)——摘んでも色褪せぬことから「永遠の花」と呼ばれる、カレーにも似た独特の甘くスパイシーな香りの黄色い花です。蒸溜所は自ら有機栽培のイモルテル畑を営み、売上の一部を蜜蜂の保護に充てる、花と蜂の循環を軸にした美しい経営哲学の持ち主。グラスからは、蜂蜜と干し草とスパイスが混ざったようなイモルテル特有の複雑な香りが立ち、ジュニパーと柑橘がそれを軽やかに支えます。トニックで割れば大西洋の島の花畑の風——積丹の火の帆と並べる「花畑ジンの日仏比較」も、当店ならではの遊びです。

  • Boord’s Old Tom Gold London Gin
    ボールズ(英国)|50%

    1726年創業——ジンの歴史そのものを名乗る資格を持つ老舗ブランド、ボールズ。トレードマークの「猫と樽」は、オールドトムジンの語源とされる伝説——18世紀ロンドンの闇酒場が、黒猫(トムキャット)の看板の口にコインを入れると壁の管からジンが出てくる仕掛けで密売した——を今に伝える、生きた酒文化遺産です。本作はそのボールズの名を冠したオールドトムの現代復刻で、50%という堂々たる度数に、様式伝統のほのかな甘みをまとわせた本格派。グラスからはジュニパーの骨格に蜜の柔らかな甘い香りが重なり、口中では甘さが角を丸めつつ、高度数の芯が輪郭を保ちます。トムコリンズ、マルティネスといった19世紀カクテルを「正しい姿」で組むための鍵——猫の看板の向こう側の味を、合法的に。

  • Dancing Sands Sauvignon Blanc Gin
    ダンシングサンズ蒸溜所(ニュージーランド)|37.5%

    ニュージーランドの国民的白葡萄、ソーヴィニヨン・ブラン。その世界一有名な香り——パッションフルーツと刈りたての草の爆発——をジンに纏わせた、NZ南島ゴールデンベイの蒸溜所の代表作です。「踊る砂」の名は、蒸溜所の水源である聖なる泉テ・ワイコロププ——世界屈指の透明度を誇る湧水の、砂が踊るように湧き上がる泉底に由来します。その奇跡の水で仕込んだジンに、地元マールボロのソーヴィニヨン・ブランを重ねれば、グラスの中はNZの風土の二重奏。白ワインの華やかな果実香とジュニパーの清冽さが溶け合い、37.5%の軽やかさも相まって、ワインのように飲めるジンが完成しました。トニックで割れば「泡のソーヴィニヨン」。MANAの白ワインとの飲み比べで、NZの香りの正体を探る夜を。

  • Dancing Sands Dry Gin
    ダンシングサンズ蒸溜所(ニュージーランド)|44%

    ダンシングサンズの基準となるドライジン。主役は、あの「踊る砂」の泉——テ・ワイコロププの湧水です。ジンの八割は水。ならば世界最高の透明度の水で仕込めば、世界最高にクリアなジンができるはず——この単純にして強靭な論理が、本作の背骨です。ボタニカルにはジュニパーと柑橘の王道に、マヌカなどNZ固有の植物の気配を織り込み、南島の手つかずの自然を香りの設計図にしました。グラスからは、雑味という概念を知らないような澄んだジュニパーの香り、柑橘の明るさ、微かな野生ハーブ。口当たりは泉の水そのもののように滑らかで、44%の度数を感じさせません。ジントニックにすれば、透明度がそのまま美味しさに変換される——「水を飲み比べる」という、ジンの新しい鑑賞法を教えてくれる一本です。

  • Bobby’s Schiedam Dry Gin
    ボビーズ(オランダ・スキーダム)|42%

    ジン誕生の地・オランダ、その蒸溜の都スキーダムから届く、祖父の名を継ぐジンです。「ボビー」ことヤコブス・アルフォンス氏は、インドネシアからオランダへ渡った移民一世。彼が故郷のスパイスをジュネヴァ(オランダジン)に漬けて飲んでいたレシピを、孫が発見し、現代のジンとして甦らせました——つまり本作は、家族三代とふたつの祖国の物語の蒸溜です。レモングラス、クローブ、キュベブペッパーなどインドネシアの香辛料が、ジュニパーの伝統と溶け合い、グラスからはエキゾチックで温かいスパイスの香りが立ちのぼります。口中ではレモングラスの爽快とクローブの甘い痺れが踊り、余韻は東洋と西洋の間で長く揺れる——ジンの歴史と移民の歴史が重なる、飲む家族史です。トニックで、香りの航海を。

  • Kingsbury Victorian Vat Gin
    キングスバリー(英国)|47%

    キングスバリーといえば、ウイスキーファンには樽出しシングルモルトの名門ボトラー(独立瓶詰業者)として知られる老舗。その目利きの家がジンで挑んだのが、「ヴィクトリアン・ヴァット」——大英帝国絶頂期、ヴィクトリア朝のジンの姿を現代に甦らせる試みです。19世紀のジンは、現代の軽やかなスタイルより骨太で、ジュニパーが堂々と主役を張る「男前」な設計でした。本作は47%の度数とともにその古典様式を再現し、針葉樹の力強い香り、柑橘とスパイスの端正な脇役ぶり、どっしりとした飲み応えを備えます。シャーロック・ホームズが霧のベイカー街で傾けたであろう一杯——マティーニやジントニックの「原型」を知るための、歴史の教科書のようなジンです。樽の目利きが選んだ古典を、当時の濃度で。

  • Kavalan Gin
    カバラン蒸溜所(台湾・宜蘭)|40%

    世界のウイスキー地図を塗り替えた台湾の巨人、カバラン。亜熱帯の急速熟成でシングルモルトの常識を覆したあの蒸溜所が、同じ宜蘭の雪山山脈の水でジンを仕込みました。ボタニカルには台湾の風土——金柑やグアバなど宝島の果実の気配を織り込み、ウイスキーで証明した「台湾テロワール」を、今度は香りの言語で語ります。グラスからは、東アジアの柑橘の甘酸っぱく親しみやすい香りと、トロピカルな果実の明るさ、ジュニパーの端正な芯。口当たりは40%らしく柔らかで、余韻には南国の夕暮れのような温かさが残ります。ジントニックにすれば台湾の夜市の風が吹く——当店のワールドウイスキー棚のカバランと合わせて、「一つの蒸溜所の二つの顔」を巡る台湾ナイトをどうぞ。

  • MONKEY 47
    ブラックフォレスト蒸溜所(ドイツ・黒い森)|47%

    47種のボタニカル、47%の度数、そして一匹の猿——世界のクラフトジンブームの頂点に立つ伝説、モンキー47です。物語は戦後、黒い森(シュヴァルツヴァルト)に隠棲した英国空軍将校が、ベルリン動物園の猿「マックス」への追憶とともに遺したレシピから始まります。ドイツの深い森の素材——クランベリーの野生の酸、雲杉の若芽、木苺——を含む47種を、モラセスベースのスピリッツに漬け、陶製の甕で寝かせる複雑極まる製法。グラスからは、森の宝石箱を開けたような香りの奔流——ベリー、柑橘、ハーブ、樹脂、花——が幾重にも立ちのぼり、一口ごとに違う扉が開きます。ジントニックの一杯目で世界中のバーテンダーを転向させてきた実力を、まずは体験として。黒い森の猿の魔法は、噂に違わず本物です。

  • Le Gin de Christian Drouin Calvados Cask Finish
    クリスチャン・ドルーアン(フランス・ノルマンディー)|42%

    カルヴァドスの至宝、クリスチャン・ドルーアン。林檎のブランデーで世界最高峰と謳われるノルマンディーの名門が、自家のシードル用林檎——30品種——を蒸溜したスピリッツをベースに仕込むジン、それが「ル・ジン」です。穀物ではなく林檎から立ち上げるジンは世界でも稀有で、液体の芯には林檎の花園のような甘やかな気配が流れます。本作はさらに、自家のカルヴァドス樽でフィニッシュを施した贅沢版——樽が記憶する林檎ブランデーの蜜と木の香りが、ジュニパーと8種のボタニカルの上に金色の衣を掛けます。グラスからは青林檎と花、バニラ、微かな樽香が幾層にも立ち、口当たりはノルマンディーの牧場のようにまろやか。トニックで「林檎のジントニック」、ストレートで小さなカルヴァドスの夢を。名門の余技は、余技の域を遥かに超えています。

  • Empress 1908 Gin
    ヴィクトリア蒸溜所(カナダ・ブリティッシュコロンビア)|42.5%

    グラスに注げば、深い藍。トニックを注げば、薄紫へ——色が変わるジンの代名詞、エンプレス1908です。名の由来は、カナダ・ヴィクトリアの丘に1908年から立つ大英帝国の残照、フェアモント・エンプレスホテル。アフタヌーンティーの聖地であるこのホテルの特注紅茶をボタニカルに使い、藍色はバタフライピーの花が授けます。紅茶のタンニンの気品、柑橘とジュニパーの端正な骨格、そして酸に触れて紫に染まる視覚の魔法——味と物語と色彩が三位一体になった、現代ジンの完成形のひとつです。トニックを静かに注ぐ瞬間は、カウンター越しの小さなショー。十勝の「明時」との藍対決も一興です。女帝の名にふさわしい一杯を、夕暮れの色変わりとともに。

World Absinthe

  • Kübler Absinthe Verte Suisse 2018 Edition Millésimée
    キュブレー(スイス・ヴァル=ド=トラヴェール)|72%

    アブサン発祥の聖地——スイス、ヴァル=ド=トラヴェール渓谷。18世紀末にこの谷で生まれた緑の薬酒は、やがて世紀末パリを酔わせ、そして1910年、故国スイスで禁制の烙印を押されました。その暗黒の百年を耐え、2005年の解禁を勝ち取った立役者こそ、1863年から谷で蒸溜を続けるキュブレー家です。本作は2018年ミレジム(年号入り)の特別版ヴェルト(緑)、度数は堂々の72%。谷で育てたニガヨモギをはじめ聖地の薬草を古式のまま蒸溜した液体は、加水とともに乳白色のルーシュを描き、アニスの甘い霧の奥からヨモギの神秘的な苦味が立ち上がります。発祥の谷の、正統の中の正統。アブサンの「原典」を読むなら、この一杯からです。

  • Vieux Pontarlier Absinthe
    エミール・ペルノ蒸溜所(フランス・ポンタルリエ)|65%

    ポンタルリエ——スイス国境に接するフランス側の、アブサンのもう一つの都です。ベル・エポックの絶頂期、この小さな町には二十を超えるアブサン蒸溜所が煙を上げ、「緑の時間(ルール・ヴェルト)」の心臓部として世界に君臨しました。アルケミエの辰巳氏が郡上八幡を選んだ理由——「ポンタルリエに風景が似ていたから」——のあの町です。本作「ヴュー・ポンタルリエ(古きポンタルリエ)」は、町の伝統を継ぐエミール・ペルノ蒸溜所が、地元ポンタルリエ産の香り高いニガヨモギで仕込む古典レシピの復刻。65%の液体からは、アニスとフェンネルの甘い香気、ヨモギの気高い苦味、アルプス前地の薬草の涼が立ちのぼります。郡上の犬啼と並べて「二つのポンタルリエ」を——当店ならではの聖地巡礼です。

  • Absinthe Bourgeois
    フランス|55%

    「ブルジョワ」——市民、の名を戴くアブサンです。ベル・エポックのアブサンは、ロートレックやヴェルレーヌら芸術家の酒である以前に、パリの市民たちが夕方五時の「緑の時間」に、カフェのテラスで一日の労をほどく日常の酒でした。角砂糖に冷水を垂らし、白く濁る液体を眺める数分間——それは市民の側の、ささやかな錬金術だったのです。本作はその「日常のアブサン」の系譜に連なる一本で、55%という比較的穏やかな度数設計が、まさに市民的。アニスの甘い香りが親しみやすく前に立ち、ヨモギの苦味は上品な奥行きとして控えます。アブサン初心者の方の一杯目として、儀式の入門編として最適な立ち位置です。難しい顔をせず、パリの黄昏の市民になったつもりで、ゆっくりと水を垂らしてください。

  • Marienhof Absinth Spirituose
    マリエンホーフ(ドイツ)|55%

    アブサンといえばフランスとスイス——しかしドイツにも、薬草酒の分厚い伝統があります。イエーガーマイスターに代表されるクロイターリキュール(薬草リキュール)の国が、その調合の知恵でアブサンを仕立てると、ラテンの官能とはひと味違う、ゲルマンの謹厳な薬草世界が立ち上がります。マリエンホーフの本作は、その独逸流アブサンの好例。アニスの甘さに寄りかかりすぎず、ヨモギとハーブの苦味の設計を骨格に据えた、質実剛健な55%です。グラスからは森の薬局のような複雑なハーブ香、加水すれば白濁とともに、甘・苦・涼の三声がドイツの合唱のように整然と重なります。仏・瑞・独・日——当店のアブサン棚は、緑の妖精の国籍比較ができる小さな博覧会。ドイツ代表の生真面目な一杯を、ぜひ審査員気分で。

  • Absinthe Pontarlier H. Deniset Jeune
    ポンタルリエ(フランス)|56%

    「H.ドニゼ・ジュヌ」——ベル・エポックのポンタルリエに実在した歴史的アブサン商の名を、当時のラベル意匠とともに現代に甦らせた復刻銘柄です。禁制前のアブサンのボトルやポスターは、今や骨董市場で高値を呼ぶベル・エポックの美術品。本作はその失われた商標の味を、ポンタルリエの伝統製法で再構築した、いわば「飲める骨董」です。56%の液体は、19世紀のレシピらしくニガヨモギの存在感がくっきりと立ち、アニスの甘い衣の下から、往時の「緑の時間」の少し危険な香りが顔を覗かせます。加水のルーシュは濃密で、香りの開きは劇的。ゴッホが、ヴェルレーヌが、実際に飲んでいたアブサンに最も近い体験のひとつを、東麻布のカウンターで。百年前のパリの黄昏を、一杯の考古学として。

  • Butterfly Classic Absinthe
    スイス製・米国ブランド復刻|65%

    禁制の前夜、アメリカにもアブサンがありました——1902年、ボストンで生まれた「バタフライ」です。ニューオーリンズのサゼラックと並び、アメリカのアブサン文化を彩ったこのブランドは、1912年の米国禁制で歴史から姿を消しました。約一世紀の後、当時のレシピを発掘した愛好家たちが、アブサンの聖地スイス・ヴァル=ド=トラヴェールの蒸溜所で忠実に復刻——蝶は百年の眠りから羽化しました。65%の液体は、アメリカンアブサンらしい、ミントを思わせる清涼感がひときわ個性的。アニスとヨモギの古典的骨格に、新大陸の風のような爽やかさが吹き抜けます。サゼラックカクテルのリンス(グラスの香り付け)に使えば、ニューオーリンズ1900年の再現度は完璧。大西洋を二度渡った蝶の物語を、緑の一杯で。

テキーラ・メスカル他

  • Corralejo 99,000 Horas Añejo Tequila
    コラレホ(メキシコ・グアナファト州)|40%

    「99,000時間」——アガベが畑で育ち、テキーラとなって樽で眠るまでの膨大な時間を、そのまま名前にした黒衣のアネホです。造り手のコラレホは1755年創業、メキシコ独立の父・イダルゴ神父が生まれたハシエンダ(大農園)を起源に持つ、歴史そのものの蒸溜所。産地も本場ハリスコ州ではなく、テキーラ法で認められた数少ない例外・グアナファト州という異色の血統です。漆黒のボトルから注がれる液体は、樽熟成由来のバニラとカラメル、チョコレートの甘い香りをまとい、アガベの蜜の芯がその奥で静かに輝きます。口当たりはまろやかで、余韻はビターに長く——「テキーラ=ショットで煽る酒」の誤解を解く、ウイスキーグラスでゆっくり傾けるべき一杯です。九万九千時間を、数十分かけて。

  • Casamigos Tequila Añejo
    カーサミーゴス(メキシコ・ハリスコ州)|40%

    ジョージ・クルーニーが「友人と自分たちが飲むためだけ」に作らせたテキーラ——それがカーサミーゴス(casa=家、amigos=友人たち)の始まりです。メキシコの別荘で親友と理想の味を追求するうち、あまりに注文量が増えて正式にブランド化。数年後、酒類大手に約10億ドルで買収されるという、ハリウッド史上最も美味しいサクセスストーリーになりました。アネホはアメリカンオーク樽で熟成させた琥珀の上級版。バニラとキャラメルの甘い香りに、焼きアガベの蜜、ほのかなスパイスが重なり、口当たりは驚くほどスムース——「毎晩飲んでも喉が疲れない」というクルーニーたちの開発基準が、そのまま味になっています。ロックで、映画俳優の晩酌気分をどうぞ。

  • Casamigos Tequila Reposado
    カーサミーゴス(メキシコ・ハリスコ州)|40%

    カーサミーゴスの中核を担うレポサド——「休ませた」を意味する、樽で数ヶ月の眠りを経たテキーラです。ブランコの生き生きとしたアガベ感と、アネホの樽の甘みのちょうど中間、いわばテキーラの「食べ頃」を切り取るカテゴリで、カーサミーゴスはここでもスムースネス至上主義を貫きます。ゆっくりと低温で発酵させたアガベの、蜜のような自然な甘みに、樽由来のバニラが薄衣のように重なり、刺すようなアルコール感は徹底的に磨き落とされています。ストレートで滑らかさを確かめた後は、パロマ(グレープフルーツソーダ割り)で軽やかに——ハリウッドの友情から生まれた酒は、気の置けない仲間との夜にこそ似合います。アネホとの飲み比べで「樽の時間」を測るのも一興です。

  • Casa Noble Tequila Reposado
    カサ・ノブレ(メキシコ・ハリスコ州)|40%

    「高貴な家」を名乗るカサ・ノブレは、テキーラ界きっての品質主義者です。アガベは完熟まで待って収穫したオーガニック認証、石窯でゆっくり蒸し、天然酵母で発酵、そして熟成はフレンチオークの新樽——ワインの銘醸のような造りを、テキーラで実践する希少な蔵。共同オーナーにギターの神様カルロス・サンタナが名を連ねることでも知られます。レポサドはフレンチオーク由来の上品なバニラとスパイスが、蒸し焼きアガベの蜜の甘みと美しく調和した、気品ある仕上がり。口当たりはビロードのようで、余韻には白胡椒と柑橘の気配が長く続きます。サンタナのギターのように、艶やかで、歌うような一杯——スニフターでじっくりと、その「高貴」を確かめてください。

  • Gran Patrón Reposado Tequila
    パトロン(メキシコ・ハリスコ州)|40%

    プレミアムテキーラという概念を世界に定着させた立役者、パトロン。その通常ラインの上に君臨する最高峰シリーズが「グラン・パトロン」です。厳選されたウェーバーブルーアガベを昔ながらの石臼(タオナ)を併用して搾り、小仕込みで丁寧に蒸溜——手仕事の密度がひとつ上の階級で、ボトルは職人の手吹きクリスタル。レポサドは、その贅を尽くした原酒を樽で休ませた琥珀の入口です。焼きアガベの蜜と柑橘の明るさに、オーク樽のバニラとハニーが上品に重なり、口当たりはどこまでも滑らかで、余韻は静かに甘い。テキーラの「ラグジュアリー」がどこまで来たかを知る定点として、まずストレートで。マルガリータに使えば、一杯の格が音を立てて上がります。

  • Don Julio Tequila Reposado
    ドン・フリオ(メキシコ・ハリスコ州)|38%

    1942年、17歳の青年ドン・フリオ・ゴンサレスが最初の蒸溜所を興したとき、テキーラはまだ「安く酔うための酒」でした。彼はアガベを密植せず広く育て、完熟だけを選び、味のためなら収量を捨てる——その頑固な農夫の哲学で、テキーラを「誇りを持って贈れる酒」に変えた革命家です。今や世界のトップバーの棚に必ず座るドン・フリオのレポサドは、アメリカンオーク樽で8ヶ月休ませた、ブランドの良心というべき一本。レモンや洋梨を思わせる明るい果実香に、樽のバニラとシナモンが柔らかく重なり、38%の設計も相まって、口当たりは春の午後のように穏やかです。パロマ、マルガリータ、そしてロック——どの器でも崩れない均整は、農夫の八十年の答えです。

  • Cabo Wabo Tequila Reposado
    カボ・ワボ(メキシコ・ハリスコ州)|40%

    ヴァン・ヘイレンのボーカリスト、サミー・ヘイガーが「自分のクラブで出す最高のテキーラ」を求めて作った、ロックンロール直系のブランドです。カボ・ワボとは、彼がメキシコ・カボサンルーカスに開いた伝説のクラブの名。ステージで汗を流した後、仲間と煽る一杯のために、ハリスコの家族経営蒸溜所と組んで生まれた味は、意外なほど本格派です。レポサドはアメリカンオーク樽で休ませた琥珀で、焼きアガベの蜜と青胡椒のスパイス、バニラの甘みがラウドすぎない音量で調和。ロックスターの酒にありがちな「名前だけ」とは一線を画す、現場のクラブで鍛えられた実戦の味です。ライブの後のような夜に、ロックで一杯——音楽の話が弾む酒、というのも立派な効能です。

  • Alipús Mezcal Artesanal San Juan
    アリプス(メキシコ・オアハカ州)|47.5%

    メスカルの魂は「村」にあります。アリプスは、オアハカの山あいの村々に伝わる家族経営の小さな蒸溜場(パレンケ)と組み、村の名前をそのままラベルに刻むプロジェクト——本作はサン・フアン・デル・リオ村の一本です。エスパディン種のアガベを土中の石窯で数日間蒸し焼きにし、馬が挽く石臼で潰し、野生酵母で発酵、小さな銅釜で蒸溜——ほぼ全工程が数百年前と同じ手仕事。47.5%の液体からは、燻したアガベのスモーク、熟した果実、湿った土、微かな革の香りが幾層にも立ちのぼり、村の暮らしの風景がそのまま香りになっています。同じアリプスでも村が違えば別の酒——ワインのテロワールを、メキシコの山村で。素焼きの盃で少しずつ、オレンジと塩を添えて。

  • Mezcal Amores Cupreata(Mazatlán, Guerrero)
    アモーレス(メキシコ・ゲレーロ州)|41%

    メスカル=オアハカ、という常識の外へ——本作の産地はゲレーロ州、そしてアガベは野生種クプレアタです。「パパロテ(凧)」の愛称を持つこのアガベは、栽培がほぼ不可能で、山の斜面に自生する株を十数年待って収穫するほかない、正真正銘の野生の恵み。畑のエスパディンとは香りの世界がまるで違います。グラスからは、青いハーブと花、熟したマンゴー、そして焼き土の煙が渾然一体となった、野性的で艶やかな香り。口中では41%の柔らかな設計の中を、山の植生の複雑さが駆け巡ります。「Amores(愛)」の名の通り、持続可能な野生アガベの管理と植樹に取り組む造り手の姿勢も美しい。エスパディン版と並べて、栽培と野生——メスカルの二つの血統を舌で比べてください。

  • Mezcal Amores Espadín(Oaxaca)
    アモーレス(メキシコ・オアハカ州)|37%

    メスカル入門の王道にして、奥義の入口——エスパディン種です。オアハカの谷で最も広く育てられるこのアガベは、8年前後で成熟し、糖度が高く、メスカルの香味の「基準原器」を担ってきました。アモーレスのエスパディンは、伝統の土中石窯焼きと野生酵母発酵を守りながら、37%というメスカルとしては穏やかな度数に仕上げた、扉を開くための一本。燻したアガベの甘いスモークは、アイラモルトの泥炭とは別種の「土と蜜の煙」で、その奥から洋梨や柑橘の明るい果実が顔を出します。ソーダで割ればメスカルハイボールという新しい定番に、ネグローニのジンを置き換えれば煙のネグローニに。厚岸や三郎丸の煙と飲み比べる「世界スモーキー会議」も、当店の楽しい悪巧みです。

  • Sotol Coyote Blanco Triunfo del Desierto(Coahuila)
    ソトル・コヨーテ(メキシコ・コアウイラ州)|48%

    テキーラでもメスカルでもない、第三のメキシコ蒸溜酒——ソトルです。原料はアガベですらなく、チワワ砂漠に自生するダシリリオン(砂漠の匙草)。十数年かけて砂漠で育ったこの野生植物を蒸し焼きにして醸すソトルは、北部メキシコの荒野の酒として、いま世界のバーテンダーが最も注目するカテゴリのひとつです。本作は「砂漠の勝利」の名を持つコアウイラ州産のブランコ、48%。グラスからは、乾いた草原とミント、青い松葉、湿った洞窟の土を思わせる、他のどの蒸溜酒にもない鉱物的で涼しい香りが立ちます。口中ではハーバルな苦味と微かな燻香が砂漠の風のように吹き抜け、余韻は驚くほど澄んでいます。コヨーテの遠吠えが聞こえるような一杯——蒸溜酒の地図の余白を、ぜひこの機会に。

世界のラム

  • 83 Islands Distillery Vanuatu Cacao Nibs Infused Rum
    83アイランズ蒸溜所(バヌアツ)|30%

    南太平洋に浮かぶ83の島々の国、バヌアツ。「世界一幸せな国」に選ばれたこともあるこの島国に、日本人が興した小さな蒸溜所が83アイランズです。火山性の肥沃な土壌で育つバヌアツのサトウキビと、同じ島の誇るべき特産・カカオ——世界のショコラティエが指名買いする高品質カカオのニブを、自家のラムに浸け込んだのが本作です。グラスからは、ローストカカオの香ばしくビターな香りと、キビ由来の黒糖めいた甘い気配が同時に立ち、30%の穏やかな度数が「食後のチョコレートの代わりの一杯」という立ち位置を完璧に果たします。ロックでビターに、ミルク割りで南国のチョコレートドリンクに。島の畑ふたつが一本のボトルで出会う、幸せな国の幸せな設計です。

  • 83 Islands Distillery Select Barrels Aged Yumi Rum 2 Years
    83アイランズ蒸溜所(バヌアツ)|40%

    「Yumi(ユミ)」——バヌアツの共通語ビスラマ語で「私たち」。83の島、百を超える言語を持つこの国をひとつに束ねる、美しい一人称複数です。その名を冠したユミ・ラムの樽熟成版が本作。選び抜いた樽で2年、南緯15度の常夏の気候はスコットランドの数倍の速さで熟成を進め、若い年数からは想像できない樽の甘い衣を原酒にまとわせます。グラスからはバニラとカラメル、熟した南国果実の香り、その奥にキビの青い記憶。口当たりは40%らしく均整が取れ、余韻には島の夕暮れのような温かさが残ります。ロックで樽とキビの対話を、ハイボールで貿易風のように軽やかに。「私たちのラム」という名の通り、島の農家と蒸溜所の共同体の味です。日本とバヌアツの縁を、グラスの中で。

  • 83 Islands Distillery Touaraken Farm Vintage 2023 Overproof Pure Cane Yumi Rum
    83アイランズ蒸溜所(バヌアツ)|56%

    単一農園、単一年、高度数——ラムの世界にワインの文法を持ち込んだ、83アイランズの真骨頂です。トゥアラケン農園、2023年収穫のサトウキビだけを、搾りたてのジュースのまま発酵・蒸溜(ピュアケーン=アグリコール様式)し、56%のオーバープルーフで瓶詰め。つまりこの一本は「2023年のトゥアラケンの畑」の完全な記録であり、来年は二度と同じ味になりません。グラスからは、刈りたてのキビ畑に立っているかのような、青く、草いきれのする、蜜の香り。56%の熱がそれを鮮烈に押し上げ、加水するたび香りの層が畑の畝のようにほどけていきます。テロワールという言葉を、ラムで最も雄弁に語る一本——ダイキリにすれば、伝説的な一杯になります。ヴィンテージ・ラムの時代の到来を、南太平洋から。

  • eighty-three Islands Rum LOST TIMES Special Release
    83アイランズ蒸溜所(バヌアツ)|40%

    「LOST TIMES」——失われた時間。含みのある名を持つこのスペシャルリリースは、83アイランズが特別な原酒に物語を託した限定作です。旅が止まった時代、遠い島の蒸溜所で静かに眠り続けた樽たち——会いに行けなかった歳月こそが、この酒の熟成年数でもある、という詩的な仕掛け。グラスからは、樽の甘いバニラとドライフルーツ、キビの黒糖めいたコク、そしてどこか懐かしい南島の花の香りが立ちのぼります。口当たりは丸く、40%の飲みやすさの中に、限定原酒らしい香味の密度が息づいています。ロックで、失われた時間を取り戻すようにゆっくりと。バヌアツ4部作(カカオ・2年熟成・単一農園・本作)を通しで飲めば、南太平洋の小さな蒸溜所の物語が一晩で一冊読めます。

  • LAODI Pure Sugarcane Rhum WHITE
    LAODI(ラオス・ビエンチャン)|42%

    メコンの国ラオスに、日本人が営むアグリコールラムの蒸溜所があります——LAODI(ラオディ)。首都ビエンチャン郊外の自社農園で無農薬のサトウキビを育て、刈り取ったその日のうちに搾り、フレッシュジュースのまま発酵・蒸溜する「畑直結」の造りは、フランス領カリブの伝統様式アグリコールをメコン流域で実践する、世界でも稀な試みです。ホワイトは樽を経ないその素顔。グラスからは、搾りたてのキビ汁の青く瑞々しい香りに、ラオスの花や熟した果実を思わせる艶やかな気配が重なります。口当たりは42%とは思えず柔らかで、余韻はメコンの夕風のように穏やか。モヒートにすればミントとキビの青さが共鳴し、ソーダ割りなら畑の香りがそのまま立つ——東南アジアのテロワールを、一杯でどうぞ。

  • Neisson Profil 107 Rhum Agricole Élevé Sous Bois
    ネイソン(フランス海外県マルティニーク)|52.8%

    アグリコールラムの本丸マルティニーク島で、1931年から家族経営を貫く小さな巨人、ネイソン。ラム界で唯一AOC(原産地呼称統制)を持つこの島の中でも、四角瓶の「ネイソン」は職人品質の代名詞です。本作「プロフィル107」は、蒸溜条件を数値で管理・公開する実験的シリーズの一本——107という蒸溜プロファイル番号をそのまま名にした、いわばラムの学術論文です。「Élevé Sous Bois(樽下育成)」の表記が示す通り、短期の樽熟成で琥珀の入口の色をまとい、52.8%の高度数がキビの香味を克明に記録しています。青いキビ、焼き菓子、白い花、樽の微かなバニラ——アグリコールの構造美を、顕微鏡のような解像度で。ティーパンチ(マルティニーク流の飲み方)で、島の日常の作法をぜひ。

  • Chamarel Premium Rum Classic
    シャマレル蒸溜所(モーリシャス)|42%

    インド洋の貴婦人、モーリシャス島。マーク・トウェインが「神はモーリシャスを最初に創り、それを真似て天国を創った」と書いた楽園の南西部、七色の大地で知られるシャマレル村に、この蒸溜所はあります。周囲の自社畑で育てたサトウキビを、収穫からわずか数時間で搾汁・仕込みに回すアグリコール様式——火山性土壌と海洋性気候が育てたキビの鮮度が、そのまま酒質になります。クラシックは蒸溜所の基準となるホワイト。グラスからは、トロピカルフルーツと白い花、青いキビの上品な香りが立ち、口当たりは楽園の名に恥じず滑らかです。ダイキリやモヒートの土台として極上、ソーダ割りでインド洋の風を。七色の大地の一色目を、東麻布で。

  • Bacardi Carta Blanca Superior White Rum
    バカルディ(キューバ発祥)|40%

    世界で最も飲まれているラム——バカルディを「ただの量販品」と侮るなかれ。1862年、キューバ・サンティアゴの小さな蒸溜所から始まったこの蝙蝠印は、それまで粗野だった ラムをチャコール濾過で磨き上げ、「軽く、クリアで、カクテルに寄り添うラム」という近代様式そのものを発明した歴史的ブランドです。ダイキリもモヒートもキューバ・リブレも、このカルタ・ブランカとともに生まれ育ちました。革命によりキューバを追われ、亡命先で再興したファミリーの物語も、酒史に残るドラマです。グラスからは、ほのかなバニラと柑橘、クリーンなキビの甘い気配。存在を主張しすぎない設計こそが、160年間カクテルの土台であり続けた理由です。当店の伊良コーラと合わせる「クラフト・キューバリブレ」で、原点と最先端の握手を。

  • Berry Bros. & Rudd Propino Jamaican Rum (Monymusk) Aged 16 Years (2002)
    ベリー・ブラザーズ&ラッド(英国)×モニマスク蒸溜所(ジャマイカ)|59%

    1698年創業——英国王室御用達、世界最古のワイン・スピリッツ商ベリー・ブラザーズ&ラッド。ロンドン・セントジェームズの同じ店舗で三世紀商いを続けるこの老舗が、ジャマイカの名門モニマスク蒸溜所の一樽を選び抜いた、2002年蒸溜・16年熟成のシングルカスクです。ジャマイカンラムの魂は「エステル」——発酵で生まれる、熟しすぎたバナナやパイナップル、マニキュアのようなあの独特の芳香。16年の歳月と59%の度数が、その funk をトロピカルフルーツのコンポートと樽の深いコクへと昇華させています。一口で分かる、圧倒的な情報量。ウイスキーのシングルカスク文化をラムに翻訳した、英国目利き三百年の仕事です。加水しながら、ジャマイカの熱帯と倫敦の理性の対話をどうぞ。

  • Clément Rhum Blanc Agricole Martinique
    クレマン(フランス海外県マルティニーク)|40%

    アグリコールラムの父——オメール・クレマン。19世紀末、砂糖価格の暴落に苦しむマルティニークで、彼は糖蜜ではなくサトウキビの搾り汁をそのまま発酵・蒸溜する新様式を確立し、島の農業を救いました。以来「クレマン」の名は、アグリコールの歴史そのものです。本作はそのブラン(ホワイト)、AOCマルティニークの規格を纏う正統の白。グラスからは、刈りたてのキビの青く華やかな香り、白い花、柑橘の皮の気配が瑞々しく立ちのぼります。40%の端正な骨格は、島の国民的カクテル「ティーパンチ」——ラムにライムと少量のキビシロップだけ——で完璧に輝きます。当店ではイエラムやLAODIと並べた「アグリコール世界地図」の基準点として。父の味を知れば、子たちの個性が見えてきます。

  • SelvaRey Cacao Rum 5 Years
    セルバレイ(パナマ)|35%

    オーナーは、ブルーノ・マーズ——グラミーの帝王が「南国の休日をボトルに」と本気で仕込むラムブランド、セルバレイです。造りを担うのはパナマの伝説的マエストロ、フランシスコ・”ドン・パンチョ”・フェルナンデス。キューバ仕込みの巨匠が5年熟成させたラムに、上質なカカオの香りをインフューズした本作は、音楽でいえば完璧にプロデュースされた甘いグルーヴです。グラスからはビターチョコレートとバニラ、熟したバナナの官能的な香り。35%の口当たりはベルベットのようで、甘さは品よく、余韻はカカオのほろ苦さが締めます。ロックで食後の一曲として、エスプレッソマティーニに忍ばせて隠し味として。GOTOGINカカオ、越後薬草カカオジンと並ぶ当店「カカオ酒サミット」のラム代表——24金のようにスムースな一杯を。

  • Rhum Bielle Marie-Galante Rhum Agricole
    ビエル蒸溜所(グアドループ・マリー=ガラント島)|59%

    カリブ海の小さな円い島、マリー=ガラント。コロンブスが自船の名を与えたこの島は、今もサトウキビ畑と牛車が風景を作る「百の風車の島」——そしてラム愛好家の間では、アグリコールの桃源郷として囁かれる聖地です。ビエルは島を代表する蒸溜所で、本作は島の伝統度数・59%のブラン。マルティニークのAOCの端正さに対し、マリー=ガラントのラムはより野趣に富み、土と花と発酵の力強い香りが渾然と立ち上がります。搾りたてのキビの青さ、熟した果実、微かな塩とスパイス——高度数ゆえの香りの解像度は圧巻で、数滴の加水で花畑がほどけます。ティーパンチで島民の流儀を、ダイキリで輪郭の美を。地図で探すところから始まる一杯こそ、バーの醍醐味です。

  • Ron Zacapa Centenario 23 Solera Gran Reserva
    サカパ(グアテマラ)|40%

    「雲の上の家」——サカパの熟成庫は、グアテマラ高地・標高2,300メートルの霧の中にあります。低地の暑さで速く育てるカリブのラムに対し、サカパは冷涼な高地でゆっくりと、シェリーの伝統技法ソレラ・システム(樽を階層に組み、若い酒と古い酒を継ぎ足しながら育てる)で熟成させる、山のラムです。原料も糖蜜ではなく、初搾りのバージン・シュガーケイン・ハニー。「23」はソレラを構成する原酒の熟成年数の幅を示し、最長23年の古酒が味の深部を支えます。グラスからはレーズンと蜂蜜、バニラ、オレンジピール、チョコレートの甘美な香りが幾重にも立ち、口当たりは絹のよう。「ラムの帝王」と呼ばれる完成度を、まずはストレートで。ウイスキー党を最も驚かせるラム、と当店では紹介しています。

  • Plantation Rum Single Cask Panama 2006
    プランテーション(メゾン・フェラン)×パナマ|41.9%

    コニャックの鬼才アレクサンドル・ガブリエル率いるメゾン・フェランが、世界のラムを再発見するブランド——プランテーション。その真髄は「ダブルエイジング」、すなわちカリブの産地で熟成した原酒を、フランスへ運び、自社のコニャック樽でもう一度眠らせる大西洋越えの二段熟成です。本作はパナマ2006年蒸溜のシングルカスク。パナマラムらしい柔らかく甘い酒質に、コニャック樽由来の白葡萄と蜂蜜、上品な樽香が重なり、トロピカルとフレンチエレガンスが一つのグラスで結婚しています。41.9%の端正なボトリングから、熟した洋梨、キャラメル、微かなスパイスの余韻が長く続く——一樽限りの、二つの大陸の合作です。コニャック好きの方のラム入門として、これ以上の適任はいません。

  • Plantation Rum 3 Stars
    プランテーション(バルバドス×ジャマイカ×トリニダード)|41.2%

    三つの星は、三つの島——バルバドス、ジャマイカ、トリニダード。ホワイトラムの歴史を築いた御三家の原酒を、プランテーションがブレンドした「カリブの白の総集編」です。バルバドスの上品な柔らかさ、ジャマイカの funky なエステル香、トリニダードの軽快なキレ——単独では個性が立ちすぎる三者を、フェランのブレンド技術が一つの調和に編み上げました。しかも一部に熟成酒を含みながら色を濾過で戻すという、白いのに深い、確信犯的な設計。グラスからはバナナと洋梨、微かな蜜とスパイスの香りが立ち、口中では白ラムの常識を超える複雑さが踊ります。ダイキリを組めば、その瞬間に「家のダイキリ」との違いが分かるはず。カクテルの土台でありながら、単体で語れる白——現代ホワイトラムの回答です。

  • Captain Morgan Original Spiced Gold
    キャプテンモルガン(カリブ)|35%

    17世紀カリブ海を荒らし回り、後にジャマイカ副総督にまで上り詰めた実在の私掠船船長、ヘンリー・モーガン。その豪傑の名を戴くキャプテンモルガンは、スパイスドラムという様式を世界に広めた張本人です。バニラを主役に、カラメルとスパイスを効かせた甘く香ばしい味わいは、難しい講釈より「乾杯の楽しさ」に全振りした設計——世界中のパーティーで愛される理由がそのまま味になっています。グラスからは焼きたてのバニラ菓子のような香り、口当たりは35%らしく軽やかで、コーラと合わせた「キャプテン・コーク」は鉄板の一杯。当店ではあえて伊良コーラで組み、船長にクラフトの正装をさせるのが流儀です。海賊の名の酒で、今夜も無礼講を——ただし飲み過ぎは、船長のように島流しにならぬ程度に。

  • Diplomático Reserva Exclusiva Rum
    ディプロマティコ(ベネズエラ)|40%

    「外交官」の名を持つ、甘口ラムの世界王者。アンデス山脈の麓、ベネズエラのラ・ミエル(蜂蜜)という土地で造られるディプロマティコは、その地名通りの蜜のような甘美さで、世界のラム賞を総なめにしてきました。レゼルバ・エクスクルーシバは、銅の単式蒸溜器で仕込んだ重厚な原酒を最長12年熟成させた看板作。グラスからは黒糖とキャラメル、熟したオレンジ、バニラ、チョコレートの豪華な香りが立ち、口中ではデザートのような甘みが、しかし品位を失わずに広がります。この「甘いのに下品でない」絶妙の均衡こそ外交官の名の由縁——誰とでも仲良くなれる社交性です。食後のロックで、葉巻やチョコレートとともに。甘口を毛嫌いしてきた辛口党こそ、一度この外交術に籠絡されてみてください。

  • The Kraken Black Spiced Rum
    クラーケン(カリブ)|47%

    北欧伝承の海の怪物・クラーケン。船を丸呑みにする巨大なイカの墨のように黒い液体と、触腕が絡みつくヴィンテージ調のボトル——ラム界きってのダークヒーローです。中身は見た目の悪戯だけではありません。カリブの糖蜜ラムに、バニラ、シナモン、クローブ、ジンジャーなど11種のスパイスを漆黒の衣として纏わせ、47%というスパイスドラムとしては骨太な度数で仕上げた本格派。グラスからはコーヒーとダークチョコレート、甘いスパイスの深い香りが立ち、口中では黒糖の甘みとスパイスの熱が渦を巻きます。コーラ割り「クラーケン・コーク」は闇夜の定番、A2ミルクと合わせれば「怪物のミルクパンチ」という背徳の一杯に。ラベル買い上等——物語ごと飲む酒の、代表格です。

  • Revolution Spirit Marianne de Paraguay Cask Strength Pure Single Rum
    マリアンヌ・デ・パラグアイ(パラグアイ)|54%

    南米の内陸国パラグアイ——ラムの地図では空白に近いこの国が、実は有機サトウキビの世界的産地であることは、ほとんど知られていません。「マリアンヌ」は、その無垢な大地のキビから生まれるピュアシングルラム(単式蒸溜のみのラム)を、54%のカスクストレングスで瓶詰めした革命的一本。自由の女神マリアンヌの名と「Revolution」の冠は、大産地の寡占に挑む小さな国の気概の表明です。グラスからは、黒糖と熟した果実、大地の土っぽい滋味が力強く立ち、単式蒸溜ならではの厚いボディが54%の熱とともに押し寄せます。加水すれば蜜の甘みが花開く、対話型の骨太ラム。ラム好きほど「パラグアイ?」と身を乗り出す一本——空白地帯の実力を、ぜひその舌で確かめてください。

  • Rum Nation Ilha da Madeira Natural Rum Agricole (Release 2017)
    ラムネイション(イタリア)×マデイラ島(ポルトガル)|50%

    大西洋の真珠、マデイラ島。酒飲みには酒精強化ワインの聖地として名高いこの島は、実はヨーロッパ唯一といえるアグリコールラムの産地でもあります——大航海時代、カリブへ渡る前のサトウキビが最初に植えられた島なのですから、いわばラムの「経由地の祖」。イタリアの目利きボトラー、ラムネイションがこの島の蒸溜所から瓶詰めした本作は、島のキビをジュースのまま蒸溜した正統のアグリコール、50%。グラスからは、青いキビと白い花、そしてどこかマデイラワインを思わせる潮と蜜の気配が立ちのぼります。カリブとも太平洋とも違う、大西洋の孤島の風味——ラム史の失われた環をつなぐ一杯です。世界のアグリコール(マルティニーク・ラオス・伊江島・マデイラ)を巡る当店の航海図の、欧州の寄港地としてどうぞ。

  • Revolution Spirit Marianne de Paraguay Spiced Rum Oak Aged
    マリアンヌ・デ・パラグアイ(パラグアイ)|48%

    マリアンヌのもう一つの顔——オーク樽で熟成させた原酒に、スパイスを重ねた大人のスパイスドラムです。市場の主流スパイスドラムが35%前後の甘い設計であるのに対し、本作は48%という妥協のない度数で、樽とスパイスと素材の三者を対等に組ませました。有機キビ由来の滋味深い甘みを土台に、オーク樽のバニラとタンニン、シナモンやクローブ系の温かいスパイスが幾層にも重なり、甘さに逃げない複雑な陰影を描きます。グラスからは焼き菓子と黒糖、樽の香ばしさ。口中ではスパイスの熱が48%の骨格とともに長く続き、ロックで溶かすほどに表情が変わります。カスクストレングス版との飲み比べで、パラグアイの素顔と正装を——南米の空白地帯は、思いのほか奥行きがあります。

グラッパ・ピスコ・ブランデー

  • Sibona Grappa Riserva in Botti da Sherry
    シボーナ(イタリア・ピエモンテ州)|44%

    グラッパ——ワイン造りで残る葡萄の搾りかす(ヴィナッチャ)を蒸溜する、イタリアの「もったいない」の美学が生んだ蒸溜酒です。バローロやバルバレスコを擁する銘醸地ピエモンテの名門シボーナは、イタリアで最も古い蒸溜免許のひとつを掲げる老舗にして、グラッパを樽で熟成させる「リゼルヴァ」文化の牽引者。本作はシェリー樽で眠らせた一本で、粗野な火酒と誤解されがちなグラッパの、まったく別の顔を見せてくれます。葡萄の花とマスカットの野性的な香りに、シェリー樽由来のレーズンとナッツの甘い衣。口当たりは驚くほど円く、余韻はビターアーモンドが上品に締めます。エスプレッソの後の一杯(アンマッツァカッフェ=コーヒー殺し)というイタリア流の作法で、食後の締めにぜひ。

  • Sibona Grappa Riserva in Botti da Sauternes
    シボーナ(イタリア・ピエモンテ州)|44%

    ソーテルヌ——貴腐ワインの聖地の樽で熟成させた、シボーナの甘露篇です。世界三大貴腐ワインの空き樽には、蜂蜜と杏、貴腐香の記憶が染み込んでおり、その樽でグラッパを寝かせると、葡萄の搾りかすの野性が黄金の甘い衣をまといます。グラスからは、蜂蜜漬けの杏、白い花、微かな貴腐のニュアンスが幾層にも立ちのぼり、口に含めば甘い香りに反してあくまで辛口——「香りは貴腐、味はドライ」という洒落た二重奏が楽しめます。44%の骨格は食後酒として理想的で、ブルーチーズやドライフルーツとの相性は鉄板。シェリー樽・ポルト樽版と並ぶ三部作を順に巡れば、「樽が酒に何を語らせるか」がこれほど分かりやすい教材はありません。カタシモ葡萄華(日本のグラッパ)との日伊比較も、当店ならではの一興です。

  • Sibona Grappa Riserva in Botti da Porto
    シボーナ(イタリア・ピエモンテ州)|44%

    三部作の最終楽章は、ポルト樽。ポルトガルの酒精強化ワイン・ポートの樽は、黒い果実とチョコレートの濃密な記憶を宿し、グラッパに最も艶やかな夜の衣装を着せます。グラスに注げば、琥珀に赤みの差した美しい色合い。香りはダークチェリーとプラム、カカオ、そして葡萄の搾りかす由来の花のような野性が、ポートの甘い残響と溶け合います。口当たりは三部作中もっともリッチで、ビターチョコレートの余韻が長く続く——食後の葉巻や、当店のGOTOGINカカオと並べる「カカオの夜」の締めにも似合う一本です。シェリーの円熟、ソーテルヌの甘露、ポルトの艶——同じ蔵の同じグラッパが、樽ひとつで三人の別人になる。蒸溜酒における「樽の人格」を、ピエモンテの老舗が教えてくれます。

  • La Caravedo Pisco
    ラ・カラベド(ペルー・イカ)|41%

    1684年——南北アメリカ大陸で現存最古と謳われる蒸溜所、アシエンダ・ラ・カラベドの名を継ぐピスコです。ピスコとは、ペルーの砂漠地帯イカで葡萄から造る無色の蒸溜酒。樽熟成をせず、加水すらせず(発酵と蒸溜だけで度数を合わせる)、葡萄の香りを裸のまま瓶に封じる、世界でも稀に見る純粋主義の酒です。本作は伝統の銅釜で単式蒸溜された正統派で、グラスからはマスカットと白い花、ライムの皮の瑞々しい香りが立ち、口当たりは砂漠の夜気のように澄んでいます。真価はピスコサワー——卵白とライム、ビターズで組むペルーの国民的カクテルで、当店でももちろんお作りします。三百四十年の蒸溜所の歴史を、白い泡の下に。南米最古の蒸溜文化を知る、最良の入口です。

  • Demonio de los Andes Pisco Quebranta Tacama
    タカマ(ペルー・イカ)|40%

    「アンデスの悪魔」——16世紀、その勇猛さで先住民に恐れられた征服者カルバハルの異名を冠した、挑発的な名のピスコです。造り手のタカマは1540年代に起源を持つ、南米大陸最古のワイナリー。インカ帝国崩壊の直後から葡萄を植えたこの歴史的農園が、ペルーの基幹品種ケブランタで仕込む一本です。ケブランタは非アロマ系品種——華やかさより、土とバナナと干し草を思わせる滋味深い香りが身上で、ピスコの「素朴で力強い原点」を体現します。グラスからは熟したバナナと焼き土の温かい香り、口中では40%の丸い骨格とともに葡萄の旨みがじんわりと広がります。チルカーノ(ジンジャーエール割り)にすれば、リマの酒場の風が吹く——五百年の農園の悪魔と、気楽に一杯どうぞ。

  • Tres Generaciones Pisco Mosto Verde Torontel
    トレス・ヘネラシオネス(ペルー)|41%

    「モスト・ベルデ(緑のモスト)」——ピスコの最高級製法です。通常は発酵を終えたワインを蒸溜するところを、糖分がまだ残る発酵途中のモストを蒸溜する。つまり、まだ酒になり切っていない贅沢な状態で釜にかけるため、同じ量のピスコを造るのに大量の葡萄を要し、その分、香りは信じがたいほど豊潤になります。本作は三世代(トレス・ヘネラシオネス)の家族が受け継ぐ蔵が、アロマ系品種トロンテルでこの製法に挑んだ一本。グラスからは、ジャスミンとマスカット、白桃の香水のような香りが濃密に立ちのぼり、口当たりは残糖由来の錯覚かと思うほど、とろりと甘やかです(実際は辛口)。よく冷やしたストレートで、香りだけで数分楽しめる一杯。ピスコの頂を知るなら、緑のモストの扉から。

  • Armagnac Napoleon Extra Imperial Quality(Gelas)
    ジェラス(フランス・ガスコーニュ)|40%

    フランス最古のブランデーは、コニャックではありません——アルマニャックです。その歴史は七百年、コニャックより百年以上古く、三銃士ダルタニャンの故郷ガスコーニュの農民たちが守り続けてきた「田舎の貴族」。連続式のアランビック・アルマニャケで一度だけゆっくり蒸溜する製法は、コニャックの二回蒸溜より野趣と旨みを残し、力強く土の香りのするブランデーを生みます。造り手のジェラスは1865年創業の家族経営メゾン。ナポレオン等級の本作は、プルーンと菫、胡桃、なめし革の複雑な香りが幾重にも立ち、40%の口当たりは田舎家の暖炉のように温かい。パリの社交界のコニャック、ガスコーニュの食卓のアルマニャック——後者の、飾らぬ滋味をどうぞ。ダルタニャンの末裔たちの一杯です。

  • Armagnac Saint-Vivant Napoleon
    サン・ヴィヴァン(フランス・ガスコーニュ)|40%

    サン・ヴィヴァンは、16世紀に遡る由緒を掲げるアルマニャックの歴史銘柄。ずんぐりと丸い独特のボトルは「バスク瓶」と呼ばれる伝統の意匠で、その武骨な姿ごとガスコーニュの田園の空気を運んできます。ナポレオン表記は、構成原酒に相応の熟成年数を持つ証。グラスからは、干しプラムとオレンジピール、キャラメル、微かなスミレの香りが立ち、アルマニャックらしい一回蒸溜由来の厚い旨みが、40%の穏やかな度数の中でゆったりと広がります。余韻には胡桃とスパイスの田舎風の温もり。ウイスキーの樽香に慣れた舌には、この「葡萄の蒸溜酒の熟成」が新鮮な発見になるはずです。食後、砂糖なしのコーヒーと交互に——ガスコーニュの農家の夜の流儀で、ゆっくりと。

  • Christian Drouin Calvados Pays d’Auge Pomme Prisonnière
    クリスチャン・ドルーアン(フランス・ノルマンディー)|40%

    瓶の中に、林檎が丸ごと一個——「ポム・プリゾニエール(囚われの林檎)」です。種も仕掛けもあります:春、まだ小指の先ほどの幼果に空瓶をかぶせて枝に固定し、林檎は瓶の中で夏を過ごして育つ。秋、枝から切り離した「瓶入り林檎」に、名門ドルーアンのカルヴァドスを注いで完成——一本一本が果樹園の手仕事の彫刻です。カルヴァドスの聖地ペイ・ドージュ地区の格付けを持つ中身は、林檎のブランデーの王道たる華やかさ。瓶の中の林檎がゆっくりと香りを移し、注ぐたびに果実の気配が濃くなっていきます。グラスからは焼き林檎と蜂蜜、樽のバニラ。物語ごと飲む一杯として、これほど絵になる酒も稀です。ジンの棚のル・ジン(同じドルーアン)と、林檎の親子飲みをぜひ。

  • Calvados Michel Huard 2005
    ミシェル・ユアール(フランス・ノルマンディー)|40%

    大手メゾンではなく、農家のカルヴァドス——ミシェル・ユアールは、ノルマンディーの自家果樹園で林檎を育て、自家のシードルを蒸溜し、自家の樽で熟成させる、生粋のファーム・ディスティラリーです。本作は2005年収穫のヴィンテージもの。ワインのように「その年の林檎」を刻むカルヴァドスは、農家蒸溜ならではの贅沢で、二十年の歳月が若い林檎の酸を、焼き林檎とドライアプリコット、紅茶、湿った樽の複雑な香りへと熟成させました。グラスの中には、ノルマンディーの二十年前の秋がそのまま眠っています。口当たりは角が取れて滑らかで、余韻は林檎の蜜が静かに続く——食後の一杯として、また意外にも当店の干し芋との相性が絶妙です。大量生産が決して持てない「一軒の農家の顔」を、どうぞ。

  • Boulard Calvados Pays d’Auge Grand Solage
    ブラール(フランス・ノルマンディー)|40%

    1825年創業、カルヴァドスを世界に広めた立役者・ブラール。その看板「グラン・ソラージュ」は、最上格付けペイ・ドージュ地区の林檎だけを二回蒸溜し、若い快活な原酒と熟成原酒をブレンドした、カルヴァドス入門にして定番の一本です。グラスからは、かじりたての青林檎の瑞々しさと、焼き林檎のカラメルの甘さが同居する、林檎の二重奏。口当たりは軽やかで、樽のバニラがそっと支え、余韻は爽やかに消えていきます。ストレートはもちろん、ソーダで割った「カルヴァドス・ハイボール」は林檎の香りが弾ける当店おすすめの飲み方。ノルマンディーには食事の途中でカルヴァドスを一杯挟んで胃を整える「ノルマンの穴」という風習があります——尾崎牛膳の折り返しに、その風習をぜひ。

  • Wolfberger Gastronomie Eau-De-Vie Vieille Prune
    ヴォルフベルジェ(フランス・アルザス)|40%

    アルザス——ドイツと国境を接するこの白ワインの聖地は、実はオー・ド・ヴィー(果実蒸溜酒)の都でもあります。キルシュ(さくらんぼ)、フランボワーズ、ミラベル……果樹園の恵みを透明な蒸溜酒に写し取る文化が、この地の食卓には根付いています。名門生産者組合ヴォルフベルジェの本作は、スモモ(プルーン)の蒸溜酒を熟成させた「ヴィエイユ・プリュヌ(古いプルーン)」。無色が基本のオー・ド・ヴィーを樽で寝かせるこの様式は、果実の香りに琥珀の衣を着せる贅沢です。グラスからは、完熟スモモと杏仁、蜂蜜、樽の柔らかな木香。口中では果実の甘酸の記憶がとろりと広がり、余韻は温かく長い。「ガストロノミー」の名の通り、食後のチーズやタルトの傍らで真価を発揮します。アルザスの果樹園の秋を、一杯に。

ワールドウイスキー

  • Waterford Single Farm Origin Lakefield Edition 1.1
    ウォーターフォード蒸溜所(アイルランド)|50%

    「ウイスキーにテロワールは存在するか」——この問いに人生を賭けた男がいます。ブルックラディを再興した風雲児マーク・レイニエ。彼がアイルランドに渡って建てたウォーターフォード蒸溜所は、ワインのドメーヌのように「単一農場」の大麦だけで一回分を仕込み、農場名をラベルに刻むという、ウイスキー史上例のない哲学を実行しました。本作はレイクフィールド農場の大麦だけの一本。土壌、微気候、農家の癖——畑の個性が、モルトの香味にどう写るのか。50%のボトリングから立ちのぼる、蜂蜜とハーブ、麦の厚い旨みには、確かに「この畑だけの顔」があります。別の農場の一本と並べて飲めば、その差は明白——ウイスキーの未来を巡る壮大な実験に、一杯で参加できます。

  • Waterford Biodynamic Luna 1.1
    ウォーターフォード蒸溜所(アイルランド)|50%

    月の満ち欠けに合わせて畑を営む——バイオダイナミック農法。ロマネ・コンティをはじめワインの最高峰が実践するこの月齢農法の大麦だけで仕込んだ、世界初のウイスキーが「ルナ」です。化学肥料も農薬も使わず、牛の角に詰めた堆肥を月のリズムで畑に還す——オカルトと嗤う者もいますが、この農法の畑の土が生命力に満ちることは、多くの銘醸が証明してきました。ウォーターフォードはその大麦をウイスキーにし、「月は麦の酒にも宿るか」と問います。50%の液体からは、野の花と蜂蜜、粘土質の土を思わせる、通常のモルトより一段深く「生きた」香り。答えは飲み手に委ねられていますが、少なくともこの一杯が特別であることに、議論の余地はありません。月の名の下に、乾杯を。

  • Waterford Peated Fenniscourt
    ウォーターフォード蒸溜所(アイルランド)|50%

    アイルランドのピート——スコッチの専売特許と思われがちな泥炭は、実はアイルランドの大地にも豊かに眠っています。ウォーターフォードのピーテッド篇は、フェニスコート農場の大麦をアイルランド産ピートで燻した、「アイリッシュ・テロワールの煙」。アイラ島の海藻質のヨード香とも、北海道の湿原の煙とも違う、アイルランドの内陸のピートは、干し草と土の温かい燻香を纏います。50%のボトリングから立ちのぼるのは、焚き火のスモークの奥の、蜂蜜と青リンゴ、麦の甘み——単一農場主義の解像度は、煙のヴェールの下でも健在です。厚岸・三郎丸・アイラと並べる「世界スモーキー会議」のアイルランド代表として。同じ煙でも、大地が違えば別の言葉を話します。

  • Roe & Co Blended Irish Whiskey
    ロー&コー(アイルランド・ダブリン)|45%

    19世紀、ダブリンには世界最大のウイスキー蒸溜所がありました——ジョージ・ロー社。アイリッシュが世界を制していた黄金時代の巨人は、しかし20世紀の苦難で姿を消します。その伝説の名を、跡地の目と鼻の先——ギネスの醸造所の旧発電所を改装した新蒸溜所で復活させたのが「ロー&コー」です。現代のアイリッシュ復興を象徴するこのブレンデッドは、バーボン樽熟成の原酒を贅沢に使い、45%・ノンチルという本格仕様。グラスからは洋梨とバニラ、ほのかなスパイスの華やかな香りが立ち、口当たりはアイリッシュらしく絹のように滑らかです。カクテルの街ダブリンの新世代らしく、ハイボールでもウイスキーサワーでも輝く設計。失われた巨人の名が、再び世界の棚に並ぶ——その歴史の続きを一杯で。

  • Teeling Single Malt Irish Whiskey
    ティーリング蒸溜所(アイルランド・ダブリン)|46%

    2015年、ダブリンに125年ぶりの新蒸溜所が生まれました——ティーリング。かつて数十の蒸溜所が煙を上げたウイスキーの都に、長い沈黙を破って蒸溜の火を灯し直したこの蔵は、アイリッシュ・ルネサンスの旗手です。シンボルの不死鳥(フェニックス)は、まさにその復活の宣言。本作のシングルモルトは、シェリー、ポート、マデイラ、白ワイン、カベルネ——五種のワイン樽で熟成した原酒を掛け合わせるという、樽使いの魔術師ぶりが光る一本です。グラスからは、ベリーとレーズン、白葡萄、バニラが万華鏡のように入れ替わり立ち、46%・ノンチルの厚い質感が香味を支えます。アイリッシュ=軽い、という先入観を、五つの樽が心地よく粉砕してくれます。不死鳥の翼の色を、グラスの中で。

  • The Dubliner Bourbon Cask
    ザ・ダブリナー(アイルランド)|40%

    「ダブリンっ子」の名を持つ、気取らないアイリッシュです。ダブリンの魂はパブにあり——ギネスの泡と音楽と、ウイスキーの小さなグラスが行き交うあの喧騒の中で、講釈より会話の潤滑油として飲まれるのがアイリッシュの本懐。ザ・ダブリナーはその文化のための設計で、バーボン樽熟成がもたらすバニラとキャラメルの甘い親しみやすさ、40%の軽やかな飲み口、三回蒸溜由来の滑らかさが、実に「話の邪魔をしない」バランスでまとまっています。グラスからは蜂蜜と洋梨の素直な香り、余韻は短く綺麗に。ハイボールやジンジャー割りで乾杯の一杯目に、あるいはギネスと交互にやる「パブの流儀」で。難しい顔をせず、ダブリンの午後のように陽気に——それがこの一本の正しい飲み方です。

  • Domaine des Hautes Glaces Épistémè RØØF24 ★(エトワール)Single Rye
    ドメーヌ・デ・オート・グラス(フランス・アルプス)|50.3%・500ml・有機認証

    フレンチアルプス・トリエーヴ盆地、標高900メートルの有機農園蒸溜所オート・グラスが、大麦ではなくライ麦で語る哲学——「エピステーメ(ギリシャ語で知)」シリーズです。本作★(エトワール=星)は、100%モルテッドライ麦のシングルライ。ドメーヌを象徴する二つの区画(クリマ)「ガベール」と「ヴュルソン」——死火山の斜面とヴェルコールの石灰岩地——のライ麦原酒を複数年分アッサンブラージュし、すべてコニャック樽で熟成させた、シリーズの基準となるキュヴェです。薪直火の二回蒸溜、天然サワードウ酵母、湧水——山の農家の全知が注がれた液体は、黒胡椒と穀物の生命力が渦巻き、ライ麦のスパイスをコニャック樽の白葡萄の甘みが丸く抱きます。フランス版クラフトライの最高峰を、まず「星」から。

  • Domaine des Hautes Glaces Épistémè RØØF24 ■(カレ)Single Rye
    ドメーヌ・デ・オート・グラス(フランス・アルプス)|50.6%・500ml・有機認証

    ★と同じ魂、違う仕上げ——■(カレ=四角)は、RØØF24の基準原酒(ガベール&ヴュルソン両区画のライ麦・コニャック樽熟成)を、最後の5ヶ月だけジュラ地方の黄ワイン(ヴァン・ジョーヌ)樽二樽で仕上げた、「樽仕上げがウイスキーの味に与える影響」を探る実験章です。黄ワインとは、サヴァニャン種を産膜酵母の下で6年以上育てる、胡桃とカレー香を持つフランスの怪ワイン。その樽がライ麦の爆発的なスパイスを飼い慣らし、公式いわく「山が丘に、直角が曲線に、カレーがクリームに」変わる——胡桃、湿った木、黄ワインの吐息が余韻に揺れる、エアリーで滑らかな異色作です。★(コニャックのみ)と並べて飲めば、5ヶ月の樽の仕事が一目瞭然。当店最少単位の垂直試飲を、アルプスの知とともに。

  • Bastille 1789 Hand-Crafted Blended Whisky
    バスティーユ(フランス)|40%

    1789——フランス革命、バスティーユ牢獄襲撃の年を名に掲げた、反骨のフレンチウイスキーです。その革命精神は中身にも貫かれ、「ウイスキーはスコットランドのもの」という旧体制への異議として、フランスの大麦と小麦を仕込み、熟成にはリムーザンオークの新樽やシェリー樽とともに、フランスならではのワイン樽の知恵を注ぎ込みました。グラスからは、蜂蜜とバニラ、白い花、洋梨のコンポートといった、どこか香水の国らしい柔らかく甘い香り。口当たりは40%らしく軽やかで、余韻には微かなスパイスとオークが残ります。ハイボールにすればフレンチらしい華やぎが弾け、食前の一杯にも自然に収まる社交性。自由・平等・博愛——ウイスキーの世界にもその旗を。革命記念日の乾杯には、もちろんこれを。

  • Bellevoye Rose (Finition Prune) Triple Malt Whisky
    ベルヴォワ(フランス)|43%

    フランス各地の三つの蒸溜所のモルトを束ねる「トリプルモルト」という独自様式で、フレンチウイスキーの地位を押し上げたベルヴォワ。色の名を冠したシリーズで知られ、本作「ローズ」はプラム(スモモ)のオー・ド・ヴィー樽でフィニッシュした、その名の通り頬を染めたような一本です。アルザスに息づく果実蒸溜酒の文化(当店のヴィエイユ・プリュヌの世界)を、ウイスキーの熟成に接続する発想は、いかにも美食の国らしい越境。グラスからは、熟したスモモと杏、蜂蜜、微かなアーモンドの甘酸っぱい香りが立ち、モルトの骨格の上で果実の薄衣が揺れます。口当たりは艶やかで、余韻はフルーツタルトの記憶。ウイスキーとオー・ド・ヴィー、フランスの二つの蒸溜文化の握手を、バラ色の一杯で。

  • M&H Elements Single Malt Red Wine Cask
    M&H蒸溜所(イスラエル・テルアビブ)|46%

    聖地にウイスキーが生まれました——イスラエル初の本格蒸溜所、M&H(ミルク&ハニー)。「乳と蜜の流れる地」の聖句から名を取ったテルアビブのこの蒸溜所は、地中海性気候の高温がもたらす超高速熟成を武器に、わずか数年でスコットランドの十年分の樽の仕事を原酒に刻みます。熟成庫の一部は死海のほとり、海抜マイナス400メートル——地球で最も低い熟成庫という規格外の環境も持ち味です。本作はイスラエルの赤ワイン樽で熟成させたエレメンツシリーズの赤。ベリーと黒葡萄、チョコレートの濃密な香りが、若さを感じさせない厚みで立ちのぼり、46%・ノンチルの質感が地中海の陽射しを伝えます。ウイスキーの世界地図の、最も新しい聖地から。

  • Mackmyra Grönt Te Swedish Single Malt
    マックミューラ蒸溜所(スウェーデン)|46.1%

    スウェーデンの森の中、地下35メートルの旧鉱山を熟成庫に使う北欧ウイスキーの雄、マックミューラ。実験精神で知られるこの蒸溜所が日本に捧げた一本が「グロント・テ」——スウェーデン語で「緑茶」です。日本の上質な緑茶で内側を風味付けした特注樽(シーズニング)でモルトを熟成させるという、北欧と日本の茶の湯の前代未聞の茶会。グラスからは、マックミューラらしい洋梨と白い花の透明感ある香りの奥から、ほのかに玉露の旨みと若葉の気配が立ちのぼります。口中では麦の甘みと茶のタンニンが繊細に絡み、余韻は北欧の白夜のように静かで長い。当店の挽き茶ドリンクや季のTEAと並べれば、「茶×酒」の世界サミットが完成します。スウェーデンから日本への、緑色の恋文です。

  • PUNI SOLE The Italian Malt Whisky
    プーニ蒸溜所(イタリア・南チロル)|46%

    イタリアにウイスキー蒸溜所が——それも、アルプスの絶景・南チロルに。プーニ蒸溜所は、赤レンガを格子状に積んだ立方体の建築(それ自体が建築賞級の美しさ)で知られる、イタリア初の本格モルトウイスキー蒸溜所です。ワインとグラッパの国が造るウイスキーの鍵は、やはり樽——本作「SOLE(太陽)」は、シチリアの甘口ワイン、マルサラの樽で熟成させた、その名の通り陽光の一本です。グラスからは、干し葡萄と蜂蜜、アプリコットの甘い香りに、アルプスの冷涼な空気を思わせる透明感が同居。口当たりはイタリアらしく艶やかで、余韻は地中海の夕陽のように温かく続きます。北の山の蒸溜所と南の島の樽——イタリア半島を縦断する一杯を、ドルチェ代わりの食後にも。

  • Kavalan Distillery Select No.1 Single Malt
    カバラン蒸溜所(台湾・宜蘭)|40%

    2015年、世界のウイスキー史が動きました——ワールド・ウイスキー・アワードで、スコットランドでも日本でもなく、台湾のカバランが世界最高のシングルモルトに選ばれたのです。創業からわずか十年足らずの快挙の秘密は、亜熱帯・宜蘭の高温多湿——スコットランドの数倍の速さで進む熟成と、それを制御するブレンダー陣の技術にありました。本作「蒸溜所セレクト」は、その多彩な樽原酒を気軽に楽しむための入口となる一本。トロピカルフルーツ——マンゴーやパパイヤを思わせるカバラン印の熟した香りに、バニラとほのかなスパイスが重なり、40%の柔らかな飲み口でするりと収まります。台湾ジン、そしてこのモルト——雪山山脈の水が生む宝島の実力を、まず一杯から。

  • Kavalan Rhythm of Taiwan Collection – Ocean Single Malt
    カバラン蒸溜所(台湾・宜蘭)|43%

    台湾のリズム——山の鼓動、街の喧騒、そして海のうねり。カバランが故郷・台湾の風景を音楽になぞらえた「リズム・オブ・台湾」コレクションの、海の一章です。蒸溜所のある宜蘭は、雪山山脈と太平洋に挟まれた海辺の平野。夏の台風、冬の湿った海風——その海洋性気候こそ、カバランの急速熟成の指揮者です。本作は、その海の空気の中で育った原酒を、波のように滑らかな43%で仕立てた一本。グラスからは、熟した南国果実とバニラに、微かな潮の気配が重なり、口中ではトロピカルな甘みが波のリズムで寄せては返します。余韻は凪の海のように穏やか。厚岸や桜尾など日本の海辺のモルトと並べる「海のウイスキー比べ」で、同じ潮でも緯度が違えば別の歌になることを、ぜひ。

  • Rittenhouse Straight Rye Whisky Bottled-In-Bond
    ヘヴンヒル蒸溜所(米国ケンタッキー州)|50%

    「ボトルド・イン・ボンド」——1897年、粗悪な偽ウイスキーが横行した時代に米国政府が定めた品質保証法です。単一蒸溜所・単一シーズンの原酒を、政府監督の保税倉庫で4年以上熟成し、正確に50%で瓶詰めする——この厳格な規格を今も守るのが、リッテンハウス・ライです。禁酒法以前のフィラデルフィア様式を受け継ぐこのライウイスキーは、マンハッタンやオールドファッションドの「正しい味」を支える、世界のバーテンダーの共通言語。ライ麦由来の胡椒とハーブのスパイシーな香り、キャラメルの甘み、50%の揺るがぬ骨格——カクテルの中で背筋を伸ばし続ける設計です。当店のブラックマンハッタンの土台としても活躍。百二十年前の品質法が、今夜の一杯を保証します。

  • Russell’s Reserve Single Barrel Kentucky Straight Bourbon
    ワイルドターキー蒸溜所(米国ケンタッキー州)|55%

    ジミー・ラッセルとエディ・ラッセル——ワイルドターキーの父子マスターディスティラーは、二人合わせて実に一世紀を超えるキャリアを持つ、バーボン界の生ける伝説です。その親子の名を冠した「ラッセルズ・リザーブ」のシングルバレルは、父子が自ら選び抜いた一樽をそのまま瓶詰めした、割り水最小限・ノンチルの55%。ケンタッキーの熟成庫の一等地で育った樽だけが持つ、濃密なバニラとキャラメル、焦がしオークの深い甘香ばしさが、樽番号とともにグラスに注がれます。口中ではバーボンの王道の甘みが厚く広がり、ライ麦のスパイスが輪郭を描き、長い余韻へ。樽が違えば味も違う一期一会——「親子百年の目利き」を信じて、まずロックで一杯。バーボンの最深部が、ここにあります。

  • Westland Garryana American Single Malt
    ウエストランド蒸溜所(米国シアトル)|50%

    ギャリアナオーク——学名クエルクス・ギャリアナ。米国太平洋岸北西部にだけ自生する希少な固有種のオークで、ミズナラが日本の宝なら、これはシアトルの宝です。アメリカン・シングルモルトの旗手ウエストランドは、絶滅が危惧されるほど残り少ないこの木を、植林保護と引き換えに樽として使う権利を得て、年に一度だけ「ギャリアナ」を世に送り出します。その香りは、既存のどのオークとも違う——焦がした黒糖、クローブ、燻したメープル、深い森の土。モルトの甘みの上で、太平洋岸の原生林が香りとなって立ち上がります。50%の骨格、ノンチルの厚い質感。ミズナラと飲み比べれば、「土地の木が土地の酒を作る」という真理が、太平洋の両岸から証明されます。シアトルの森の声を、一杯に。

  • Westland Sherry Wood American Single Malt
    ウエストランド蒸溜所(米国シアトル)|46%

    コーヒーとグランジの街シアトルは、実はモルトウイスキーの適地です——冷涼湿潤な海洋性気候はスコットランドと瓜二つで、ワシントン州は米国有数の大麦産地。ウエストランドはその地の利に、五種の焙煎麦芽(ペールからチョコレートモルトまで)を使い分けるという、クラフトビールの街らしい発想を持ち込みました。本作はその多層的なモルトを、スペイン産シェリー樽で熟成させた一本。焙煎麦芽由来のカカオとコーヒーの香ばしさに、シェリー樽のレーズンといちじくが重なり、まるで「ウイスキーになったモカ・シェリーケーキ」。46%の滑らかな口当たりで、甘く、香ばしく、深い。スコッチのシェリー樽と飲み比べれば、麦芽の焙煎という新しい変数の面白さが分かります。シアトル系、ここに極まれり。

  • SirDavis American Whisky
    サーデイヴィス(米国テキサス州)|44%

    オーナーは、ビヨンセ——世界の歌姫が2024年に立ち上げたアメリカンウイスキー、サーデイヴィスです。名の由来は彼女の曽祖父デイヴィス・ホーグ。禁酒法時代、南部で密造ウイスキーを造って家族を養ったという実在の人物で、つまりこのブランドは、セレブの道楽ではなく「一族のウイスキーの血」を四世代目が公式に継いだ物語なのです。中身も本気——ライ麦主体のマッシュビルを、シェリー樽でフィニッシュするという、バーボンともライとも違う独自設計。名門モエ ヘネシーとの共同開発で、グラスからはライのスパイスとシェリーの甘いドライフルーツが二重奏を奏で、44%の艶やかな口当たりが続きます。music界の女王が、曽祖父の密造の記憶を世界最高峰の正装で甦らせた一杯——物語も味も、一級品です。

ブレンデッドスコッチ

  • J.G. Thomson & Co. Rich Blended Malt Scotch Whisky Batch No.03
    J.G.トムソン(スコットランド・エジンバラ)|46.5%

    エジンバラの港町リース。18世紀からこの地でワインとウイスキーを商った歴史的商館J.G.トムソンの名跡を、現代に甦らせたスモールバッチのブレンデッドモルトです。かつて同社が本拠とした石造りの酒蔵「ザ・ヴォルツ」は、今やスコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ(SMWS)の総本山として世界の愛好家の聖地——つまりこのブランドは、スコッチの目利き文化の源流そのものの復活なのです。シリーズは味わいの性格で三分され、本作「RICH」はその名の通り、シェリー樽系の厚い甘みを主題にした一本。ドライフルーツとカラメル、焼き菓子の豊潤な香りが46.5%・ノンチルの質感とともに広がります。産地ではなく「味」で選ばせる現代的な設計——まずは三兄弟の長男から。

  • J.G. Thomson & Co. Smoky Blended Malt Scotch Whisky Batch No.02
    J.G.トムソン(スコットランド・エジンバラ)|46%

    三兄弟の次男は「SMOKY」——煙の章です。アイラ系のピーテッドモルトを軸に据えたブレンデッドモルトで、単一蒸溜所の煙とは違う、複数の煙を編み上げた「スモークのオーケストラ」が持ち味。焚き火の温かい燻香、微かなヨードと潮、その奥から蜂蜜と麦芽の甘みが顔を出し、荒々しさではなく調和の取れた煙として仕上がっています。ブレンデッドモルト(グレーンを含まない、モルト100%のブレンド)というカテゴリは、シングルモルトの個性とブレンデッドの調和の良いとこ取り——リースの商館が三百年磨いた目利きの現代版として、これほど分かりやすい教材はありません。ハイボールにすれば煙が泡とともに立ちのぼる、日常使いのスモーキー。アイラの単独峰に登る前の、美しい裾野です。

  • J.G. Thomson & Co. Sweet Blended Malt Scotch Whisky Batch No.03
    J.G.トムソン(スコットランド・エジンバラ)|46.5%

    末っ子は「SWEET」——甘露の章。バーボン樽系の華やかで甘いモルトを束ねた一本で、蜂蜜、バニラ、洋梨のコンポート、白い花の香りが、46.5%の骨格の上で明るく弾みます。「甘い」といっても糖分の甘さではなく、麦芽と樽が生む香りの甘さ——ウイスキーの甘みの正体を知るのに、これほど適した一本もありません。口当たりは滑らかで、余韻は春の午後のように軽やか。RICH・SMOKY・SWEETの三本を並べて飲めば、ブレンダーが「樽と原酒で味の三原色を描き分ける」様子が一晩で理解できます——当店ではこの三本飲み比べを「リースの授業」と呼んでいます。ウイスキー初心者の方の入口としても、玄人の頭の整理としても優秀な、教科書にして美酒です。

  • Douglas Laing’s The Gauldrons Campbeltown Blended Malt
    ダグラスレイン(スコットランド・キャンベルタウン)|46.2%

    かつて「世界のウイスキー首都」と呼ばれた町があります——キャンベルタウン。最盛期には三十を超える蒸溜所が煙を上げたこの半島の港町は、20世紀の苦難でわずか三蒸溜所にまで衰退し、それゆえ現存モルトは世界中の愛好家が渇望する的となりました。「ゴールドロンズ」は町外れの黒砂の入江の名——嵐の日に魔女が集うと伝わる、荒涼たる浜辺です。名門ボトラーのダグラスレインが、この幻の産地のモルトだけを束ねた本作は、キャンベルタウン特有の「塩とオイルと微かな煙」——ブリニーで少し埃っぽい、港の倉庫のような独特の香味を46.2%・ノンチルで封じています。スプリングバンク系の味わいを探す方への、現実的で美味な回答。魔女の浜辺の潮風を、一杯に。

  • Douglas Laing’s The Gauldrons Limited Edition Finished in Sherry Casks
    ダグラスレイン(スコットランド・キャンベルタウン)|50%

    魔女の浜辺に、シェリーの緋色の外套を——ゴールドロンズの限定版は、キャンベルタウンモルトのヴァッティングをシェリー樽で追熟させ、50%で瓶詰めした重装備の一本です。キャンベルタウン特有の塩気とオイリーな骨格に、シェリー樽由来のレーズンと黒糖、胡桃の甘い衣が重なると、まるで「港町の冬の夜」——潮風の冷たさと、暖炉の甘い温もりが同居する味わいが生まれます。50%の度数は香味の密度をそのまま伝え、加水すればドライフルーツの層がゆっくりとほどけていきます。通常版と並べて飲めば、シェリー樽という「衣装」が同じ人物をどう変えるかが一目瞭然。幻の産地×限定仕上げという二重の希少性も、バーで出会う価値そのものです。嵐の夜に、ぜひこの一杯を。

  • Douglas Laing’s Scallywag Aged 10 Years Speyside(100% Sherry Cask Matured)
    ダグラスレイン(スコットランド・スペイサイド)|46%

    ラベルには、片眼鏡のフォックステリア——「スキャリーワグ(腕白小僧)」の名の通り、ダグラスレイン家で代々飼われてきた悪戯者のテリアたちに捧げられた、遊び心あふれるスペイサイド・ブレンデッドモルトです。しかし中身は悪戯どころか正統も正統、マッカランやグレンロセスを擁する銘醸地スペイサイドのモルトを、100%シェリー樽熟成・10年で束ねた本格派。グラスからは、レーズンとクリスマスケーキ、オレンジピール、ビターチョコレートの豊潤な香りが立ち、46%・ノンチルの厚い質感が口中を満たします。シェリー樽好きが値札を二度見する納得のコストパフォーマンス——高騰する単一蒸溜所シェリー系の、最も賢い代替案です。悪戯な犬の顔に油断して、深い一杯にやられてください。

  • The Mime Aged 9 Years(Lowland Blended Malt by Whisk-e)
    ウィスク・イー(スコットランド・ローランド)|67.6%

    67.6%——本リストでも屈指のハイプルーフを、静かな道化「マイム(無言劇)」が携えてきました。日本のウイスキー輸入の名門ウィスク・イーが手掛けたローランドのブレンデッドモルト9年で、言葉を発さぬパントマイムの名は、「語るのはラベルではなく液体そのものであれ」という意思表明でしょう。ローランドといえば軽やかで穏やかな産地の代名詞ですが、樽出しに近いこの度数では話が別——花と蜂蜜、レモンカードの上品な香味が、圧倒的な濃度で押し寄せます。原液の一口目は火の踊り、数滴の加水で突然、草原の花畑が開く——この劇的な変化こそハイプルーフの醍醐味です。穏やかな産地の、最も雄弁な沈黙。加水のさじ加減という無言劇を、カウンターでご一緒に。

  • Scarabus Islay Single Malt Scotch Whisky
    ハンターレイン(スコットランド・アイラ島)|46%

    「スカラバス」——アイラ島の古地図に残る地名で、古ノルド語で「岩だらけの場所」を意味するとされます。名門ボトラーのハンターレインが、蒸溜所名を伏せてリリースするこのシングルモルトは、いわば「覆面のアイラ」。どの蒸溜所か明かされないミステリーが、かえって愛好家の推理欲を掻き立てる仕掛けです。中身は紛れもなく正統のアイラ——焚き火のピートスモーク、消毒薬めいたヨード、潮の飛沫、その奥に蜂蜜と洋梨の甘み。46%・ノンチルの厚い質感で、アイラの文法を一通り語ってくれます。有名蒸溜所の同格品より手の届く価格も美点で、ハイボールで惜しみなく煙を楽しめるのが嬉しいところ。さて、正体はどこの蒸溜所か——ラフロイグやアードベッグと並べて、推理の一杯をどうぞ。

  • Compass Box The Story of The Spaniard Blended Malt
    コンパスボックス(スコットランド)|43%

    スコッチ界の異端児にして芸術家、ジョン・グレイザー率いるコンパスボックス。蒸溜所を持たず、ブレンドの設計だけで世界を唸らせるこの工房の一本が「スペイン人の物語」です。主題はその名の通りスペイン——シェリー樽に加え、スペイン産赤ワインの樽で熟成したモルトを重ね、イベリアの太陽をブレンドの絵筆で描きました。グラスからは、赤い果実とオレンジの皮、シナモン、革の香りが幾層にも立ち、43%の口当たりはリオハの午後のように温かく艶やか。コンパスボックスの流儀通り、レシピの構成比は公開されており、「ブレンドは秘伝ではなく作曲である」という思想がラベルにまで貫かれています。ワイン好きに捧げるスコッチとして、当店のスペインワインと並べて一夜の物語を。

  • Compass Box The Spice Tree Blended Malt
    コンパスボックス(スコットランド)|46%

    スコッチ史に残る「事件」の主役です。2005年、コンパスボックスは樽の内側に追加のフレンチオーク材を仕込む革新的熟成でこのスパイスツリーを生み、絶賛を浴びました——が、業界団体SWAが「伝統的製法に非ず」と販売停止を通告。世界の愛好家が抗議する騒動の末、ジョン・グレイザーは規則の範囲内で同じ思想を実現する新設計(フレンチオークの新しいヘッドを持つハイブリッド樽)を編み出し、スパイスツリーを甦らせました。つまりこの一本は、伝統と革新の闘争の生きた記念碑です。味わいは名の通り、シナモンとクローブ、ジンジャーのスパイスが立体的に香り、ハイランドモルトの蜂蜜の甘みを鮮やかに彩ります。規則が変えられなかった味を、ぜひ歴史ごと。

  • Chivas Regal Crystal Gold Spirit Drink
    シーバスリーガル(スコットランド)|40%

    1801年、スコットランド・アバディーンの高級食料品店から始まったシーバス兄弟の物語は、英国王室御用達を経て、「贅沢なスコッチ」の代名詞となりました。クリスタル・ゴールドは、その名の通り煌めきを主題にした特別ボトル——蜂蜜色の液体と光を弾く意匠は、シーバスが得意としてきた「祝祭のウイスキー」の系譜です。中身はシーバス伝統の、スペイサイドモルトを核とした滑らかで芳醇なスタイル。蜂蜜とりんご、バニラ、ヘーゼルナッツの甘やかな香りが、40%の絹のような口当たりとともに広がります。ロックで艶やかに、ハイボールで華やかに——乾杯の席の中央に置きたくなる一本です。二百年前の食料品店の兄弟が磨いた「おもてなしの味」を、金色の光とともに。

  • Chivas Regal Mizunara Aged 12 Years Special Edition
    シーバスリーガル(スコットランド)|40%

    スコッチの名門が、日本に恋をした一本です。シーバスリーガル・ミズナラは、世界の大手スコッチとして初めて日本原産の水楢(ミズナラ)樽フィニッシュを採用した記念碑的ボトル——マスターブレンダーのコリン・スコットが日本のウイスキー文化と職人技への敬意を込めて設計し、日本市場のために生み出しました。12年熟成のシーバスらしい蜂蜜と熟した果実の滑らかな甘みに、ミズナラ樽由来の伽羅や白檀を思わせるオリエンタルな残香がふわりと重なり、スコットランドと日本が一つのグラスの中で礼を交わします。ハイボールにすると和の香りが立ちのぼり、和食との相性はスコッチ随一。イチローズMWRや山崎と並べる「ミズナラの東西比較」は、当店ならではの楽しみです。

  • Chivas Regal Takumi Reserve Aged 12 Years Spirit Drink
    シーバスリーガル(スコットランド)|40%

    「匠——TAKUMI」。日本の職人精神をそのまま名に戴いた、シーバスの日本讃歌第二章です。ミズナラで日本の樽に敬意を示したシーバスが、本作では日本の「手仕事の哲学」そのものを主題に、選び抜いた原酒を丁寧に磨き上げました。12年熟成の原酒が持つ蜂蜜と洋梨、りんご蜜の甘い香りに、和栗や白檀を思わせる繊細なニュアンスが寄り添い、40%の口当たりはどこまでも静かで滑らか——派手さを削ぎ、余白で語る設計は、確かに日本の美意識の翻訳です。スコットランドの名門が海の向こうから日本の職人に贈った礼状を、日本のバーで読む——この構図自体が一献の趣。ミズナラ版との「日本オマージュ飲み比べ」で、名門の解釈の違いをぜひ。

  • Chivas Regal Aged 12 Years Old Blended Scotch
    シーバスリーガル(スコットランド)|43%

    シーバスリーガル12年の、43%版——実はこの度数の違いが、通の語り草です。現行の主流40%に対し、主に免税店などで流通した43%仕様は、わずか3%の差が香味の密度と余韻の長さにはっきりと表れる、いわば「濃い口のシーバス」。ストラスアイラをはじめとするスペイサイドモルトの心臓部は同じでも、輪郭の太さが一段違います。グラスからは蜂蜜と完熟りんご、ヘーゼルナッツ、バニラの芳醇な香りが、40%版より一歩前に出て立ち、口中ではクリーミーな甘みが厚く長く続きます。40%版と並べて飲む「3%の実験」は、度数という設計思想を体感できる格好の教材——ウイスキーの度数表記を見る目が、この一晩で変わります。同じ名前の、少し背の高い兄をどうぞ。

  • Chivas Regal Aged 12 Years Blended Scotch
    シーバスリーガル(スコットランド)|40%

    世界のバーの棚で、百年以上「スムースの基準」であり続けるブレンデッド——シーバスリーガル12年です。心臓部は、スペイサイドの銘蒸溜所ストラスアイラのモルト。1938年のニューヨークで「贅沢の帰還」を掲げてデビューして以来、フランク・シナトラが愛飲したことでも知られ、20世紀の社交界の琥珀色を染め続けました。蜂蜜と熟したりんご、バニラ、ナッツの丸い香り、絹のような口当たり、優しく長い余韻——「ブレンデッドの完成形」と呼ばれる均整は、今日も色褪せません。ハイボール、ロック、水割り、どの飲み方でも崩れない懐の深さは、まさに社交の酒。シーバス5種を揃える当店では、この定番を起点に、ミズナラ・匠・43%・クリスタルへと「シーバス山脈」を縦走できます。まず麓の一杯から。

  • The Deacon Blended Scotch Whisky
    ザ・ディーコン(スコットランド)|40%

    漆黒の缶のような異形のボトル、覆面の人物のラベル——「ディーコン(執事長)」は、スコッチの世界に現れたダークヒーローです。中身はアイラとスペイサイド、二つの対極を大胆に組んだピーテッドブレンド。アイラの煙とヨードが前衛を張り、スペイサイドの蜂蜜と果実が奥で微笑む、光と影の二重奏です。グラスからは焚き火のスモークとダークチョコレート、オレンジピールの香りが立ち、40%ながら煙の輪郭はくっきりと濃い。ハイボールにすれば「気軽に飲める本格スモーキー」として抜群の実力を発揮し、ジンジャーエール割り(スモーキー・マミー)も似合います。ラベル買い上等、しかし中身で二度驚く——ミステリアスな執事の給仕で、今夜は煙の晩餐を。

シングルモルトスコッチ

アイラ・アイランズ

  • Bruichladdich The Classic Laddie
    ブルックラディ蒸溜所(アイラ島)|50%

    ターコイズブルーのボトルが目印の、アイラの異端児にして良心——ブルックラディ。「煙の島」アイラにありながら、旗艦のこの一本はあえてノンピート。1881年のビクトリア朝の設備を今も手回しで動かし、「私たちは蒸溜業者ではなく農業者だ」と宣言して、スコットランド産大麦のトレーサビリティに執着する、テロワール主義の総本山です(ウォーターフォードのマーク・レイニエが再興した蒸溜所、といえば当店の棚は一周つながります)。50%・ノンチルの液体からは、大麦の花と蜂蜜、青リンゴ、微かな潮の香り。煙がない分、アイラの水と麦と海風の「素の声」が聞こえます。煙の前に、まず島の素顔を——アイラ入門の正しい一歩目です。

  • Bruichladdich Islay Barley 2013
    ブルックラディ蒸溜所(アイラ島)|50%

    アイラ島で、アイラの大麦を育て、アイラで蒸溜する——当たり前に聞こえて、実は革命です。スコッチの大麦の大半は本土や海外の大規模農場産で、島の蒸溜所が島の畑と結び直すこの試みは、ブルックラディの農業宣言の実践そのもの。本作は2013年収穫、島の契約農家の大麦だけで仕込んだヴィンテージで、ラベルには農場名まで刻まれます。潮風を浴びて育つアイラの大麦は収量こそ少ないものの、オイリーで滋味深い個性を原酒に授け、グラスからは麦の厚い甘み、干し草、白い花、そして畑まで届く海の気配が立ちのぼります。50%の骨格でその「島の畑の声」を克明に。クラシック・ラディとの飲み比べで、大麦の産地という最後の変数を確かめてください。ワインの世界がウイスキーに追いついてきた——その最前線です。

  • Bruichladdich Micro-Provenance Single Cask #0884
    ブルックラディ蒸溜所(アイラ島)|60.2%

    「マイクロ・プロヴナンス」——微小な来歴。ブルックラディのテロワール哲学を極限まで煮詰めると、行き着く先は「一つの畑、一つの樽」です。このシリーズは、大麦の農場・品種・収穫年・樽の種類と番号まで、一樽のすべての来歴を開示するシングルカスク——本作は樽番号0884、60.2%のカスクストレングスです。ブレンドという調停を経ない一樽の声は、良くも悪くも剥き出しで、だからこそ雄弁。麦の蜜、樽由来の香味、潮の気配が、圧倒的な濃度で押し寄せ、一滴の加水ごとに別の表情を見せます。同じシリーズでも樽が違えば別の酒——二度と再現されない一期一会は、ワインでいう単一区画の垂直試飲に匹敵する体験です。アイラのテロワールの最小単位を、樽番号ごと記憶に。

  • Lagavulin Aged 8 Years
    ラガヴーリン蒸溜所(アイラ島)|48%

    ラガヴーリンの「若さ」は、弱さではありません——本作8年は、蒸溜所200周年(2016年)を記念して生まれ、あまりの人気に定番へ昇格した一本です。着想の源は19世紀の記録——当時の高名な酒類研究家がラガヴーリンを訪れ、絶賛したのが「8年熟成」だったという史実。つまりこれは、ヴィクトリア朝の飲み手が愛したラガヴーリンの復元なのです。16年の円熟に対し、8年は煙が若く鋭い——焚き火の生きた煙、灰、レモン、麦芽の甘みが、48%の度数とともに鮮烈に駆け抜けます。円熟の帝王と、疾走する若武者。同じ蒸溜所の8年と16年を並べて飲む「ラガヴーリンの時間旅行」は、熟成という魔法の正体を教えてくれる、当店随一の煙の授業です。

  • Lagavulin Aged 16 Years
    ラガヴーリン蒸溜所(アイラ島)|43%

    アイラの帝王——ラガヴーリン16年に与えられた称号に、異を唱える者はいません。島の南岸、廃城ダニヴェッグを望む小さな湾で、ゆっくりと蒸溜され、16年の歳月をかけて煙と甘みを完璧な均衡へ導いたこの一本は、スモーキーウイスキーの「終着駅にして玄関」です。グラスからは、正露丸と評されるヨードとピートの濃密な煙、その奥から現れる干し葡萄と黒糖の甘み、潮、紅茶、なめし革——幾層もの香りが、43%の circular な口当たりとともに、驚くほど長い余韻へと続きます。初めての一口は衝撃、二口目は理解、三口目には帰依——世界中の愛好家が辿った道です。ストレートで、時間をかけて。アイラという島の存在理由を、一杯で説明できる酒です。

  • Bowmore Aged 15 Years Golden & Elegant
    ボウモア蒸溜所(アイラ島)|43%

    1779年創業、アイラ最古の蒸溜所ボウモア。島の中央、海に突き出すように立つその熟成庫「No.1ヴォルツ」は海面より低く、二百年以上、波の音とともに樽を育ててきました。ボウモアの立ち位置は「アイラの中庸」——ラフロイグほど荒ぶらず、ブルックラディほど穏やかでない、煙と華の均衡です。本作15年「ゴールデン&エレガント」はその名の通り、シェリー樽の黄金の甘みを主題にした一本で、熟したプラムとダークチョコレート、蜂蜜の艶やかな香りに、ボウモア印の上品なスモークが薄絹のように掛かります。43%の口当たりは滑らかで、余韻は琥珀の名にふさわしく長い。煙が怖い方の「最初のアイラ」として、これほど優雅な招待状はありません。

  • Bowmore Aged 21 Years(カモメラベル)
    ボウモア蒸溜所(アイラ島)|43%

    通称「カモメラベル」——湾の上を海鳥が舞う旧デザインのボウモア21年は、現行品ではもう出会えないオールドボトルです。この時代のボウモアが特別視される理由は、原酒の世代——かつてのボウモアには、トロピカルフルーツと評される伝説的な果実香を宿す原酒が眠っており、その残照が長期熟成品には色濃く残るのです。21年の歳月とさらに瓶の中の年月が磨いた液体からは、熟したパッションフルーツとピーチ、蜂蜜、上品な潮とスモーク、古い書物のような気配が立ちのぼります。43%の口当たりは時間だけが作れる丸さ。海鳥のラベルとともに失われた時代のアイラを、グラス一杯で旅する——オールドボトルバーとしての当店の面目躍如たる一本です。在庫限り、どうぞお早めに。

  • Laphroaig Aged 10 Years
    ラフロイグ蒸溜所(アイラ島)|40%

    「愛するか、憎むか(Love it or hate it)」——蒸溜所自らが広告に掲げた、世界で最も好みが分かれるウイスキーです。薬品、正露丸、消毒液、海藻——初対面の人が口にする形容は散々ですが、この強烈なヨードと煙の向こう側にある蜂蜜の甘みに気づいた瞬間、人はラフロイグの虜になります。英国王室も陥落済み——チャールズ国王が皇太子時代に自ら御用達の勅許を与えた、王のアイラです。蒸溜所は今も自家製床モルティングを守り、島のピート層から手掘りした泥炭で麦芽を燻します。10年はその哲学の入口にして本丸。40%ながら煙の存在感は圧倒的で、ロックでもハイボールでも「ラフロイグを飲んだ」という事実だけが残ります。愛か、憎か——審判の一杯を。

  • Ardbeg Ten
    アードベッグ蒸溜所(アイラ島)|46%

    「ピーティーでありながら、パラドキシカルに甘い」——アードベッグTENを語る世界共通の定型句です。アイラ島南岸、キルダルトン海岸の最果てに立つこの蒸溜所は、一度は閉鎖の憂き目を見ながら1997年に復活し、熱狂的信者集団「アードベッグ委員会」(世界数十万人)を率いる煙のカリスマとなりました。TENはその不動の旗艦。50ppmを超えるヘビーピートの薫香が、タールと焚き火、燻製ベーコンの野性で襲いかかる——かと思えば、その中心にはライムと洋梨、バニラの透き通った甘さが澄んでいる。この暴力と繊細の同居こそ、アードベッグの発明です。46%・ノンチルの厚い質感で、煙の甘さという矛盾を、ぜひ体験として。委員会への入会は、一杯目から始まります。

  • Ardbeg Smoketrails Côte Rôtie Edition
    アードベッグ蒸溜所(アイラ島)|46%

    「煙の軌跡」——スモークトレイルズは、アードベッグの煙が世界の銘醸ワインの樽と出会う旅のシリーズです。本作の行き先は、北ローヌの急峻な段々畑、コート・ロティ——「焼けた丘」の名を持つシラーの聖地。黒胡椒とスミレ、ベーコンの香りで知られるこの赤ワインの樽は、考えてみればアードベッグの燻香と血縁のような相性です。バーボン樽原酒にコート・ロティ樽熟成原酒を重ねた液体からは、ピートスモークの奥に黒胡椒と赤い果実、スミレの艶やかな気配が立ちのぼり、「煙のシラー」とでも呼びたい官能が生まれています。46%の骨格で、島の煙と丘の陽射しの対話を。ワイン好きをアイラへ、アイラ好きをローヌへ——双方向の架け橋です。

  • Ardbeg Smokiverse
    アードベッグ蒸溜所(アイラ島)|48.3%

    「スモーキバース」——煙の宇宙。アードベッグが得意とする、SF的な世界観の限定リリースです。この蒸溜所は真面目な顔で突拍子もないことをやる——原酒を宇宙ステーションに送って微小重力熟成を実験した前科(世界初)すらある、煙の科学者集団です。本作はその実験精神の延長線上で、糖化温度など製造条件の変数を動かし、「煙の新しい銀河」を探索した一本。グラスからは、アードベッグ印のタールと焚き火の煙に、麦芽の香ばしいビスケット香、クリーミーな甘みがいつもと違う軌道で重なり、48.3%の推進力で長い余韻へと飛行します。限定ゆえ、出会えた時が搭乗のチャンス。TENを地球とすれば、これは観測気球——煙の宇宙の広さを、一杯で。

  • Port Charlotte Heavily Peated Aged 10 Years
    ブルックラディ蒸溜所(アイラ島)|50%

    ノンピートの旗を掲げるブルックラディが、煙を焚くとどうなるか——答えがポートシャーロットです。名は蒸溜所近くの小さな村から。40ppmのヘビーピート麦芽を、ヴィクトリア朝の設備でゆっくり蒸溜し、島の空気で10年熟成——「農業者の造るスモーキー」は、他のアイラ勢と明確に違う顔をしています。煙は焚き火よりも、燻した麦と土の温かさ。その奥にブルックラディ譲りの麦の蜜、柑橘、花の気配が透けて見え、50%・ノンチルの厚い質感が全体を支えます。荒々しさではなく「品のある煙」——ラフロイグの野性、アードベッグの甘い暴力と並べれば、アイラの煙の三様が一晩で見渡せます。村の名を冠した煙の紳士を、まずはストレートで。

  • Octomore Edition 16.1 / 14.1 / 16.2 / 16.3
    ブルックラディ蒸溜所(アイラ島)|58.1〜61.6%

    世界で最もピーティーなウイスキー——オクトモアです。一般的なアイラモルトのフェノール値が50ppm前後のところ、オクトモアは100〜300ppm超という規格外の煙を、あえてわずか5年前後の若さで瓶詰めする「超新星」シリーズ。番号には文法があり、.1はスコットランド大麦×バーボン樽の基準形、.2はワイン樽等の実験形、.3はアイラ島産大麦のテロワール形——当店には14.1、16.1、16.2、16.3と四つの星が揃い、垂直・水平の飲み比べが可能です。驚くべきは、数値の暴力に反して味わいが「澄んでいる」こと。突き抜けた煙の中心に、麦の蜜と花とレモンが静かに輝く——限界の先の透明を、ぜひ。世界最強の煙は、世界一繊細な煙でもありました。

  • Talisker Aged 10 Years
    タリスカー蒸溜所(スカイ島)|45.8%

    「メイド・バイ・ザ・シー」——海が造るウイスキー。霧の島スカイの荒々しい海岸に立つタリスカーは、宝島の作者スティーヴンソンが「酒の王」と詩に詠んだ、島モルトの代名詞です。10年はその不動の看板。グラスからは、潮の飛沫と焚き火の煙、燻した麦芽の香りが立ち、口に含むと蜂蜜の甘みが広がった後、タリスカー印の「黒胡椒の爆発」——ペッパリーと呼ばれる痺れるスパイスが喉の奥で弾けます。45.8%という独特の度数も伝統の証。嵐の海を一口で再現するこの劇的な構成は、牡蠣に一滴垂らす英国流の愉しみ方でも知られます。当店なら海老の塩麹塩辛と——海のモルトには、海の肴を。スカイ島の断崖の風を、グラスの中に。

  • Talisker x Parley Wilder Seas
    タリスカー蒸溜所(スカイ島)|48.6%

    「より野生の海へ」——タリスカーが海洋保護団体パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズと組んだ、海への恩返しの一本です。売上は海の保全活動を支え、ボトルは再生素材——「海が造るウイスキー」を名乗る蒸溜所の、筋の通った社会声明でもあります。中身も特別で、タリスカー初のXOコニャック樽仕上げ。荒海の黒胡椒と煙に、コニャック樽由来の白葡萄と蜂蜜、洋梨の艶やかな甘みが重なり、いつものタリスカーが夜会服を着たような優雅さをまといます。48.6%の骨格はそのままに、余韻は波が引いた後の砂浜のように長く静か。美味しい一杯が、遠い海の珊瑚を守る——飲む理由がもうひとつ増える、現代のウイスキーの美しい形です。

  • Talisker Aged 8 Years Special Release
    タリスカー蒸溜所(スカイ島)|59.7%

    年に一度、ディアジオ社が蔵の奥から放つ限定「スペシャルリリース」——本作はその一員として登場した、タリスカー8年のカスクストレングスです。59.7%、ほぼ樽出しのままの嵐——若さと高濃度が掛け算されたタリスカーは、定番10年の劇的さをさらに増幅した、波飛沫の直撃のような体験です。グラスからは、燻した麦と潮、灰、レモンの鮮烈な香りが立ち、口中では黒胡椒の痺れが火花のように弾け、蜂蜜の甘みがそれを追いかけます。一滴の加水で香りの波がほどけ、二滴目で別の海流が現れる——度数との対話が、これほど楽しい一本も稀です。限定ゆえの一期一会。定番10年と並べて、「同じ海の、凪と時化」をぜひ。

  • The Six Isles Voyager
    イアン・マクロード社(スコットランド)|46%

    六つの島を、一つのグラスで巡る——「シックス・アイルズ」は、アイラ、ジュラ、スカイ、マル、アラン、オークニー、スコットランドの六島のシングルモルトをヴァッティングした、島巡りの航海図のようなブレンデッドモルトです。手掛けるのは老舗イアン・マクロード社。「ヴォイジャー(航海者)」の名を持つ本作は、その島々の原酒を束ね、46%・ノンチルで瓶詰めした一本で、アイラの煙、オークニーのヘザー蜂蜜、スカイの胡椒、アランの果実——各島の方言が一つの会話に編まれています。グラスの中で、どの香りがどの島か推理する楽しみは、さながら舌の上のクルーズ。単一の島に深く潜る前の全体地図として、島モルト入門の最初の一杯にも最適です。六島周遊の船旅へ、錨を上げて。

  • Islay Mist The Original Peated Blend
    アイラミスト(スコットランド)|40%

    1922年、アイラ島の領主の館で、若き当主の21歳の祝宴が開かれました。地元のラフロイグだけでは客人に強すぎる——そこで本土の華やかなモルトと融け合わせた祝いのブレンドが誂えられ、「アイラの霧」と名付けられました。それがアイラミストの誕生譚です。以来百年、このブレンドは「アイラの煙を、誰の口にも優しく」という使命を守り続けてきました。ラフロイグ由来のヨードとスモークが霧のように薄くたなびき、その向こうでスペイサイド系の蜂蜜と果実が微笑む——40%の軽やかな設計は、ハイボールで真価を発揮します。ラフロイグ原液が「愛か憎か」なら、こちらは万人への優しい招待状。祝宴生まれの煙を、今夜の乾杯に。

  • Elements of Islay Cask Edit
    エリクサー・ディスティラーズ(アイラ島)|46%

    ラベルはまるで化学の周期表——「エレメンツ・オブ・アイラ」は、アイラ島の蒸溜所を元素記号風の暗号(Lp、Ar、Bwなど)で表記する、ロンドンの目利き集団エリクサー・ディスティラーズの遊び心あふれるシリーズです。本作「カスク・エディット」はその常設編で、複数のアイラ蒸溜所の原酒を、シェリー樽の甘みを効かせて編集(エディット)したヴァッテッドモルト。焚き火の煙と潮に、レーズンとダークチョコレートの甘い衣が重なる「甘い煙」の設計は、アイラ好きの日常酒として計算し尽くされています。46%・ノンチルの厚みでハイボールにも強く、単一蒸溜所の限定品に疲れた夜の、信頼できる帰り道。さて、この一杯の「元素」はどこの島の何か——周期表を眺めながらの一献を。

ハイランド・スペイサイド他

  • Glenfiddich Our Original Twelve (Aged 12 Years)
    グレンフィディック蒸溜所(スペイサイド)|40%

    世界で最も飲まれているシングルモルト——グレンフィディック12年です。しかしこの「王者」の本質は、反逆にあります。1963年、ブレンデッド全盛の時代に、グラント家は業界の嘲笑を浴びながら「シングルモルトを単体で世界に売る」という前代未聞の賭けに出ました。今日、私たちがシングルモルトという言葉を当たり前に使えるのは、この鹿の谷(グレンフィディック)の決断のおかげです。創業1887年から五代、今も家族経営を貫く独立自尊の蔵。三角瓶の中身は、洋梨と青リンゴの瑞々しい果実香、蜂蜜と麦芽の優しい甘み、微かなオークの薫り——「シングルモルトの標準時」と呼ぶべき均整です。すべてのモルトの旅は、この一杯から始まります。当店では旧ボトル2本との三世代比較も。

  • Glenfiddich Pure Malt Special Old Reserve(Old Bottle)
    グレンフィディック蒸溜所(スペイサイド)|43%

    ラベルには「ピュアモルト」——現行では使われなくなった、昭和〜平成初期の表記をまとう旧ボトルです。シングルモルトという言葉が世界標準になる以前、グレンフィディックは自らを「ピュアモルト」と名乗って世界を開拓していました。この一本は、その開拓時代の生き証人。中身は当時の原酒——今より旧式の設備、違う樽事情、違う時代の酵母で造られたフィディックであり、さらに数十年の瓶内熟成が角を丸め、蜂蜜と熟した洋梨、古い書斎のような落ち着いた香りへと育っています。43%という当時の度数も現行と異なる注目点。現行12年と並べて飲めば、世界一のシングルモルトが歩んだ半世紀の道のりが、二つのグラスの間に見えてきます。ラベルの文字ごと味わう、時間のウイスキーです。

  • Glenfiddich Ancient Reserve Aged 18 Years(Old Bottle)
    グレンフィディック蒸溜所(スペイサイド)|43%

    「エンシェント・リザーブ」——古の蓄え。現行ラインナップから姿を消した旧18年の名で、グリーンの三角瓶に金の鹿が輝く、オールドファン垂涎のボトルです。18年という熟成年数に、さらにボトルの中で重ねた歳月——つまりこの液体は、蒸溜から数えれば半世紀近い時間を宿しています。オールドボトルのフィディックが愛される理由は、当時のシェリー樽の質の高さ。現代よりも潤沢だった良質なシェリー樽由来の、レーズンとオレンジピール、蜜蝋、微かな古酒めいた艶が、瓶内熟成のまろみと溶け合い、現行品では再現不可能な「古き良きスペイサイド」の風格を湛えます。鹿の谷の三世代(現行12年・ピュアモルト・本作)を並べる垂直試飲は、当店のオールドボトル文化の真骨頂です。

  • Arran Signature Series Edition 3 Duero Discovery
    アラン蒸溜所(アラン島)|50%

    「スコットランドを一島に凝縮した島」と呼ばれるアラン島。1995年、島に150年ぶりに合法蒸溜所として誕生したアラン蒸溜所は、クラフト世代スコッチの先駆けです(そして当店的には、Motoki蒸研の元木ヨイチ氏がスチルマンを務めた蔵——京都のジン棚と海を越えてつながります)。本作はマスターディスティラーの署名を冠したシグネチャーシリーズ第3弾「ドゥエロ・ディスカバリー」。スペインの銘醸地リベラ・デル・ドゥエロの赤ワイン樽で仕上げた一本で、アランらしい柑橘と麦芽の明快な酒質に、テンプラニーリョ由来の黒い果実とスパイス、ほのかなタンニンが艶やかに重なります。50%の骨格で、島とイベリアの対話を克明に。発見(ディスカバリー)の名に足る一杯です。

  • Glenmorangie The Original Aged 10 Years
    グレンモーレンジィ蒸溜所(ハイランド)|40%

    キリンの首よりも高い——グレンモーレンジィのポットスチルは高さ5.14メートル、スコットランド最長です。この長い首を、最も軽やかな蒸気だけがよじ登って原酒になる——モーレンジィの代名詞である「完璧な繊細さ」の秘密がここにあります。仕込み水は、石灰質のミネラルを豊かに含む聖なる泉ターロギー。硬水仕込みは軟水主流のスコッチでは異色で、この水が花と柑橘の気品ある香味を支えます。オリジナル10年は、その美学の原点。バーボン樽熟成による、バニラと白桃、シトラス、蜂蜜の澄んだ香りが、絹の口当たりとともに広がります。「造り手たちの完璧主義者」を自称する蔵の、完璧な入口——ハイランドのエレガンスの教科書として、まず一杯。

  • Glenmorangie The Lasanta Aged 12 Years
    グレンモーレンジィ蒸溜所(ハイランド)|43%

    「ラサンタ」——ゲール語で「温もりと情熱」。オリジナルの繊細な原酒を、スペインの太陽の下で育ったオロロソとペドロヒメネス、二種のシェリー樽で仕上げた、モーレンジィの赤い章です。同蔵は「樽仕上げ(ウッドフィニッシュ)」を世界に広めた立役者——バーボン樽で骨格を作り、個性的な樽で最後の衣を着せるこの技法は、1990年代のモーレンジィの発明的功績でした。ラサンタはその王道のシェリー篇で、レーズンと蜂蜜漬けの胡桃、オレンジチョコレート、シナモンの温かい香りが、持ち前の繊細さを失わずに重なります。口当たりは滑らかで、余韻は暖炉のようにじんわりと長い。冬の夜の一杯目に、名前の意味ごとどうぞ。

  • Glenmorangie Nectar D’Or(Sauternes Cask Finish)
    グレンモーレンジィ蒸溜所(ハイランド)|46%

    「黄金の蜜」——ネクター・ドール。貴腐ワインの頂点ソーテルヌの樽で仕上げた、モーレンジィのデザートのような一本です。ソーテルヌ樽には、貴腐菌が濃縮した蜂蜜と杏の甘い記憶が染み込んでおり、モーレンジィの繊細な原酒がそこで数年眠ると、レモンタルトとクレームブリュレ、白い花、ジンジャーの気品ある甘香が幾重にも花開きます。46%・ノンチルの厚い質感も相まって、口の中はまるで貴婦人のティータイム。本作はソーテルヌ表記のある旧仕様のボトルで、リニューアル後の現行「ネクター」と並べれば、同じ蜜の名を持つ新旧の設計思想を比較できます。甘口ワイン好きへの最高の橋渡しであり、食後の一杯の完成形。黄金の蜜の名に、偽りはありません。

  • Glenmorangie The Nectar Aged 16 Years
    グレンモーレンジィ蒸溜所(ハイランド)|46%

    ネクター・ドールの系譜を継ぎ、16年熟成へと深化した現行「ザ・ネクター」。デザートワイン樽仕上げの甘美な設計はそのままに、熟成年数を重ねることで、甘さの奥の陰影——蜂蜜の底に沈む洋梨のコンポート、白胡椒、蜜蝋、微かな塩キャラメル——が一段と立体的になりました。旧ネクター・ドール(当店に在庫あり)との飲み比べは、リニューアルの意図を舌で読む格好の機会です。46%の骨格は健在で、とろりとした口当たりから、長く甘やかな余韻まで、一貫して「黄金の蜜」の世界観を貫きます。挽き茶のジャパニーズオールドファッションドの後、甘い流れのまま二杯目に——そんな夜の設計にも似合う、ハイランドの菓子職人の仕事です。

  • Glenmorangie The Quinta Ruban Aged 14 Years Port Cask Finish
    グレンモーレンジィ蒸溜所(ハイランド)|46%

    「キンタ」はポルトガルの葡萄農園、「ルバン」はゲール語でルビー——ポートワイン樽仕上げの名手モーレンジィが、その二つの言葉を紡いだ赤い宝石です。ドウロ川流域の酒精強化ワイン・ポートの樽は、黒い果実とチョコレートの濃密な記憶を持ち、モーレンジィの繊細な原酒14年に、ビロードのような深い衣を着せます。グラスからは、ダークチョコレートとミント、熟したプラム、クルミの複雑な香り。口中ではシルクとベルベットが交互に現れ、46%・ノンチルの厚みが余韻を長く支えます。シリーズ中最も「夜更け向き」の一本で、葉巻やビターチョコとの相性は鉄板。ルビー色の黄昏を、グラスの中に。ポート樽入門としても最良の教材です。

  • Glenmorangie Extremely Rare Aged 18 Years
    グレンモーレンジィ蒸溜所(ハイランド)|43%

    「エクストリームリー・レア」——極めて稀なる18年。モーレンジィの正規ラインの頂点に立つこの一本は、バーボン樽で15年育てた原酒の一部をオロロソシェリー樽へ移し、さらに3年——合計18年の歳月をかけて編み上げられます。若い頃の花と柑橘の繊細さが、18年の熟成で蜂蜜と杏、ナッツ、白檀の円熟へと昇華し、シェリー由来のドライフルーツが陰影を添える——ハイランドエレガンスの完成形です。43%の口当たりはどこまでも滑らかで、余韻は静かに、しかし驚くほど長く続きます。オリジナル10年から始まった蔵の物語の、現時点の到達点。人生の節目の夜、キリンの首の蒸溜器が18年かけて届けた手紙を、ゆっくりと開封してください。

  • Highland Park Dragon Legend
    ハイランドパーク蒸溜所(オークニー諸島)|43.1%

    スコットランド最北の蒸溜所、ハイランドパーク。オークニー諸島は8世紀からヴァイキングが支配した土地で、蒸溜所は今もノルウェー神話の意匠を掲げ、「ヴァイキングの魂」を名乗ります。本作ドラゴン・レジェンドは、北欧伝承の竜をテーマにした一本。オークニーのピートは樹木のない島ゆえヘザー(ヒース)の花が主成分で、アイラの薬品的な煙とはまったく違う、蜂蜜を燻したような甘くフローラルなスモークを生みます。竜の名の通り、通常品よりスモーキーに振った設計で、焚き火とヘザー蜜、ダークチョコレート、ドライフルーツが43.1%の骨格の上で舞います。アイラの煙、厚岸の煙と並べる「世界スモーキー会議」の北欧代表——竜の吐息は、意外にも甘いのです。

  • Old Pulteney Aged 12 Years
    オールドプルトニー蒸溜所(ハイランド北部・ウィック)|40%

    「海のモルト」——オールドプルトニーの代名詞です。蒸溜所のある最北の港町ウィックは、19世紀、世界最大のニシン漁基地として千隻の船がひしめいた海の町。蒸溜所は町とともに生き、樽は潮風の中で眠り、原酒は海の気配を宿します。ユニークなのはポットスチルの形——初留器の頭頂部が切り落とされたような珍しい形状で、これが独特のオイリーで厚い酒質を生みます。12年はその看板。蜂蜜とりんご、麦芽の甘みに、はっきりとした塩気とミネラルが重なる味わいは、「北のマンサニージャ」とも評される個性です。牡蠣や貝、当店なら海老の塩麹塩辛と合わせれば、海と海が呼応します。潮の効いたハイボールも絶品——漁師町の琥珀を、海の肴と。

  • The Glenlivet Aged 14 Years Cognac Cask Selection
    グレンリベット蒸溜所(スペイサイド)|40%

    「すべてはここから始まった」——1824年、密造が横行するスペイサイドで、ジョージ・スミスは政府公認蒸溜所の第一号免許をあえて取得しました。裏切り者と密造者たちに命を狙われ、二丁の拳銃を懐に蒸溜を続けた男の蔵が、今日「シングルモルトの原点」グレンリベットです。本作14年は、その端正な原酒をコニャック樽で仕上げた一本。リベット川の谷の花と青リンゴの気品に、コニャック樽由来の白葡萄と蜂蜜、トフィーの甘い衣が重なり、40%の口当たりはどこまでも優雅です。フランスの葡萄とスコットランドの麦——二大蒸溜文化の握手を、拳銃で守られた谷の酒で。オートグラスのコニャック樽ライ(★)との「コニャック樽つながり」の飲み比べも一興です。

  • The Glenlivet Aged 18 Years Batch Reserve
    グレンリベット蒸溜所(スペイサイド)|40%

    グレンリベットの熟成の真価が立ち上がる、18年バッチリザーブ。複数のオーク樽——アメリカンオークとヨーロピアンオークのファーストフィルを含む——の原酒を、バッチごとに丁寧に束ねた長期熟成の柱です。若いリベットの代名詞である花と青リンゴの香りは、18年の歳月で熟した洋梨とオレンジ、蜂蜜、ナッツ、上品なオークスパイスの重奏へと深化し、「谷の気品」はそのままに、風格という名の厚みが加わります。40%の口当たりは絹のごとく、余韻はスペイ川の流れのように静かで長い。密造の谷の一匹狼が、二世紀かけて辿り着いた円熟——スペイサイドの正統の18年として、特別な夜の軸に据えたい一本です。

  • Cragganmore Aged 12 Years
    クラガンモア蒸溜所(スペイサイド)|40%

    「スペイサイドで最も複雑な香り」——公式にそう謳われる通人の蔵、クラガンモアです。創業者ジョン・スミスは19世紀屈指の蒸溜天才と呼ばれた男で、鉄道輸送にいち早く目をつけ、蒸溜所を鉄道脇に建てた実務家でもありました(本人は巨漢すぎて客車のドアを通れず、荷物車で移動したという愛すべき逸話つき)。彼が設計した平らな頭のポットスチルは今も現役で、軽い蒸気だけを選び取り、幾層もの香りを紡ぎます。グラスからは、花と蜂蜜、麦芽、微かな煙、ハーブ、ナッツ——確かに一言で括れない香りの万華鏡。40%の穏やかな度数で、その複雑さを静かに語ります。派手さはないが、飲むほどに深い——バーの止まり木の、玄人の定位置です。

  • Strathearn The Heart(Douglas Laing’s New Make Spirit Drink)
    ストラサーン蒸溜所(パースシャー)|63.5%

    「ザ・ハート」——蒸溜の心臓部。ポットスチルから流れ出る蒸溜液のうち、頭(ヘッド)と尾(テール)を切り捨てて、最良の中心部だけを集めた部分を「ハート」と呼びます。本作は、スコットランド最小級の職人蒸溜所ストラサーン(現ダグラスレイン傘下)のニューメイク——樽に入る前の透明な原酒を、63.5%のハートのまま瓶詰めした、いわば「ウイスキーの設計図」です。グラスからは、蒸したての麦の甘い湯気、洋梨のエステル、花の蜜——樽の化粧を一切まとわない、蒸溜技術の裸の実力が香ります。日本の新道や亀田のニューポットと並べれば、「熟成前の個性」の国際比較という、マニア垂涎の遊びが完成します。ウイスキーの誕生の瞬間を、心臓の鼓動のままに。

  • That Boutique-y Whisky Company Dufftown Aged 10 Years Batch 7
    ブティックウイスキー社(スコットランド)|47.8%

    漫画のラベルに、真剣な中身——「ザット・ブティッキー・ウイスキー・カンパニー」は、蒸溜所や業界人をコミックタッチで描いた遊び心満点のラベルで知られる英国のボトラーです。しかしラベルに騙されてはいけません。少量バッチで瓶詰めされる中身は、目利きが選んだ本格派ばかり。本作は「ウイスキーの首都」を自称する町ダフタウン——シングルトンの故郷でもある——の蒸溜所の10年原酒を、47.8%で瓶詰めしたバッチ7です。麦芽の厚い甘みと熟した果実、樽のスパイスが、加水を最小限に留めた度数でくっきりと立ち、公式ボトルとは違う「素顔のダフタウン」を見せてくれます。ラベルの漫画の意味を推理しながら飲む一杯——ボトラーズ文化の楽しさの、最良の入口です。

  • The Glenrothes Select Reserve
    グレンロセス蒸溜所(スペイサイド)|43%

    丸い薬瓶のようなボトルに、手書き風のラベル——グレンロセスは、その独特の佇まいごと愛される「玄人のスペイサイド」です。町の教会墓地の隣という立地から「幽霊の出る蒸溜所」の異名を持ち、マッカランと並びシェリー樽文化の担い手として、ブレンダーたちから最高級の評価を受けてきました。セレクトリザーブは、ヴィンテージ主義のこの蔵が「年号を超えた家の味」として設計したノンヴィンテージ。シェリー樽由来のレーズンとオレンジピール、バニラ、シナモンが、ロセスらしい絹の質感の中で調和します。43%の端正な骨格、長く甘い余韻——派手な限定品の喧騒の外で、静かに美味い。バーの棚の「信頼」という言葉を瓶にしたような一本です。

  • The Balvenie Aged 12 Years DoubleWood
    バルヴェニー蒸溜所(スペイサイド)|40%

    自家農場で大麦を育て、床モルティングを守り、樽職人と銅器職人を蒸溜所内に抱える——「五つの手仕事」をすべて自前で貫く、スコッチ最後の総合工房がバルヴェニーです(グレンフィディックの隣、同じグラント家の蔵)。ダブルウッドはその代名詞。バーボン樽で約12年育てた原酒を、最後の数ヶ月だけヨーロピアンオークのシェリー樽へ移す「二つの木」の設計で、樽仕上げ文化の古典的名作となりました。蜂蜜とバニラの柔らかな土台に、シェリー由来のドライフルーツとナッツ、シナモンが上品に重なり、40%の口当たりは蜜のよう。手仕事の温度がそのまま味になったような、誠実の一杯です。ウイスキー好きへの贈り物の定番である理由が、一口で分かります。

  • The Macallan Aged 12 Years Sherry Oak Collection
    マッカラン蒸溜所(スペイサイド)|40%

    「シングルモルトのロールスロイス」——マッカランに与えられた称号です。その王座を支えるのが、本作シェリーオーク。マッカランはスペインに自前の樽調達網を持ち、森の選定から木材の乾燥、シェリー酒での樽育成まで数年がかりで「専用のシェリー樽」を誂える、業界随一の樽への投資で知られます。小さなポットスチルが生む濃厚な原酒を、そのシェリー樽だけで12年——レーズンとオレンジ、ドライいちじく、ジンジャー、ウッドスモークの艶やかな香りが、ビロードの口当たりとともに広がります。オークションで史上最高額を更新し続ける伝説のブランドの、正統の入口。世界中で品薄が続く今、グラス一杯で王道を体験できるのはバーの特権です。シェリー樽の帝王に、まず謁見を。

  • Edradour Aged 12 Years Caledonia Selection
    エドラダワー蒸溜所(ハイランド・ピトロッホリー)|46%

    かつて「スコットランド最小の蒸溜所」を名乗った、白壁に赤い扉のおとぎ話のような蔵——エドラダワーです。19世紀の農家の蒸溜風景をほぼそのまま残し、数人の職人が手作業で仕込む年間生産量は、大手の数日分。それゆえほとんどがシングルモルトとして直接ファンに届く、幸福な小ささです。本作「カレドニア」は、スコットランドの古称を冠したセレクション。歌手ドゥーガル・マクリーンの望郷の名曲「カレドニア」に捧げられた一本で、オロロソシェリー樽熟成による、レーズンと黒蜜、クルミの温かい甘みが46%・ノンチルの厚い質感で広がります。小さな蔵の、大きな郷愁——バグパイプの代わりに、この一杯を。

  • The Singleton of Dufftown Aged 12 Years
    シングルトン・オブ・ダフタウン蒸溜所(スペイサイド)|40%

    「世界で最も飲みやすいシングルモルト」を目指して設計された、現代の優等生——シングルトンです。舞台は「7つの蒸溜所の町」ダフタウン。豊かな水と大麦に恵まれたウイスキーの首都で、ゆっくりとした発酵と蒸溜、ヨーロピアンオークとアメリカンオークの掛け合わせにより、渋みや刺激を徹底的に排した「滑らかさの設計」が貫かれています。グラスからは焼きりんごとカスタード、黒糖、ナッツの丸い香り。口当たりは名前の通りシングル(唯一)級の滑らかさで、余韻まで角が一切ありません。ウイスキーの第一歩に、強い酒が苦手な方の再入門に、そして飲み疲れた夜の優しい着地に——「飲みやすさ」は、立派な芸術です。

  • The Singleton of Dufftown Aged 18 Years
    シングルトン・オブ・ダフタウン蒸溜所(スペイサイド)|40%

    優等生が、深みを獲得するとどうなるか——シングルトン18年は、その答えです。12年で完成された「滑らかさの設計」に、さらに6年の歳月が重なると、丸さの中に陰影が生まれます。熟したプラムとドライアプリコット、キャラメリゼした洋梨、はちみつトースト、微かなオークスパイス——甘やかな香味の解像度が一段上がり、余韻には長期熟成だけが持つ静かな深さが宿ります。40%の飲みやすさは健在ゆえ、するすると飲めてしまうのに、グラスを置くたび香りの残像が続く——この「優しいのに記憶に残る」均衡こそ18年の仕事です。12年との親子飲み比べで、6年という時間の価値を測るのも一興。スペイサイドの首都の、円熟の午後をどうぞ。

  • Celtic Revival Single Malt Scotch Whisky
    スコットランド|46%

    「ケルティック・リバイバル」——ケルト文化復興。19世紀末、産業化の波の中で失われゆくケルトの言語や意匠、詩を甦らせようとした文化運動の名を戴くシングルモルトです。渦巻き紋様(ケルティックノット)に象徴されるケルトの美学は、始まりも終わりもなく永遠に絡み合う線——ウイスキーづくりにおける、大麦と水と時間の 永遠の循環とどこか響き合います。中身は蒸溜所名を伏せたスコットランドのシングルモルトで、46%・ノンチルの本格仕様。麦芽の蜜と熟した果実、オークの落ち着いた薫りが、ハープの旋律のように静かに重なります。ラベルの紋様を辿りながら、ケルトの霧の向こうの正体を推理する一杯——文化ごと味わう、夜の教養です。

  • Darkness Aged 8 Years Finished in Sherry Casks
    ダークネス(スコットランド)|47.8%

    「闇」を名乗る、漆黒のシェリー爆弾です。ダークネスの秘密は、樽の小ささ——通常の1/5ほどしかない小型のシェリー・オクタブ樽を特注し、原酒と樽の接触面積を極大化することで、短期間に通常の何倍ものシェリーの色と香味を叩き込みます。8年熟成ながら、グラスに注がれる液体は夜のような深い琥珀。レーズンとブラックチェリー、ダークチョコレート、クローブ、焦げた糖蜜——シェリー樽の要素だけを蒸留したような濃密さが、47.8%の度数とともに雪崩れ込みます。上品な熟成美とは対極の、確信犯的な過剰——しかし夜更けのカウンターでは、この闇がたまらなく美味い瞬間があるのです。マッカランの気品と並べて、シェリーの「光と闇」をぜひ。

  • &Girls Tobermory Distillery
    &Girls(日本のボトラーズ)×トバモリー蒸溜所(マル島)|53.5%

    「&Girls(アンドガールズ)」——日本の女性たちが立ち上げた、新世代のインディペンデントボトラーです。ウイスキーの目利きと瓶詰めは長く男性中心の世界でしたが、彼女たちは自らの感性で樽を選び、日本の飲み手へ届ける活動で注目を集めています。本作が選んだのは、マル島の港町の蒸溜所トバモリー。色とりどりの家々が並ぶ絵本のような湾で造られるこのモルトは、麦芽の厚い旨みとオイリーな質感、微かな潮とハーブの気配が身上です。53.5%のカスクストレングス級で瓶詰めされた一樽は、島の素顔を克明に伝え、加水のたびに果実の層がほどけます。選び手の物語ごと味わう、日本発ボトラーズ文化の最前線——女性たちの眼が見つけた島の一樽を、ぜひ。

  • &Girls A Secret Speyside Distillery Aged 12 Years
    &Girls(日本のボトラーズ)×シークレット・スペイサイド|63%

    63%——本リスト最高峰クラスの度数を、覆面のスペイサイドが携えてきました。「シークレット・ディスティラリー」とは、契約上蒸溜所名を明かせない樽のこと。しかし有名蒸溜所の原酒が驚くべき価格と度数で手に入る、ボトラーズ文化の醍醐味でもあります。&Girlsが選んだこの12年は、樽出しそのままの63%。スペイサイドらしい蜂蜜と熟した果実の甘みが、圧倒的な濃度で押し寄せ、一滴の加水ごとに花が開くように香りがほどけていきます。さて、正体はどこか——味の記憶を頼りに、マッカランか、グレンロセスか、それとも……と推理する時間こそ、この一本の最高の肴です。日本の女性ボトラーの目利きと、覆面の名門の実力。二重の物語を63%で。

  • Royal Cabinet Aged 20 Years Limited Edition Blended Scotch
    スコットランド|44.9%

    「ロイヤル・キャビネット」——王家の飾り棚。その名にふさわしく、20年以上熟成した原酒だけで構成された、限定の長期熟成ブレンデッドです。ブレンデッドウイスキーの真の贅沢は、実は年数表記にあります。表記年数は「構成原酒の最も若いもの」を示すため、20年表記のブレンデッドとは、モルトもグレーンもすべてが20年超——大手の定番では実現困難な、原酒在庫の蕩尽なのです。グラスからは、蜂蜜漬けのドライフルーツ、蜜蝋、古い家具のような上品なウッディネス、微かなシトラスが立ち、44.9%の絶妙な度数が円熟の香味を克明に伝えます。口当たりはどこまでも滑らかで、余韻は貴族の晩餐の後のように長い。20年の歳月を、飾り棚から一杯だけ拝借する夜を。

  • Roseisle Aged 14 Years Special Release 2023(Natural Cask Strength)
    ローズアイル蒸溜所(スペイサイド)|55.9%

    2009年、スペイサイドに30年ぶりの大型新蒸溜所が誕生しました——ローズアイル。ディアジオ社が最新鋭の設備を投じた「未来の蒸溜所」は、長らくブレンデッド用原酒の供給基地としてベールの向こうにありましたが、2023年、年に一度の限定「スペシャルリリース」で初めて本格的にシングルモルトの姿を現しました。本作はその記念すべき14年、加水なしのナチュラルカスクストレングス55.9%。クリーンで果実味豊かな設計思想がそのまま香味になり、白桃と洋梨、バニラカスタード、微かなモルトの香ばしさが、高濃度の透明感とともに立ちのぼります。21世紀生まれの蒸溜所の「初めての自己紹介」——歴史の1ページ目を、樽出しの度数で目撃してください。

  • The Oceans Limited Edition 2015 Aged 10 Years Single Cask
    スコットランド|59.6%

    「ジ・オーシャンズ」——海の名を戴く、2015年蒸溜・10年熟成のシングルカスクです。一つの樽から生まれる数百本だけの限定瓶詰めは、ブレンドによる均質化を経ない「原酒の一人称」。59.6%というほぼ樽出しの度数が、その個性を一切薄めずに伝えます。グラスからは、麦芽の厚い蜜と熟した果実、樽のスパイスが高濃度で立ちのぼり、口中では波のように押し寄せる香味が、加水のたびに引いては新しい層を見せます。シングルカスクの楽しみは、この「一樽との対話」——同じ銘柄の別の樽とは二度と同じ味にならない、海の一期一会です。ボトルが空けば、この味は地上から消える。限定という言葉の本来の重みを、59.6%の潮流とともに。

  • Meikle Tòir The Sherry One Aged 5 Years Peated Speyside
    グレンアラヒー蒸溜所(スペイサイド)|48%

    現代スコッチ最高の錬金術師——ビリー・ウォーカー。ベンリアック、グレンドロナックを次々と復活させ、グレンアラヒーを世界最高賞へ導いた伝説のマスターブレンダーが、2023年に立ち上げたピーテッド専門の新ブランドが「メクル・トゥール(ゲール語で大きな丘)」です。スペイサイドでピートを焚くという選択自体が挑戦的ですが、本作「シェリー・ワン」はさらに、その煙をオロロソとPXのシェリー樽で包み込む二重の野心作。わずか5年の熟成ながら、ウォーカー印の樽マジックにより、焚き火の煙とレーズン、ダークチョコレート、黒糖が驚くほど熟れた調和を見せます。48%・ノンチルの厚い質感で、「煙×シェリー」の醍醐味を凝縮。巨匠の最新章を、リアルタイムで。

  • Secret Highland Distilleries Collection Aged 9 Years
    スコットランド・ハイランド|52.6%

    覆面レスラーのようなウイスキー——「シークレット・ハイランド」です。契約上名を明かせないハイランドの蒸溜所の9年原酒を、52.6%のハイプルーフで瓶詰めしたボトラーズもの。名を伏せる代わりに、有名蒸溜所の原酒が驚くほど良心的な条件で楽しめる——ボトラーズ文化が生んだ、飲み手に有利な「秘密」です。グラスからは、ハイランドらしい蜂蜜とヘザー、熟したりんご、麦芽の香ばしさが力強く立ち、52.6%の度数が産地の輪郭をくっきりと描きます。加水すれば果実の層がほどけ、正体のヒントがまた一つ増える——グレンモーレンジィ系の繊細か、それとも北部の骨太か。答え合わせのできない推理こそ、この一杯の遊びです。ハイランドの地図を思い浮かべながら、どうぞ。

  • Signatory Vintage Mannochmore 2012 Aged 11 Years(100 Proof Edition #13)
    シグナトリー社×マノックモア蒸溜所(スペイサイド)|57.1%

    シグナトリー・ヴィンテージ——1988年創業、エドラダワー蒸溜所を傘下に持つ、世界で最も信頼されるボトラーのひとつです。本作はその人気シリーズ「100プルーフ・エディション」の第13弾。英国旧式の酒精度数「100プルーフ」=57.1%という歴史的度数で統一された、飲み応えと価格良心を両立する企画です。選ばれたのはマノックモア——ブレンド用原酒の供給元として知られ、シングルモルトでは滅多に出会えない「隠れたスペイサイド」。2012年蒸溜・11年熟成の原酒は、青リンゴと白い花、レモンカード、麦芽の蜜が57.1%の密度で立ち、加水とともに柔らかくほどけます。ボトラーの目利きが照らす、名脇役の主役回——スペイサイドの奥座敷へ、ようこそ。

日本と世界のリキュール

  • Campari(カンパリ)
    カンパリ(イタリア・ミラノ)|25%

    1860年、ミラノ。バーテンダーのガスパーレ・カンパリが完成させた真紅のビターリキュールは、以来百六十年、イタリアの夕暮れそのものになりました。レシピは今も極秘——ビターオレンジをはじめ数十種のハーブとスパイスの調合を知る者は、世界でほんの一握りといわれます。この「甘くて、苦い」二律背反こそカンパリの発明で、食欲を目覚めさせるアペリティーボ(食前酒)文化の心臓として、ネグローニ、スプモーニ、カンパリソーダの背骨を担い続けてきました。グラスに透ける緋色、オレンジと薬草の複雑な苦香、キレのある余韻——当店では和製ビターのAKA-ONI ROSSOと並べ、「赤い苦味の伊日対決」もお楽しみいただけます。ミラノの黄昏を、東麻布の夜に一杯。

  • Kahlúa The Original Coffee Liqueur
    カルーア(メキシコ)|20%

    コーヒーリキュールの代名詞——カルーア。1936年、メキシコ・ベラクルスで生まれたこの黒い液体は、火山性土壌で育つアラビカ種コーヒーとサトウキビのスピリッツを重ねた、中米の恵みの結晶です。カルーアミルクという「入口のカクテル」で世界中の乾杯デビューを支えてきた国民的存在ですが、その実力はバーでこそ本領を発揮します——エスプレッソマティーニの土台として、ホワイトルシアンの魂として、ティラミス的な夜の甘い設計の要として。焙煎コーヒーの香ばしさ、バニラとカラメルの甘み、20%の扱いやすさ。当店ではA2ミルクで作るカルーアミルクが密かな名物で、伊勢屋のカフェアマーロと飲み比べれば、「コーヒーの酒」の系譜が一晩で辿れます。原点にして現役の王者です。

  • Kahlúa Matcha Coffee Liqueur
    カルーア(メキシコ)|20%

    コーヒーの王者が、日本の茶室の扉を叩きました——カルーア抹茶です。メキシコ生まれのコーヒーリキュールが抹茶をまとうという発想は、世界のカフェシーンで抹茶ラテが定番化した時代の必然でもあり、「MATCHA」が国際語になった証でもあります。グラスからは、抹茶の青くまろやかな香りとコーヒーの焙煎香が意外なほど美しく重なり、口中では茶のほろ苦さとカラメルの甘みが溶け合います。ミルク割り「抹茶カルーアミルク」は、もはや飲む和菓子。当店なら挽茶堂のさえみどりのラテと並べて、「本物の挽き茶」と「世界が解釈した抹茶」を飲み比べる一興も——日本茶文化が海を渡り、リキュールになって帰ってきた里帰りの一本として、面白がっていただきたい存在です。

  • Chartreuse Cuvée des Meilleurs Ouvriers de France Sommeliers
    シャルトリューズ(フランス・ヴォワロン)|45%

    世界で最も神秘的なリキュール——シャルトリューズ。1605年に修道会へもたらされた「不老長寿の霊酒」の処方箋を起源に、アルプスの奥深くカルトジオ会の修道士たちが、130種の薬草の調合を四百年守り続けています。完全なレシピを知るのは、今もわずか二人の修道士のみ——彼らは同じ飛行機に乗らないという伝説まであるほどです。本作はその聖なる緑酒の、さらに特別なキュヴェ。フランス最優秀職人章(MOF)を持つソムリエ協会のために誂えられた45%の特別版で、通常品より深い熟成と複雑さを湛えます。ハーブ、蜂蜜、ミント、スパイス——百三十の植物が奏でる香りの大聖堂を、まずはストレートで。カクテル「ラストワード」の魂でもある、液体の世界遺産です。

  • Seedlip Garden 108 Distilled Non-Alcoholic Spirits
    シードリップ(英国)|0.00%

    「飲まない時、何を飲むか問題」を世界で初めて解決した発明——シードリップです。2015年、英国の農家の青年ベン・ブランソンが、17世紀の蒸溜書に着想を得て生み出した世界初の蒸溜ノンアルコールスピリッツは、ソバーキュリアス時代の扉を開けた歴史的一本となりました。「Garden 108」の数字は、農園でエンドウ豆を播種から収穫まで育てる108日間に由来。えんどう豆、干し草、スペアミント、ローズマリー、タイム——英国の庭の緑をそのまま蒸溜した香りは、青々と、清々しく、確かに「スピリッツの顔」をしています。トニックで割れば、アルコール0%のジントニック体験が完成。ハンドルキーパーの夜も、休肝日も、グラスの品格は譲らない——現代のバー文化の必需品です。

  • NEMA Original Botanical Water
    NEMA(日本)|0.00%

    日本の感性で編まれたノンアルコール・ボタニカルウォーター「NEMA」。シードリップが英国の庭なら、こちらは日本の野山——和のハーブと柑橘の繊細な香りを、アルコールを介さずに抽出した、飲む香りの水です。ノンアルコールの難しさは、アルコールという「香りの運び手」を使えないこと。それでも立ち上がる香りには、素材と抽出への相当な執念が要ります。グラスからは、和柑橘とハーブの澄んだ香りが涼やかに立ち、口当たりは軽く、後味は驚くほど綺麗。トニックやソーダで割れば、ノンアルの和風ジントニックとして食中にも寄り添います。GINNIEのコーディアル群、シードリップと並ぶ当店のノンアル布陣は、「飲まない人が妥協しない店」の宣言です。0%にも、選ぶ楽しみを。

  • Togouchi Coffee Liqueur
    サクラオB&D(広島県廿日市市)|18%

    桜尾ジンとSAKURAOウイスキーの蔵、サクラオB&Dのウイスキーブランド「戸河内(とごうち)」——その名を冠したコーヒーリキュールです。戸河内といえば、旧国鉄の未成線トンネルを熟成庫に転用した「トンネル貯蔵」で知られる銘柄。年間を通じて温度が安定する山中のトンネルで眠るウイスキーの世界観を、コーヒーの深煎りの香ばしさと重ねた本作は、ウイスキー蔵らしい大人の甘さ控えめ設計が身上です。グラスからは焙煎豆の香ばしい香りとカラメル、微かなウイスキーの気配。ロックでビターに、ミルクで柔らかく、そしてSAKURAOジンと合わせた広島産エスプレッソマティーニは、当店の「桜尾づくし」の締めの一杯として密かな人気です。トンネルの闇の静けさを、黒い一杯に。

  • 35 Sango Liqueur AWAMORI COFFEE Sugarless
    南都(沖縄県)|12%

    「35」と書いて「サンゴ」——沖縄の海の珊瑚を名に戴くコーヒーブランドのリキュール版です。35コーヒーの豆は、風化した珊瑚の化石で焙煎するという世界唯一の製法。遠赤外線効果でふっくらと焼き上がる豆は、まろやかで香ばしい独特の風味をまといます。さらに売上の一部は珊瑚の再生活動へ——飲むことが海を守ることにつながる、沖縄らしい美しい循環の一本です。本作はその珊瑚焙煎コーヒーを泡盛と合わせ、あえてシュガーレスで仕上げた辛口設計。甘さに頼らない分、コーヒーの香ばしさと泡盛の米の旨みが裸で向き合い、食後酒として、またロックで「甘くないカフェタイム」として大人の顔を見せます。泡盛コーヒー三種(久米仙・請福・35)の飲み比べは、当店の「沖縄の夜」の定番コースです。

  • GINNIE CORDIAL Sudachi / Hinoki
    GINNIE(日本)|0.00%

    すだちと檜——徳島の香酸柑橘と、日本建築の香りの木。ノンアルコールジンGINNIEのコーディアル(濃縮シロップ)シリーズは、この「和の香りの組み合わせの妙」を0.00%で楽しむ設計です。コーディアルとは英国伝統の希釈用シロップ文化のことで、ソーダで割れば即座に一杯が完成する、いわば「香りの素」。本作はすだちの鋭く爽やかな酸の香りに、檜の澄んだ木の香りが重なり、まるで柚子湯ならぬ「すだち檜風呂」のような和の清涼が広がります。ソーダ割りで食中に、トニックで食前に、GINNIE本体と重ねて「ノンアルの重ね着」も一興。飲めない日の一杯が、妥協ではなく選択になる——そんな夜の心強い味方です。徳島産ライムのジントニックとの姉妹関係もぜひ。

  • GINNIE CORDIAL Sobacha / Vanilla
    GINNIE(日本)|0.00%

    そば茶とバニラ——香ばしさと甘さの、東西の出会いです。焙煎した蕎麦の実の香りは、日本人には蕎麦屋の締めの湯呑みとして刷り込まれた安らぎの記憶。そこへ洋菓子の女王バニラの甘い香りを重ねると、まるで「そばぼうろ」や「蕎麦の実のフィナンシェ」のような、和洋折衷の焼き菓子的アロマが0.00%の液体に立ち上がります。ソーダで割れば香ばしいノンアルハイボール風、温かいミルクで割れば夜のカフェインレスラテとして、眠る前の一杯にも寄り添います。アルコールの棚ではOBUSE GIN(韃靼そば使用)が蕎麦の香りを担っており、「そばの香りの飲み比べ——0%と45%」という当店ならではの遊びも成立します。香ばしさは、酔わなくても人を幸せにします。

  • GINNIE CORDIAL Shiso / Cardamom
    GINNIE(日本)|0.00%

    紫蘇とカルダモン——和のハーブの女王と、スパイスの女王の顔合わせです。赤紫蘇の爽やかで少し野性的な香りは、日本の夏の記憶そのもの。そこへ「香りの宝石」カルダモンの、ユーカリと柑橘を思わせる高貴な清涼感が重なると、和ハーブがにわかに異国の風をまとい、チャイの屋台と京都の漬物屋が同居するような、不思議で心地よい香りの交差点が生まれます。ソーダで割れば、汗の引く大人のシソスカッシュ。ジンジャーエールと合わせればノンアルのモスコミュール風にも化けます。スティルダムのしそ梅ジン(45%)と並べれば、「紫蘇の酔える一杯・酔えない一杯」が揃い踏み——ノンアルコールが「代用品」ではなく「もう一つの正解」であることを、香りで証明する一本です。

  • 久米仙 泡盛コーヒー(キャラメル風味)
    久米仙酒造(沖縄県那覇市)|12%

    泡盛×コーヒー——沖縄の家庭で密かに愛されてきた「泡盛のコーヒー割り」文化を、蔵元が正式にボトルにした一本です。ライスウイスキーAKASHOUBINでもお馴染みの久米仙酒造が、泡盛の米の旨みに深煎りコーヒーを重ね、さらにキャラメルの香ばしい甘みを効かせた、いわば「琉球のカフェリキュール」。グラスからは焙煎コーヒーとキャラメルの甘い香り、その奥に泡盛特有の黒麹由来のふくよかなコクが流れます。12%の軽やかさはロックでも牛乳割りでも自在で、A2ミルクと合わせれば「琉球カフェオレ」の完成。カルーア(メキシコ)、戸河内(広島)、そしてこの久米仙(沖縄)——コーヒーリキュールの産地巡りは、当店の夜の世界一周の甘い最終便です。

  • コーヒーと泡盛 スピリッツ
    沖縄県|30%

    その名も「コーヒーと泡盛」——潔い直球の名を持つ、30%の本格派です。12%前後が主流の泡盛コーヒーの世界で、この度数はまさにスピリッツ級。甘さでまとめる「リキュール」ではなく、コーヒーの香味と泡盛の骨格を対等にぶつけた、黒く鋭い設計です。グラスからは深煎り豆の香ばしさとカカオの気配、泡盛の米と黒麹の厚い旨みが立ち、口中では甘さに逃げないビターな輪郭が、30%の熱とともに長く続きます。ロックでエスプレッソのように短く濃く、ソーダで割れば「泡盛コーヒーハイボール」という新境地も。エスプレッソマティーニのベースに使えば、ウォッカ版とは別次元の和琉ツイストが完成します。甘くないコーヒー酒を探していた大人へ——沖縄からの回答です。

  • 請福 COFFEE(泡盛コーヒーリキュール)
    請福酒造(沖縄県石垣市)|12%

    石垣島の名門・請福酒造。直火式の地釜蒸溜で知られる八重山泡盛の雄が、島のコーヒー文化と手を結んだのが「請福コーヒー」です。泡盛の産地・八重山は、実は国産コーヒー栽培の最前線でもある土地。この一本は、請福の泡盛にコーヒーの深い焙煎香を溶け込ませた、島の飲み方をそのまま瓶詰めしたような気取らない美味しさが身上です。グラスからは香ばしいコーヒーとほのかな黒糖の甘い香り、泡盛由来の柔らかな米の旨みが下支えします。12%の飲みやすさで、ロック、牛乳割り、そして意外や熱燗ならぬ「ホット泡盛コーヒー」も冬の楽しみ。久米仙・35サンゴと並ぶ当店の泡盛コーヒー三兄弟の、最も島酒らしい末弟です。石垣の夜風を、黒い一杯で。

  • Pertsovka Hot Pepper Flavored Vodka(ペルツォフカ)
    ロシア|35%

    唐辛子と蜂蜜のウォッカ——ペルツォフカは、ロシアとウクライナの寒い夜が生んだ伝統の薬酒的スピリッツです。瓶の中に赤唐辛子が沈む姿はそれだけで物語的ですが、この様式の歴史は古く、かの大帝ピョートルも唐辛子入りウォッカを愛飲したと伝えられます。グラスからは唐辛子の乾いたスパイスの香りと、蜂蜜のほのかな甘い気配。口に含めば、まず蜂蜜の丸みが迎え、次の瞬間、唐辛子の熱がじんわりと喉から胃へ降りていき、体の芯に小さな暖炉が灯ります。零下の国では「風邪の引き始めに一杯」という民間療法の顔も持つ、飲むカイロ。ブラッディマリーに使えば辛口の傑作が生まれ、冬の夜の最後の一杯としても記憶に残ります。モスクワの冬の知恵を、ショットグラスで。

  • 台湾酒(紹興酒・陶器ボトル)
    台湾|50%

    絵付けの陶器ボトルに封じられた、台湾の宴席の酒です。中華圏の酒文化には、ガラス瓶ではなく甕や陶器で酒を守る伝統があり、光を遮る陶の中で酒はゆっくりと呼吸し、まろやかさを増していきます。本作は50%という堂々たる度数を持つ台湾の銘酒——乾杯(カンペイ=飲み干す)の掛け声とともに宴を巡る、あの熱気の文化を背負った一本です。小さな杯に注げば、熟成香と穀物の甘い香りが立ち、口中では高度数の熱とともに、深い旨みが広がります。中華の宴席よろしく、点心や当店の明太子・海老の塩麹塩辛と合わせて少量ずつ——カバランのウイスキーとジンに続く、当店の台湾棚の「古典枠」として、東アジアの酒文化の奥行きを伝えます。陶器の絵柄も、どうぞ肴に。

  • Santa Maria Cane Syrup
    伊江島蒸留所(沖縄県伊江村)|シロップ(副材料)

    イエラムを生む伊江島のサトウキビを、そのまま煮詰めたケーンシロップ——つまり「ラムと同じ畑の砂糖」です。当店がこれを置く理由はただ一つ、ダイキリのため。イエラム サンタマリアに、同じ島のキビから生まれたこのシロップとライムを合わせれば、酒と糖の産地が完全に一致した「島内完結ダイキリ」が完成します。カクテルの甘味は名脇役ですが、その出自まで主役と揃える贅沢は、副材料に執着する当店ならではの道楽です。白糖のシャープな甘さと違い、キビ由来のミネラルとコクを含んだ立体的な甘みは、モヒートやラムコークの品格も一段引き上げます。ソーダ割りにすれば、ノンアルの「伊江島サトウキビスカッシュ」にも。一滴の甘みにも、産地と物語を。

  • 特選 神の使い 岡山生はちみつ
    岡山県|生蜂蜜(副材料)

    「神の使い」——古来、蜜蜂は神域と人里を行き来する神の使いとされてきました。その名を戴く岡山の生はちみつは、非加熱ゆえに酵素と花の香りが生きたままの、いわば「飲む花畑」です。当店ではこれをカクテルの甘味として使います。ハニーサワーやベアグリルズ系のウイスキーカクテル、ホットウイスキーの一匙——加熱処理された蜂蜜では消えてしまう花の繊細な香りが、生蜂蜜ではグラスの中で生きて香ります。ペルツォフカのお湯割りに溶かせば、ロシアの冬の知恵と岡山の花畑が出会う「蜂蜜唐辛子ホット」という当店の裏メニューも。スピリッツの女房役としての蜂蜜の実力を、産地と製法から選ぶ——それが当店の副材料哲学です。

  • 北尾 くろみつ
    京都|黒蜜(副材料)

    京都の豆政・北尾が仕立てる、和の甘味の粋——くろみつです。沖縄産黒糖のコクを丁寧に炊き上げた黒蜜は、白糖のシロップとは別次元の、ミネラルと香ばしさを含む立体的な甘さを持ちます。当店での主戦場は、看板カクテル「挽き茶のジャパニーズオールドファッションド」——ウイスキーと挽き茶を結ぶ甘味の橋として、この黒蜜が欠かせません。角砂糖をビターズで湿らせる古典の作法を、黒蜜と挽き茶で和に翻訳する——その要がこの一瓶です。ほかにも泡盛コーヒーのロックに一匙、A2ミルクの黒蜜ラテなど、和の甘味が活きる場面は無数。カクテルの砂糖ひとつまで産地で語る——約500種の酒の陰で、こういう脇役たちが当店の味を支えています。

  • 信州蜂蜜
    長野県|蜂蜜(副材料)

    北アルプスの麓、信州の山の花々から集められた蜂蜜です。岡山の「神の使い」が花の香り豊かな生蜂蜜なら、こちらは山国らしい澄んだ甘さが身上——標高の高い土地の蜜は、雑味が少なく、すっきりと上品な後味を持ちます。当店ではカクテルの甘味の「使い分け」のために二種の蜂蜜を常備しており、繊細なジンやウォッカベースには信州の澄んだ甘さを、ウイスキーの骨太なカクテルには岡山の花香る生蜂蜜を——と、酒の性格に合わせて蜜を選びます。ホットジンや金柑系のカクテル、喉を労わりたい夜のお湯割りにも。甘味は脇役、されど産地で選ぶ。信州の山の花の記憶を、一匙からグラスへ。バーの完成度は、こういう見えない場所に宿ると信じています。

案内

料金・営業案内

Pricing & Information
  • ドリンク¥880〜(税込)/¥800〜(税抜)
  • 消費税10% + サービス料12%〜
  • 24時以降30分毎に ¥250 加算
  • 営業時間20:00〜until late at night
  • ラストオーダーネット上は24時LO表記ですが、ご滞在中は原則LOは伺っておりません
  • 店内完全禁煙・男女別トイレ
  • お会計個別会計不可(会計グループを先にお伝えいただければ対応可能)
  • ご迷惑行為・グラス破損都度 ¥20,000

*深夜酒類提供の許可がとれないエリアのため、24時以降のご来店の際はお電話ください。03-5797-7775

よくあるご質問

FAQ
Q. Japanese Spirits & SAKE Bar 2102 AZABU-TOKYOはどこにありますか?
A. 〒106-0044 東京都港区東麻布2丁目10-2 関口ビル2F。麻布十番駅から徒歩7分、麻布台ヒルズから徒歩2分(ロシア大使館横の狸穴坂を下ってすぐ)、東京タワーからも徒歩圏内の、看板を出していない隠れ家バーです。店名「2102」は所在地・東麻布2丁目10番2号に由来します。建物2階、シャッターを潜り抜けて階段をご利用ください。
Q. どんなお酒が飲めますか?
A. ジャパニーズウイスキー(厚岸・イチローズモルト・三郎丸・嘉之助・日の丸など地域別のクラフトシングルモルト)、国産クラフトジン、プレミア焼酎(村尾・森伊蔵)、佐渡買い付けの日本酒、国産リキュール、日本のアブサン、昭和のオールドボトルまで、約500種類をご用意しています。
Q. 飲み放題はありますか?
A. はい。「60-MINUTES CRAFT FREE-FLOW」(60分¥5,980・税サ別)で、ボトルを除く店内全てのグラスドリンク約500種類が対象です。
Q. 食事はできますか?
A. 宮崎・尾崎牛サーロインステーキ膳、蒸溜所のモルト粕で育てた「新潟ウイスキーうなぎ」白焼き膳、高温ガス釜で炊く「ななかいの里コシヒカリ」の炊き立てご飯、和のおつまみ各種をご用意しています。
Q. 一人でも入れますか?デートや接待にも使えますか?
A. カウンター中心の落ち着いたオーセンティックバーですので、お一人での二軒目使いから、デート・記念日・接待まで幅広くご利用いただけます。店内は完全禁煙です。

Japanese Spirits & SAKE Bar 2102 AZABU-TOKYOTokyo・Higashi-Azabu|Open 20:00 – Close 01:00

スピリッツの楽しみ方

『Mixology Bar Source 2102』時代からの人気メニュー、
『天然水仕込みの強炭酸水』で、お好みのものを割って喉を潤すのが定番。

または、香りを確かめながらストレートで舐めるように味わう→それでもアルコール感がきつい場合は、少量の冷水を先に口に含んで、口腔内を冷やし湿らせてから、ストレートも是非味わってみましょう。

それでもアルコール感がきつい場合は、水で1:1の水割り『トゥワイスアップ』をおすすめします。

一番はその時の気分で『まずはソーダ割り!』『今日はロックでー』『カクテルもいいな!』など、柔軟に楽しみましょう。

そして思いついた組み合わせは試してみましょう! テイスティングはケチケチせずお出しいたします!

気に入った一杯は、旬の和のアテと合わせてじっくりお楽しみください。バーテンダーへの気分のおまかせオーダーも歓迎です。